悲しき運命6
「パパとママは帰ってくるもん!」
「……ごめんな、俺達じゃ取り戻せない」
子供は大声で泣く。
闇が薄くなったと同時にみつきに知らせようと決めた瞬間。
悔しそうに唸る子供は、白月を睨んで叫ぶ。
「あいつが、アイツが憎い!」
利用された事に怒り、夜の横を走り抜けた。
気付いた白月はうっとおしそうにして指で逆さ十字を描く。
そこから飛び出した無数の刃がクラゲの身体を貫いた。
「あーあ、完璧な玩具だったのに……ハイブリッドごときが余計な事しちゃったね」
弱い子供に真実を教えるとどうなるか。
そこを盲点にしていた夜は消えていくクラゲを目に膝を付く。
また、助けられなかった。
手を伸ばしきれなかったと後悔する。
「偽善者が、闇から救おうなんて馬鹿なんだよ」
「白月、もう止めてくれ!」
黒陽が叫ぶ。
ギリッと歯を鳴らし、下を見る。
「うるさいな、偽物のくせに僕を騙そうなんて……」
再び描く逆さ十字。
怒りに満ちた表情で放つ球体が黒陽を目掛けて落ちる。
亀裂が入ると同時に誰かに押されて地面を転がる黒陽。
一瞬、確認できたのは力尽きて座り込む那智の姿。
破裂音と爆風に飛ばされ、白衣が脱げる。
それを見た白月は目を見開いた。
「え……何で」
黒陽の腕に刻まれた深い傷。
ゆっくりと腕を見た白月にも同じような傷があった。
昔、二人が受けた傷を持つ姿に動揺する。
「那智!おい、那智!」
夜は聞こえて来た声にハッとして立ち上がった。
下を見ると地の海に倒れる那智がいて、考える暇もなく飛び降りる。
攻撃が直撃したのか虫の息に近い呼吸をしていた。
みつきもはしごを伝って降り、直ぐに治癒を始める。
「本当に兄さんなの?でも、そんな……そんなはずっ!」
頭を押さえて蹲る白月。
潤は刀を握り締め、振り上げる。
その時だった、急に現れた巨大な人形が刀を防いで白月を回収した。
「待て!」
呼び止めるも人形は反応を見せずに去って行く。
辺りにダークネスがいないのを確認し、那智の怪我を治す為にもと撤退を決めた。
医務室に戻ると夜は黒陽の胸倉を掴んで怒鳴る。
「どうして来たんだ!なんの力のないお前が!」
別室で治療を受けている那智の容態が危険だと知り、怒りをぶつけた。
胸倉から手を払う黒陽は、夜を睨む。
「五月蝿い、ダークネスを助けられなかったお前に言われる筋合いは無い」
「てめぇ!」
「二人とも止めろ、頭を冷やせ」
潤の言葉に夜は手を放す。
苛立った空気が流れる。
「ドクター、アンタは勝手に戦場に出た……言いたいことは分かるな?それと白月という少年と知り合いでしかも勝手な行動をしたせいで重傷者が出たのを婆様に報告させてもらった」
黒陽は、バツが悪そうに顔を背けた。
婆達からどんな処罰を受ける事になるのか。
夜も不安げに潤を見る。
「しばらくは、婆様の監視を条件とした生活をしてもらう」
監視下に置かれた生活を言い渡され、頷く。
白月のスパイとして疑われている以上、婆達の決定から助ける事は出来ない。
こちらの身も危険とされるからだ。
「ナイト、ちょっといい?那智君の事なんだけど」
夜は立ち上がり別室へ行く。
二人きりになり、これからどうしたいのかと潤は黒陽に問う。
「分からない、白月が俺を信じない限りもう……」
「そうか」




