復活の時6
「どうしました?」
崩壊しかけている部屋で片腕を失ったピエロが笑う。
息苦しさに襲われ剣を落としてしまった那智は無言で睨んだ。
まだ、倒れる訳にはいかないと拳を握る。
「ゴホッ、ぐっ……ゲホッ……ぁ……」
口に手を当てて咳き込むとベットリと血が付着した。
身に纏う衣装も消えかけている。
ここまで来て戦えないのは嫌だと唇を噛みしめた。
「これ以上は、死にますよ?」
「構わないよ、そんなの……死ぬのが怖くて戦いなんて出来ないよ」
剣を拾い、ピエロに向かって突き進む。
風船が目の前に現れると破裂して粒子が舞う。
吸わない様にと腕で鼻と口を塞ぐ。
粒子の奥からピエロが現れ剣を投げつけた。
腕と足に刺さり、那智は倒れ込む。
既に痛みを感じなくなってしまっている。
「ははっ!素晴らしい姿ですね!」
刺さった剣を引き抜いて立ち上がった。
飛んでくる刃を剣で払うが、やがて折れてしまう。
もう、終わりにしなくては。
両手を広げて無数の円状の物体を出す。
「甕布都神・無限烈覇」
物体から無数のエネルギー波が飛び出した。
ピエロは目を見開き、失った逃げ道を探す。
「止めろ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「ぁぁぁああああああぁぁぁああああっ!」
衝撃によって部屋が完全に崩れる。
力を失い倒れる那智。
走馬灯なのか、記憶が映像となって頭に浮かぶ。
『お前は、俺の家族でいてくれるよな』
依存するかのように聞いて来るフィルデス。
頷いても声を掛けても不安そうな顔をやめない。
小さな子供だと思い、接していたが自分もまた依存していた。
お互いに傷を舐めあう存在。
「ゴメン、僕はもう君の近くにいてあげられそうにないや」
記憶の奥でフィルデスが悲しそうに立っている。
「寒い……」
薄れて行く意識の中でヤタガラスが名前を読んでいた。
「眠い……」
もう、休んでしまおうか。
首を振っているフィルデス。
光を失う眼。
崩壊が止まった部屋には那智の姿しかない。
「那智、目を開けてヨ!」
必死に呼ぶヤタガラスは開いている扉に向かって飛ぶ。
那智の脳内に広がる白い空間。
寂しそうな顔のフィルデスは那智をジッと見ていた。
申し訳なさそうに笑みを浮かべ、フィルデスに抱き付く。
『ごめんね、ゴメン……』
何も言わない。
『僕は、ジンに助けて貰ったのになにも出来なくてごめん』
やはり、言葉は返って来ない。
『ジン……』
フィルデスはそっと那智の左肩に触れた。
淡く光る刻印。
『ジン?』
『まだ消えてない』
那智もフィルデスの左肩に手を伸ばす。
微かに感じる温もり。
まだ、抗ってもいいのだろうか?
『生きてもいいの?』
『あぁ、俺がお前を連れ戻してやるから待ってろ』
皹割れた結晶の中にいるフィルデスが拳をぶつけて破壊する。
驚いた顔の夜とみつきを見てお礼を言う。
まだ、左肩に刻印がある事を確かめると二人に謝った。
「悪い、ちょっと行ってくる」
「お、おい!まだ魔力が!」
呼び止める声に大丈夫と言って扉から姿を見せたヤタガラスを捕まえる。
「那智が、ナチが!」
「案内しろ!俺の契約者の所に」
フィルデスの発言に夜は驚く。
まさか、那智はと考えるが今は男をどうにかしなくてはと黒陽の元へ行く事にした。
話は後で聞けばいい。
「まったく、勝手に動きやがって」
文句を言いながら大鎌を出した。




