表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺とアノムの同居生活  作者: 漆月零
2話 バイト、始めました
9/9

2-1「白咲綾・双葉楓」

────どうして人は色々なものを食べないといけないんだ。

 朝食を食べながら、そんなことを思った。

 アノムが押しかけてきた日の翌日────今日はバイトがある。午前十時から午後七時という鬼畜な仕様だ。まあ、流石に途中で一回家に帰るが。なぜそんなに長いのかといえば、純粋に給料の為だ。俺のような生活だと、バイトでの給料は生命線となる。仕送りはあるが、親がケチなので頼れない。一週間程前に送られてきたのは箱詰めされたもやしだった。頭おかしいだろと最初は思ったが、無理言って一人暮らしを始めたことを考えるとそんなこと言えないなと思い、もやしはありがたく頂いた。

 ちなみに、バイトはまだ行ったことがない。挨拶として、そして採用の件で行ったっきりだ。そして今日行く。というかまず、一人暮らしを始めたのが二週間前だ。本当なら四月でデビューしたかったのだが、物件が見つからず仕方なく五月下旬からとなった。まったく、キリが悪い。

 おっと、話が逸れてしまっていた。いや別に話しているわけでは無いのだが。ええと、『人はどうして色々なものを食べないといけないんだ』だったよな。そうそう、グラノーラを食べていてそんなことを思ったのだった。人間は雑食動物だから色々なものを食べるのは分かる。しかしだからといって色々なものを食べなければ健康を保てないのはおかしいだろう。不便すぎる。肉食動物な草食動物のように一種類のものでも健康を保てる方がいいじゃないか。例えば魚だけで生きていけるとか・・・・・・いや、ダメだな。もしそうだったら、既に海の生き物は死滅し、人間もいなくなっているだろう。もし草食動物だったら海の生き物どころじゃなく地球上の殆どの生命が消えてしまいそうだ。なるほど、そう考えれば、今の人間は丁度いいのかもしれない。色々なものを食べるから、一つのものに拘らないから、ここまで繁栄できたのかもしれない。壮大な話になってきたなあ。

 という所でアノムが起きた。パチッと目を開き、足は微動だにしないまま上半身のみを起こす。目は開いたままどこかを見つめており、しばらくすると目の焦点が合い、こちらを向いた。

 かなりホラーじみた起き方だ。夜にされたら怖くて眠れなくなるな。


 昨日は大変だった。あの後、アノムがセクシーポーズで俺を誘ってきたり、わざと下着を見せてキャーッとか言ったりいろいろ俺をからかってきたが、ほとんど無視した。チラ見はかなりしたけど。しかも俺が風呂に入っていたら覗いてきたり、いろいろしてきたがそれも無視した。ちゃんと隠していたから大丈夫、だと思う。そして俺も着替え、布団に入った。夜のことはプライベートなので何も言わない。あ、安心して欲しい。何もしてないから。


「おはよぅ・・・・・・」


 欠伸をしながら挨拶をするアノム。すげー眠そうだ。


「おはよう、もうちょっと寝る?」


「ん・・・・・・寝る」


 可愛いなオイ。

 時計を見やるともう九時だったので、支度を始める。とは言っても着替えて歯を磨いて終わりだが。

 今日からバイト。果たして、どんな人がいるのだろうか。俺はキッチンだからお客さんと会うことは少ないけれど、バイト仲間には会うはずだ。多分、六人ぐらいいるんだろうな。そういえば、男女比率ってどうなんだろう?普通に同じくらいなのだろうか。女子が多かったらいいなあ・・・・・・。あ、でも可愛いとは限らないのか。うーん、悩ましい。悩んでもどうしようもないが。

 着替えを終えると、歯を磨き始める。

 ────キッチンといえど、最初は皿洗いとかなんだろうな・・・・・・。でも、ネットで調べると皿洗い機があったりするらしいし。だからといっていきなり料理し始めるっているのもなあ・・・・・・?掃除とかだろうか?掃除しつつ学んでいくみたいな。まあ、行けばわかることだ。ちなみに、バイト経験はコンビニのみだ。コンビニのレジ打ちとかそういうのはやった事がある。だからレストランでもレジかと思ったんだが・・・・・・、まさかのキッチンだった。あの店長、何者なんだろう。話している時に後光が差してたんだよな。きっと錯覚なんだろうけどそれを起こしているあの人のオーラが凄い。面接と採用の二回しかあったことないのにあの人はすごい人だと感じるのだから、それはもう凄いのだろう。

 泡で満ちた口をゆすぐ。若干血が出ていた。磨いていた時に歯茎に違和感を感じたのはこれか。確か、口の中は治るのが早いんだったか。

 まあいいとして、時刻は九時半。もう家を出なければ。


「アノムー、もう行くぞ。留守番頼む。一回戻ってくるからそれまで待っててくれ」


 返事がない。本当に寝ているようだ。

 仕方ない、書置きでもするか。久しぶりだな、書置きなんて。まあ、書置く相手がいなかった訳だし。

 書き終えると、机の上に置いて家を出る。鍵をかけ、階段を降りると自転車に跨る。今日は昨日の買い物と違って自転車だ。少し遠いからな。

 自転車を漕ぎ始める。言っておくがママチャリではない。マウンテンバイクだ。高校三年生の時に買ってもらって以降ずっと使っている愛車だ。買う時に黒か白で迷った覚えがある。結局白にした。理由は黒だとおじさん臭く見えるからだ。今は黒にすべきだったと公開している。汚れが目立つから。

 自転車を漕いでいると自然、風景に目が行く。この街は田舎なので、周りは家や小さな店、田んぼぐらいしかない。その遠くには山が連なっている。日本にもまだこんな所があるのかと驚かれそうだ。自然は綺麗だが、観光客は少ない。この自然が壊されないと考えればそちらの方がいいと思ってしまうが、少し寂しい。道を行くのは車のみ。平日なので学生はいない。皆勉強中だろう。

 ────気持ちのいい風だ。

 天気もいいし、街もどこか楽しそうだ。きっと俺の思い込みでしかないんだろうが。こんな日は少し遠くへ出かけたくなる。友達が多ければどこかに遊びに行ったりするんだろうが・・・・・・。いや、考えても悲しくなるだけだ。なんかの小説の主人公が言ってたな、友達を作ると人間として弱くなる的なこと。読んだ時は確かにと思ったが、別にいいじゃないかとも思う。人間として弱くなったからと言って、悲しむことや辛いことが増えたからと言って、それがダメな理由なんてない。弱くても生きていくのが人間じゃないか。そう、そうなんだ。強くある必要性なんてない。

 漕いでいる内に、大通りに出た。いろいろな店が並ぶ、比較的都会な所だ。本当の都会に比べれば全然田舎だが。家電量販店やショッピングモールは全てこの辺にある。コンビニは家の近くにもあるが、ここは多い。そして、俺が向かっているレストランもこの通りにある。

 そして、自転車を漕ぎ続け、目的の場所が目に入る。


「────ついた」


 そして、到着した。

 レストランの名は『カメラート』

 何語かは忘れたが、仲間とかそういう物を意味するらしい。


 自転車を止め、店に入る。十時開店なのでまだ開店前だ。と、思っていたのだが、腕時計を見るともう10時だった。


「やばい!」


 初日に遅刻とかやばい!

 急いで店内に入ると、すぐ近くに店長が立っていた。


「よく来たね。待ってたよ」


 やばい。これはやばい。冷や汗が吹き出てくる。

 店長は笑顔だ。それが本心からなのか怒りを隠しているのか俺には分からない。ただ、怖いことは確かだった。隣に立っている女性が全力で俺を睨み・・・・・・ん?隣・・・・・・うわああああ!ビックリした。何の気配もなしに出てきたぞ。声に出なかったことが幸いか。


「そんなに怖がることはないよ。ただ、遅刻は遅刻。相応のペナルティはあるからね」


「は、はい!」


 ペナルティか・・・・・・。まあでも、そんなに怒ってなさそうだ。このままクビになるかもとも思ったのだが、さすがにそれは無いようだ。


「じゃあ、とりあえずみんなに紹介しようか。仕事はその後でいいよ。まずは、白咲くんでいいか」


 店長がそう言うと、隣に立っていた女性が一歩前に出た。


「白咲綾です。主にフロアを担当しています。店長に何か無礼を働いたら、即殺しますので」


「こ、殺されるのか・・・・・・」


 怖すぎる。さっきからオレを睨んでいたのは店長に迷惑をかけていたからだったのか。


「まあまあ、白咲くん。ほら、相田くんも自己紹介して」


「えっと、相田徹です。キッチンを担当します。レストランのバイトは初めてなんですが、よろしくお願いします」


 こ、怖い。白咲さんは睨むのをやめたけど、店長をキラッキラの目で見つめている。頬も赤いし、恋みたいだ。ん?さっき店長が大事そうな発言をしてたし、まさか二人は・・・・・・、いや、野暮な事を考えるのはよそう。


「うん。じゃあ、他のみんなにも挨拶をしてきてね。多分、自分の持ち場にいると思うから」


「はい!」


 店長はそう言うと、店の奥へと入っていった。

 ────それにしても、どこから行こうか。とりあえず同じキッチンの人かな。

 キッチンに向かって歩き始める。すると途中で、イケメンとすれ違った。

 ────クソ、俺達の敵がいるじゃないか。

 自己紹介をする気になれず、そのまま通り過ぎてしまう。イケメンは何か悩んでいた様子で、こちらに気づいていなかった。好都合だ。

 そのままキッチンへ入る。すると、


「あっぶねぇ!」


 包丁が飛んできた。


「あ、ごめんね。敵かと思っちゃって」


「敵がいるのか、この店には・・・・・・」


 包丁を投げたのはこの女性か。

 ポニーテールが似合う可愛い女性だ。そのポニーテールのポニーはそれ程、あれ?違う?・・・・・・ああ、そのポニーテールのテールはそれ程長くなく、肩に届くか届かないかぐらいだ。胸は、普通ぐらい。大きくもなく小さくもなく、程よい感じだ。身長も百六十センチぐらいで、可愛い子、という印象を受ける。

 とりあえず、自己紹介をしないと。


「あ、えっと、新しくこの店で働くことになりました。相田徹です。同じくキッチンです。?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ