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闇色~DARKNESSCOLLAR~  作者: 春樹ン★
第一章 悪魔狩り
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血に染まる月と巫女10

「えぇ、夜は巫女を守る為に悪魔化しました」


潤は婆達の前で正座をして言う。

昨晩の騒ぎがもう伝わっていたのかと心の中で舌打ちをする。

あれから夜は魔力を放出しすぎて深い眠りにつき、みつきは部屋から出てこない。

フォローすら出来なかった事が悔しく、二人が心配で仕方が無かった。


「……あの災厄の時よりも化け物じみていたか?」


婆達はしゃがれた声で笑う。

災厄の時と呼ばれる日に事態を終息させたのは、まだ幼い夜。

それなのに、敬われない理由はダークネスを呼び寄せた者に原因があった。

今でも覚えている……この屋敷を覆う大量の黒い生物。

逃げる事しか出来なく無力な自分に苛立ちと絶望を感じていた。


「夜は、あいつは化け物ではありません」


つい、口に出してしまった言葉。

言い返す事など許されないと分かっているのに言葉にしてしまった。

冷汗が噴き出すが歯を食いしばって立ち上がる。


「この長い戦いを終わらせられるのは、神谷夜です!」


逃げる様に頭を下げて襖を開けると、びっくりした顔の那智とぶつかりそうになった。

婆達が声を掛ける前にと腕を引っ張って連れ出す。

なにか言いたそうに小さく声を漏らすが、無視をした。

しばらく進んだ先で那智の手を離す。


「あそこには近づくな、婆達はお前をまだ諦めてない」


「……でも、みつきさんが」


慌てて部屋に戻った潤は勢いよく扉を開けた。

椅子に座って気まずそうにしているみつき。

潤が安心したような顔で声を掛ける。


「もう、大丈夫なのか?」


みつきはゆっくりと頷く。

泣きそうな顔で俯く姿に二人は顔を見合わせた。

悪魔の姿が忘れられないのかと那智は夜を怖がる様子に苛立つ。

どうして、夜が悪者にならなければいけないのか。


「私、助けられるの……初めてじゃないのに、酷い事しちゃった……」


那智と潤は固まる。

何を、言っているのかと黙って聞くことにした。


「災厄の時、私は夜に……ナイトに助けられてるの」


「……っ、なんで、兄さんの本名を知っているの?」


ナイトとはっきりと口にされ那智は耳を疑う。

そう「ナイト」は夜の本当の名前だった。

婆達に人間と共に生活するのならばと無理矢理、改名されたが悪魔名はナイトで間違いない。

潤が何かを考え、呟く。


「まさか、原田って「金木犀」か?」


えっ!とみつきは顔を赤くした。

正解、らしい。


「兄さんが、よく話していた金木犀ってみつきさんだったの?」


二人の質問に目を閉じて頷く。

今でも覚えている金木犀の匂いとカラフルな花弁の散る場所。

そこに現れた泣きはらした目の男の子。

花冠を頭に乗せて笑うと男の子も笑った。

青い目に金色の髪を持つ姿は、とても綺麗だったのを覚えている。

小さな小指を絡めて約束した。


「うん、初めて会ったのは私が六歳の時だった」


全てを話そうと二人の目を見つめる、

聞いて欲しかったのだ、何故ここまで頑張って来たのか。

夜とみつきを襲った悲しい話を。

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