第1話 Aパート
楽譜の読み方を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
オリジナル『ガクテン』では、楽典以外の物語部分に、R15の暗い箇所がありました。暗い箇所を、ほぼ単純削除して、ほのぼの会話を中心にします。
※ R15以外は、そのままですので、二重投稿に近いものです。
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■■■■ 第1話。
▼ サブタイトル。 ▼── ──▼
謎解きは余談から。
▼ OP曲前。 ▼── ──▼
OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。
第1話なので、OP曲前の定型は用いない。画像と効果音。登場人物の会話や、ストーリーは無い。
舞台となる公立中学校の校舎の外観。タイトルの「ガクテン」の文字が、画面いっぱいに大きく表示され、第7話のピコピコハンマーの音と共に、文字が消える。校舎の外観だけに戻る。
空に、幾何学的な図形から、日常音などのカオスな状態になる。すっと、オープニング曲に変わる。
▼ Aパート。 ▼── ──▼
大時計が放課後を指している。画面が引き、中学校の校舎の外観。敷地内の人は、放課後の行動。
屋上で、部活動として、UFOを呼ぶ儀式を行っている風景。玄関の前で、玄関のガラス壁を大鏡の代わりに、ダンス練習をしている風景。このような小ネタを設けても良いが、視聴者が混乱する懸念がある。
外観は、ドローンカメラのように移動する。窓越しに見た廊下には、ヤッ子と、音楽の先生が、歩いている。音楽室では、ハルがギターで遊んでいる。外観なので、この3人が誰なのか、説明はしない。
音楽室。
外観から、ドローンカメラのように、音楽室の中に入る。
ハル。ギターで遊んでいる。備品のクラシックギターを机上に置き、ハワイアンギターのように弾く。左手には乾電池を持っている。
乾電池の位置を変えながら弾くので、「ビュィーン、ビャオーゥン」など、面白い音が鳴る。
背景に人物紹介。「ハル」「早坂春弥(はやさか・はるや)」「中学1年生」。
キャラクターデザインによっては、中学生か高校生か、判別が難しいものもあるので、これにより、舞台が中学校であることを明示する。この後ミッツとステラの人物紹介でも、学年を表示することで、舞台が中学校であることを印象付ける。
放課後なので、音楽室には、ハルだけがいる。
ハル。1本の弦で、乾電池の位置を移動し、音高を変えたり、隣の弦と交互に高速で鳴らしたり。
不定音高で、「しゃべるバイオリン」のように、「謡い」を再現。
石焼き芋「♪いぃーしー、やーーーきぃ、いんもーーー」などの辻売り。
鉄道の、駅のアナウンス、車内アナウンス。
相撲の呼び出し「♪ひがーぁしいいい」
時々、弦の中央位置(12フレット目)に乾電池があると、音色が変わるのを面白がって確認する。クラシックギターなので、12フレット目はボディの端、ここからネックだけが飛び出す区切り。
この、音色が変わる謎を、ヤッ子に尋ね、倍音の話になる。当アニメでは、「知りたいから尋ねる」「知らないから勘違いしている」を発端にしている。
ハルは、弦の長さの半分ということに気付かず、クラシックギターの構造が原因なのかと推測している。電池の位置を移動しながら、弦の長さが半分の位置に来ると、ボディとネックが色分けされる。
ドローンカメラのように、音楽室の中から、場面が廊下に移動する。
ヤッ子と、音楽の先生が、並んで廊下を歩いている。何かの会話をしていても良い。
背景に人物紹介。「ヤッ子」「鍵宮靖子(かぎみや・やすこ)」「理科教師(専門は化学)」。
ヤッ子のいつもの服装は、白衣で、すらりとしたパンツ姿。
背景に人物紹介。「音楽の先生」。
音楽室から、ハルのギターの音が聞こえる。
ヤッ子と、音楽の先生。廊下で立ち止まり、音楽室の後ろの戸の窓から、中を覗く。
小柄な音楽の先生が、中を見ることができるように、窓が大きい。
音楽の先生「面白いことをしていますね」これは、当アニメの記念すべき、最初のセリフ。
なお、当アニメの最後のセリフは、ヤッ子の言葉が遮られて終わる。
ヤッ子「許可もとらずに、勝手に」
音楽の先生「面白いからいいでしょう」歩き始める。
ヤッ子。音楽の先生の後を追う。「ギターが痛みます」
音楽の先生「2人以上いたら、そのうちに悪ふざけが過ぎることもあるでしょう。でも、あの子は、試行錯誤しながら音を楽しんでいます」
ヤッ子「でも」
音楽の先生。立ち止まってヤッ子を見上げる。優しく諭すように。「鍵宮先生、音楽は、学校の科目の中で、唯一「楽しい」という文字が入っています」
音楽の先生。再び、歩き始める。「楽しみを邪魔するのは、無粋ですよ」
ステラ。学校の中で、迷子になっている。
背景に人物紹介。「ステラ」「星山空見(ほしやま・くみ)」「中学1年生」。
ステラ。ヤッ子と音楽の先生に話し掛ける。「あのぉ、すみませんが、吹奏楽部はどこですか? 音楽室だと思ったのですが」
ステラ。メルヘンの小物が、鞄に付けられている。
ヤッ子「吹奏楽部は、別館だろう。体育館を通って、その向こう側だ」
音楽室の入り口に貼り紙。「吹奏楽部は部室棟です」と、案内の大きな矢印。
ステラ「あ、体育館……って、えーっと。あ、本当だ、ここに貼り紙がありますね」
ステラ。心の声。「(吹奏楽部は、ぶしつれん……か)」背景に、「部室棟」と、フリガナの「ぶしつれん」にバツ印、「ぶしつとう」が正しいと添える。
ミッツ。別な方向から来て、音楽室の前の戸の窓から覗く。ハルがいるのが見える。
背景に人物紹介。「ミッツ」「蜜霧多岐(みつきり・たき)」「中学2年生」。
人物紹介が連続しているので、ここで少し遊びを入れても良い。人物紹介で、「謎の少女」と出し、ミッツが二頭身で睨むと、「謎の美少女」に変わる。その後、正しい人物紹介になる。
ミッツ。ヤッ子と目が合い、笑顔で軽く会釈。
ミッツ。ステラを見て、心の声。「(かわいい子だな。1年生かな?)」
ミッツ。音楽室の中に入る。「ハル、何やってんのぉ?」
ミッツの胸ポケットには、ボールペンがある。この場面でボールペンが使われるため。ボールペンは、尻をノックすると、ペン先が出たり引っ込んだりするタイプ。
ミッツ。音楽室の中に入るので、廊下からは退場。
音楽の先生。ステラに向かって。「僕が案内しましょう」
ステラ「ありがとうございます」
音楽の先生にとっては、これまでとは逆方向に歩き始める。
ステラ。音楽の先生の行き先を変えたことで、申し訳ない気持ち。
音楽の先生「転入生ですか?」
ステラ「はい、今日からお世話になる、星山空見(ほしやま・くみ)です」
音楽の先生。ステラと並んで歩き去りながら。「音楽が、お好きなんですね」
ステラ「はい、楽器が初めてなので、何を担当するのか、わかりませんが」
音楽の先生「好きなことがあるのは、幸せですね」
ステラ。申し訳なさそうな表情だったが、明るい笑顔になって。「はい!」
ヤッ子。ステラと、音楽の先生を見送る。
ヤッ子。音楽室の中を覗く。
音楽室。
ミッツ。片足ケンケンのように、体を傾けながら、ハルに近付く。
ミッツ「ねーえ、なーにをしているの?」
ハル「ああ、ミッツか。ちょっと、音楽に目覚めてな」
ハル。様々な演奏を楽しんでいる。
ミッツ「ちゃんと弾かないのに、鳴らして遊んでるだけじゃ、音楽じゃないでしょ」
ハル「音楽は、音で楽しめばいいんだ。ほーら、こんな弾き方でも、楽しければいいんだ」ギターを乱暴に扱う。
ヤッ子。ドアを開けて入って来る。「こらっ! 乱暴にしない」
ハルの、驚いている顔、申し訳なさそうな顔に被せて、ヤッ子のセリフ。
ヤッ子「ところで早坂君、勝手にギターを使っているようだが、音楽の先生に許可はとったのか?」
ハル「いいえ」
ヤッ子「勝手に借りて、もしも大きな傷が付いたり、壊したら」
ハル「でもこれ、音楽の先生の私物じゃない」
ヤッ子「個人の所有ではなくても、管理している。教室で、君が使っている机も、個人所有じゃないだろう」
ハル「そうだけど」
ヤッ子「もし、教室の君の机の上に、ゴキブリの死骸が」
ハル「ゴキブリの死骸が」想像する。
ヤッ子「並べられて」
ハル。ズラーっと並んでいるのを想像する。
ヤッ子「並べられて「アホ」と書かれていたら?」
ハル。想像する。「いやだぁー!」
ヤッ子「しかも、死骸だと思っていたら、うじゃうじゃと動き始めたら?」
ここの表現を柔らかくするために、セリフの「ゴキブリ」を電子音[ピー]にし、ゴキブリの姿を、アルファベットの「G」にする方法も良い。「G」にする場合、特徴的な触角で、ゴキブリだとわかるようにする。
ヤッ子「楽器には、適した扱い方がある」
ハル「ごめんなさい」
ミッツ。『幻想即興曲』(ショパン)を弾こうとする。
ハル。ミッツの最初の1音を聞いたところで大声。「ショパン! 幻想!」
ミッツ「弾こうとしているんだから、邪魔しないの! いつまで経っても、ガキなんだから」
ハル「たった1歳だろう」
ハルとミッツの2人が画面に入る程度の遠景で、2人に指し棒の字幕。画面左側のミッツに「ミッツ・中学2年生」、画面右側のハルに「ハル・中学1年生」と指し、「従姉弟」と、フリガナの「いとこ」を添える。
これにより、登場人物の印象を深める。ハルとミッツの関係性の紹介。ミッツがハルを「ガキ」とし、ミッツが年上と明示。アニメでは、中学校と高校の判別が、わかりにくいこともあるので、中学校であることの明示にもなる。
ヤッ子「ところで、何を言い合っていたんだ?」
ハル「せっかく楽しんでいたのに、ミッツが「そんなの音楽じゃない」って言うんだ」
ヤッ子「それは定義の問題だな。いわゆる西洋音楽かどうかと言えば、その鳴らし方は西洋音楽じゃない」
ミッツ「ほーら、音楽とは言わないでしょ」
ヤッ子「西洋音楽ではないというだけだ。世界中には、西洋音楽以外にも、様々な音楽はある」
ミッツ「でも、変な民族音楽みたい」
ヤッ子「「変な」というのは、気を付けたいな」
ハル「欧米のファッションを、奇異に感じる国もあるって聞いた」
ヤッ子「日本国内でも、山や坂の町や、海に面して舟に馴染みのある町など、地域によってリズム感が違うらしい。これは、地域の音楽観にも関係する」
ヤッ子「ついでに言えば、このリズム感のために、靴下の、踵(かかと)か、爪先(つまさき)か、どっちが先に穴が開くかも違うそうだ」
ヤッ子「糸井重里は「あらゆる音楽は民族音楽である」と言ったぞ。いわゆる西洋音楽も、私達が慣れ親しんでいる民族音楽とも言える。自分が慣れ親しんでいる文化だけが、世界の標準と思うのは、おこがましいじゃないか」
ヤッ子「西洋音楽の中で、早坂君のような演奏を取り入れることがあっても、主役ではない。まあ、これまでの西洋音楽に無い手法が、どの程度なら西洋音楽ではなくなるかは、定義の問題だから、誰かが勝手に決めるんだろうな」
ヤッ子「早坂君は、ギターを机に置いた「ハワイアンギター」という西洋音楽の手法だが、さっき私は、西洋音楽ではないと言った。しかし、西洋音楽の何の定義から外れているかは、よくわからない」
ミッツ「じゃあ、なぜ「西洋音楽ではない」って、言ったんですか?」
ヤッ子「本当は、定義や境界線は、ひとつではなく、曖昧だというのが、目的だ。音楽の定義の話で、言い合いをしたのが、ギターを乱暴に扱った原因だからな」
ヤッ子「早坂君と蜜霧君の、どちらの定義が正しいかと、言い合いをしていた。「どちらかだけ」ではなく「どちらも」というのが、私の目的だったのだ」
ヤッ子「そこで、方便として「音楽の定義」と「西洋音楽の定義」の、ふたつの境界線があると話したんだ。とはいえ、明確な境界線ではなく、ぼんやりしたものだがな」
ミッツ「方便ですか」背景に「方便」と、そのフリガナと、意味の「難しい話をする前の、仮の教え」を添える。
ハル「晴れと曇りの境界みたいですね」
ミッツ「なあに?」
ハル「空に雲が無ければ快晴、空の全部に雲があれば曇り、じゃあ、空の何パーセントが雲で隠れていれば、晴れから曇りになるのか」
ミッツ「半分じゃないの? だって、完全な晴れ……」
ハル。ミッツの言葉にかぶせるように。「快晴な」
ミッツ「そう、快晴、100パーセントの晴れと、100パーセントの曇りの中間、50パーセントが、区切り」
ここで、全天球カメラの画像を使うのも良い。画像は円形で、円の中心が天頂。円周が地平線で、円周の地面から、円の中心の天頂に向かい、山や鉄塔、建築物が建っている。
全天球カメラの画像を3つ用意し、両端は快晴と完全な曇り。中央の画像で、雲が増えたり減ったりし、半分になって止まり、文字の「ミッツの推測」を表示する。
ミッツ「だって、6割も7割も雲で隠れていたら、「曇り空で、晴れ間がのぞく」って言うでしょ。だから、境目は半分に決まってる」
ハル「それがな、気象庁の基準では、8割までが晴れで、9割から曇りなんだ」
ミッツ「8割までが晴れなんて、おかしい。だってさ、8割まで雲があるのに、「今日は晴れているね」なんて言ったら、「曇りだろう」って返される」
ヤッ子「良い例を出してくれたな。早坂君や、蜜霧君以外にも、それぞれの理由をもって、それぞれの定義を言うだろう」
ヤッ子「ところで、君達は学生かい?」
ハル「もちろん」
ミッツ「中学生です」
ヤッ子「ところが、「学生」と呼ぶのは大学生だ。中学生と高校生は「生徒」で、小学生は「児童」だ」
ハル「そうだったんですか?」
ヤッ子「これは、文部科学省の基準だな。中学校では「生徒会」だが、小学校では「児童会」だっただろう?」
ミッツ「確かに、そうですね」
ヤッ子「これとは別に、厚生労働省の基準では、18歳未満を児童としている」
ハル「定義なのに、ひとつじゃない」
ヤッ子「ついでに言えば、幼稚園は文部科学省で、保育所は厚生労働省だ」
ミッツ「え? 名前が違うだけで、どっちも同じだと思っていました」
ハル「なぜ、2種類あるのか、不思議だなとは思っていました」
ヤッ子「その違いは、幼稚園は小学校の前に、早いうちに学校に通うのに似ている。一方、保育所は、保育に欠ける子供のために、家庭の代わりをするのだ」
ハル「保育に、「欠ける」って?」
ヤッ子「何らかの事情から、子供の世話が難しいということだ」
ハル「ああ、びっくりした。まともに子育てされていないのかと思った」
ヤッ子「「まともに子育て」とは、誤解だな」
ミッツ。特に興味の無い顔をしている。
ヤッ子「それから、「保育園」は、正しくは「保育所」と呼ぶ」
ハル「あれ? うちの近くには、「保育園」がありますよ」
ヤッ子「固有名詞として、個別の保育所で「保育園」と命名することは、ある」
ヤッ子。ハルの、興味を持っている表情を見て、心の声。「(早坂君は、こういった余談が好きなんだな)」
ハル「ヤッ子先生。どうしてそんなに詳しいんですか?」
ヤッ子「私は、せっかくピアノを弾けるという利点から、保育士か、幼稚園教諭という進路も、視野に入れていた」
ミッツ「やっぱり、進路は広く考えていた方がいいですよね」
ハル「でも、中学校の先生になったんですね」
ヤッ子「そう。今から思えば、どういう訳だか、こうなったな」または「幼児教育に、自信が無かった」
ヤッ子「ところで、幼稚園の先生も、中学校の先生も、職業の名前としては、「教員」の中の「教諭」、「教え諭す」なんだ」
ハル「あ、そういうことだったんだ」
ミッツ。ハルを一瞥する。
ハル「テレビで昔の小学校の校内を見たら、教室のドアの上の札に、「マルマル教諭」って書いてあったんだ」背景に、校内風景。「○年○組」の札には、2行目に「○○教諭」と書かれている。
ヤッ子「そんな名前の職業に、私がなるとは、身が引き締まる思いだ」
ハル「「保育所」と「保育園」とか、「教諭」と「先生」とか、定義は定義としてあるけど、それとは別な名前を付けることは、あるんですね」
ヤッ子「定義は、誰かが勝手に作って、でも、それを知らなくても、困らないのであれば、定義を強要することもないだろうし、「お前の言ってることは、デタラメだ」と非難する必要も無い」
ヤッ子「単なる言葉の認識、用語の定義の違いだからな、相手の言葉の主旨を汲み取ろう」
ミッツ「それでも定義なのかな?」
ヤッ子「定義だと思って話す人はいる。自分のいるコミュニティで、当たり前に通じているから、てっきり世界標準、少なくとも日本標準だと勘違いすることはある」
ここで、アニメとして長くならなければ、以下の話を挿入しても良い。
映画『華麗なるヒコーキ野郎』。「自在レンチを貸してくれないか」「モンキースパナのことか?」「ああ、こっちでは、そう呼ぶのか」
工事で使う「一輪車」「ネコ」「ネコ車」。直角に曲がった物差し「曲尺(かねじゃく)」「さしがね」。排水口の「ドレン(ドレイン)」「ピーコック」。
台風は、沖縄に「上陸」しない。「上陸」という呼称は、北海道、本州、四国、九州のみに用いる。沖縄には「通過」の呼称をする。
ものによっては、よく似た違うもので、その違いを表すために単語が別々にあったりする。「プラスドライバー」と「マイナスドライバー」など。
ハル「方言もありますし。あ、「自分のいるコミュニティ」って「自分のいる方言」と同じか」
ミッツ「違うでしょ」
ハル「そりゃ、違うけど、主旨が同じってこと」
ヤッ子「そうだぞ。「蚊に刺される」「蚊に食われる」「蚊に咬まれる」。あれこれあるが、これまで自分が使っていた言い方が方言だと知ったのはいいが、慣れ親しんでいない言い方には、違和感が残ったりする」
ヤッ子の背景に、出身地が様々な、複数の男の思い出。もう、過去の男で、惚れっぽいヤッ子が片想いしただけなので、顔も服装もうろ覚え。それぞれ、「蚊に刺される」「蚊に食われる」「蚊に咬まれる」など、様々な言い方。
ミッツ「言い方の違いを指して、「蚊には歯が無いから、咬むことはできない。言うことがデタラメ」と非難することじゃないんですね」
ヤッ子「例えば、アメリカの寿司は、日本では見たことも無い形のものも、あるらしい。それを「寿司」と呼ぶか、誰かが定義するんだろうな」
ハル「日本の寿司と区別するために「アメリカ寿司」って呼ばれたりして」
ミッツ「そんなに名前が増えるから、覚えるのも大変なんだよ」
ヤッ子「学校の授業時間も限られているからな」
ミッツ「ちょっと名前が違うだけで、「それ違う」なんて言われるし」
ハル「「アメリカ寿司」と似てるけど、「広島風お好み焼き」なんて言うと、不機嫌になるらしいですね」
ヤッ子「広島かあー」少し静かになる。「広島県の男は……いいなあ」
ミッツ。心の声。「(ヤッ子先生って、どんな恋愛遍歴をして来たんだろう)」
ハル「寿司とは逆に、日本の菓子パンに違和感がある人もいるらしいですね」
ミッツ「そうだね。音楽に限らず、食べ物や風習も、地元ならではってありますね」
ハル「そもそも、「あんなもの、食べ物じゃない」ってことは、文化によって大きく異なりますよね」
ヤッ子「それを、昔の人は「口に合わない」とか、ご馳走する側は「お口に合えば良いのですが」って言ったな。互いに、相手の文化を尊重する言い回しだ」
ヤッ子「正しさを決められないことも、あるってことだ」
ハル「ミッツ。栗と、トマトと、イチゴと、リンゴ。それぞれ、果物か野菜か、どっちか知ってるか?」
ミッツ「それは知ってる。木に生るのが(なるのが。実るのが)果物で、草に実るのが野菜。クイズ番組で出題されそうだけど、知っていることを自慢する以外に、実益も無いし、実害も無い」
ハル「やっぱり。「ただ分類しただけ」としか、思っていないんだ」
ハル。ヤッ子に向かって。「ヤッ子先生は、関税のことを、知ってますよね」
ミッツ「関税? 何かの税金?」
ヤッ子「関税とは、ゆーしゅーつーにゅうに掛かる税金だ」背景に「輸出入」の、漢字とフリガナを表示する。
ミッツ。面白がる。「ゆーちゅーちゅー」
ハル「ミッツの方が、間違ってる。「輸出入、輸出入、輸出入!」だろ」
ハル「税金が違うから、どっちに分類するのかで、裁判もあったらしい。でも、そもそも、そんな分類をしなければ、「ただ、分類しただけ」なんてことにも、ならなかっただろうに」
ヤッ子「さすが、余談が好きな、早坂君だな。一般に、知識の取得は「広く、浅く」と「狭く、深く」のどちらかと言われる。広い範囲で手の平で押すのと、狭い範囲の指先で押すことの比較だ」
ヤッ子「早坂君は、指先よりも、もっと狭い範囲として、竹串を、あちこちに刺している。その、穴と穴の間は、「未確認であることを認識した推測」だから、勉強も上手くいくだろう」
ハルとミッツ。褒められているのか、どうか、ちょっとわからず、茫然とする。
ハル「ヤッ子先生。ギターで、不思議なんですが」
ヤッ子「どうした」
ハル「ギターのここの区切りの位置に、電池があると、音色(ねいろ)が違うんです。ホラ」鳴らしてみる。指盤は、ボディとネックに亘ってあるが、ボディとネックの境目で、音色が変わる。
ハル「ギターの本体から外れた範囲と、本体の範囲で、何か違いがあるんですか?」ギターの「ボディ(本体)」「ネック」の部分が色変わりし、指し棒で名称を表示する。
ヤッ子「それは、ギターの構造ではなく、弦の長さの由来する。その場所は、弦の長さの、ちょうど半分の位置だ」
ハル「半分の位置ですか。目の錯覚があるのか、よくわかりませんが、モノサシを使えば、ちょうど半分なんですね」
ヤッ子「2分の1の場所で、音色が変わるのは、倍音だな」背景に「倍音」と表示。
ミッツ「あ、知ってる、倍音!」
ハル「「バイオン!」って、アニメのタイトルか?」背景の「倍音」に、「ばいおん」を添える。
ヤッ子「早坂君の興味に寄り添うと、ピタゴラスが発見した、うーん、音の幾何学かな?」
ハル「音楽が幾何学?」
ヤッ子「そう。音の高さは、振動の速さで決まる。2つの音が同時に鳴った時、振動数の比が近ければ響きが良い、遠ければ響きが悪い」
ハル「振動数が近いと響きが良いって、調律が少しずれていると、響きがいいんですか?」
ヤッ子「振動数ではなく、振動数の比だ。「比が近い」というより、「比が簡単」と言う方が適しているか。振動数の最小公倍数が小さいと響きが良い、大きいと響きが悪い」
ヤッ子「弦がこう振動する」左手を上下する。
ハル「ふむふむ」
ヤッ子「もう1本の弦が、こう振動する」右手も上下する。
ヤッ子「すると、同時に振動が始まり、次に同時に戻って来るのが、いつか」
ヤッ子の手の動きに従い、2本の波線が並ぶように出現して比較される。両手の位置とそれぞれの手の動く向きは、オシロスコープの波の比較のようにするなど、見やすい向きにする。
波線は、太い方が望ましい。細いと、学術的な硬さに感じる。太い方が、説明を受ける側としては、優しく感じる。
ヤッ子の手が上下する動きに、揺れる弦の中央位置が重なる。手と一緒に揺れる弦の中央位置に、点が出現する。弦と手が消えて上下する点だけになる。点の動きを記録するように左に流れ、オシロスコープの波形になる。
波の比較で、「2:3」の2つの波(色違いにして重ねる)のセットと、「15:16」の2つの波(色違いにして重ねる)のセットで、2セットを並べる。
2つの波が同時に戻る頻度が多いセットに「響きが良い」、頻度が少ないセットに「響きが悪い」と示す。
オシロスコープの、2つの波を並べ、同時に戻って来た箇所に印を付け、文字で「同時に戻って来た」を表示。このセットを2つ表示し、「同時に戻る頻度が多い」「同時に戻る頻度が少ない」を表示する。
ヤッ子「振動数が2対3なら良い響き、15対16なら響きが悪い。その振動数の比を、簡単に出したのが、早坂君、君のアイディアなのだよ」
ハル「僕のアイディアですか」
ヤッ子「ハワイアンギターでは、普通は、その乾電池の左側は、振動しないようにと、指で押さえるものだ」
演奏者の臍の位置から、ギターの左手を映す角度。左手を移動させ、持っているスライドバーの右側の弦の長さが変わりながら「この範囲が振動する」と指す。
スライドバーの左側は、「この範囲は振動しないように、指で触っている」と指す。
ヤッ子「早坂君は、電池の左側を押さえていなかったから、弦の全体、電池の右側も左側も、両方が振動したんだ」
ヤッ子。黒板の左下に図を書く。1倍音の弦を表す、縦に一本の線。弦の振動を表現するための、マルカッコのような実線と点線。
ヤッ子「普通に弾いたら、弦はこのように振動するが、君が乾電池で、弦の中央を触ると、このように振動する。普通のギターの演奏なら、乾電池ではなく、指で触る演奏を「ハーモニクス」と呼ぶ」
ヤッ子「ギターの演奏は、普通は「弦を押さえる」という方法だが、ここでは弦を押さえず、軽く触るだけだ」
ヤッ子。黒板に、1倍音の右隣に、2倍音の弦の振動が8の字になる表現を、実線と点線で。
ヤッ子「3分の1の場所ならこう、4分の1ならこう」黒板の、更に右隣に図を追加。指で触ることが分かるように、手のイラストも添える。
ハル。黒板の図のように、ギターを机上に置いたまま、指で弦を触って鳴らしてみる。カメラアングルは、黒板の図と同じ、弦が上下方向の縦線。画面上部に糸巻き(ペグ)。
画面左側が黒板、画面右側がハルの演奏。
ギターの弦の振動が、大袈裟に表現され、8の字に見える。
ヤッ子「こうして、弦の触る場所を、2分の1、3分の1と変えることで、弦の振動するスピードが変わる。スピードが、2倍、3倍と早くなる。これが倍音で、これを発見したのが、ピタゴラスだ」
ヤッ子。指をパチンと鳴らす。先生ちゃんの画面に変わる。
▽ 場面変更 ● ── ●
先生ちゃん。ピタゴラス。
説明用の別世界。背景は無地。先生ちゃんは、今後も2頭身、または、顔だけ。
初めての先生ちゃんなので、場面変更は、視聴者に優しい表現にする。
先生「私はピタゴラスだ。音楽のアニメだが、倍音の説明は、この私がしよう。楽譜が読めるのかって? 心配するな」
画面上部に、左から右に向かって「ド、レ、ミ、……」をカタカナで3オクターブ並べる。ドが4つ。
先生「この弦は、ドが鳴るように、私が調律した」バイオリンの弓のような形の弦を、ビヨンビヨン鳴らす。「ホラ、これがドだ」
先生「まず、普通に弦を弾いたら、最も低い「ド」が鳴る」
振動する形を、少し大袈裟に浮かび上がるように表示。振動の音はすぐに止まるが、振動の形は、マルカッコのような実線と点線で残ったままにする。
先生「これが1倍音だが、これを基準とするから「基音」と呼ぼう」背景に「基音」と、フリガナの「きおん」。
先生「「ド」に合わせたから、これを「ド」の場所に置こう」弦を、黒板の左端の「ド」の下に、磁石のようにくっ付ける。文字の「基音」も黒板に表示する。
先生「同じ弦を用意した。鳴らすと、さっきと同じ「ド」に調律されているだろう」ビヨンビヨン鳴らす。
先生「弦の2分の1の場所を、指でそっと触って弾くと、このように8の字に弦が振動する」実線と点線の8の字の形を、大袈裟に表示。振動の音はすぐに止まるが、振動の形は残ったまま。
先生「振動は2倍速いから2倍音だな。2倍音は、ここだ」弦を、黒板の左から2番目の「ド」の下にくっ付ける。文字の「2倍音」も黒板に表示する。
先生「また、同じ弦を用意した。4分の1の場所を触ると、2倍の2倍で4倍音だ」弦を、黒板の左から3番目の「ド」の下にくっ付ける。文字の「4倍音」も黒板に表示する。
先生「また、同じ弦を用意した。8分の1の場所を触ると、2倍の2倍の2倍で8倍音だ」弦を、黒板の右端の「ド」の下にくっ付ける。文字の「8倍音」も黒板に表示する。
先生「どうだ、「2倍の2倍の」とすると、どれも「ド」だろう。同じ名前の音は、全部こんな関係なんだ」
先生「2倍と4倍の中間の、3倍なら「ソ」が鳴る。3倍の2倍は、同じ名前の「ソ」だ」新しい弦を出して、それぞれ、3倍音、6倍音のソの下にくっ付ける。
先生「5倍なら「ミ」、7倍なら「シ♭」だ」同様にする。
先生「これは、「ド」に調律した弦の場合だ。「レ」や「ミ」に調律したら、別な音になるが、原理は同じだ」
先生「これが、音階の基礎のひとつにも役立ったんだ」
先生「どうだ、楽譜を使わずに、ちゃんと説明できたぞ」
先生「自宅の工作で、倍音を出して遊ぶこともできるぞ」
丈夫な糸、できればタコ糸。厚紙。しっかり座れる椅子。
厚紙は、クッキーなど、お菓子の箱を開いて、円柱状に丸める。これは、糸の両端のために、2つ用意する。
糸を、自分の身長と同じくらいの長さに切る。糸の両端を、円柱状に丸めた厚紙に結ぶ。糸の両端を厚紙に結んだので、長さは椅子に座った高さと同じくらいになる。
糸は、決して、自分の指などに巻かないこと。もしも、糸を指に巻くと、急にくしゃみが出たら、大怪我をしたり、指が切断されるなど、笑えない事故になる。
椅子にしっかり座る。糸の端を結んだ厚紙を、両足で踏み、糸は両足の間を通す。足で糸を触らない。両足で厚紙を踏むから、しっかりと椅子に座るのが大切。
糸の反対側の端を結んだ厚紙を、高く掲げて、糸をピンと張る。ここでも、手で糸を触らないのが大切。
糸の長さを変えるのは、厚紙に糸を巻く回数を変えて行う。決して、糸を指に巻かないこと。
糸を弦のように弾く(はじく)と、ビヨンビヨン鳴る。糸の張り具合で、音の高さが変わる。
厚紙を持った手を、頬に当てると、聞こえやすい。この時、厚紙が顔に刺さらない角度にしよう。急にくしゃみが出たら、頬だけでなく、目や耳を傷付けることもある。
糸を弾く手の親指で、糸の長さの中央を、そっと触る。別な指で糸を弾く。この時、親指も一緒に動くけど、できれば親指の動きを小さくする。
親指が、上手に糸の長さの半分の位置なら、倍音(ハーモニクス)が鳴る。
親指が、上から3分の1か、下から3分の1でも、倍音(ハーモニクス)が鳴る。
音が聞こえにくいなら、厚紙を持った手の指を、耳の穴に入れる。音がとても大きく聞こえることがあるから、糸を弾く力は弱くしよう。
▽ 場面変更 ● ── ●
先生ちゃんの説明が終わり、さっきの続き。
黒板には、ピタゴラスが書いた、階名「ド、レ、ミ、……」が残っている。
ハル「同じ名前が、2倍の2倍のっていう関係だったら、えっと、例えばこれの2倍は……」ピアノの低い範囲の、何かの黒鍵を弾く。「……これで、その2倍はこれで」1オクターブずつ、上がって行く。
ヤッ子「その通りだ」
ハル「だったら、これの2倍はこれ、その2倍はこれ……」
ミッツ「ピアノって、白鍵と黒鍵の並び方が、同じパターンの繰り返しだもんね」
ハル「褒めない言い方だな」
ヤッ子「すぐに理解できるとは、大したものだ。リコーダーだって、1オクターブ上は、似た指遣いだろう」背景にリコーダーの絵。
ハル「「オクターブ」って?」
ミッツ「同じ名前、さっきの「2倍の、2倍の」の関係だよ。1つ隣の、同じ名前なら、「1オクターブ高い」といった、言い方をするよ」
ハル「なぜ、「オクターブ」なんだ?」
ミッツ「名前の由来は、第2話で出て来るから」
ヤッ子「サックスも1オクターブ上は似た指遣いだが、クラリネットは違うんだ。更に、バンドネオンは、規則性があるのか無いのか、わからん。あれを演奏できる人は、私にとっては超能力者だ」
ハル「いえいえ、ピアノを弾く先生も、僕にとっては超能力者ですよ」
ミッツ「ピアノが弾けるんなら、あたしもでしょ」
ハル。気が乗らない調子で。「あ、ああ……」
ヤッ子「このように、倍音を並べたものを「倍音列」と呼ぶ。せっかく、こんなに、いくつもの音があるのだから、ちょっと演奏してみようか」
ヤッ子。ギターのハーモニクスで、進軍ラッパのようなサンプルを演奏する。画面には、黒板の、ピタゴラスが書いた階名と「2倍音」「3倍音」が表示され、ヤッ子の演奏に合わせて、対応する文字が色変わりする。
ハル「それって、倍音列だけで演奏したんですか?」
ヤッ子「そうだ。この倍音列に選ばれていない音を使うためには、基音、1倍音を変える」
ヤッ子。第6弦の開放弦を鳴らす。第6弦の12フレット目を触り、2倍音を鳴らす。
ヤッ子。第6弦の1フレット目を鳴らす。第6弦の13フレット目を触り、2倍音を鳴らす。
ヤッ子。第6弦の2フレット目を鳴らす。第6弦の14フレット目を触り、2倍音を鳴らす。
この、フレットを左手で押さえたまま、右手で2倍音の箇所を触りながら弾くことは、クラシックギターの奏法にある。
ヤッ子「音の高さを変える、弦の長さは、比率だ。弦の長さの、「半分の半分の」だからな」
ヤッ子「このように、基音を変えると……」開放弦、1フレット目、2フレット目の順で、普通に弾く。「……2倍音を鳴らすために触る場所、弦の長さの半分の位置……」ハーモニクスを弾く。「……も変わる」
ヤッ子「こうすれば、黒板の例とは違った倍音列を使える、つまり、全部の音を使える」
ハル「あれ? あっそうか、たまたま、半分だってことか」
ヤッ子「何が、偶然なんだ?」
ハル「僕は、てっきり、ギターの本体から外れる境界線だから、音色が違うと思っていました」
クラシックギターの場合、12フレット目が、ボディの縁であり、そこからネックが生えている形。
ヤッ子「ああ、そうか。多くのクラシックギターは、このデザインだな。しかし、エレキギターでは、ボディがもっと小さいデザインのものもある。クラシックギターのデザインで、勘違いを誘われたんだな」
背景に、いくつかのギターを、左右に並べる。弦の長さが同じであることを、補助線で示す。弦の上端、弦の下端、弦の長さの中央の、3本の補助線。補足として、「ボディの大きさや形は様々」を表示する。
ミッツ「単純に、弦の長さでしょ、当たり前だよ」
ハル。ミッツに苦情を言う。「うるさいなあ。知らないから推測したんだ。推測だから、外れることは、あるだろう」
ヤッ子「弦の長さが比率だから、半分の、半分のという箇所に、印を付けると、幅は一定じゃない。「比率」と言うと堅苦しいが、ゴム紐が「ビュゥイイーンウウゥ」と、伸び縮みするようなもんだ」
机に置かれたギターは、左側が糸巻き、右側がボディ。
ヤッ子が、「弦の半分の半分の」の位置を、指で触ると、それぞれの箇所に、赤い逆三角形の印が配置される。赤い逆三角形は5つ配置される。
ハル「ゴム紐のようですね」
ハル。ギターの向こう側からギターに近付き、弦の1本だけ、魔法のように持ち上げる。赤い逆三角形も弦に付いている。
ハル。左手(向かって右側)の位置は固定、右腕(向かって左側)が異常に伸縮して、弦が伸縮する。
弦の伸縮説明の画面。上段の右端に弦。分身の術で画面中段に複製し、やや、ゆっくり、ビヨーンと伸びる。分身の術で、画面下段に複製し、やや、ゆっくり、ビヨーンと伸びる。
この伸び方は、ハルの紙人形を机上に置いた、実写が、面白くて印象的になりそう。アニメで、比率を表現するのは、難しいかも。
上段の弦の、「全体の長さの位置」「半分の長さの位置」「半分の半分の長さの位置」から補助線を下に書き、中段と下段の弦と同じことを表す。赤い逆三角形があるので、視覚的に比較しやすい。
ヤッ子「「半分の半分の」という関係だけでなく、全部が比率で伸縮するのを、確認しよう。早坂君、これを使ってみてくれ。ギターの弦の、半分の長さだ」
1本のゴム紐を渡す。
ハル「ヤッ子先生、いつもゴム紐を持ち歩いているんですか?」
ハル。ヤッ子の手引きで、ゴム紐を弦に沿う位置に持つ。ゴムの右端を、弦に合わせる。ゴムの左端は、12フレット目の位置。ゴム紐には、ギターの12フレット目から24フレット目までの位置に、赤い逆三角形が付いている。
ハル「赤い逆三角形が、ギターとぴったり、合っていますね」
ヤッ子「ゴム紐を、ギターの刻みの1つだけ、伸ばしてくれ」
ハル。ゴム紐をゆっくり伸ばし、11フレット目に合わせる。
ハル「あ、赤い逆三角形が、ぴったりだ。ということは、次に伸ばすと、また合うのかな」
ハル。ゴム紐をゆっくり伸ばし、10フレット目に合わせる。
説明用画面。画面上部の右半分に、赤い逆三角形のあるゴム紐。その下には、ギターの絵の略図。ギターの弦は、画面の横幅全体。ゴム紐は、右端から、ギターの12フレット目までの長さ。
ギターの絵が、少し下に移動する。開いた空間に、ゴム紐が分身の術で複製。ゴム紐が、ゆっくり伸びて、11フレット目までの長さになる。
ギターの絵が、少し下に移動する。開いた空間に、ゴム紐が分身の術で複製。ゴム紐が、ゆっくり伸びて、10フレット目までの長さになる。
ここから動きが早くなり、ギターの絵は簡素化され、ゴム紐が、ギターの0フレット目まで、分身の術で並ぶ。
画面に、ハルの手首から先の手が出現し、ハルのセリフに合わせて動く。
ハル「ということは、この刻みの幅は、こっちの幅の、半分なんですね」
説明画面で、セリフの「この刻みの幅」の時に、ハルの指が13フレット目を、上から下になぞり、薄いピンク色になる。
説明画面で、セリフの「こっちの幅」の時に、ハルの指が1フレット目を指し、薄いピンク色になる。
ヤッ子「そういうことだ。「比率」とはゴム紐、または、虫眼鏡で大きく見たり、小さく見ることと同じだ」
ハル「なるほど」
ヤッ子「それから、さっきの話だが、振動数の比が近い音を、同時に鳴らしたら、響きが良い。協和している音だから「協和音」と呼ぶ」
ハル「でも、1本の弦で、どうやったら同時に鳴らせるんですか?」
ヤッ子「ギターには、弦が6本あるから、それが利用できるのだよ」ギターを手に取り、調弦する。机に腰掛け、左脚を上に脚を組み、クラシックギターの構え。フレットを押さえない、倍音を使わない。
ミッツ「ヤッ子先生、ギターも弾けるんですか?」
ヤッ子。調律しながらなので、返答は途切れ途切れ。「いつもはピアノだが、音楽活動をしていると、他の楽器に接する機会もある」
ヤッ子「高い音にするには、「弦が軽い」「弦が短い」「弦の張りが強い」だ。ギターには、それが全部揃っているのだよ」
ヤッ子の説明に先んじて、背景に、弦の「軽い、重い」「短い、長い」「張りが強い、弱い」の、それぞれに、音が「高い、低い」を表示。ヤッ子のセリフに合わせ、文字の色が変わる。
ヤッ子「調律できたぞ」
ここでは「調律できたぞ」よりも「調弦できたぞ」が良いかも。
ヤッ子「さっきの先生ちゃんは、多くの人に馴染みのある「ド」を基音にして、説明したな。「ド」が基音、「ド」が1倍音。どっちの言い方も同じだ」
ヤッ子「ギターでは、一番太い弦を「ミ」で調律する。これを「基音」、「1倍音」として、説明する」
ハル「基音が「ミ」なら、2倍音も、4倍音も、「ミ」なんですね。じゃあ、3倍音は、えーっと……」
ヤッ子「ここでは、倍音と響き具合の関係が主題だから、具体的な音名は、触れないでおこう。聞いている方は、話のどこが大切なのか、どこが補足なのか、わからないから、全部を覚えようとして、大変だろう」
ハル「確かに」
ヤッ子「一番太い弦が1倍音、細い2本は3倍音と4倍音だ」
ヤッ子「一番太い弦の3倍音はこれだ」ハーモニクスで第6弦の3倍音を鳴らす。「これと同じ高さは、これだ」第2弦を鳴らす。「音色は違うが、同じ高さだ」第6弦のハーモニクスの3倍音と、第2弦を、交互に何度か鳴らす。
ヤッ子「一番太い弦の4倍音はこれだ」ハーモニクスで第6弦の4倍音を鳴らす。「これと同じ高さは、これだ」第1弦を鳴らす。「音色は違うが、同じ高さだ」第6弦のハーモニクスの4倍音と、第1弦を、交互に何度か鳴らす。
ヤッ子。第6弦、第2弦、第1弦の開放弦を、順番に鳴らす。同時に鳴らす。
ハル「本当だ、響きがいい」
ヤッ子「2つの音を同時に鳴らした響き具合は、大雑把に3種類ある」
ハル「響き具合? いや、単に2つの音が聞こえるだけでしょ」
ヤッ子「音色が似ていると、響き具合がわかる」
ミッツ「完全音程とかですか?」
ヤッ子「そうだ」
ヤッ子。指を1本出す。「響きが良すぎて味気ない」
ヤッ子。指を2本出す。「響きがちょうどよく濁っている」
ヤッ子。指を3本出す。「響きが悪い」
指の出し方は、手話のように、横向きに3本指を出し、上から順に反対の手で摘まむのも良い。
ヤッ子の説明の時に、例として、2本のトロンボーンで鳴らす。完全5度。長3度。短2度。
ハル「作曲家は、響きが悪いのは、使わないようにしているんですね」
ヤッ子「そうでもない」
ハル「わざと、悪い響きを使うんですか?」
ヤッ子「響きが悪いはずなのに、綺麗に聞こえる。この話は、第6話で「和音のツナ缶効果」で話す」
ハル「汚い響きが、綺麗に聞こえるとか、あるんだったら、わざわざ、分類しなくてもいいのに」
ヤッ子「響き具合はグラデーション、明確な境界線は無いが、仕事で市場調査をしたり、身近な例では天気予報で「夏日」や「真夏日」の日数で統計をとることもあるから、分類が有効な場合もある」
ミッツ。ヤッ子を凝視して、納得した表情。何度も頷いている。
ハル「3分の1なら、1か所だけ触ればいいんですね。両方を触らなくても」
ヤッ子「そうだな」
ハル「じゃあ、2か所触ったら、どうなるんだろう?」背景に、両手の指で、あれこれ触る例。「3分の1と、4分の1」「5分の1と、7分の1」など。
ヤッ子「どうなるか、実験するのがいいだろう。実験の前に推測はできるが、実験すると推測を外れた結果もある。上手くいかないことを解決する工夫も、有用だな」
ミッツ。思い出したように。「ヤッ子先生、もしかして、絶対音感を持ってますか? フレットを押さえないでチューニングしてたし」ミッツの視線で、ギターの指盤を見る。フレットに指し棒で「この刻みがフレット」で、フレットが一斉に赤く点滅。
ハル「ギターでも、ピアノと同じように、シャープとフレットがあるんですね」
ミッツ「それを言うなら、「フラット」でしょ?」
ハル「どういうことだ?」
ミッツ「ギターの、この刻みはフレット。ハルの言ってるのは、半音高いシャープと、半音低いフラット。言葉は似ているけど、違うものだからね」
ハル「なんだかわからん」
ヤッ子「私は、専門の音楽教育を受けなかったから、絶対音感は持っていない。けれど、これまでの経験から、響きの具合を聞いて、相対的に調弦できたのだよ」
ヤッ子。ギターを抱えたまま、ピアノに近付く。ギターとピアノの音を比べる。少しずれている。「ホラな、ずれているだろ? きっと、ピアノの方が正しい」
ヤッ子。再び座る。「蜜霧君、ピアノに合わせるから、ミの音をくれないか」ピアノを基準として、ギターの調律をする。
ハル「絶対音感って、なんだ?」
ミッツ「聞いた音の高さを言い当てたり、「ド」の音を思い浮かべられる感覚」
ヤッ子「でも、絶対音感を持っていても、歌うのが下手だったら、絶対音感を持った音痴ってことだな」
ハル「いわば、温度計だったり、ヒーターだったりかな」
ミッツ「設定温度の機能があるエアコンは、温度計で計測しながら、冷暖房をするでしょ」
ハル「歌が下手なら、自分の歌声を聞きながら調整するのが下手なのかな? まあ、人間の感覚だから、絶対じゃないだろ?」
ミッツ「それが、かなり正確だって」
ヤッ子「私は絶対音感を持っていないが、相対音感がある。まあ、感覚だから、「有るか無いか」の二択ではなく、「どんな状況で、どれだけあるか」のグラデーションだな」
ミッツ「絶対音感があると、日常の音もドレミに聞こえて、生活が辛いって本当ですか?」
ヤッ子「絶対音感には、色んな都市伝説があるんだ。確かに、そのような人もいるらしいが、そうでもない人もいる。都市伝説になっているのは、人それぞれの感覚を、絶対音感を持っていない人達が伝聞するからだとも考えられる」
ヤッ子「私の知り合いは、街中の音は耳に入るが、絶対音感として聞こうと思えば「ドレミ」に聞こえ、そうでなければ、ただの環境音だそうだ」
ハル「看板の文字みたいですね。読もうと思えば文字だけど、そうでなければ、ただの彩りです」
ミッツ「そうなのかなあ」
ヤッ子「実在する人を都市伝説と呼ぶのもおかしいが、都市伝説だから、どこまで本当なのかは人によるし、絶対音感がある人は「必ずこうだ」とも言えない。グラデーションであるから、ひとりひとり、個別だな」
ミッツ「特定の楽器の、特定の高さにだけ反応する人もいるらしいね」
ハル「へえ、そうなんだ。って、それも都市伝説」
ミッツ「テレビで本人が言ってたから、本当だと思うけど」
ヤッ子「でも、私にとっては、「テレビで見た」という人が言っていたという立場だ」
ハル「僕がヤッ子先生から聞いたら、もう都市伝説ですね」
ヤッ子「ジェンダーの話と似ているが、人に対して都市伝説があるように、個人の人数と同じだけ、絶対音感の種類がある」
ミッツ「いつでも倍音を出せるように、もう、ギターに倍音用の指を固定しちゃえば?」背景に想像図。指盤に貼り付けた突起が、弦を触る。ネックの裏から「U」の字のアームが、弦を触る。
ハル。ミッツの背景の図を見て。「取り付けて固定したら、駄目だろう。弦の長さの半分だから、弦の長さが変われば、半分の位置も変わるから」
この辺りでは、弦の長さを変える場面が多い。視聴者の混乱を減らすために、弦が左右方向の場合、右側を弾き、左側が長さを変えるという向きに統一しておく。
ハル。ヤッ子が持っているギターで説明。左手で弦を押さえて、右手で弾く。「こうして、弦の長さが変わるから、半分の位置も変わる」
ハル。左手の位置を変えて、それに合わせて、右手の「半分の位置」も変わる。左手の位置により、補足図「弦の長さ」も伸縮する。右手の移動に合わせて、指し棒「半分の位置」もずれる。
ヤッ子「ギターはピアノより、弦の数が少ないから、ギターでは毎回、弦の長さを変える。ピアノは、たくさんの長さの弦が用意されている」
ハル「ピアノなら、さっきのミッツのアイディアが使えるな」
ミッツ「アイディアって、固定するってこと?」
ハル「そう。ヨイショ……」ピアノの蓋を開けて、弦を指す。「……ここに、弦を触るものを固定して」ピアノの蓋が重くて、支えながらの説明に苦心している。
ヤッ子「ピアノの蓋は、こうすると、固定できるぞ」支え棒を出す。この時、ハルがうっかり蓋を離すことを懸念し、蓋を上げる補佐をする。
ハル「あっ、こんな所に」
ヤッ子「こうして、弦を剥き出しにすると、弦に細工ができる。ただし、蓋を開けた内部は、触ってはいかんぞ。ピアノはデリケートだからな、唾が飛ばないように、マスクをしてほしいくらいだ」
ハル「そんなにデリケートなんですか?」
ヤッ子「少し、大袈裟な言い方をしたが、それ程のものだと、覚えておいてくれ」
ミッツ「弦に細工?!」
ヤッ子「弦に、消しゴムを挟んだり、洗濯バサミを付けたり、磁石を付けたりする。弦を直接、指ではじいたり、叩いたりすることもある」
ハル「面白そうですね」
ミッツ「そんな、ピアノがかわいそうです」
ハルは面白がり、ミッツは心配そう。
ヤッ子「これは、「内部奏法(内部演奏)」とか、「プリペアド」とか言われているな」
ハル。ミッツの胸ポケットから、勝手にボールペンを抜き取る。ボールペンは、尻をノックすると、ペン先が出たり引っ込んだりするタイプ。
ミッツ。驚く。「何、勝手に取ってんの! スケベ、変態!」
ハル。ミッツの抗議を無視する。ペンの尻をノックし、ペン先を出したり引っ込めたりする。
ハル「こんな感じに、引っ込んだり、出っ張ったりが、交互になるように、倍音になったり、ならなかったりが、交互になったり、2倍音や3倍音といった、いくつもの箇所にスイッチがあったり」
ハル「他には、重みのある鉄球を置いて、ピアノを弾いたらボールが転がって、戻って来る。ああ、それなら、戻って来るように、ピアノを少し傾けていて」
背景に説明。ピアノの中にたくさん並べられた鉄球が、演奏された順番に転がり、戻って来る様子。
ハル「アップライトピアノなら、鉄球をぶら下げておいて、ハンマーの動きに反応してブラブラ揺れて、エコーのようになったり」背景に説明。
ミッツ「あたしは、ピアノをデリケートだとは思わないけど、ピアノの調律を見ていたら、あたしが愛着を持っているピアノは、大切にしたいな」
ハル「「内部奏法」って名前が付いて、市民権を得ているのだから、きちんとピアノのことを理解して、慎重に、大切に、仕掛けをしているんじゃないかな」
ヤッ子「私もそう思う。ところで、昔のピアノでは、早坂君のアイディアのようなものも、あったらしい」
ハル「本当ですか?!」
ヤッ子「そう。ペダルがもっと多くて、太鼓を叩くものもあったらしい」
ミッツ「大道芸人みたい」背景に想像図。映画『メリー・ポピンズ』(1964年、ジュリー・アンドリュース)の、大道芸人のバート(ディック・ヴァン・ダイク)が、いくつもの楽器を演奏する姿。
ヤッ子「現代では、ピアノでそのようなものは少ないが、様々な楽器を搭載している鍵盤楽器と言えば」
ハル「電子オルガンかな?」エレクトーン(ヤマハの商品名)を思い浮かべる。全体図と、いくつかのボタンのアップ。ボタンには、それぞれ楽器の名前、または、番号やアルファベットが記されている。
ヤッ子「惜しいな。答えは、パイプオルガンだ」
ミッツ「え? パイプオルガンって、要するに、リコーダーをたくさん使っているものでしょ?」
ヤッ子「実は、いくつかの打楽器や、鳥の声のような音を出す水笛など、現代でもあるんだ」
ハル「へえー。だったら、ピアノだって、色んな遊びの音があっても、面白そうですね」
ヤッ子「そうだな。ピアノに、通常のピアノ以外の音色が出るのも、面白い」
ヤッ子「ただし、それらのカラクリを施すのは、自分のピアノでするものだ」
ハル「どういうことですか?」
ヤッ子「ピアノという、デリケートな楽器を、過酷な扱いをするからな。レンタルピアノなど、借り物のピアノでは、やるべきではない」
ヤッ子「ピアノの演奏で、拳で鍵盤をガンガン叩いたり、膝で鍵盤を弾いたりといったことも、借り物のピアノでは、やるべきではない」
ハル「プロの演奏で、プロがしているのを見ますよ」
ヤッ子「プロが行っているのは、肘で弾いているように見えるが、目的は「強く叩く」ではなく、「たくさんの弦を、同時に鳴らす」だ。決して、ピアノを乱暴に扱ってはいない」
ヤッ子「プロがピアノに、カラクリを施すのも、自分のピアノに行う。もしかすると、持ち主から依頼されてカラクリを施すこともありえるが、持ち主の許可も無く、勝手にはしない」
ハル「そうですか? 「内部奏法」とか、ちゃんと名前が付くほどだから、ちゃんと認められたことですよね」
ヤッ子「だったら、早坂君が大切にしている自転車があったとして、他人が勝手にデコレーションしたら、どう思う?」背景に、ハルが「デコチャリ」に驚く姿。デコチャリに、指し棒で「デコチャリ・派手に飾り付け(デコレーション)した自転車」を添える。
または、サッカーボールを貸したら、ボールの上に乗って(ボールを両足で踏んで)ジャンプする。文房具の直線定規で、何かを弾き飛ばす遊び。
ヤッ子「過酷な扱い、乱暴な扱い、本来の想定から外れた扱いは、借り物でするのは避けるものだ」
ミッツ「ハルに靴を借りる時、「泥遊びをするから」って言ったら、断るでしょ」
ハル「当たり前だ。汚すんなら、「自分の靴で泥水で遊べ」って言いたい」
ミッツ「でも、靴は履くものだから、本来の使い方だよ。ちゃんと「泥遊び」って名前もあるし」
ヤッ子「そういうことだ。借り物は大切にするもんだ」
ハル「だったら……」机上の電池を見る。「……電池を使ってギターで遊ぶのは、いけないんですね」
ヤッ子「私は、そう思う。しかし、音楽の先生は、早坂君が楽しんでいるのを、尊重していた」回想。先刻の、廊下での、音楽の先生の言葉を思い出す。
廊下での、音楽の先生のセリフ。「面白いことをしていますね」「面白いからいいでしょう」「2人以上いたら、そのうちに悪ふざけが過ぎることもあるでしょう。でも、あの子は、試行錯誤しながら音を楽しんでいます」
廊下での、音楽の先生のセリフ。「鍵宮先生、音楽は、学校の科目の中で、唯一「楽しい」という文字が入っています」「楽しみを邪魔するのは、無粋ですよ」
ヤッ子。気分を変えるように。「ところで、さっきの紛らわしい「フレット」と「フラット」の話をしよう」
ヤッ子「ギターには、ピアノと違って、白と黒の色分けは無い。けれど、この「フレット」と呼ばれる刻みは、ピアノと同じだ。蜜霧君、私と一緒に、中央ドから順に半音ずつ上に、ソまで鳴らしてくれないか」
ハル。割り込む。「「中央ド」って、何ですか?」
ミッツ「もうっ、割り込まないでよ。「ド」って、たくさんあるでしょ」
ハル「ああ、さっきの倍音の話で、振動数が「2倍の2倍の」の関係は、同じ名前だな」
ミッツ「ピアノにも「ド」はたくさんあるから、この「ド」にだけ「中央ド」って名前を付けたの」
ハル「じゃあ、ヤッ子先生は、この「中央ド」を鳴らしてくれって、言ったんだ」背景に「「中央C」「中央ハ」も、同じ意味です」と表示する。
ミッツ「そういうこと」
ヤッ子。この2人の遣り取りを、微笑みながら見ている。
ミッツ。ヤッ子の方を見る。「じゃあ、鳴らします。半音進行ですね」
ヤッ子「早坂君は、私の手元と、蜜霧君の手元を、交互に見て確認するのがいい」
ヤッ子。ピアノの近くに移動し、ピアノとギターが、ハルの視野内にする。生徒用の椅子も移動し、その上に腰掛ける。
ヤッ子。第2弦だけで、1フレット目から順にソまで、ゆっくり鳴らす。
ヤッ子。ミッツに、一瞬だけ遅れて鳴らす。
ハル。視線を、ヤッ子の手元、ミッツの手元の順に見る。画面には、ヤッ子の手元、ミッツの手元、ハルの目の向きの、3つを1画面に入れる。
弾き終わる。
ヤッ子「もしも、ギターも白と黒に色分けしたら、ごちゃごちゃするんだろうな」
ヤッ子「ギターのフレットはこのように、どのフレットも平等だが、ピアノは「よく使う音」を白く手前に配置しただけだ」
ハル「ヤッ子先生の演奏は、ピアノではこうなるのかな?」紙を出して、ピアノの鍵盤の、手前側を隠す。鍵盤の手前の、白鍵だけの部分が隠れ、白鍵と黒鍵の縞模様のように見える。紙の色は、薄い青が良さそう。
鍵盤の、先端から奥までの、全部が見えている状態。鍵盤の先端の手前側から、紙が近寄り、先端から徐々に紙で隠す。鍵盤が少し透けて見えているが、縞模様の状態になったところで、透けない状態にし、縞模様だけにする。
ヤッ子「それが、ギターとピアノの関係だ。もうちょっと言うなら、ピアノっぽい見え方を、弦が1本だけのギターっぽい見え方にした」
ヤッ子「よく使う鍵盤と、それ以外の鍵盤は、色は白と黒だが、平等に並んでいるのがギターっぽいな」
ハル「よく使うって、何か理由がありそう」
ヤッ子「「ハ長調」という言葉を、聞いたことは無いか?」
ハル「うわっ、そういった単語、大嫌い」
ミッツ「ハ長調って、音楽の基本だよ」
ヤッ子「「金管楽器」という言葉からは、楽器の成り立ちとか、知らないと減点されるような気分になるが、「ラッパ」という言葉なら、楽しそうだろう?」
ハル「そうですね」
ヤッ子「なぜ、簡単な「ラッパ」という言い方と、面倒な「金管楽器」という言い方があるのか。「金管楽器」という言い方の意味は何か」
これ以外の例では、簡単な「バイク」の呼称と、「原動機付自転車」「大型二輪車」など。エンジンがあるから「バイク」と呼んだのに、「自転車」なのは、意味があるなど。
ハル「知りたいです」
ヤッ子「楽譜にも謎が多くて、その謎解きをするのが、楽典だ」
ハル「じゃあ、ハ長調って言葉にも、意味はあるんですか?」
ヤッ子「もちろんだ。テストではないんだから、知らなくても減点は無い。謎解きができた喜びがあるが、人生がどれだけ豊かになるかは、まあ、人それぞれってことだな」
ミッツ「よく使う鍵盤っていうのはね、この鍵盤だけでも、曲を作れるってこと」
ヤッ子「ああ、フレットとフラットの話だったな。弦の、振動する部分の長さが、短くなると高い音、長くなると低い音だ」第1弦で、あちこちのフレットを飛び回りながら鳴らすと、振動する部分が色変わりする。
ヤッ子「このフレットという刻みがあり、ギターでは、この刻みに従って、音の高さが変わる」ギターのフレットが、一斉に、赤くなって点滅する。
ハル「電池を使って、フレットとフレットの中間の高さを鳴らすという話は、今の話題とは別な話しですね」
ヤッ子「このフレットの、1つ分、低くするのが「フラットにする」で、高くするのが「シャープにする」だ」
ハル「フレットとフラットは、偶然、似ているってだけで、語源の繋がりは無いんですね」
ヤッ子「語源は知らないが、偶然似ていると思っていても、いいじゃないか。学者じゃないんだから」
ハル。不満気に。「ええーっ」
ヤッ子「興味があって、あれこれ知りたい、調べたいという気持ちは大切だ。しかし、すぐに完全解決できないこともある」
背景に、トランプをめくって、マークと数を確認する。「この場で、すぐに確認できた」
背景に、クイズの書籍のページをめくって、答えを見る。「この場で、すぐに確認できた」
ヤッ子「過剰な期待をされても、こっちは困るんだ。私自身も、このアニメも、音楽のあらゆる事柄が解決できるという期待は、荷が重いぞ。ついでに言えば、専門家でも意見が分かれることに、ここで決着するのも無理だな」
ヤッ子「そもそも、楽典の説明は、例えば音名の説明を始めたら、それに関連することも説明しないと中途半端だ、だからと、関連することに踏み込むと焦点がボケるとか。説明アニメが、万人に高評価されるのは、無理ってもんだ」
ヤッ子「学校では、「教科書の内容」は教えても、「教科書の内容に関連する、あらゆる事柄」を教える義務は無い。教科書から逸脱した話は、「余談っぽいな」「サービスだ」と思ってくれ」
ヤッ子「患者に病状を説明する医者は、医学や解剖学の全部ではなく、病状に関する部分だけ説明するだろう」
ヤッ子「私だって、生身の人間だ。アニメには、時間制約がある。世にある、音楽関連の情報の全部を網羅するなど、不可能だ。過剰な期待は困る」
ヤッ子「生身の人間である私が、これまで時間を掛けて、少しずつ集めた情報にも限界はあり、君達は私とは違った縁をもって、私の知らない情報を得ることはある。その手助けをするだけで、勘弁してくれないか」
ミッツ「ついでに補足すると、余談が好きなハルのために、楽典をメインとしながら、多くの余談を入れてますよね。もし、余談が無ければ、昭和のSFの宇宙旅行の味気ない食事みたいな「栄養満点の錠剤1つ」のような楽典になります」
ヤッ子「楽譜の読み方を、大胆な「要するに」で言うと、「高さと時間」の2次元だけだ」
ハル「2次元? 折れ線グラフのようなものですか? 僕達は3次元の世界で生きているとか」
ヤッ子「そうだ。楽譜を見ると、「高い、低い」は、見てわかる。それを「どれだけ高いか」を知ること。右に進むのはわかる。それを「どのタイミングか」を知ること。たった、それだけだ」
ハル「う……、うん。そうですね」
ヤッ子「楽譜を読むのが「難しい」と言われるのは、高さを、無味乾燥でつまらないのなら、覚えられないからと、あれこれ便利な「調(キー)」「コード」などがあるからだ。便利な道具の使い方を覚えるのが、面倒に感じる理由だ」
ヤッ子「なぜ便利なのかの前に、不便だな、面倒だな、この規則性なら、まとめたら簡単だと、そうすれば納得できる」
ハル「教室で、出席番号の偶数と奇数で分けたら簡単とか、サッカーやバスケットボールの試合で、ユニフォームがあればチーム分けがわかりやすいとか」
ヤッ子「そう! そんなんだよ! そこで、「偶数と奇数とは何か」の説明が難しく、ああ、本当の「偶数と奇数」だけなら簡単だが、音楽の「調(キー)」「コード」なら、説明も理解も難しいということだ」
ミッツ「入学式や卒業式で、椅子をどのように配置するか」背景に、横6列に配置した場合と、横10列に配置した場合を表示する。
ヤッ子。少し考えて。「うん、そうだ。その場合は、割り算の「余り」を理解する、その前に掛け算の「九九」を理解する」
ヤッ子「愚直に並べても良くて、椅子が余った。慣れたら、椅子がいくつあって、何列に並べたら、何行になって、いくつ余るか。人数との関係など、実際に並べる前に知りたくなる」
ヤッ子「そこで、便利な道具としての「九九と割り算と余り」があるのだが、「先にそれを知らないと駄目」なら、うんざりする」
ヤッ子「楽典もそうだ。「どれだけ高いか」「どのタイミングか」だけで、楽器を鳴らしてみて、誤ったら自分でわかる。遊びや練習の時期に、たったの一度でも、誤った音を出してはいけないという制約も無い」
ヤッ子「それなのに、便利な道具の「調(キー)」「コード」を先に知るべきというから、難しいという気持ちになる」
ヤッ子「カラオケで、軽い気持ちで、ちょっと歌いたいから、歌詞を読むのと似ている。ちょっと歌いたいだけだから、「韻を踏む」「2つの意味を持つ」「同音異義語」を知らなくても、いいだろう」
ヤッ子「様々な場面で「こうすれば簡単だ」がある。いきなり「便利な方法を教える」より、「何か、便利な方法が無いかなぁ」という、余談を発端とする。余談で彩る」
ヤッ子「このアニメも、「縦軸と横軸」だけに特化したなら、30分間で終わるだろう。そこに、早坂君という、余談が好きなキャラ、ふと疑問が浮かぶキャラに合わせて、「便利な道具」も共に教えるから、こんなに長くなった」
ヤッ子「この脚本は、30分間の12話として書かれているが、アニメに相応しく、適切な情報の取捨選択をしなければ、とても時間内におさまらないだろう」
ハル「余談があるのは嬉しいけれど、余談ばかりで食べ過ぎの肥満にならないか、心配だな」
▼ CM明け。 ▼── ──▼
CM明けの定型。他の登場人物は知らない、自宅などの場面。
今回は例外で、吹奏楽部の練習。
吹奏楽部の練習。
転校でステラが入部。
背景に人物紹介。「ステラ」「星山空見(ほしやま・くみ)」「中学1年生」。既に人物紹介はしたが、改めて行う。
ステラ。部室の正面(黒板の前)に立ち、自己紹介をする。「今日、転校して来た、1年生の、星山空見(ほしやま・くみ)です」
ステラ「えっと、前の学校では、星山の「星」のイタリア語で「ステラ」と呼ばれていました。ここでも、そう呼ばれたら、嬉しいです」
ステラ。周囲の反応を見る。心の声。「(「ステラ」って呼んでほしいなんて、自分から言うのは恥ずかしいな。前の学校で呼ばれていたってのは嘘だけど、信じてくれたらいいな)」
ショージ。心の声。「(昨日、学校の近くを歩いていた子だ。同じ部活に入ってくれた。神様、ありがとう)」鼻から、大量の花(花びらではなく、花そのもの)が吹き出す。
背景に人物紹介。「ショージ」「東海林翔児(しょうじ・しょうじ)」「中学2年生」。
吹奏楽の先生「こら、東海林君、花を撒き散らさないでくれ。後で、ちゃんと掃除しなさい」
ステラ「楽器は初めてですが、よろしくお願いします」お辞儀。
ステラ。ショージの花を見て、心の声。「(歓迎してくれてるんだよね、きっと)」
拍手。
ステラ。トロンボーン担当になる。席に着く。
ステラの目の前が、クラリネット担当のショージ。
ステラ。軽く見渡すと、ホルンが、ベルに手を入れている。
ステラ「あの楽器、ラッパのところに手を入れていますね」
トロンボーン先輩「ラッパって? ああ、ホルンはベルに手を入れるんだ」
ステラの前に座っているショージが、話に割り込む「ベルって言うんだよ。朝顔とも言う」ショージの鼻が、朝顔になる。
ステラ「朝顔ですか」
ショージ。自分のクラリネットを指して「クラリネットのここも朝顔。トロンボーンもここが朝顔」
ステラ「朝顔が多くて、素敵ですね」
ショージ「でも、サックスだけは、ウツボカズラ」
サックスを持った生徒を表示する。背景に、ウツボカズラの絵と、「ウツボカズラ」の文字と、「食虫植物」の文字。
サックスの生徒「これも朝顔だよ」
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