表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

第9話 Bパート

【前書き】


楽譜の読み方を、アニメ脚本っぽい形で説明します。


当作品は、オリジナル『ガクテン』からR15を削除したものです。R15以外は、そのままですので、二重投稿に近いものです。


人間ドラマなどを削除した楽典のみのものは『ガクテン♪要するに版』をご覧ください。


◆ ご感想を頂けると嬉しく思います。ログイン不要ですので、お気楽に一言をお願いします。


◆ 「評価」はログイン必要ですが、「感想」はログインせずに、どなたでも書けます。



▼ Bパート。   ▼──   ──▼


放課後。音楽室。


ミッツがピアノの椅子に座っている。ヤッ子はピアノに肘を突いている。ガールズトーク。


適宜、注意書き「※この会話は、この2人のキャラ設定です」を表示する。


ヤッ子「それで幸せに気分になるんだって」


ミッツ「なーんでぇ?」


ヤッ子「しかも、失敗よりも偶然がいいって」


ミッツ「偶然?」


ヤッ子「立ち上がる時に失敗して見えたら半日幸せ。風で、しかも、マリリン・モンローのような地下鉄の通気口じゃなく、天然の風で見えたら、一日中が幸せなんだって」


ミッツ「どっちだって同じなのにぃ」


ヤッ子「男が、そんな程度だから、見られたくないことにも気付かないんだろうな」


ミッツ「そう。パンツくらい、ただ見られるだけなら、減るもんじゃないし、平気なんだけど、男が遊び半分のスケベな気持ちだから、見られたくないですよね」


ヤッ子「男の子が、そんな気持ちでスカートめくりをするから、本気で怒るのに、男の子は「女の子の反応が面白い」って言うんだよな」


ミッツ「先に攻撃したのは男で、女の防御が面白いから、もっと攻撃する。男って、何であんなことをするんだろう?」背景に、小学生の頃に、ハルがミッツのスカートをめくった思い出を表示する。


ヤッ子「永遠の5歳児だなって思うのは、下ネタを喜々として言う時」


ミッツ「ただのエロネタ、セクハラなのに」


ヤッ子「男にとっては、いい年になっても、エロはおもちゃなんだ」


ミッツ「愛想笑いなのに、「受けている」って勘違いされて」


ヤッ子「「女が笑うと、男は幸せになる」だって」


ミッツ「だからって、面白くない冗談を言われても困りますよね。くすぐられて、無理に笑わされるより、喜ばせてほしいのに」


ミッツは、ステラがショージから何をされたのかを知りません。視聴者向けのメッセージとして、「脚本上の演出、脚本上で偶然を装い」の形式を用いて、加害者の勝手な理屈「喜んでいるように見えるから、喜んでいる」を非難しています。


ヤッ子「笑いたくないのに笑うのも疲れる。男女のどちらでも同じであるし、どの年齢にも通じるが、ある場面でウケたから、「この冗談は、いつでも面白い」と思うのは、気を付けたいな」このセリフは、第5話の繰り返し。


ミッツ「早くこの時間が終わってほしい。別な楽しい時間を過ごしたいし、片付けたいこともあるし」


ヤッ子「愛想笑いをしたら、変に喜ばれて、もっと、もっとと、要求が増えて行く」


ミッツ「いい加減にしろって」


ヤッ子「そのくせ、女は付属物だとか。あ、知ってる? 女心の未練の歌があるって」


ミッツ「うっそー。そんなの、絶対に売れないですよ。ネットでは、大炎上しそうです」


ヤッ子「昭和の歌なんだ。失恋した自分が可哀想で髪を切ったり、書いている手紙が涙で濡れたり、着てもらえないのがわかっているのにセーターを編んだり」


注意書きを表示する。「歌の解釈には、諸説あります」


ミッツ「ありえなーい。セーターを編むって、そんなに長い手間の時間、未練を維持するのって、あたしには信じられない。現実世界では、男の方こそ未練で事件が起きる方が多いのに」


ヤッ子「女に冷たくして捨てたのに、女は未練で追い掛けて来るから、男は女の頬を叩いて立ち去る。それでもこの女は俺に惚れている」


ミッツ「女が悪かったら叱ったり、教えてくれたらいいのに、叩かれるの、あたしは厭だな。カッコ良ければ憧れて近付くけど、近付いて攻撃されたら、恋愛は終わりですよ」


ヤッ子。ハードボイルドの男のような声色で。「脱げよ」


ミッツとヤッ子。面白さで、下品な大笑い。


ヤッ子「女が男の付属物で、男が主役の社会であり、同時に、男は女を、危険から庇護するという役割もあったな」


ミッツ「それは助かります」


ヤッ子「地震や火事があれば、女、子供を先に逃がし、助ける。寒ければ男は自分で衣服を脱いで、着せる。見栄っ張りなことを言ったり言わなかったり」


ミッツ「あれ? でも、さっき、女の頬を叩くとかって」


ヤッ子「それが、「釣った魚に、エサはやらない」なのか、「レディーファースト」ではない文化なのか、ファンタジーを信じているのか」


ミッツ「女が自分の意思で、結末を決めるなんて話は、昭和の頃には無かったのかな?」


ヤッ子「あっても、とっても珍しい……」思い出す。「……あった、あった」


ミッツ「ホントに!?」


ヤッ子「2人の男が、1人の女を奪い合うという構図で、男が勝負して、勝った方が女を手に入れる」


ミッツ「それって、人間の話ですか? 動物の、群れのボスが、雌を独占するんじゃなく」


ヤッ子「それが、人間ドラマ、青春ドラマで、子供向け漫画でも、少なくなかった。それが、「男らしい」というもので」


ミッツ「2人の男から好かれたなら、女は、好きな方を選べるってことですよね。女には、選択権が無いのか! って思います」


ヤッ子「1人の女を、2人の男、ギャングと大泥棒が奪い合うの。最後は、女が銃を撃つ。しかも、その銃は、男がいつもそこに銃を持っていると知っていたから」


この場面は、アニメ『ルパン三世( )TV第1シリーズ)』、第9話『殺し屋はブルースを歌う』の結末。


ヤッ子「でも、昭和の物語は、男にとっての女の理想って、こんなものかなってのばかり」


ミッツ「ねぇねぇ、昭和の男達って、そんなこと本気で思ってたのかな?」


ヤッ子「知らなーい」


ハルが入って来る。「ヤッ子先生」


ヤッ子。今までの話を誤魔化すように、顔の輪郭がコミカル。「ピアノの鍵盤が88なのは、星座が88あるからで……、おや早坂君、どうしたんだい?」


ハル「♯は、高くなるんですか? 低くなるんですか?」


ヤッ子「高くなるんだが」


ハル「じゃあ、この楽譜……」昨夜、自宅で見ていた、クラシックギターの楽譜集を開く。「……ここ、「ミ♯」って、「ファ」は黒鍵じゃないですから、なぜなんだろうって」指してヤッ子に見せる。


ヤッ子「これは、クラシックギターの楽譜だが、早坂君はクラシックギターを弾くのか」


ハル「あ、持っているのはスティール弦ギターですが、クラシックギターの曲も弾きます」


ヤッ子「ほほう。ところで、この音符の話に戻すが、「ミ♯」は「ファ」でいい」


ハル「どういうことです?」


ヤッ子「♯や♭は変位記号、ナチュラルは本位記号といって、ナチュラルは必ず白鍵だ。変位記号は、白鍵であるナチュラルからずれるのだが、ずれた行き先が、必ずしも黒鍵とは限らない」


ハル「なるほど、わかりました。でも、なぜファじゃなくて、わざわざミ♯にしているんですか?」


ヤッ子「これは、コードが「Cの仲間」だからだ。Cの仲間は……」黒板に楽譜。「……このように、ドミソの玉を書いて、それぞれに♯や♭を書くことになっている」


ハル「はい、覚えています」


ヤッ子「では、Cmの「ド、ミ♭、ソ」のうち、「ミ♭」を「レ♯」にしたらどうだろう。Cの仲間ではなくなるな」


ハル「はい、それも覚えています」


ヤッ子。ミの♭を消して。「では蜜霧君、コードのCを弾いてくれないか」


ミッツ。弾く。


ヤッ子「ありがとう。早坂君、今弾いてくれたのがCで、「ド、ミ、ソ」だ」


ヤッ子「では、これの全部に♯を付けてみよう」黒板に、新たに「ド、ミ、ソ」を書き、全部に♯を付ける。


ヤッ子。コード「C」と「C♯」の2つの音符を指しながら。「さっきのコードはC、こっちのコードはC♯だ。蜜霧君、今度はこれを頼む」


ミッツ。弾く。


ハル「あ、全体が高くなった」


ミッツ、コードのCとC♯を、交互に弾く。


ヤッ子「蜜霧君の手を見たまえ、C♯の時は、ファの鍵盤だろう。しかし、音符ではファではなくミ♯を書くことで、Cの仲間になる」


ハル「そういうことか」


ヤッ子「ただし、演奏の都合や、見やすい楽譜の都合で、「ファ」と書いても良いのに「ミ♯」と書くこともあるから、必ずしもこういう理由だとは、思わない方がいいな」


ハル「だったら、ここ」別な曲のページを開く。「この「Csus4」は、Cの仲間なのに、ファです」


ヤッ子「これは、独立したコードではなく、前のコードの音を引き継いでいるのが由来だな。「sus」は維持するの意味だ」


ハル「維持?」


ヤッ子「「タイ」のことは、覚えているか?」


ハル「はい。タイで繋がっていれば、鍵盤を弾き直さず、そのまま音を鳴らし続ける。第8話で、ショージさんが、未練の人や、浮気の人になりました。コードが変わっても、メロディがさっきのコードを維持している」


ハル。ヤッ子の言った「維持」を、自分でも言ったことに驚く。少し大きな声で。「維持、維持する」


ヤッ子「そうだ。まだ、完全に「Cの仲間」にはなっていないから、「ミ♯」ではなくても良い」


ヤッ子「未練の人に譬えたのは「掛留」といって、和音が変わったのに、直前の和音の一部の音が、タイで繋がっていて、まだ鳴り続いていることを表す。浮気の人に譬えたのは「先行音」だ」


「掛留」と「係留」の2つの表記がある。


「先行音」と「先取音」の2つの訳がある。


ハル「和音構成音とは違う……、えっと、和音外音って、クラシック音楽の音楽理論では、違反ではないんですか?」


ヤッ子「意外と思うか?」


ハル「はい。むしろ、コードネームの方が、和音構成音が、ぴったり決まっているようです」


ミッツ「それは、誤解だよ。知らないから誤解することもあるって、第5話で教わったでしょ」


ヤッ子「これ以外にも、和音を自分流に変更したり、普通に使っている手法が、実はクラシックの音楽理論で紹介されていたりする」


ハル「だから、アイディア集なんですね」


ヤッ子「用語や小ネタの名前も、例えば、早坂君が「和音非構成音」と思っていたら、「和音外音」と載っていたりする」


ミッツ「新しいアイディアを思い付いて、ハルが「俺って天才」と思っていたら、既にクラシックの時代から使われていたら、「俺はクラシックの技術を、独自に編み出した」と喜ぶか、「先駆者じゃない」と悔しがるか」


ヤッ子。楽譜を書く。1小節目が全音符の「レ、ファ、ラ」のDm、2小節目が全音符の「ド、ミ、ソ」のCで、音符とコードネームを書く。


その下に、別な楽譜として、1小節目が全音符の「レ、ファ、ラ」のDm、2小節目は、「ド、ミ、ソ」の「ミ」が2分音符で「ファ→ミ」になっていて、ファが前の小節からタイで繋がっている。2小節目には、まだコードネームは書かない。


ヤッ子「ここでコードがCに変わるはずが、途中までファが残っている」


ハル「そういうことって、ありますよね」


ヤッ子「Cの和音構成音は、ドミソだが、前のコードのファが、まだ残っているなら、「Csus4」とする。ファは、前の和音の音だから、Cの仲間とは考えない。Cになるのは、ファがミになってからだな」ここで、コードネームを書く。


ハル「だから、ミじゃなくて、ファであっても、まあ、仕方ないってことですね」


ヤッ子。少し笑いながら「そうだな、仕方ないってことに、しておこう」


ミッツ「由来ってことは、今は意味が変わっているんですか?」


ヤッ子「元々は、直前の和音の一部を引き継いでいるから、独立したコードではなかった。しかし現在では、直前の和音がどうであれ、「この音を鳴らしたい」として独立した使い方がされる」


ミッツ「だったら、維持するって意味の「sus」なんて名前、おかしいでしょ」


ハル「おかしいけど、そういう言葉って、あれこれあるよ。「こんな名前はおかしい」だけど、由来を知って納得って」


ヤッ子「音楽理論の種類によっては、引き継ぐ時間は、半分以内にとされている」


ハル「半分以内って?」


ヤッ子「本来は「C」なのだから、「Csus4」の時間は短くすべきだ。「C」がこの時間なら、「Csus4」は半分の時間以内の、短い間にすべきだということだ」


ヤッ子が両手で幅を表現。その空中に楽譜が出現。「C」の範囲の前半に、「Csus4」が、伸びたり縮んだり。音符の代わりに、ピアノロールのようなリボンが伸縮。


ハル。ヤッ子の両腕の前の楽譜を指す。「もし、「C」が全音符の時間なら、「Csus4」は、長くても2分音符の時間以内にしろってことですね」楽譜に、音符が出現。


ミッツ「え?」


ハル「どうした?」


ミッツ「だって、『結婚行進曲』では、半分どころか、ずっとsus4の部分があるよ」立って、本棚に向かうが、ハルが止める。


ハル「いやいやいや、話が横道に逸れるから、いいよ。今は僕が質問しているんだから」


ミッツ、少し不機嫌な顔。


ヤッ子「「ミ♯」の話のついでに言っておくが、臨時記号があるか無いかの違いで、半音は2種類ある」


ミッツ「あ……」


ヤッ子「どうした?」


ミッツ「その話、あたしにさせてください」第2話で、言おうかと迷って、言わずにいた場面と、文字の「半音階的半音」「全音階的半音」が表示される。


ヤッ子「いいぞ」嬉しそうに微笑む。


ミッツ「ハル、音階スライドを持っていたでしょ」


ハル「ああ」


ミッツ「あれは、調号に合わせて、使う鍵盤を選んでいるよね」


ハル「ああ」


ミッツ「音階スライドに選ばれた鍵盤の中で、隣同士の半音があるよね」


ハル「ああ」


ミッツ「音階スライドに選ばれていないところでも、半音の関係があるよね」


ハル「ああ」これまで、知っていることの確認が続いたので、少し苛立っている。


ミッツ「調号に逆らった鍵盤を鳴らすには、音符に♯や♭やナチュラルを付けて、半音の関係にすることがあるよね」


ハル「何が言いたいんだ?」


ミッツ「つまり、音符に臨時記号を付けない半音と、臨時記号を付けた半音は、違うってこと」


ハル。がっかりする。「どっちにしても、半音だろ? 何が違うんだ」


ミッツ「それはぁ……」答えに窮する。


ヤッ子「雰囲気が違う」


ミッツ「そう、雰囲気が違う。音階スライドの鍵盤だけを使ったら、シンプルというか、素直というか、そんなメロディだけど、臨時記号を使ったら、洒落た雰囲気になる」


ハル「そういうことがあるのは、知っている」


ミッツ「洒落た雰囲気にならないこともあるけどね」


ハル「それも知ってる。『森の熊さん』は、「ソ、ファ♯、ソ、ミ」「ミ、レ♯、ミ、ド」があるけど、洒落た雰囲気ではない。むしろ、臨時記号を使わないと、違和感がある」


ヤッ子「その、違和感の有無も含めて、音階スライドで選ばれた鍵盤での半音は「全音階的半音」で、音階スライドで選ばれなかった鍵盤を使えば「半音階的半音」だ」


ミッツ「そう、名前が違う」


ヤッ子「作曲する時に臨時記号を使おうかと判断する選択肢に含めたり、洒落た雰囲気の曲を聞いて「和音を工夫している」と思ったりする」


ハル「ああ、そうですね」


ミッツ「名前を知っていると、会話で役立つこともあるよ」


ヤッ子。ミッツに向かって。「あれこれ、有用なこともあるが、紹介するだけでいいだろう」


ミッツ「そうですね」


ハル「それから、×マークは何ですか? 弾いちゃいけないんですか?」


ヤッ子「どれどれ」ハルが、2種類の×を指す。


ヤッ子「ああ、これか」黒板に、「ラ、ド、ミ」の玉を、2セット書く。左側のセットのドには♯を付ける。左のセットには、コードネーム「A」を書く。右のセットには、コードネーム「A♯」を書く。


ヤッ子「蜜霧君、度々で悪いが、今度はこれを頼む」左側のセットの「ラ、ド♯、ミ」を指す。


ミッツ。弾く。


ヤッ子「ありがとう。早坂君、今、弾いてくれたのがこれだ。コードの「A」だ。「A」の仲間には、この3つの玉に、♯や♭を、付けたり付けなかったりする」


ヤッ子「では、さっきと同じように、全体を高くする「A♯」というコードでは、どのようにする?」右側のセットを指す。


ハル。ラとミには♯を書く。「ヤッ子先生、ドの、「♯の♯」は、どうするんですか?」


ヤッ子「ここで必要なのが「ダブルシャープ」だ」ダブルシャープを書く。


ハル「あっ、この×は「♯の♯」なんですか。それで、ええーっと、鍵盤ではレですか?」


ヤッ子「その通り、レの鍵盤だが、「ドのダブルシャープ」としたいのだよ」


ミッツ。コードAとA♯を、交互に弾く。ハルが手を見る。


ハル「本当だ、レの鍵盤だ」


ヤッ子「ついでに、ダブルフラットも教えよう。コードの「Gm」と「G♭m」だ」黒板に、コードGmとG♭mの玉と、コードネームを書く。


ミッツ。コードGmとG♭mを、交互に弾く。ハルが手を見る。


ヤッ子「このように、調号で指定した♯や♭に逆らって、特別に玉に付ける♯や♭は、「臨時記号」と呼ぶ」


ハル「臨時記号ですか」


ヤッ子「臨時なので、効果は限定的だ」


▽ 場面変更 ● ── ●


先生ちゃん。ガーシュウィン。『ラプソディー・イン・ブルー』を弾きながら登場。


説明用の別世界。背景は無地。


ガーシュウィンの先生が重複しているので、別な人が良さそう。ただし、「ソ♯、レ、ソナチュラル」のような、オクターブ違いで臨時記号の有無が違う曲に縁のある人が良い。


先生「ジャズでも、飾りのために、装飾音符と臨時記号が多いんだな。ショパンと僕、どちらが、装飾音符と臨時記号をたくさん使っているんだか」


先生「臨時記号の有効範囲は、この3種類」


先生「1つ。新しい臨時記号が書かれる直前まで」楽譜を表示する。ソばかり。途中から、ソ♯、ソナチュラル、ソ♭、ソ♯。新しい臨時記号が出るまでという範囲を表す。


先生「2つ。オクターブ違いではない、同じ高さの音符であること」楽譜。ソのオクターブ違いで交互に。下のソの途中からソ♯になる。上のソは♯が無効。


先生「3つ。同じ小節であること。タイで繋がっていたら、弾き直さないから、小節をいくつ跨ってもそのまま有効」楽譜。8分音符で、4つのソ。途中からソ♯になり、次の小節にもソがある。有効範囲を色分け。次の小節は、♯が無効。


楽譜。タイの説明で「タイで繋がっていたら、弾き直さない」を添える。タイで繋がった後ろの方の玉には、♯を書かなくても、♯が付いたままとなる。


先生「と、まあ、こんな具合なんだな」


小節を跨った、♯が付いたタイの説明「小節を跨っても、タイで繋がっていたら弾き直さないから、♯もそのまま有効」「その次のソは、小節を跨った意味になるので無効。必要なら、改めて♯を書く」。


先生「このように言ったら、「臨時記号は、♯か♭の、どちらか」と思われそうだけど、正しくは「調号以外の音を出す」なんだ」


先生「調号で、シに♭が付いていれば、白鍵のシを鳴らすために、臨時記号でナチュラルを使う。白鍵なのに、臨時記号だから、有効範囲のルールは、さっきと同じだよ」


先生「ただし、念のために、余計に臨時記号を書いたり、余計に調号の記号を書くことはあるんだ」楽譜。「ソ♯、レ、ソナチュラル」の和音。


先生「この場合、上のソはナチュラルだから、わざわざ書かなくてもいい。だけど、楽譜を読んだ人が「あ、ここに♯を書き忘れている」と勘違いしないように、念のために書くと親切なんだな」


先生「あ、それから、♯やら♭やら、調号やら臨時記号やら、ごちゃごちゃしているけど、ナチュラルは必ず白鍵なんだな、これが」ガーシュウィンのウインク。


先生が、ショパンでも良い。『小犬のワルツ』では、調号でソ♭。右手はメロディでソナチュラル。同時に鳴る左手は和音でソ♭。


先生が、ヨハン・シュトラウス2世でも良い。『春の声』では、調号でミ♭。右手はメロディでミナチュラル。同時に鳴る左手は和音でミ♭。


できれば、1つの和音だけで臨時記号の有無の違いの例が欲しい。


▽ 場面変更 ● ── ●


先生ちゃんの説明が終わり、さっきの続き。


ハル、ミッツ、ヤッ子。


ヤッ子「あ、先生ちゃんの説明は終わったか」本棚から『結婚行進曲』( )メンデルスゾーン)を出し、ハルとミッツに見せる。


ミッツ。大声で。「ほら、やっぱり!」ハルを睨む。ヤッ子から楽譜を横取りする。


D7の「♪ドーーレ、ドードー」と、次の小節のGsus4の「( )1オクターブ高い)ドーーー、ソー、( )元の高さの)ドー」を指す。


ミッツ「ほら、ここは本当は、ソ、シ、レの和音なのに、前の和音のドを引き継いでいるでしょ。しかも、ドからシにならないで、ずっとドのまま」


ハル「それは、もういいよ」


ミッツ「いいってこと、ないでしょ!」


ハル「音楽理論での「禁止」は、「しないことを、強くおすすめ」だから、効果的なら、違反しても、誰も困らない」


ミッツ「それはわかっているけど」


ヤッ子。ミッツを軽く抱き寄せる。「よく見付けたな。和音にも気配りしているんだな」


ミッツ。ヤッ子を見上げる。


ヤッ子「それに、弾いている時には気付いても……」ハルを見て。「……susの話題の時に、それを思い出せるのは、ナイスなことだぞ」


ハル。軽く目を閉じ、あくびするように返事。「はあーい」


ヤッ子。ミッツに微笑む。


ヤッ子。Bメロの7小節目、左手がオクターブユニゾンで、コードが「Dm7、D7」の小節を指す。


ヤッ子「右手のドにシャープがあるが、次はナチュラルが現れたから、シャープの有効は終わり、ここからはナチュラルになる」


ヤッ子「左手は、両方のファにシャープがあり、次のこのファはシャープが有効だが、1オクターブ下のファは初めてなのでシャープを書いている」


ハル「あそうか、付けていないと、ナチュラルのままか」


ヤッ子「そうだ。まあ、言い方の違いだが、ナチュラルのままというより、調号に従ったままの方が、適している」


ハル「「念のための記述」というのは、ありますか?」


ヤッ子。さっきの小節の、7小節後を指す。「このレのナチュラルが、念のためだ。前の小節のレのシャープは、小節が変わったら無効だから、このレは自動的に調号に従ったナチュラルだが、念のために書いている」


ハル「書かなければ、どうなります?」


ヤッ子「書かなくてもナチュラルだ。演奏者が、ちょっと惑うことがあるかもだ」


ヤッ子。C'メロ( )右手Bさんが「トーントトントン」の箇所)の「B7」の箇所を指す。「このレのシャープは、直前に右手の段で付いていたが、左手で初めてなので、シャープが付いている」


ハル「これは、必要なんですね」


ヤッ子「実は、意見が分かれている。というのは、大譜表を意味するこのカッコ……」左端の中カッコを指す。「……があれば、1つの楽器を、便宜上2段に分けたものだから、左手のレは初めてではないという考えもある」


ハル「念のため書いておけば、文句は言われないってことですね」


ヤッ子「まあ、そうだな。文句を言われないことも気にするし、読む人の迷いを減らせる気遣いでもある。」


ハル「ダブルフラットは、フラットが2つなのに、ダブルシャープは、シャープとは違う記号ですね」


ヤッ子「誰かが決めたんだろうな。これは、フラットが2つ書かれているというより、フラット2つ並べた、1つの記号だな」


ハル「漢字の「林」は、「木」を2つ並べた1つの漢字ということですね」


ヤッ子「記号の由来を知るのも楽しいが、「誰かが決めて、昔からそうなっている」でも大丈夫なこともある」


ミッツ「あ、思い出した! えーっと、ショパンの……」急に立ち上がり、書棚から楽譜を探す。


ハル「何だ?」


ヤッ子「ショパンも、臨時記号を多用する人だな」


ミッツ。ショパンの楽譜を持って来る。『ワルツ』( )作品64-2。ショパン)の楽譜。なお、ここでは登場しないが、作品64-1は『子犬のワルツ』。


ミッツ「さっきは、「フラット2つがくっ付いた、1つの記号」という話でしたが、ナチュラルとシャープがくっついた記号もあるんですか?」


ミッツ。ヤッ子に楽譜を手渡し、4小節目の右手のファに、ナチュラルとシャープが並んでいる箇所を指す。


ハル。覗き込んで。「これって、シャープはソに付くんだろ。よく、こんなことがある」黒板に、ト音記号第3線のシと、第3間のドが1つの棒で共有した音符を書く。シにフラット、ドにシャープを添える。


ミッツ「それは、あたしもよく見るけど、この曲は違う。どっちもファの高さに書いてある」


ミッツ「ほら、シャープの高さは、ファでしょ」


ハル「本当だ。そんなの、ピアノの先生に聞けばいいだろう」


ミッツ「それが……、基本的なことだから、聞きにくくって」


ハル「要するに、弾こうとして諦めたってことだな」


ヤッ子「まあ、そんなこともあるだろう」


ヤッ子「この場合、ナチュラルは「念のため」のものだ」


ミッツ「念のためって?」


ヤッ子「直前のファには、ダブルシャープがあるだろう……」楽譜の図。前の小節の、ファのダブルシャープに矢印。「……そこで、ここは、小節を跨ったから調号に従うのが正しい。本当はただのシャープだ」


ミッツ「シャープでいいんですか?」


ヤッ子「ほら、ややこしいだろう。人によっては、ダブルシャープにシャープを上乗せして、「トリプルシャープ」だと勘違いすることもある」


ハル「トリプルシャープって、あるんですか?」


ヤッ子「あるのか無いのか、私は知らない。まだ見たことが無いだけなのか、存在しないのか」


ミッツ「だから、念のために、前の小節のダブルシャープを取り消すナチュラルと、改めて「ここでは、ただのシャープ」を書いたんですね」


ヤッ子「そうだ……」指で楽譜を辿る。「……あった、ここだ」同じページの、4段目を指す。


ミッツ「これって?」


ヤッ子「クラシック曲では、リピート記号を使わず、同じことを何度も書くことがある。すると、「全く同じなのか」「少しは違うのか」といった、間違い探しをすることがある」


ハル。興味を持って近寄る。「楽譜でも、間違い探しがあるんですか?」


ヤッ子「そうだ。こんな風に……」左右の指で、1回目と2回目を辿る。「……同じ、同じ、ここは、取り消しのナチュラルの有無が違うが、念のための有無だから、演奏は同じ、同じ……という風に、間違い探しをする」


ハル「そんなの、表記が違うだけで、違うところなんて、無いでしょう」


ヤッ子。にやりと笑う。「それが、あるんだな。ここだ。2回目のミには、シャープがあるだろう」


ハル「あ、ほんとだ」


▽ 場面変更 ● ── ●


吹奏楽部の練習。


ステラが楽譜を配っている。


ステラ。テナーサックスの2人に楽譜を渡す。「新しい楽譜です。オミズさんと、モグラさん」


オミズ。女。「ステラちゃん、今日も可愛いね」


ステラ「ありがとうございます」


モグラ。男。「ステラちゃん、今日も可愛いね」


ステラ「ありがとうございます」


ステラ。2人の持ち物を見るとそれぞれが持っている名札やアクセサリーなどで、2人とも「KIKUCHI」「キクチ」などとある。


ステラ「あれ? お二人とも、本当の名前は、オミズさんじゃないんですか?」


オミズ「そう、オミズは、あだ名」


モグラ「まさか、モグラが本名だと思ったか?」


オミズ「あたしは菊池」


モグラ「俺は菊地だ」


ステラ「先輩はお二人とも、菊地さんですね。双子……ではないか、あ、二卵性の双子」


モグラ「違うよ、俺は菊地だよ」


オミズ「あたしは菊池だからね」


ステラ「ですから、……、あ、ご親戚? じゃなければ、たまたま同じ苗字なんですね」


モグラ「苗字は違うって。俺は菊地で、こいつは菊池」


ステラ。まだわからない。2人の背後に、漢字でそれぞれ「菊池」「菊地」が表示される。


ステラ「間違い探しですか?」


オミズ「発音が同じだけど、あたしのこれ……」背後の「池」を指す。「……は魚が住む池だから、オミズ」


モグラ「そして、俺のこれ……」背後の「地」を指す。「……は地面だからモグラ」


ステラ。まだわからない。


オミズ「ステラちゃんって、色んな細かいところに気付くのに、漢字だけは苦手よね」


ステラ「え? 「ち」って読むのが池で、「じ」って読むのが地面だと思っていました。だって、「ち」は「電池」「貯水池」だし、「じ」は「地面」「地震」だし」


モグラ「「観光地」や「地産地消」、「地球」もそうだよね」


ステラ「「かんこうち」って、観光する池ですよね」背景に、「観光地」と「観光池」が並ぶ。


この場面は、あまりステラを困らせないようにしたい。楽譜での間違い探しの話を、人名の漢字での間違い探しに広げただけなので。


▽ 場面変更 ● ── ●


音楽室。さっきの続き。


ハル、ミッツ、ヤッ子。


ヤッ子「それから、音符の玉が×マークで書かれているのは、「不定音高」だ」背景に漢字とフリガナ。


ハル「「不貞温厚」?」背景に漢字。


ヤッ子「漢字が違うぞ」


ヤッ子「打楽器など、ドレミで表現できない場合、玉の代わりに×マークを使う。こうすることで、音を出すタイミングは指定できる」


ミッツ。ハルに向かって。「第7話で、自分で答えてたでしょ。音符の玉が、太い棒になった「ストローク」のこと。あれと似てるよ」背景に、第7話のストロークの楽譜を、ハルが「音を出すタイミングは、指定できます」と言っているを表示する。


ハル「え? ああ、そう……だ。ストロークと同じで、音の高さを指定できないが、タイミングの指定はできるって、あれと似ているのか」


ヤッ子「歌でも、ドレミで表現できないことがあるな」マイケルジャクソンの真似で「ポゥッ!」と歌う。


ハル「あ、知ってます。こういうのでしょ」右手を股に当てる。


ヤッ子「左手は、こうじゃなかったか?」古今の流行歌、コメディ、その他、何かの真似。


ミッツ「両手じゃなかった?」軽く、両手を股に当てる。


ハル「こうか?」同じく、股に当てる。


ミッツ「そう、少し内股で」


ハル。言われた通りにする。


ミッツ「そう、そして、斜め下を向いて、顔を赤らめる」


ハル。言われた通りにする。


ヤッ子「早坂君が、いつか、音楽室で、電池を使って、相撲の呼び込みを再現していただろう。あれも、一種の不定音高でもあるな」


ミッツ。急にラップを歌い始める。「♪相撲の、呼び込みも、辻売りだって、ふてーオンこぅ」


ヤッ子「そう、ラップも、一種の不定音高だな」


ハル「でも、この楽譜は、ギターで普通に演奏する曲ですよね。ドレミで表現できますよ」


ヤッ子「ギターを、コツコツ叩くことがあるだろう?」


ハル「あ、そうか」


ヤッ子「打楽器の楽譜は、玉の形があれこれあって、面白いぞ。詳しくは、それぞれの打楽器の奏者に聞いてみてくれ」


ミッツ「ヤッ子先生、お手上げ?」


ヤッ子「そうなってしまうのは、それだけ多様だってことだ。特に、ドラムスには……」背景にドラムス。「……「基本的」と呼ばれる配置はあるが、個人の好みで自由な組み合わせをする」


ヤッ子「だから、五線のどこが、どのドラムなのか、シンバルなのか、万人に共通な記譜は無い」背景に「記譜」と、そのフリガナ。


ハル「でも、バンド譜では、ドラムスの楽譜が載っていますよね」背景に、バンド譜のサンプルと、その前面に「バンド譜」と、そのフリガナ。


ヤッ子「一応は、基本的と呼ばれる配置での記譜だ。正確なことは曲を聞いて確認したり、バンドメンバーと実際に演奏しながら、自由に変更することもある」


ハル「はあ、そうなんですか」


ヤッ子。黒板に×と白玉を書く。「音符には、白玉と黒玉があるだろう」


ハル「黒足袋白足袋なら知っていますが」


ヤッ子「全音符と2分音符は白玉、4分音符から短い音符は黒玉。会話で「白玉で」と言えば、「長い音価の音符で」という意味だ」余白に音符の例。


ヤッ子「打楽器の場合、白玉と黒玉は、このように書き記す」


ミッツ「打楽器に白玉があるんですか?」


ヤッ子「まあ、実際には、叩いてすぐに音が消えるものもあるんだが、楽譜の見やすさのために、2分音符で書くことがある」


ヤッ子「逆に、細かな音符なのに、ピアノでペダルを踏んだまま、つまり、弦の振動が自然に消えるまで鳴り続けるようにすると、次の音符が鳴り始めても、さっきの音は鳴ったままだろう」


背景に16分音符のグリッサンドの楽譜と演奏。先頭近くの玉に、差し棒で「この玉の音は、まだ鳴っている」と記す。


ヤッ子「実際には音が鳴っているのに、鳴っていないように書いている例では、シンバルがあるな」


ヤッ子「シンバルが「シー」と鳴って、太鼓が「タタ」と鳴る。連続して「シータタシータタ」の演奏を、楽譜では、太鼓が鳴る時にはシンバルの音は消えているように書かれているが、実際にはシンバルは鳴り続けている」


背景に、ドラムスの演奏する姿。右手でシンバル、左手でスネアを鳴らす。楽譜と、ピアノロールを表示する。


ピアノロールには、実際に鳴っている音を表すオシロスコープの線( )ギザギザや波線)を重ねる。シンバルはピアノロールよりも長く音が鳴り、スネアはピアノロールよりも短時間で音が止まる。


ハル「音符は、「この時間、音を鳴らし続ける」って決まっているんですよね」


ヤッ子「その指示だが、場合によっては、その指示を「守っているつもり」ということもある。おもちゃの木琴も、叩いてすぐに音が消えるが、鳴っているつもりだろう?」


ハル「なるほど。楽譜の通りに音を鳴らし続けることができないこともありますね」


ヤッ子「音符っていうのは、「音を出し続ける時間」を、厳格に示している。しかし、表記上は厳格でも、実際に演奏する場合には、「厳格なつもり」ということもあるんだ」


ハル「なるほど。楽譜を音に再現するためには、楽譜をきちんと読む。そして、楽器による工夫があるから、楽譜とは違った演奏になることもあるんですね」


ヤッ子「そうだ」


ヤッ子「打楽器では、白玉と黒玉だけでなく、菱形もあって、面白いぞ」黒板に、菱形の白玉と黒玉を書く。


ハル「菱形は、どういう意味ですか?」


ヤッ子「だから、それは打楽器奏者に聞いてくれ。ギターでも、倍音で、ああ、「ハーモニクス」と言った方がいいかな、菱形の玉が使われていることがあるだろう」


ハル「音符の玉は、右上がりと右下がりの、2種類だけって、ミッツから教わったけど」


第2話の、ミッツが自信たっぷりに「あはは、大丈夫だって、2種類限定!」と、Vサインをする場面を再掲する。


ヤッ子「そんなことはないのは、今、見た通りだ」


ヤッ子「更に言えば、ギターのTAB譜( )タブふ)では、フレット番号の数字が書かれているぞ」背景に、TAB譜とギターを、上下に並べる。


ハル。ミッツを睨む。「ミッツーーー」


ミッツ「仕方ないでしょ、ピアノじゃ、まず見ない音符だもん」


ヤッ子。なだめるように、柔らかな笑顔で頷く。


ハル「ヤッ子先生、それから、フェルマータも知りたいんですが」


ヤッ子「ああ、停止記号だな」


ハル「へ?」


ヤッ子「フェルマータは、停止記号と言ったんだ」


ハル「フェルマータは、延ばす記号じゃないんですか?」


ヤッ子「結果的に延ばすことになるが、停止記号だ。手拍子を、一時的に停止する」


ハル。ミッツを睨む。「ミッツーーー」


ミッツ「そうでしょ、2倍から3倍、延ばすんだって教わったよ」


ヤッ子「音を延ばすのなら、「ゆっくりにする」や「一時的に、ゆっくりにする」を意味する「リタルダンド」の方法もある」


ヤッ子「逆に、テンポを速くする指示もある」


背景に、「リタルダンド」の表記「ritardando」「rit.」「ritard.」に、フリガナ「リタルダンド」を添える。


同時に、「アッチェレランド」など、いくつかの速度変更の用語を表示する。カタカナ表記が複数あれば、併記する。カタカナ表記は、資料の対象年齢や、出版年代により、異なる場合があるため。略式表記があれば、併記する。


ヤッ子「どの場合でも、演奏者の全員が揃って、手拍子のテンポを変える」


ヤッ子「で、早坂君が知りたいのは、AさんとBさんの2声があって、異なる音価にフェルマータがあれば、どっちの音価を2倍すればいいか、ということではないのかな?」


背景に、CM明けでハルが迷った楽譜を表示する。「どっちを基準に、2倍の時間に延ばすのか?」を添える。


ハル「その通りです。どっちでショ?」


ヤッ子「手拍子は全員が同時に。全部の声部、全部の段で、同時に手拍子するという、大前提がある。だから、フェルマータで全員が一斉に手拍子を停止して、また、全員で一斉に再開する」


ヤッ子「手拍子が停止した時に、ある担当は4分音符の時に停止、ある担当は2分休符の時に停止。だから、担当している箇所によって、2倍延ばすのか、3倍延ばすのかは変わるが、手拍子の再開は同時だ」


ミッツ。突然の大声。「あっ!」


ハル「どうした?」


ミッツ「そうだよ、停止記号だよ」


ヤッ子。ミッツの気付きを、こっそり喜ぶように、微笑む。


ミッツ「だって、楽譜の途中で曲が終わった時に……」


ハル「そんなこと、あるか。楽譜の途中なのに、曲が終わるなんて」


ミッツ「違うって。一度は楽譜の最後まで演奏して、リピートとかで戻って、途中で終わる時ってこと」


背景に、楽譜の最後まで演奏し、戻って、途中で終わるという演奏順を、厚みを持った帯の矢印で表す。第2話でステラが自宅で勉強したような、「きしめんのような、厚みのある帯」の矢印の表現。


ハル「ああ、そういえば、そういうものもあったかも」


ミッツ「そこで、終わりの場所には、フェルマータが書いてある」


ハル「最後の音符にか?」


ミッツ「違う。小節線に」


ハル「フェルマータは、音符か休符に付くものだろう?」


ミッツ「だから、違うって。こんな風に、フェルマータを書くの」黒板に、簡単な楽譜を書く。複縦線( )縦線が二重線)の上にフェルマータ、下に「fine.」の例。


ミッツ「楽譜によっては、「fine.」だけのものもあるけど、フェルマータも書くってことは、フェルマータは手拍子を「一時的に止める」だけでなく、「もう手拍子しない」って意味じゃないかな?」


▽ 場面変更 ● ── ●


吹奏楽部の練習。


先生が、ギョロ目で生徒を睨んでいる。生徒達も、ギョロ目で先生を睨んでいる。音を出している楽器と、出していない楽器がある。


先生が、睨みながら、合図のように顎を上げると、演奏が再開する。


吹奏楽の先生。手を叩いて。「はーい、はーい」演奏が止まる。


吹奏楽の先生「このように、フェルマータがあれば手拍子を停止して、みんなで目配せして、再開の合図をする」


吹奏楽の先生「だから、フェルマータは、目玉のマークになった。カッコ! 諸説あります、カッコ閉じ」


生徒の全員の顔が、口は無表情、両目がフェルマータ。


吹奏楽の先生「まあ、こうして指揮者がいれば、指揮者と合わせればいいから、目配せはいりませんね。目配せは、人数の少ないアンサンブルで有用ですね」


吹奏楽の先生「それから、ステラさん、この、フェルマータのすぐ後は、柔らかい音で再開するように、できますか?」


ステラ「柔らかく? ですか?」


トロンボーン先輩「口の穴、これ……」自分の口を指す。「……これを少し、柔らかく広げるといいんだよ」


ステラ「そうしたら、柔らかくなりますか?」


トロンボーン先輩「あれこれ、実験するといいよ」


吹奏楽の先生「音の高さは、かなり上達しましたので、嬉しく思います。少し気持ちに余裕ができたと思いますので、音色への気配りもできそうですね」


ステラ。トロンボーン先輩に。「演奏って、音符の通りに鳴らせばいいってものじゃ、ないんですね」


トロンボーン先輩「そうだね、音の高さだけじゃなく、表現って、色々と気遣いできるよ。譬えれば、冷たいアイスクリームと、温かいアイスクリームでは、味は同じなのに、美味しさは違うよね」


ステラ「なるほど、それが演奏の音色が違うと、聞いた楽しさの違いになるんですね」


トロンボーン先輩「そう。それから、嬉しそうに「演奏が上手になって嬉しい」って言うのと、自慢気に「演奏が上手になった、すごいでしょ」って言うのとでは、印象が違うよね」


ステラ「自慢にしても、相手に楽しんでもらおうと「自慢の料理です」って言うのなら、相手に喜んでもらおうって気持ちですものね」


▼ Cパート。   ▼──   ──▼


先生ちゃん。音楽の先生。


説明用の別世界。背景は無地。


先生「世界中で、多くの人が音楽を楽しんでいます」


先生「仲間内で演奏を楽しんでいて、「ちょっとこれを教えて」と教わることもあれば、音楽教室で学ぶこともあるでしょう」


先生「教わる方は、知らないから教わる。教える方は、どうすればわかってもらえるか、思案する。そこで、わかりやすい説明方法を考案したり、それから、うっかりミスで、誤ったことを教えてしまうことがあります」


先生「これまで縁が薄かった楽器の楽譜を見て、初めて知る事柄もありますね」


先生「正しくはないけど、誤りではなく、わかりやすい説明もあるものです」


先生「仲間内だけで伝わるスラング、方言の用語を、一般的な用語だと勘違いして広めてしまうことも、あるでしょう」


先生「資料も、作成者の考えにより、異なっていることがあります」


先生「実際、音符の部品の名前すら、資料によって異なってることがあります」


音符の各部の名称を表示する。玉の呼び名「符頭」。棒の呼び名「符幹」「符尾」。旗の呼び名「符尾」「符鉤」。鉤の呼び名「鉤」「鈎」「符桁」。


「鉤」と「鈎」の漢字も異なる。


先生「自分が手にした資料だけが正しいと思うより、資料によって異なることは、覚えておいてほしい」


学者がテレビで、ハリー・フレデリック・ハーロウによるアカゲザルの実験を補足情報として発言したところ、「チンパンジー」を含め、複数の誤りがあった。対談中の発言であり、主題ではない。


NHKの学術番組で、人体の神経に電気が流れる表現は、「神経という電線に、電気が流れる」の誤解を誘発するものだった。番組内で「これまでの表現は、誤り誘発」と、言葉で訂正。正しくは、化学反応の連鎖。


▼ 次回予告。   ▼──   ──▼


ミッツのプロレス技が決まり、


今度はハルが、ステラを泣かせ、


誰も弾いていないのに、ピアノが鳴り始める。


先輩、隠していたんですね。


▼ 1コマ漫画。   ▼──   ──▼


ナポレオンに、部下が辞書を手渡している。


「日本語の辞書ですので、「不可能」の文字が載っています」


ナポレオンは、赤いサスペンダーをしている。



◆ ご感想を頂けると嬉しく思います。ログイン不要ですので、お気楽に一言をお願いします。


◆ 「評価」はログイン必要ですが、「感想」はログインせずに、どなたでも書けます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ