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俺とアノムの同居生活  作者: 漆月零
1話 同居、始めました
2/9

1-2「お買い物♪」

「はあ・・・」


「どしたの?溜息なんてしちゃって」


「いや、なんで俺なんだろうって・・・・・・」


「私が嫌なの?」


 あー、その上目遣いをやめてくれ。


「そういう訳じゃないんですけどね?ただ、俺みたいなフリーター、どこにでもいるじゃないですか。なのになんで俺なのかなって」


「神の気まぐれとでも思っとけば?」


 思っとけばって、自分のことなのに。


「家出てから暗いねー。外出がそんなに嫌?」


「まあ、できればずっと家にいたいです」


「うわー、ひきこもらないでよね?」


「大丈夫ですよ。ひきこもったら生活出来なくなりますから」


 だからこうしてフリーター生活をしているのだ。幸い親は結構裕福だから僕の貯金も多く、就職するまでは安心だ。しかし、流石にバイトをしないときついので頑張っている。


「相田君」


「はい?」


 突然後ろから名前を呼ばれる。


「さっきから独り言が激しいんだけど、脳内にウジ虫でも住んでるのかい?」


 あ、そうか。アノムは他の人に見えないのか。

 じゃない!


「ウジ虫なんか住んでねーよ!」


「あ、そうか、まず脳が無いんだった」


「そういう事言ってんじゃねえよ!俺は単細胞生物か!」


 な、何かいい言い訳は・・・・・・。


「電話してましたっていいなよ」


 アノムが助け舟を出してくれた。


「電話だよ・・・・・・」


「の、脳がないのに電話なんて使えるのか・・・・・・?」


「マジで驚いたような反応するなよ・・・・・・」


 目を丸くするな。


「今急いでるんだ。ほっといてくれ」


 そう言って無理やり別れる。


「ありがとうございました、アノムさん」


「んーん、なんかその言い方ムズムズする。アノムでいいよ」


「いやでも、敬語で呼び捨てって気持ち悪くないですか?」


「んーじゃあ敬語じゃなくっていいよ」


「あー、結局・・・・・・」


「ちなみに、今のって例の」


「アパートの隣の部屋に住んでる毒舌女」


 胴体さえ見なければ性別がわからない。声は中性的だし、見た目も中性的。なぜ胴体を見なければなのかと言うと、胸はあるからだ。それも大きめ。あと結構美形だ。・・・・・・あ、顔がね?


「あーやっぱり。なかなかに綺麗な人だよね」


それは思う。思うが口にはしない。性格悪いしな。顔だけ見ても、アノムの方が可愛いし。


「やばい、だいぶ脳内が汚染されてきてる・・・・・・」


「何に?ちょっと厨二病っぽいよ」


 あなたにだ。とは言えない。言えるけど。あれ?どっちだ?


「買い物ってさあ、いつものスーパー?」


「そー」


 いつものって、まるで彼女みたいだ。


「返しが雑だなー」


「敬語を急になくそうとすると、違和感があって無理なんだよ」


「確かに」


 敬語に戻してもいいが、それだと呼び捨てに違和感が生じる。どうしたものか・・・。


「慣れるしかないねー」


「そうか・・・・・・」



────それから10分経過


「ついたー。お買い物♪」


「そーだな・・・・・・」


「思うんだけど、なんで自転車とか自動車使わないの?」


「車買うお金が無い、自転車は家にあるけど使ってない」


「なんで使わないの?」


「歩いた方が運動になると思って」


「なーる」


「もう喋りませんよ。変な人に見られるから」


「あ、さっき敬語に戻ったね。もう敬語でいいんじゃない?」


「────」


「ほんとに黙っちゃった」


 スーパーに入って、カゴを取る。いつもと同じ光景だ。しかしいつもと違うのは隣にアノムが・・・・・・いない!?


「は!?」


 つい大きい声が出てしまった。幸い近くに人はいない。それにしてもどこだ?どこに行った?

 周りを見渡すが、それらしき人影はない。僕以外には見えないのだから誰かに聞く事も出来ない。


『臨機応変に』


 アノムの言葉が蘇る。そうだ、臨機応変にいこうじゃないか。となれば・・・・・・。


「放置だな」


 ほっとけば戻ってくるだろう。買い物を先に終えよう。

 えっと、これからの昼食は、弁当でいいか。うどんが食べたいな。最近熱くなってきた。まだ6月上旬だってのになあ。地球温暖化か。

 この調子で夕飯と明日の朝食、昼食も買っていく。朝食はグラノーラだ。最近かなりハマっている。


「アノムは、何も食べないんだよな」


 食費かからないとか言っていたし。

 他にも料理の材料を買い、レジへと進もうとした、その時。


「徹くーん」


 アノムの声がした。その方向を見ると、アノムが立っていた。


「お菓子買って」


「子供か」


 つい声が出てしまった。気を付けなければ。


「いや、お菓子と言ってもスナック菓子ではないよ?この団子さ」


 見ると、アノムの指さす方向に、団子があった。あんこのようだ。


「スーパーにしてはなかなかの出来だよね。その分値段は他より少し高いけど」


 あなた何も食わないんじゃなかったの。


「あ、えーっとね、食わなくても平気なだけで、普通に食べられるよ」


 僕の心を読んだように答える。にしても、あの団子三本入りで二百五十円か。・・・・・・高いけど許容範囲だな。

 団子を手に取りカゴに入れる。


「いいの?」


 そう言われると買う気が失せる。でもまあ、買ってやろう。一本貰うけど。


「そんなに優しかったんだ」


 この人は天界で僕の何を見てたんだ。

 この時間帯だと人は少ないので、スムーズにレジを通れる。

 しかしこの時間帯に来るのには、少しリスクがある。暑さで食品がやられてしまう可能性があることだ。急いで帰らねば。

 お金を払った後、買ったものを袋につめ、スーパーから出る。


 ・・・・・・食品が痛む前に帰らないとだし、急ぐか。


「アノム、走ろう」


「ええー・・・」


 なんで残念そうなんだよ・・・・・・。

 でも、顔を見ると笑顔だった。可愛い。

 ・・・・・・いや、なんでもない。

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