過去の闇6
妖怪の一種である八咫烏は、人の命と引き換えに力を授けると言われていた。
異母によって命が消えかかっていた那智に父は、八咫烏の持つ自身の命を譲る。
八咫烏を失った契約者は骨となって生命を終える。
「父さん!」
夜は床に散らばる骨にむかって叫ぶ。
傷口がふさがった那智を潤が抱きかかえて異母から離れようと夜の手を引いた。
力を持つ大人に助けを求める為に宿舎に向かう。
目の前に広がる光景に二人は息を呑む。
何故、こんなにもダークネスが湧いているのか。
「佳代さんがダークネスになった事で結界が割れたんだ」
潤の言葉に夜は驚く。
助けを求められる状況では無い。
とにかく那智を安全な所にと二人は来た道を戻った。
このままでは、みんな死んでしまう。
力を上手く使える訳では無い二人に出来る事などない。
「……潤さん、降ろしてもう大丈夫」
目を覚ました那智が言う。
身体の弱い那智を走らせる訳にはいかないと降ろさずにいると目の前に異母と他のダークネスが立ちふさがる。
あぁ、死ぬんだなと思った夜は逃げるのを止めた。
―家族なんて、結局いなくなるんだな……。
心臓を掴まれる様な兄の悲しみと共に眼帯に手が伸びる。
これ以上はもう、失いたくない。
生きなければみつきに会えないと眼帯を外した。
「俺は、俺達はもう死なせたくないんだっ!」
父、母、兄。
那智の倒れる姿が目に焼き付いて消えない。
唖然とする潤と那智に謝る。
フッと意識が消え、暗闇に落ちた。
自分の物ではない怒りを感じる。
これは、一体?
『那智をどうするつもりだ!』
なにが起きているのか。
まさか、兄が戦っている?
光が広がり、気が付くと那智を背中に乗せて走っていた。
兄が勝手に戦ったのか?
いや、異母を殺した記憶はある。
でも、もう訳が分からない。
「お兄ちゃん、お母さんは?潤兄ちゃんは?」
「分かんねー、でも二人の元に戻る」
「その姿、悪魔?」
黒い獣の姿に那智は言う。
そうだ、と言いたかったがどうしてか声が出なかった。
嫌われてしまうだろう。
それは、嫌だ。
「カッコいいね」
予想外の言葉に驚く。
鼻の奥がツンとして滴が零れた。
ダークネスと戦っている潤を見つけて夜は勢いよく蹴散らす。
「お前ら……那智が連れて行かれたから吃驚したぜ?」
「もう大丈夫、でもこれからどうするの?」
やっと静かになった場所で三人は考えた。
すると夜の耳に悲鳴が聞こえる。
聞き覚えのある声に夜は二人に待っているよう伝えて走った。
四足歩行で走る夜。
火の向こうにいるみつきを見つけて一旦、姿を戻す。
影が服を形成し、夜は手を出すなと叫んで悪魔化する。
助けたのに、みつきは大人達に連れられて姿を消す。
巫女はみつきだった。
約束は果たせない。
怖がられた。
もう、会えない。
そんな気持ちが渦巻いて悲しさを堪え切れずに泣き出す夜。
追いかけて来た二人に慰められながらわんわん泣く夜は、今までに我慢してきた分までの涙を流した。
「その後は、駆け付けた上の奴等がダークネスを倒した……結局佳代さんは兄貴がやったのか、俺がやったのか分かんないけど多分俺だと思う」
「……」
「父さんは、那智に命を譲って死んでしまったし……俺達は此処に引き取られてダークネスを倒している」
「うん」
「なんか、俺の人生って笑えるよな」
「笑えないよ、こんな悲しいのに笑えないよ」
みつきは自分の知らない所で誰かが苦しみ、涙を流し、死んでいった事を知る。
巫女として生きて来た自分に何が出来るだろうか。
そう考えていると夜が言う。
「もしも、兄貴の身体が見つかったら力を貸してほしい」
「うん」
「それと、ごめんな……ずっと悪魔だって黙ってて」




