悲しき運命11
夜の顔に向かって伸びる足を掴んだまま勢いを付けて投げ飛ばす。
地面に背中をぶつけ苦悶の表情をした。
顔を蹴られたせいか、口の中に血の味が広がっている。
真っ赤な唾を吐き、様子を伺う。
この程度で勝てるなんて思っていないが、殺気の籠った眼で見られると多少は傷付く。
ゆらり、と立ち上がった那智は真上に両手を交差させる。
「おいおい、まじかよ」
青褪めた顔で夜が言うと潤とみつきの方へ走り眼帯を外した。
そのまま、みつきを片手で抱き上げて潤の襟首を掴むと全力で逃げる。
様々な術が重なり合った複雑な六芒星が那智の前に浮かぶ。
逃げられない様にしているのか、目の前に壁が現れたのを目にして飛び越える。
同時に背後から膨大なエネルギー派が襲い掛かって来た。
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいっ!」
「早くしろ!」
「うるせぇ!黙ってろ!」
「なにあれっ!」
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
夜と潤が言い合う中、みつきは悲鳴に近い声を上げ、夜の絶叫を耳にエネルギー派を間一髪で避ける。
情けない格好で倒れる三人の目には抉り取られた地面が映った。
悪魔から元に戻ると身体から零れる砂を叩いて立ち上がろうとしたが、止められる。
「ちょっと!ナイト待って、待って!」
先程の危機によってすっかり忘れていた。
元に戻ると全裸になるという事を。
影を操って服を作り、気を取り直して立つ。
この状況をどうにかする方法はただ一つだけ。
妖力を減らして戦えない状況に追い込めばいい。
都合よく、一番妖力を消費する技を使ってくれた為にやりやすくなった。
「動けなくして、マインドコントロールを解除するしかねぇな」
みつきに待機しているよう言うと二人は頷いて飛び出す。
大鎌を持って那智に飛び込む夜。
攻撃を防ごうと両手を広げたのを確認し、横に飛びのく。
刀を持った潤が下から突き上げる様に攻撃をした。
「伍の舞・連撃」
素早い動きで刀を動かす。
刃によって細かい傷を受けつつ後ろに下がるが、しつこく追われ防御しか出来ない。
「……っ……」
―夜、今だ!妖力を吸え!
急に聞こえたフィルディスの声に夜は困惑する。
「はぁ?どうやって」
―血を吸うなんて考えずに、妖力を吸う事だけ考えろ。
いい加減な説明に文句を言いたかったが、それしか方法が無いのだと判断して背後に移動した。
防御に集中している那智の肩を掴むと景色が変わる。
フィルディスが無理矢理交代したらしい。
―おい、兄貴!
「黙ってろ、お前にはできねぇー技だ」
嫌がる那智を押さえつけて噛みつく。
力が抜けているのかゆっくりと座り込む。
潤が様子を伺っているのが見え、夜も緊迫感に息を呑んだ。
「……な、にを……」
「お前の力を貰った、これでもうたたかえねーよ」
悔しそうに睨まれ、フィルディスは舌打ちをして前髪を強く掴む。
「いい加減、目を覚ませ」
那智の目の色が変わる。
何が見えているのか分からないが、恐怖と怒りが混じった色をしていた。
戦えないはずなのに、拳を握って前髪を掴む手を叩く。
距離を取り怒りに満ちた表情で叫ぶ。
黒いオーラが吹き出して全員、驚いた表情をした。
「おい、お前が消したんじゃないのかよ!」
「消したっての、なんでまた……」
潤とフィルディスが言い合う。
不安げに見守るみつきは浄化の力を使おうと準備を始める。
オーラが姿を形成していく。
大きな長い耳を持つダークネスに変わった那智。
数年前に見せた姿をもう一度目にする事なんて誰も思っていなかった。
―ラビット・ダークネス……那智の闇の姿……。
夜はフィルディスの中で呟く。
浄化が間に合えばいいのだが、と考える潤の耳に付いた通信機から声が聞こえる。
「はい、こちら潤」
通信機を通して聞こえる婆の声。
状況を砕きながら説明するが、監視しているのか命令を下す。
『ダークネスとなった者は、殺しなさい』




