過去の闇8
「お前が俺と契約して、何の得がある?」
肇は、ダークネスと戦う力が消えて来た事でとある山の奥に来ていた。
契約すれば継いだ力でなくても戦う力が手に入ると聞いて登って来たが、いたのは退屈そうにしている天狗に似た少年のみ。
他には誰もいないと知り、要件を伝えたが嫌そうに対応される。
困ったと思いつつ、少年が納得するような得を考えた。
「俺と契約したら、今よりも強くなる事が出来る」
「くだらん」
「……美味しい食い物が」
「興味ない」
「じゃあ、君はなにが欲しいのかな?」
却下が続き、肇は問う。
少年の目が肇を見て怪しく光った。
「俺に命を差し出せるか?」
「え、いやそれは」
「命の一つも差し出せない屑は帰れ屑」
屑と呼ばれてイラッとしたが堪える。
家族の為だと我慢をして交渉を続けた。
命以外に興味は無いらしく、どれも拒否される。
「俺には家族がいる、家族を守る力が手に入るなら命を差し出そう」
「家族、か……なるほど」
少年は頷く。
この山も飽きたと立ち上がり、肇の前に降り立つ。
「では、お前が死ぬときに命を貰うとしようその代わり願いを一つだけ叶えてやる……何が欲しい?地位か?名誉か?金か?」
差し出された手に肇は首を振って懐からある物を出して見せる。
小さな子供の写真が二枚。
空色の髪の子供と太陽と同じ色をした髪の双子の子供が一枚ずつに写っている。
双子は赤子だったが空色の子供は小さな身体で歩いている写真。
違和感を覚えた少年だったが、何も言わずに写真を受け取った。
「その、空の様に綺麗な髪をした息子は生まれながらに身体が弱いんだ……」
少年は肇の言葉に理解する。
願いがなんなのか理解し、了承した。
「わかった、お前の命をこの子供にあげたいと思う日が来たら俺は移動しよう」
欲しいのは力だけではない。
命を与えられる力を持つ妖を探し続けていた肇。
やっと見つけたんだと言わんばかりの顔で少年を見ている。
少年は仮面を付けて手を伸ばした。
肇の胸に触れると烏に変わって消える。
見えない力が湧いて来る感覚に拳を握った。
それから数年が経ち、佳代がダークネスとなって那智の命を奪う。
八咫は悲しそうに今まで楽しかった事を伝えると肇から離れた。
戦いに参加する事を望む那智に力を貸す。
妖怪である自分の力を使えば戦う事は出来るが、多少の負担がかかる事を伝えた。
覚悟は出来ていたのか、構わないと言って力を貸してくれるよう頼む。
「いいか?完全に力を使うのは窮地に立たされた時だけだ、でないとお前の身体が壊れる」
「分かった」
約束をする那智と八咫。
八咫の使う力を手にした事で戦いに参加することを認められたが、不安は除けない。
いつか、限界が来る。
その時までは、那智の好きにさせようと思った。




