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部屋の外




少女が出て行ったあと、俺はしばらく医務室のベッドの上で悩んでいた。


まず、ここは何処なのか。


船の中らしい。しかも戦艦。でも揚陸戦艦ってなんだ?普通の戦艦じゃないのか?

それにさっきの少女が出て行ったあと誰もやって来ないし。戦艦って大人数で動かすもんだよな。

他の乗組員はどうしたんだろうか。

てか俺と同い年かそれ以下くらいの子が戦艦なんて乗ってるか?常識で考えろ常識で。

そろそろ立ち上がれそうなのでこの部屋を出て探索してみようと思う。



次に、何が原因で何が起きたのか。


まさかほんとに異世界なわけがないだろう。自宅は首都近辺だったから何かテロかなんかで毒ガス吸って幻覚を見たんだろう。ボコボコにされたのもテロリストの仕業と考えれば自然だ。自室から移動させられた理由とかは考えても仕方ない。人質だろうか。うち一般家庭なのに。まさか未知の病原菌に感染したから国が保護したとか?まさか、ね。ほんとにわけ分からないし。また今度時間があったら考えよう。




それと将軍クラスの魔力量。


当然のことながら魔力なんて今まで見たことも聞いたこともないわけで。まさか異世界確定かね?いや、ただ単にあの子が電波なだけで適当なこと言ってるだけかも。可愛いのにもったいない。



「うっし、探検してみるか」


考えれば考えるほどわからない事が増えていったので考えこむのをやめにして歩き回ってみることにした。悩んだら動け、動いてる間に考えろ、俺。誰かに見つかったらその時はその時だろ。あの子はわざわざ食事まで作ってくれたんだ。きっと害意はないはず。

ベッドの脇に便所スリッパみたいなスリッパがあったからそれを使わせてもらう。


「おっとと」


立ち上がると少しフラついた。まぁ、大丈夫だろう。気にしない。


机の上の土鍋を思い出す。

そういえば何が入っているんだろう。まだ少し暖かい蓋を持ち上げてみると中にはロールキャベツのようなものが入っていた。透き通ったスープからは少しだけ湯気が登っている。これは熱々の方が美味しそうだ。歩き回って彼女を見つけたら温めてもらおう。


「よし、行くか」


引き戸を開けた先には薄暗い銀色の廊下が左右に伸びていた。片方には同じような引き戸がずらっと並んでいる。どちらの壁にも窓はなく、すごい圧迫感だ。照明みたいなものが壁に埋め込まれてるから暗くはないんだけども。床は金属製らしくぺちぺちとスリッパの足音が響く。


しばらく歩いた先に螺旋階段があった。廊下はまだ続いている。階段は下にも繋がっているようだ。どちらに進むか迷ったが階段の方を選んだ。まずは上に行ってみよう。もしかしたら外に出れるかもしれない。窓がないと閉塞感で気が滅入りそうになってしまう。



「割と、ハァ、長い、ハァ、階段だったなちくしょう!」


長い長い螺旋階段を登ることだいたい5分くらい。もやしっ子には辛い運動だった。息を切らしながら階段を登っているとようやく階段以外のものを見つけた。今、それを目の前にして息を整えている。まだ階段は上に続いてるんだけど体力の限界を感じたからもういいよね。

幾つ迎えたかわからない踊り場。そこには無機質な壁に相応しい無機質な扉がついていた。ご丁寧にこの扉にも窓はない。なんか防火扉とかそんな感じのごつい扉だ。取り敢えず開けてみよう。ドアノブを回して鍵がかかっていないことを確認する。


「空が見たい。できれば青い空がいい」


道中にも窓がなかったのと、途中で全く人に会わなかったことで気が滅入ってしまった。人に会わないのは好都合だけどさ、不気味じゃん?

青空を見たらきっと落ち着くだろう。開けた先に青空が広がっていることを望みつつ扉を開く。


「お、おぉ」


目の前に広がった予想外の光景に思わずたじろいでしまう。

まず、青空。雲一つない真っ青な空はどこまでも青く素晴らしい開放感だ。やっぱり青空はいい。心が洗われるようだ。

次に大砲。連装砲?だったか何か分からないけど大砲が並んでいた。大きさは一つが高さ2m、幅5mほど。それらは同じくらいの間隔で同じ方向を向いて整然と並んでいた。

っていうか、こんなのがついてるなんてマジで戦艦なのかよ。ちょっと不安になるわ。

でも、すげぇかっこいい。

こういうのは男だと一度は憧れるよな。


「ちょうかっこいい うおぉ、なんだ!?でけぇ」


何気なく後ろを振り返ると見上げる高さのドーム型の建物があった。びっくりした。さっきまでここの下の方にいたっぽい。

走り回ったりはしないけど並んだ大砲に目を輝かせる。

太いし、長いし、大きいしロマンが溢れるね。

それにしてもこのスペースはかなり広い。一番端の大砲は拳くらいの大きさだ。床は廊下とかと同じように金属製なのだろうけど、こっちの方が硬そうな気がする。

見たところ端っこのほうは柵とかないみたいだ。まぁこれだけ広いと余程のことがない限り落ちないだろうから大丈夫そうだけど。


そんな感じでキョロキョロしながら歩いていたら後ろから足音が響いてきた。


「どこ行ったかと思ったらこんなとこにいたのか」


振り返るとさっきの少女が相変わらず眠そうな表情で歩いてきていた。


「すげぇな、これ」


「だろ? グレンスケイル自慢の三連装高角砲だ こいつは右舷側だけでなんと120門ある こいつらだけでも十分殴り合える自慢の一品さ」


「右舷?」


「そう、右舷 艦の右側」


「なるほど そういやここって戦艦なんだよな?」


戦艦ってものがここまで大きいとは思わなかったけど。


「そうだな」


「じゃあ俺がここにいるのってヤバイ?」


普通は無許可で乗ったらヤバイもんなのだろうと思い質問してみる。


「そうとうヤバイ 他の艦だったら見つけてすぐ殺されてる」



マジかよ。命の危機だったなんて。

顔を青くしていると少女はケラケラと笑った。


「安心しろよ この艦はちょっと訳ありなんだ」


誰もいないのはそれが理由なのかね。それが理由でも見るからに大きすぎるだろうこの船にこの子一人だけ?


「はぁ」


「お前は招かれたんだよ、この艦にな」


ますますわけが分からない。


「私はお前みたいなひょろっこい奴は招かねえしな この艦、グレンスケイルが招いたんだろうよ」


何気無く馬鹿にされた。

ムカつくくらいにいい笑顔をしている少女は本当に楽しそうな様子だった。


「なぁ、ここって何処なんだ?」


「あー、一応機密事項なんだけど...まぁいっかその代わり詳しくは言わねえからな? 今グレンスケイルが飛行してるのはレイネス帝国から東に3時間位いったとこだ。」


ちょっと困ったような顔をしてから口を開いた彼女の言葉を繰り返す。


「はぁ...は?飛行?」


何言ってんのこの子。帝国とかも気になるけど船は水の上を進むものだろ?


「当たり前だろ 船が飛ばなくてどうすんだよ」


立ちくらみしたかのように視界がぐらりと歪んだ。

これで確定したな、ここって異世界だわ。まさかまさかとは思ってたけど。そういえばこの青空は昔乗った飛行機の窓から見た空とそっくりだ。つまり雲の上にいるわけですか。


「あー、了解したわ」


ふらつく足に力を込めて倒れないようにする。すると、あれか。マジで異世界召喚、いや拉致?されたのか。


「おい、やっぱり体調よくないのか? 顔が真っ青になったぞ」


そんなに顔色が悪くなったのだろうか。少女は心配そうにこっちを見ている。優しいなぁ、この子。そういやこの手の物語ってたいてい最初に出会った女の子がヒロインになるんだよな。なんか納得する。


「ちょっと貧血気味で」


「そうか、やっぱり細いのが原因か 安心しろよ、私がたんと食わせてやるから」


なんか違う気がするけどいい子だ。


ギリギリ間に合った...


一話が短い気がするのでもうちょい文量増やせれるようにしたいです

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