1-4「レッツゲーミンッ!」
「よし、レッツゲーミンッ!」
「ゲーミンって何?」
「なんでこんな時だけテンション低いんだよ・・・・・・」
さっきまで高かっただろうが。
昼食を食べ終えて、机周りの軽い掃除が終わった後、何をしようかと考えた挙句に出た答えがこれだ。ちなみに掃除にアノムは参加していない。ひたすらにベッドでゴロゴロしていた。可愛かったので許す。
それにしても、ゲーム。何故これにたどり着いたかといえば、普段は一人でやっているが、今日からは二人で出来るからだ。いつもと違って、ネットを介さないで、オフラインでの対戦が出来る。だからゲームに決めたのだ。
「・・・・・・はっ!今日”から”って考えてた!」
「どしたの急に!?」
アノムがすごく驚いた表情でこちらを見てきた。
「あ、いや、なんでもない」
「いいよ、楽になって。我慢はよくないよ。大丈夫、私がいるから」
「あ、アノム・・・・・・ありがとう・・・・・・ってなると思ってたのか?そんな唐突に対応変えられて喜ぶやつなんていな────」
「思ってたよ」
アホか。
「そういやさっきのセリフ、なんかアクション系の物語のヒロインが言ってそうだ」
「こないだ読んだラノベにあったセリフだよ」
「事実かよ」
・・・・・・あれ?天界から来たの初めてって言ってたよな?なのに何で・・・・・・。
「嘘だよ」
「お前嘘つく癖あるだろ!?」
俺に対する嘘が多すぎる。
「癖じゃないよ。そんな性格悪くないもん。徹の反応が面白いからつい言っちゃうだけで・・・・・・」
「どっちにしろ性格悪いぞ?」
ホントに俺を玩具のように扱うな・・・・・・。
「うわー、女の子に性格悪いとか言うんだ。サイテー」
「最低の部分が棒読みだとかえって突き刺さる・・・ッ」
「さいってい!」
「なんでそういう時だけ言い直すんだよ!俺からしてみれば二回も最低って言われただけだからな!?」
感情こもっててもこもってなくても突き刺さるわ。察せよ。
「あーっと、最初に戻るけど、ゲーミンってゲームのことだよゲ・エ・ム」
話の収集がつかなくなってきたので、話を最初に戻す。
「ゼエヌ?」
「この至近距離で二回も言われて聞き間違えるか?」
「はいはい、ゲームね。聞こえてるよ。ちなみに、テレビゲーム?ビディオゲーム?」
「その二つ変わんねえよ?」
正式には違いがあるんだろうが、俺は知らん。
「まあでも、お前が思ってるのと同じだと思うぞ」
こういう時に二人でやるゲームなんて限られている。
「据え置きだ」
そう、据え置き。テレビに接続してやるタイプだ。
「携帯型がいいんだが、二台も持ってないんでな」
一人だから携帯型は全部一つしかない。
「ふーん、で、なにやるの?」
「そこなんだが・・・・・・お前、ゲームできるのか?」
そこが問題だった。アノムがゲーム出来ないとなれば他の選択肢を考えなくてはならない。
「できるよー余裕余裕」
よかった。そうか、天界から見ていたのならばゲームの操作なんかも分かるのか。なるほ・・・・・・いや待てよ。天界から見てたって、夜も?一人の時も?どんな時も?
アノムを見やる。ニコニコしていた。もういいや。
「じゃあ始めよう」
「なにやるの?」
「これ」
そう言って俺が差し出したのは、かなりの有名作。様々なキャラクターが登場し、そのキャラクターを車に乗せてレースをするものだ。ただのレースではなく、途中で道具を使って相手を妨害することも出来る。単純だが地味にハマる名作だ。
「あーこれか。私見てただけだからどれ使うか迷うなー」
「キャラは見た目で選べば?車は性能とかを俺が教えるから」
初心者の典型的パターンの一つだ、見た目で選ぶ。他には、ネットで調べるだとか、好きなキャラを使うだとか、色々ある。
「じゃあアレだね!」
「何にしたんだ?」
「秘密ー」
秘密にしてもこの後すぐに分かるのだが。
ゲームを起動し、ディスクを入れる。そしてソフトを起動。
「よーし、やるぞー」
「ノリノリだな」
「初めてだからね!」
満面の笑み。やって良かったと本気で思う。
「そういえば、コントローラーはどうするんだ?」
このソフトはコントローラーによってもかなり変わってくる。リモコンを横に倒してハンドルのように運転するタイプや、パッドのスティックを倒すタイプ、リモコンにもう一つ特殊なリモコンをつなげるタイプなどがある。
「なんでもいいけど・・・・・・強いて言うなら、これが一番楽しそう」
そう言ってアノムが選んだのはリモコンを倒すタイプだ。確かに、楽しさでいえばそれはかなりのものだ。操縦方法が実際の車に近いのも魅力だ。
「じゃあ俺はいつも通りこれで」
俺が使うのは二種類のリモコンをつなげるタイプだ。これが最も扱いやすく、ネットでも人気のあるタイプだ。
「じゃあ二人プレイで、速さは・・・・・・100ccでいいか」
このゲームは、最初に速さを変えることが出来る。50cc、100cc、150ccの三種類がある。
「じゃあキャラ選んでー」
遂にここでアノムが選ぶキャラがわかる。
ちなみに僕はこのゲームの主人公とも呼べなくない、赤い帽子を被ったヒゲがダンディなおじさんだ。おじさんなのかは知らないが。
「で、アノムはどれにするんだ?」
「これ」
アノムが選んだのは、キノコ型のキャラクターだ。僕はあまり使わないので詳しいことは解らないが・・・・・・。
「あー、見た目?」
「うん。でも可愛いとかそういうんじゃなくて、なんというか、その、ちょっとダサい感じが」
「可哀想だな・・・・・・」
少し気の毒だ。
「次はカート。乗る車だよ」
「わかってるってばー。ずっと見てたんだから。でも、あんまやってなかったよね?」
あー、今更だがそうなのだ。買ったのは最近だし、あまりやっていない。同じシリーズの前作はやっていたから基礎は分かるが、新しい要素に関してはよく知らない。
「あー、俺は普通に行こうかな」
前作ではカートしか選べなかったが、今作ではほかの要素も選べるようになっている。が、詳しく知らないので普通のものを選んだ。
アノムはと言うと・・・・・・。
「私も普通でいいやー」
あ、あれ?アノムの事だから冒険すると思ったのに・・・・・・。
「まあいいや、コースは普通にここでいい?」
「んー、いいんじゃない?」
軽いな・・・・・・。
「んじゃ、始めるぞ」
「よしゃー、やてやるぞー」
「小さいつはどこいった」
「置いてきた。探せー!」
「ひとつなぎの秘宝かよ!」
これ以上は怒られる。色んなところから。
「ほら始まるぞ」
画面内でカウントダウンが始まる。実はこれ、2の時にアクセルを押すとスタートダッシュができるのだ。アノムに悟られないようにこっそり押す。大人気ないとか言うなよ。
そして始まった。
スタートダッシュでまず差を・・・・・・あれ?
「フッフッフッ。私もスタートダッシュは知っているのだよ」
「な・・・・・・!?そんな馬鹿な!」
「私をなめないで頂きたいね」
「クッ・・・・・・!」
互いに何やってんだ。
頭ではそう思っていても楽しいので続けてしまう。
「まだだ!レースは始まったばかり、このまま経験の差で勝つ!」
「一回自分の発言考えた方がいいと思うよ!?すごい大人気ないこと言ってるからね君!」
今までと立場が逆だが案外しっくりくる。別にこっちでもいいかもしれない。
それにしても────
「速すぎないか!?」
もはや車の性能が違うとしか思えない。俺は100ccだがアノムは150ccだったのかと思うほどだ。そんなの不可能だが。
「口ほどにもないね!」
「くそ!腐っても女神か・・・・・・!」
「腐ってない!」
そんな会話(叫び合い)とともに俺とアノムの差はどんどん広がっていく。
「このままじゃ追いつけなくなる!どうにかしないと・・・・・・!」
何かないか・・・。そうだ!現在アノムは一位!一位に確実に当たるあの甲羅さえくれば────
「いける!」
「何か策が思いついたんだね!来たまえよ!女神の力、見せてくれる!」
しかし、これから先アイテムが取れる回数は限られている。一つも逃さずに取らねば・・・・・・!
一位のアノムと二位の俺、そしてその後に並ぶNPCの皆さん。この際NPCはもう意味がない。一位と二位なのにとてつもない差ができている二人だけの勝負と言っても過言ではない。
「来た!」
一位狙いの甲羅!即座に────
「放つ!」
青くて翼の生えた甲羅が飛んでいく。
これで転んでいる隙に抜かす!
「無駄だよ!」
アノムはそう言うと、巧みなドライビングテクニックでその甲羅を避けた。
は?
「そ、そんな・・・・・・馬鹿な・・・・・・あ、あれを?」
驚愕で口がふさがらない。
「あれ、避けられる仕様なのか!?」
あれを避ける人なんて見たことがない。
甲羅を避けた後アノムはぐんぐん進んでいく。
その時!
「な・・・・・・雷!」
雷が落ちた。ゲーム内で。恐らく十一位辺りが使ったのだろう。雷の影響でアノムも僕も小さくなる。
「しまった!徹に注意し過ぎた!」
アノムが失敗したといった感じで叫ぶ。
「残念だったな!」
しかし俺がこの隙に抜かすことはできない。俺も小さくなっているからだ。そして、そのままゴール。
雷役に立たず!
「これが、女神・・・・・・」
「こんなことで女神の凄さを感じられても嬉しくないけどね!」
「・・・・・・でも、諦めない。諦めてしまってはダメなんだ。そう、俺は必ずアノムを倒す!」
「倒すゲームじゃないけどね」
「さあ、次だ!」
俺は次のコースを走り出した。
必ず倒すと、そう誓って────。
えー、どうでもいいかもですが報告します。
題名を変えたいと思います。
今までは、『女神と同居してるんですが』でしたが、『俺とアノムの同居生活』に変更します。
まあ、始まったばかりなので。気にしないということで。多分もう変えません。多分。恐らく。
では。