悲しき運命9
少年を睨む白月の前に、みつきも現れる。
ダークネスを全滅させた夜が登場し、その場の全員を半円の見えない結界で包む。
那智は羽をしまうと捕えた事を謝った。
「下手に抵抗しないように、処置を取らせてもらったよ」
「まぁ、俺達も何もしないって事で」
夜は白月の近くに大鎌を投げる。
純粋な話し合いをしようと言う意思表示なのだろうが、納得のいかない顔で那智を見た。
「君ももちろん、武器を捨てるよねぇ?」
那智は溜息を吐くと、手を伸ばして八咫烏を遠くにやる。
目を丸くした白月は文句を言う。
「誰が、烏を出せって言ったのさ」
「それが僕の武器」
「え?本当?」
「あぁ、本当だ」
「あ、うん、ごめんね」
夜に確認を取り、納得した所で話を進める。
みつきが前に出て過去にあった悪魔の事例を伝えた。
正真正銘の兄である可能性に白月は黙る。
「あの時、確かに俺は死んだ……でも、こうして生きているのは白月が願ったからじゃないのか?」
兄の言葉に動揺して項垂れる。
傷の事もあり、信じたい気持ちもあるのだろう。
心の奥底にある消えない疑心に答えが出せない。
「本当に兄さんだって証明出来るの?」
白月の言葉に黒陽は頷く。
「白月は、泣き虫で甘えん坊で外の世界の話が好きで……いつか俺と世界を回りたいって思っている、それから自分を生かしてくれた家族が宝物だと俺に話していたって事じゃ駄目か?」
「……の歌」
「え?」
「世界の歌を歌ったら……認めてあげる」
思い出が蘇ったのか、残酷な色の目ではなく純粋な目をして問う。
優しい表情で頷くと穏やかな声音で聞いた事の無い歌を歌う黒陽。
その歌は見えない世界を想像させる心が安らぐ歌だった。
歌い終わると同時に白月の目に涙が零れる。
「やっと、会えた……黒兄ちゃんに……」
すっきりとした笑顔を見せると鎖が外れ、黒陽の胸に飛び込む。
ボロボロと涙を流して泣き叫ぶ姿に三人は安心した。
「にぃちゃ……こくよ、う兄ちゃん!」
闇が消えていくのを見た夜。
もう、二人には手を貸す必要はないと思い潤のいる方へ視線を送る。
恋人と戦う事の辛さに耐えながら刀を振るっているだろう。
せめて見守りたいと二人に状況を伝えて向かおうとした。
みつきも力になりたいと、那智に任せて向かう。
残った那智は、八咫烏を読んで座り込む。
「兄弟っていいね」
「那智、ムリは良くなイ」
そうだね、と言うと同時に白月の悲鳴が聞こえた。
顔を上げると苦しそうに頭を抑える姿が目に映る。
黒陽が名前を何度も読んでいた。
闇が急激に集まっていると気付くと八咫に夜を呼ぶよう伝えて空に放つ。
駆け寄ろうとしたが、衝撃波を受けて転がる。
「白月っ!」
「嫌だ、嫌だ!僕はもう兄ちゃんと生きるって決めたんだ!闇なんていらない!」
「大丈夫だ、俺がいる!負けるな!」
黒陽が抱きしめると衝撃が収まった。
叫ぶのを止めて力を抜く白月。
闇に勝ったのかと手を放して顔を覗き込んだ。
真っ赤な眼が不気味な笑みを作っている。
那智は離れる様にと叫ぶ。
「お前、じゃまだなぁ……この者は王に相応しい……闇から解放しようとする愚か者は死ね」
「逃げて!」
白月の声でない声が言う。
逃げようとした黒陽は目を見開くと、ゆっくりと下を見た。
腹部に刺さる氷の刃が引き抜かれて足から崩れ落ちる。
倒れた身体から広がる液体に那智は呆然としていた。
「……兄ちゃん?」
氷の刃を落として呟く。
ゆっくりと座り、身体を揺する。
消えかかっている黒陽を前にして両手を見つめた。
「僕が、兄ちゃんを……殺した?」
震える声で那智を見て、笑う。
壊れた機械みたくなんども同じことを呟いている。
「はく、つき……落ち着い」
「はは、あはは、あはははははははっ!ほら、やっぱり僕は失うしかないんだよ!兄ちゃんが帰ってくるなんて……馬鹿だなぁ……なんで連れて来たの?こうなるなら会わなければよかった!」
「白……」
「お前達が兄ちゃんを会わせたから、死んじゃった」
ユラッと立ち上がると冷たい笑みを浮かべる。
悪魔化して那智を見下した。




