血に染まる月と巫女4
部屋を出た夜は、再び感じる視線を無視して歩いていた。
小さく聞こえる悪口は慣れてしまったせいか気にはせず、自分の住処に戻ろうとしたが目の前に立った大柄の男に道を塞がれてムッとする。
制服を見てエクソシストだと分かるが、男の名前は知らない。
筋肉質な腕を見せびらかすように組んでニヤニヤと笑っていた。
面倒だったが、帰って寝たいという事もあり男を睨んでいると男もムッとした表情になる。
「お前のせいで、神が汚れるんだ」
また、いつもの言いがかりかと呆れながら見ていると睨んでいると勘違いしたのか苛立った顔で胸倉を掴まれた。
身長差のせいで持ち上がってしまい、顔が近くなり目を逸らす。
その仕草が怯えていると勘違いされ更に挑発的な態度になり、溜息を吐く。
このままねじ伏せてもいいが、後々面倒なので無視をし続けた。
「おい、何とか言えよ!」
「うるせーな……お前の声、耳障りなんだよ」
殺気立った目で睨むと男の掴む手が緩まる。
だらんと下げていた手で胸倉を掴んでいる手をはらい、着地した。
服を整えようとしていると怯んでいた男が拳を握り締めて言う。
「婆様に気に入られているからっていい気になるんじゃねぇよ!」
夜は冷たい目をしたまま口元だけで笑うと口を開いた。
「ちょっと通してください!」
その場に響いたのは夜の声では無く、少女の声だった。
野次馬の様に集まっていた人々の中から顔を見せた長い髪の少女は夜を見るなり表情が明るくなる。
ダークネスに襲われていた少女だと気付き、目を丸くしていると何の前触れもなく手を握られた。
唖然とする夜に少女は満面の笑みを浮かべて言う。
「やっと会えた!私、お礼が言いたかったの!」
自分より背の高い少女を見上げて固まる夜をそのまま引っ張り、群れの中から出ていく。
男もいきなりの事に言葉を失い、二人の背中を見つめていた。
「おい、引っ張んなって!」
掴まれた手を振り払うと少女も立ち止まり、振り返る。
目線を合わせるように屈むと頭を撫でられた。
その手もはらうと何がしたいのかと問う。
少女は心配しつつも怒った表情で来た道を見る。
「まったく、大人げないよね自分より小さな子をいじめるなんて」
まるで子供と話すかのような喋り方に夜はムッとした。
「あ、私は原田みつきって言うの」
「年は?」
「え?」
「だから、お前の年齢は」
「えっと、16歳だけど?」
戸惑いながらも答える少女、みつきに夜はムッとしたまま言い返す。
「神谷夜、俺も16歳だ」
言われた年齢にみつきは夜の身体をじっくりと観察する。
自分の発言が失礼だったと気付き、慌てて謝るも夜の表情は変わらない。
気まずい雰囲気に、二人は無言になってしまう。
どうしたもんか、と頭を抱えるみつきに夜が聞く。
「怪我は無いか?」
「うん、大丈夫」
そうか、と小さく言うとそのまま夜は力無く倒れた。
みつきは咄嗟に身体を支えると夜の名前を呼ぶ。
しかし、返事は無く背筋に冷たく汗が流れる。
どこか怪我をしていたのかと怯えているみつきの耳に誰かの声が聞こえた。




