出会い
はじめましてよろしく!
痛い。体の隅から隅まで満遍なく痛い。床がコンクリとか岩とかそんな感じのものなんだろう、体に伝わってくる硬い感触はその痛みをことさらに強調してくれる。生まれてこの方喧嘩なんて片手で数えられる程しか経験したことのない俺にとって、この刺激は正直言って辛かった。
泣けるもんなら泣きたいものなのだが、疲れすぎて涙も出てこない。
殴られすぎて疲れるってどういうことよ
口に出そうとしたけど開かなかった。
「あー、酷いことやられたな」
頭上で声がした。
残念なことにそちらを向くことはできません。
こんな状態の俺に声をかけるなんて物好きもいたもんだ。行儀は悪いけどこのままでいさせてください。
「生きてる...よな? 死んだりしてたら困るんだけど」
生きてます。痛くて動けないんだよ察しろ!
動かない体を全力でモゾモゾさせる。芋虫にでもなったみたいで最悪の気分だ。
「おぉ 生きてる、生きてる なんかひょろっとしてるくせに意外とタフなんだな だけど口はきけねえっぽいな ちょっととまってろ」
頭に触られた。傷だらけってのもあってかそっとだったのは嬉しい。
『あ、あー 聞こえるか?』
触られた途端に頭の中に直接声のような感じのものが響いてきた。
響いてきた、と言うよりそういう感じの言葉が浮かんできたって感じだ。説明しづらい。
『今、お前の思考とこっちの思考を重ねてるんだ どうせ喋れねーんだろ? これだと思うだけで伝わるから』
なにそれなんだか恥ずかしい。こっちの思ってることがだだ漏れになるとか新手の拷問だろ。
『まぁこっちの考えてることも伝わっちゃうんだけどな そこらへんは仕方ないだろ』
そうなのか、と思った矢先に相手の考えてることが伝わってきた。
てかなんでそんなに喜んでんだよ人が痛めつけられてんの見て喜ぶとか倒錯してるだろ。
『あ? いや、本当に素直に嬉しいからさ やっと見つけたんだ』
何を、と問おうとしたけどいきなりの浮遊感に思わず呻いてしまった。
『あぁ、ごめんごめん ここだと落ち着いて話せないしな 場所を変えよう』
体全体が均等に持ち上がっているのか体勢が崩れることはなかった。
硬い床から解放されてちょっとハッピーだ。痛いのも少しマシになった。
場所を変えるって何だ。何処に移動するんだよ。また殴られたりすんの?超怖い。
『殴らないから安心してくれ ちょっと気持ち悪くなるぞー』
え、やめて。身動き取れない状態で吐いたりしたら逝っちゃったりするから。
『安心しろよ 乱暴にはしないさ』
不安を煽るようなことを言われた(?)途端俺は目が回る感覚を感じ、意識を手放した