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闇色~DARKNESSCOLLAR~  作者: 春樹ン★
第一章 悪魔狩り
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血に染まる月と巫女11

いつも、両親が婆達との用事を済ませるまで一面に広がる花畑で待っていた。

たくさんの木々に紛れて咲いている金木犀。

その匂いが大好きで気に入っている場所。

花冠を作ったり鳥と会話をして時間をつぶしていた。


「小鳥さん、私ね大きくなったら巫女になってみんなを助けたいの」


―みつきなら出来るわ、やさしい子ですもの。


小鳥は嬉しそうに言う。

なぜか昔から鳥と話が出来た。

両親は隠すように言うが、こんなに楽しいのにもったいないと不満を持っている。

ここでしか思う存分に話せない事ももどかしい。

一人じゃつまらない、誰かと遊びたいと思いが大きくなる。


―あら?


「ん?」


小鳥が茂みの方を向いて首を傾げた。

何があるのだろうと近づいて掻き分ける。

目と目が合い、二人は固まった。


「うわぁ!」


「きゃあ!」


同時に叫んでしりもちをつく。

泣きはらした目でみつきを見る姿に言葉を失う。

黒い眼帯に金色の髪、青い目はまるで本で読んだ登場人物を思わせた。


「……天使さん?」


「天使じゃない、俺は……悪魔だ」


悪魔と言われみつきは目を丸くする。

ぜんぜんそんな風には見えないと思い、男の子の手を握った。

顔を真っ赤にしてふり払われ、もう一度掴む。


「君の手あったかい、悪魔なんて思えないね」


にっこりと笑うと男の子は泣きそうになる。


「なんで、お前は怖がらないの?」


何を言っているのかと黙っていると握りしめた手に水滴が落ちた。

ボロボロと涙を流している男の子。

唖然としていると抱き着かれて驚く。

小さく聞こえる嗚咽にみつきは背中を撫でる。


「大丈夫、怖くないよ」


これが二人の出会いだった。

それから過ごす時間が多くなり、お気に入りの場所がもっと好きになっていた。

泣いていた男の子は笑ったり、怒ったりして表情のよく変わる面白い子。

たまに赤くなったりしていつのまにか好きになっていた。

お互いの夢を語った時に約束をした事。


「お前が巫女になったら、俺が守ってやる!強くなったら迎えに行くから……そうしたら結婚してくれ!」


みつきは嬉しかった。

大きくうなづいて笑うと男の子も笑う。

しかし、ある事件のせいでみつきは男の子の本当の姿を見てしまった。

ダークネスが敷地内に侵入し、人々を喰らっていく。

両親に逃げるように言われ走るもダークネスに追いかけられて逃げ場を失う。

あの場所に逃げようとするが、きっとすぐに見つかってしまうと思い諦める。

助けようとしてくれた人達が倒れ、黒い手が伸びてきた。


「その子に触るな!」


あの子の声がして前を向く。

火の手が迫り、真っ赤な光を背に男の子は立っていた。

ダークネスが男の子のほうへ近づく。

逃げるよう叫ぶと、満面の笑みで言った。


「俺は、神谷ナイト!悪魔の子だっ!」


眼帯が炎の中に落ちる。

姿が変わり、真っ黒な動物になっていた。

真っ赤な目でダークネスを睨むと素早く動いて攻撃をする。


―俺は、悪魔だ


その意味が分かり、みつきは涙を流した。

悪魔と巫女の婚約は認められない。

歴史を反する物。

でも、神谷家の名を持つのは何故なのか。

生き残っていた大人達に腕を引かれて、その場から離れさせられる。

最後に見た男の子の目は悲しげに揺れていた。


「……ありがとう、大好き……」


聞こえないだろうと思いながら言葉を発すると戦っていた男の子は振り返り頷く。

涙が止まらなかった。

自分の運命を恨んだ。

どうして、巫女として生まれてしまったのだろう。

みつきは胸が痛くて堪らなかった。



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