神の時代
『神』に『時間』を捧げる事――――――
それが『永遠』を手に入れる唯一無二の条件である。
一見して相反するその条件は、けれど人々の興味を掻き立てた。
――――こんなにもチカラが手に入るのなら、『時間』などいくらでも捧げる。主の為、自分の為。そしてそのチカラこそが、『永遠』を呼び寄せる鍵となる――――
『神』に『時間』を捧げる事を誓い、代わりとして『加護』を手に入れた者を、我々は『神と永刻を頒つ者』と呼ぶ。
手始めに、彼らは『加護』を振りかざし、罪無き人々の命を次々に奪っていった。それが九七五年に大陸全土で起こった大量虐殺、『万死の開闢』である。
だが、それはたった一日にして終わりを告げた。奇しくも、『神』の側にいた〝あるひとりの男〟が反旗を翻し、『神』を葬ろうと試みたのだ。
しかし、その男はほんの僅かに及ばなかった。葬るまでには至らなかったが、だがそれでも充分な痛手を負わせる事が出来た。
『神』は『神と永刻を頒つ者』を撤収させ、再び準備に専念する他なくなった。
無論、男は〝死んだ〟。
それから程なくして、死の片鱗どもは再び野に放たれた。だが彼らはいくつかの集団として組織化され始めるうち、『命の価値』というものに目をつけ始め、『加護』を持たない人々を手にかける事はほとんどしなくなった。
――――『加護』を持つ者の命を奪えば、自分の『加護』はより強く、そしてより効率良く『永遠』を手中に出来る、と。
そしていつしか始まったのが、『神と永刻を頒つ者』同士による果てしない抗争であった。無論、その争いが大陸に住まう人々に被害を与えないわけがなかった。
フロディエナ大陸には今、再び危機が訪れている。
◇◆◇
我々の目的は『神と永刻を頒つ者』に埋め込まれた『邪意』を浄化し、彼らを平穏なる生活に戻す事。そしてその根源を『葬る』事。
そして我々は今、〝死んだはずの男〟の指揮下にいる。
◇◆◇
…………さて、この先がどうなるかは、きっとまた僕が綴っていく事になるだろう。
勿論、字が書ける程度に生きていられればね、うん。
フロディエナ暦九八〇年――『神の時代』 アルイロ・アイェリス著(未完)より。