SS18 「年上の彼女」
「初体験は年上のお姉さんとしたかったな」
何気ない口調で彼が言った。
「……そうなの?」
「そうそう。相手は綺麗なお姉さんで、何も知らない俺は優しく手解きを受けるんだよ」
「へえ?」
「で、お姉さんは何だかんだで凄くエロくて、あんなことから、あ~んなことまで」
「あんなことって?」
「あんなことだよ。……怒った?」
「別に?」
まあ、私の膝の上に頭を乗せながら言うことじゃないかなって思うけど。
私が膝を動かしたので、ずり落ちた彼は小さく悲鳴を上げた。
「で、実際はどうだったの?」
「何が?」
「初体験……年上だったの?」
「どうだったかな? 風俗だったから年齢はイマイチわからなかったから……まあ、時間内は優しくしてもらえたよ。プロ意識って大切だよね」
何やら真剣な顔で彼は頷いた。何を考えているのやら。
「その後も色々と想像していたんだよな。お姉さんに手解きを受けた後は強気な幼馴染とか、慕ってくれる可愛い後輩とか、メガネの図書委員とかとキャリア・アップ」
「いたの?」
「いや、いなかった。あ、でも慕ってくれる後輩はいたよ」
「貴方、男子校じゃなかったっけ? 中高一貫の」
「だから、色々と想像していたんじゃないか」
彼は口を尖らせた。
「しかし、人生は想像どおりにいかないものなのかもな」
「当たり前でしょう?」
「だから、君に出会えたのかもな」
彼は私の頬を撫でた。君みたいな人に会えるとは思わなかった、と。
「……また、そんなことをいう」
私はため息をついた。彼は笑いながら目を閉じる。
彼は私よりかなり年上だが、性的な経験や知識は私の方が上だ。
ただ、私の経験は身の丈以上のものを求めて、貪欲に快楽を貪った結果に得たものだ。
気がついてみると私には何も残っていなかった。
その空虚を埋めてくれたのが彼だ。
彼は飾らず、求めるよりも与えることを自然に行える。
「貴方って本当に・・・・・・」
「何?」
何も言わず、彼の頬を撫でた。きょとんとした表情で私を見上げる。
その顔があまりに子供っぽくて私は微笑んだ。