悲しき運命
一方、潤は本邸から離れ街にいた。
子供が遊ぶ公園で誰かを待っている。
蝉の鳴く声を耳にしながらベンチに座っていると白いワンピースを着た少女が走って来た。
紫色の髪を二つに縛った少女は潤の前で立ち止まり、隣に座る。
「びっくりしました、いきなり会えないかなんて言うんですもん」
「悪いな、気分転換しようと思ったら紫苑の顔が浮かんでな」
紫苑と呼ばれた少女は嬉しそうに両頬を抑えて顔を背けた。
「さて、暑いしどっか行くか」
ベンチから立ちあがる潤。
そうですね、と紫苑も立ち上がって歩く。
子供の声を耳に公園を出ると街中に移動した。
出会ったきっかけは、公園のベンチに忘れてあった本。
読んでいた作品の続巻という事もあってちょっとだけと見ていた潤は、栞として挟んであった紙に気付く。
可愛いメモに書いてあったのは、誰かに渡す予定か貰ったであろうアドレスだった。
本人でなくても連絡先は分かるだろうと電話をすると、本の持ち主である紫苑が出て届けに行ったついでにお礼をされてから会う回数が多くなる。
お互いに趣味などが合う事もあって、関係が深まった。
コロコロと変わる表情や控えめな所などに惚れた事は恥ずかしくて本人には言えない。
「そうだ、潤さん今度の日曜日は暇ですか?」
「どうだろうな」
「霧の森とブロンズ人形が映画になるんです、一緒に観たいなって」
二人のきっかけとなった作品の映画。
正直観たいと悩む。
悩みに悩んで、答えを出す。
「分かった、観に行くか」
両手を上げて子供の様にはしゃぐ。
あまり会えないせいもあってか本当に嬉しそうだった。
鼻歌を歌って歩く姿に小さく笑みを浮かべる。
誰かの為に戦う、最初は親や姉しか浮かばなかった。
紫苑と過ごすうちに心から守りたいと思うようになり、いつか自分の役目を放す時が来るまで陰で守ろうと決めている。
仲間の悲しむ姿を見て、大切な人を失うのが怖い。
まだ感じた事の無い感情を覚えてしまうのが怖かった。
「潤さん?」
聞いてますか?と話しかけれて現実に引き戻される。
謝ってから聞き直すと紫苑は当日着ていく服を見に行きたいとデパートを指差した。
ついでに暇潰しに読む本やCDを探したいと了承する。
家族連れが多い中、色んな店を見て回る二人。
画材屋の前を通ると見知った顔を見つけて焦った。
何処かに行ったかと思っていたが、まさかここにいるとはと身を隠す。
顔色の悪い那智は適当なベンチに座って休む。
視線は別の方を見ているから気付かれていない。
少し心配だったが、からかわれる方が嫌だと思い悪いと思いつつ離れる。
「……デートかな?」
小さな声で八咫に話しかける那智。
気付かないふりをしたが、隠れている潤に対して笑いそうになる。
―那智、そんなことよりも早く帰りなさいっての。
中から聞こえる八咫の声に渋々立ち上がった。
暇だから絵でも描くかと思って来たが八咫が五月蝿くて満足に買い物が出来ない事に不満になりつつ、帰宅する。
やっと帰ったと思った潤はこそこそするのを止めて普通に歩く。
「あ」
「げっ」
歩き出した途端、クレープを片手に立っている夜と目が合った。
みつきも一緒に驚いている。
これは逃げられないと潤は諦めた。




