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第9話 Aパート



楽譜の読み方を、アニメ脚本っぽい形で説明します。


オリジナル『ガクテン』では、楽典以外の物語部分に、R15の暗い箇所がありました。暗い箇所を、ほぼ単純削除して、ほのぼの会話を中心にします。


※ R15以外は、そのままですので、二重投稿に近いものです。


◆ ご感想を頂けると嬉しく思います。ログイン不要ですので、お気楽に一言をお願いします。


◆ 「評価」はログイン必要ですが、「感想」はログインせずに、どなたでも書けます。



■■■■ 第9話。


▼ サブタイトル。   ▼──   ──▼


×って何だ( )バツってなんだ)。


×( )バツ)と消しゴム。


この中から1つだけ採用する。


▼ OP曲前。   ▼──   ──▼


今回は、OP曲前の定型ではない。定型は、「他の登場人物は知らない、過去の出来事」だが、ここでは昨日の出来事の回想。


翌日の学校。


ステラが自席に座る。昨日の回想。


ステラ。机に突っ伏す。心の声。「( )あーあ、最悪だよー)」


▼ Aパート。   ▼──   ──▼


学校。午前の休み時間。


校舎の2階の教室から、中庭を挟み、1階の廊下が見える。


ショージがいた。


ステラ。ショージを見て、心の声。「( )ショージ先輩にあんなことをして、きっと、あたしの悪口を言い触らしてるんだろうな)」


▽ 場面変更 ● ── ●


放課後。


吹奏楽の練習に向かう廊下。階段の陰で、ショージが待ち伏せ。


ショージ「昨日はゴメン」ステラの手を取り、誰もいない音楽室へ向かう。


ステラは半日、学校で過ごしたことで、少し心が落ち着いているので、ショージに従う心の余裕がある。手を引かれ、わざと膝を曲げない、たどたどしい歩き方。


音楽室の中。


ショージ「ごめん!」一息ついて、ゆっくり床に座り、土下座。


ステラ。驚き絶句。


ショージ「あの後、母さんに、ひどく叱られて」


ショージ「俺、ステラのことが好きだが、俺の妄想の中では、いつでもお前が都合よく笑っていた、同意していた」


ステラ「もういいよ! ……もういい」


ステラ。心の声。「( )片想いされているだけで、愛し合ってはいないのに、この人にはわからないんだな)」


突然の強風で、窓に雨の音。


ステラ。雨粒が滴る窓を見ている。


ステラ「窓の雨粒って、自分の重さに耐えられなくなって、落ちて行く」


ショージ。床でうなだれたまま。心の声。「( )急いだ俺が悪いのは仕方ない。まあ、仕方ない。堪えろ、俺)」


ステラ。心の声。「( )あれは、トロンボーン先輩のためにとっておいた、初キスじゃない。事故。もう変えられない過去。あたしはキスしていない。事件の被害者なんだ。あたしはキスしていない。被害者……なんだ)」


ステラの俯く顔の、下半分だけ、画面に表示する。ぼろぼろと、ぼろぼろと涙。まるで「ちくしょう」( )または、誤りだが「ちきしょう」)の声が聞こえそうな口は、唇が怒りに慄く( )おののく)ように震え、剥き出しの歯は上下が少し離れている。


ここでは、目は描かない。どのように目を描けば良いか、納得できる表現が思い付かない。


▽ 場面変更 ● ── ●


廊下を、音楽の先生が歩いている。ヤッ子が向かって来る。


音楽の先生「鍵宮先生。今日も音楽室ですか?」


ヤッ子「はい。いつものように、少しピアノをお借りします」


音楽の先生「その前に……」音楽室の方に目をやる。ヤッ子も促されるように見る。


窓越しに、ステラが涙を拭いているのが見える。窓の下、見えないが、誰かと話しているようだ。


ヤッ子。心の声。「( )床に、誰かがいるのか?)」


音楽の先生「少し散歩しませんか?」


ヤッ子「はい」


▽ 場面変更 ● ── ●


校内のどこかで、雑談。偶然にも、「sus」の伏線となる話をしている。


生徒同士の話。2人か3人。


ギターを弾いている。


生徒「ナポレオンは、なぜ、赤いサスペンダーをしていたか」


生徒「それ知ってる。サスペンダーをしないと、ズボンが落ちるから」


生徒「そういえば、コードの「sus4」は、サスペンダーの「サス」だって知ってたか?」


生徒「知らなかった。確かに、3度音を、4度に吊り上げるもんな」


生徒「それが、「吊り上げ」じゃなく、「維持する」だって」


生徒「じゃあ、サスペンダーも、「落ちないで維持する」なのか?」


生徒「そう。「サステナブル」も同じ」その他、自動車の「サスペンション」維持を意味する「SUS」を含む単語があれば、背景に表示する。


生徒「でも、コードの維持って、何だ?」


生徒「コードの全体じゃなくて、コードが変わっても、変わる前の音の1つを維持したままだって」


生徒「直前のコードの音か」


生徒「維持は短い時間で終わって、今のコードの音になることを「解決」という」


生徒「だったら、「Csus4」に変わる前は、「G7」ならいいけど、「G」だったら駄目だってことか?」背景に楽譜。「変わる前の和音に、「ファ」が無い」の解説。


生徒「今は「sus4」は名前だけで、変わる前がどんな和音でもいいんだって」


生徒「つまり、今となっては、名前と実態が乖離したってことか」背景に、文字で「乖離」と、そのフリガナ。


生徒「おおっ? カイリってか」


生徒「そんな言葉って、色々ありそうだな」


生徒「何があったっけ?」


生徒「何が、あったかなあ」


生徒「たくさん、あると思うのだが……」


生徒「うーむ……」


▽ 場面変更 ● ── ●


音楽の先生とヤッ子。中庭を歩く。


中庭は、土ではなく、靴を履き替える必要のない床の設備。


音楽の先生「通り雨だったのでしょうか、雨も風も、ほんの一時( )いっとき)。ほんの少し、地面が湿っている程度ですね」


ヤッ子「はい」


音楽の先生「話は変わりますが、以前、20世紀最大の、いえ、人類最大のでしたか、文明のでしたか、とにかく「最大の発明」は何か、という話題がありまして、どれかに決めるというのではなく、様々なものが紹介されていました」


ヤッ子「最大の発明ですか」


音楽の先生「その中で、僕が面白いと思ったのは、消しゴムです」


ヤッ子「そうですか。私は、テレビやコンピュータといった、電気製品だと思いました。そうでなければ、鉄道、蒸気機関など」


音楽の先生「無論、それらも紹介されていました。僕にとっては、五線ノートで試行錯誤しながら、何度でも消しては書き直せる消しゴム。なるほどなあと思いました」


ヤッ子「確かに。それまではインクでしたものね」


音楽の先生「消しても、時が戻ることはありません。それでも、書き直すことができて、消す前の「失敗した音符」のことは、誰にも知られません。誰にも知られず、ただ、僕の記憶にだけ残ります」


音楽の先生「記憶は維持されます。やがては、記憶が朽ちて、僕自身も忘れるのでしょうか、それとも、記憶は解決されずに留まり続けるのでしょうか。それとも、事実と乖離した記憶に変わるのでしょうか」


音楽の先生「被害者は、ご自身の幸せのために、消しゴムで消して「無かったこと」にするのかも知れませんし、バツマークで「忌まわしい過去」にするのかも知れません」


音楽の先生「しかし、加害者は、泣いて訴えられた被害は「無かったこと」にしてはいけません。僕が書いた音符は「無かったこと」にできます。何度も試行して成長して行きます」


ヤッ子「あの子達は……」音楽室での、ステラと誰か( )ショージは、窓よりも低い場所なので、見えなかった)の姿を思い出す。


ヤッ子「星山君は、誰と何があったのかは、わかりません。しかし、消しゴムを使えなくて、バツマークで、解決を試みて、成長してくれれば嬉しいです」


音楽の先生。苦しさを持ちながら、静かに微笑むという表情。


▽ 場面変更 ● ── ●


校内のどこかで、偶然にも、「消しゴム」に関連する話をしている。


教室。


生徒2人の会話。2人の性別は、どちらでも良い。ここでは「俺」としているが、「あたし」としても良い。


生徒A「タイムマシンはできないが、過去に繋がることはできる」


生徒B「過去に繋がるって、どういうことだ? それは、タイムマシンじゃないのか? もし、過去に戻れるんなら、「あの日の失敗」を、無かったことにできるかも。ああっ、俺の馬鹿っ、なぜ、あんなことをしたんだ! 無かったことにしたい!」


生徒A「消したい過去が、あるのか?」


生徒B「あるんだよ! 俺の記憶は消せなくても、せめて、みんなの記憶を消したい、消しゴムが欲しい! タイムマシンで過去に行けば、俺にとっては2度目でも、みんなにとっては1度目の時間だよな」


生徒A「だから、タイムマシンじゃないから、過去や未来に、自由に行き来はできないが、時の流れに従っていれば、過去に行くことも、あり得る」


生徒B「タイムマシンは、科学的に不可能だって、証明されたはず」


生徒A「証明はされていない。「摂理に反する」というだけだ。そもそも、「時」の正体が解かれていないのだから、証明できたというのが、あり得ない」


生徒B「ところで、どうやって過去に戻るんだ」


生徒A「時は川の流れに譬えられる。流れの傾きが、所々、違うことはあっても、水が坂をのぼることは無い」


生徒B「それが摂理だな」


生徒A「ところが、相対性理論によれば、場所により、時の流れるスピードが違う」


生徒B「あっ、知ってる。ウラシマ効果だろう。場所による速さの違いが合流したら、先行していた方が逆戻りするっていうんだろ」


生徒A「その話は知らないが、相対性理論で考えて、「エネルギー急流」があり、摂理に従って、急流の反作用がある」


生徒B「意味がわからん」


生徒A「川は、本来はこのくらいの傾斜だとする。ところが、エネルギーの関係で、絶壁になった」


生徒B「その、エネルギーって、何だ? 漠然としている。ファンタジーか?」


生徒A「相対性理論でのエネルギーは、質量。質量はそのまま重力となる。ブラックホールのようなものだ。エネルギーが強すぎて、光さえも出られない」


生徒B「そうか、重力が強いから、川が急流になり、絶壁になるのか」


生徒A「ある場所で、本来とは違う傾斜があり、反動で傾斜を戻す傾斜、上向きの傾斜があると、こうなる」川の傾斜は、左上から右下に向かう。ひらがなの「し」のような絶壁があり、反動で、川の流れが、ジェットコースターのループの形。


生徒A「もしも、このループの途中の時代になって発見された科学があり、発明があったとする。それが、ループで遡ると、まだ発見される前の発明品が存在する」


生徒B「オーパーツだ」


背景に、オーパーツの説明。「時代的にあり得ない人工物。千年前に作られたオートバイなど」。


生徒A「その通り。オーパーツは、このように、時の流れが絶壁を落ちた反動によるものだ」


生徒B「それは、物理に反していないか? そもそも、反発って、何だ?」


生徒A「エネルギー保存の法則だ」


生徒B「エネルギーは、無からは生まれない」


生徒A「だから、質量による傾斜の違い。本来はこの角度なのだから、質量が大きい、重力が大きい、エネルギーは強ければ、傾斜が急になり、本来の傾斜に戻るだけなんだ」


生徒B「戻るだけだから、エネルギーは保存されたままということか」


生徒A「しかし、物理の法則に反することなど、日常的にある。エネルギーが生まれるんだ」


生徒B「まさか、日常的になんて」


生徒A。スーパーボール( )ゴムの塊のボール)を出す。「これを、この高さから落として、床に跳ね返ると、どこまで跳ね上がるか?」


生徒B「最高でも、手を離した高さまでだ」


生徒B。気付いたように、口調を強める。「床に叩き付けるのは、無しだろう」


生徒A「無論、そのような反則はしない。ところが、このように落とすと、位置エネルギーが、運動エネルギーに、等価交換せずに、より強い運動エネルギーを作る。エネルギーが増幅、つまり、新たなエネルギーが生まれる」


生徒Aが持っているのは、大きさの違う、2つのスーパーボール。大きい方には、ロリポップ( )棒付き飴。チュッパチャップスなど)の棒のように、棒の代わりにタコ糸がついている。小さい方には、中央を貫くまっすぐな穴。


タコ糸を、小さいボールの中を通す。タコ糸の端を持ってぶら下げる。雪だるまの頭からタコ糸が生えているように見える。


生徒A「よく見ていろよ」糸の端を持って、2つのスーパーボールをぶら下げ、机の高さで手を離す。2つのボールは、共に床に落ち、小さいボールが天井まで跳ねる。


生徒B。驚く。


生徒A「これが、エネルギー保存の法則に逆らう現象だ。現代の物理は、ここまで進んでいるってことだ」


字幕を表示する。「この生徒の話の、どこに誤りあったでしょうか?」


▽ 場面変更 ● ── ●


中庭。さっきの続き。


ヤッ子と、音楽の先生が、消しゴムの話をしていた。


バドミントンを中断し、雨宿りをしていた女生徒達2人が、声を掛ける。


生徒「ヤッ子先生ー。校内で堂々と、デートですか?」


ヤッ子「そうだ。君達も、堂々とデートできるよう、自分を磨けよ」


生徒「どうしてあたし達、化学や音楽を勉強しなければいけないんですか?」


音楽の先生「生きるために役立つと思われることを、あれこれ教えるのは、大人の義務なんですね」


生徒「でも、算数は役立っても、数学は役立つとは思えません。あたしは、楽器の演奏ができるのはいいなとは思っても、自分で弾こうとは思いません」


生徒「あたしは、将来は家業を継ぐので、化学は使いません」


生徒「難しくてややこしい計算を、簡単にできるから、数学は役立つそうですが、簡単にするための方法が、難しくてややこしいです」


生徒「しかも、その計算を必要とすることは、一生のうちに、きっと一回も無いと思います」


生徒「一生のうちに、何回かあったとしても、あの面倒な数式が役立つとは気付かないと思います。数式の意味も、数式そのものも、覚えていられないので」


音楽の先生「必要と思われる事柄のうち、何を教えるのかの選択基準は、大人の都合かも知れませんね」


ヤッ子「自分で化学をしなくても、詐欺対策にもなるぞ。家業で、新しく取引先になろうとする者が、嘘の説明をしたのを、見抜くために、理科の知識が役だったり」


音楽の先生「取扱説明書と似ていると思ってください」


生徒「取扱説明書ですか……」


音楽の先生「取扱説明書を熟読する人、ほとんど読まずに使っているうちに慣れる人、様々ですね」


生徒「あたしは、ざっと目を通します」


音楽の先生「どの機能を使うのかは、人によって違いますね。使いたい機能の部分はしっかり読んで、必要ではない機能の部分は読み飛ばす」


生徒「あ、わかります」


生徒「スマホもそうです。全然使わない、使い方も知らないアプリが、買った時から、たくさんあるんですよ」


生徒「そうそう。誰かにとっては、すっごく便利なんだろうけど」


生徒「どんな人が使うのかなあって」


音楽の先生「スマホに元々あるアプリケーションや、取扱説明書にたくさんの機能が載っているのは、学校ではたくさんの教科があるのと似ています。全部の機能を使う人は少なく、全部の機能を使わない人も少ないでしょう」


生徒「全部の機能を使わないって、じゃあ、何のために買ったのかってことですよね」


音楽の先生「実際に使っていると、取扱説明書には書いていない、便利な使い方や、便利な機能を発見しますね。自分で発見するだけでなく、誰かから教わることもありますね」


生徒「インターネットで見ていたら、「そんな方法もあったのか」とか」


音楽の先生「スマートフォンを、最初は電話ができれば良いと思っていた人が、ある日から、これまで使わなかった機能も使い始めることもあります」


音楽の先生「ご自身の生活が変わるように、社会の文明や文化も、これからも変わって行くでしょう。不要と思っていた分野のうち、将来は何が重要になるか、今はわかりません」


音楽の先生「将来、必要になって初めて化学を学ぶより、今のうちにこうして化学に縁があれば、再び学び始めた時に、思い出しやすいでしょう」


生徒「シメジ婆さんは言ってたよ。学校の勉強の全部が役立つ人はいないけど、学校の勉強が1つも役立たない人もいないって」


生徒「今、思い出しました。「小節線」と「縦線」の、どっちが正しいんですか?」


音楽の先生「どちらも正しいです。というのは、音楽は多くの人に親しまれていますから、誤解も含めて、様々に語られます。「元々の意味」「正しい意味」の口論より、伝わることが大切なこともあるでしょう」


音楽の先生「ただし、あまりにも用語が混沌とするのは、学ぶ方も会話も、困ってしまいますが」


生徒「そうなんですよね、同じものなのに違う呼び方、違うものなのに同じ呼び方。一問一答をしたいのに、説明がいつまでも続く」


ヤッ子「わかりやすいように、授業は工夫しているつもりだが、一部分だけを話すと、誤解されることもある。だから、ストーリーを設けてはいるが、授業をする方も難しいんだ」


音楽の先生「以前、僕が東京で仕事をしていた頃、鉄道網が難解でした。その時、東京はわからないと感じたのですが、僕の思う「東京はわからない」は、外国人が思うそれとは違うのだなと思います」


以降は、2人の生徒の、どちらかを明確にするために、「生徒A」「生徒B」と記す。


生徒A「あたしの祖父の失敗談ですが、仕事の出張先の大きな駅で、メモを見ながら「なになに線は、どこですか?」と、駅員さんに聞いたんですって」


ヤッ子「ふむ」


生徒A「すると、駅員さんは「ああ、JR線は、あっちだよ」って教えてくれて、忘れないうちにメモに書き加えたんです。「なになに線は、略してJR」だって」背景にメモの絵を表示し、「なになに線は、略してJR」と書いてある。


生徒B「えーっ、JRって、ジャパンレールでしょ?」


JRは、「ジャパン・レールウェイズ( )Japan Railways)」の略。登場人物が、よくわかっていないままの会話。


生徒A「うん、だから、それだけ東京の鉄道が、わけがわからなくて、もう混乱していたんだって」


音楽の先生とヤッ子。微笑んでいる。


生徒A「それに、ごちゃごちゃした駅で、行き先の案内看板ならたくさんあるけど、今ここはどこなのかっていう看板が少ないって」


生徒B「それって、大変?」


生徒A「今、どこにいるのかがわからないから、地図も路線図も役立たず」


生徒B「あっ、そうか。迷っていない人を導く看板はあるのに、迷っている人のための看板は無い。迷いの解決は、ここはどこかって知ることから始まるのに」


生徒A「道路だったら、電柱に書いてあるのに」背景に、交通事故で電話している人が、電柱に巻かれている看板「ここは……」の地名。


生徒B「その地方に馴染みがあったら、目的の地名じゃなくても、近隣の地名から推測したり、目立つ施設から推測できるけど」


音楽の先生「看板は、見渡したら、たくさんありますが、広告の看板などに紛れて、どれが自分に役立つのか、見渡した風景の中から探すのも、大変ですね」


生徒A「ついでに言うと、都会の外食店で、天丼を頼んだんだって」


生徒B「うん、それで?」


生徒A「もんじゃ焼きとか、お好み焼きとかなら、友達から教わりながら食べるけど、天丼なら出来上がりを、そのまま食べるでしょ」背景に、どんぶりのフタを宙に浮かせて開けた、天丼の絵。お盆に載せて、みそ汁などが付いていても良い。


生徒A「ところが、お盆の上に、ご飯だけのどんぶりと、別な器に天ぷら、番茶の湯呑と、その湯呑によく似た器につゆ。こうなると、何が何だかわからない」背景に、何が何だかわからないお盆の絵。天ぷらは、ざるそばのように「すのこ( )すだれ)」に載っている。


生徒B「だったら、聞けばいいんだよ、どうやって食べたらいいか」


生徒A「聞いたんだって。そしたら「普通に食べればいい」って」


生徒B「「普通に」って」


生徒A「だから、「普通にじゃ、わからないから聞いているんだ。この2つの湯呑は、どっちがお茶で、どっちがタレなんだ」って。そうしたら、悪質クレーマー扱いされたって」ここでは「タレ」と言っているが、「つゆ」に統一しても良い。


生徒B「知らないから聞いただけなのに」


生徒A「おじいちゃんは、天丼屋さんに入って、壁のメニューにある「天丼」の文字を見て、注文したの。あっ、言い忘れていた、壁のメニューには、「番茶付き」って書かれてあったって」


生徒B「うん」


生徒A「店員さんは、テーブルの上に立ててあるメニューを広げて、わざと聞こえるような大きな溜息で、メニューを手で2回、バンバンって叩いたの」


生徒B「メニュー?」


生徒A「メニューには、出て来た天丼の写真と、番茶の湯呑に「番茶が付いてます」って文字や、つゆの器に「つゆはお好みで」って書かれているの」


生徒B「でもそれって、そこに書かれているのを知っている人なら、見ることができるよね。こだわりの店なのか、その地域の当たり前なのか知らないけど、見るからに外国人なら、親切に教えてくれたのかもね」


生徒A「だから、怒って、大声で「態度が悪い」って言って、1万円札を投げつけて、「釣りは、いらん」って、出て来たの」


生徒B「そうなんだあ」


生徒A「他の店では、「ジンギスカン定食」を注文したら、豚肉だったって」


生徒B「詐欺だよ。羊頭狗肉( )ようとうくにく)だよ。羊頭ブタ肉かな」


生徒A「会計の時に、「この店では、豚肉をジンギスカンと言うんですか」って聞いたら、店員は涼しい顔で「そうですよ」だって」


生徒B「もう、外食店は、信じられないね」


生徒A「それ以来、出張では、コンビニでパンを買って、公園で食べるようになったって」


生徒B「知らない土地で、そんなことがあるんなら、旅行に行くのが楽しくない」


これ以外は、ラジオで読まれた聴取者からの話がある。幼児を連れた母親が、ファストフード店で「オレンジジュース」を注文。カウンターの店員は、確認の復唱で商品名を言う。


母親は「なぜ、わざわざ商品名で返答するのか」を、ラジオに送り、読まれた。


ラジオでは、ここまでの放送だった。店員側の言い分を想像すると、「ジュース」は果汁100パーセントと定義されている。幼児に飲ませるので、果汁100パーセントに留意する母親もいる。


そのため、店員は「果汁100パーセントではない」を知らせたかったのかも。もしかすると、店員は後に「商品名で復唱よりも、果汁100パーセントではないが、良いか」と聞けば良かったと思い、接客技術が向上したかも。


生徒A。音楽の先生に向かって。「どう思います? 店員の態度が悪いって言うのは、カスハラだと思いますか? あたしは、店員がカスハラを作ったと思うんですが」


背景に「カスハラ」と、略していない「カスタマーハラスメント」と、説明の「客が理不尽な理由で、横暴な言動をする」を表示する。


音楽の先生「僕は、その場にいませんでしたが、お話しを聞いた限りでは、目的の相違が原因だったと推測します」


ヤッ子。驚く。心の声。「( )どちらが悪いか、比率で答えると思えば、どちらが悪いかではない答え方? なるほど、これは、誰も責めない方法)」


音楽の先生「お客さんは、食べたいものを、気分良く食べるのが目的です。店員さんは、もしかすると、昼食時間帯で早く席を空けて欲しかったのでしょうか。当たり前のことを尋ねられて、多忙のに、仕事を邪魔する客だと思ったのでしょうか」


ここで、音楽の先生が比喩を用いるのも良い。テレビドラマや映画などで、「犯人逮捕」「人質の解放」「盗まれた物の奪還」など、どれを優先するのかで、警察内部や、その他の立場で、言い合いとなり、自分の望みに反する結果に怒る。


ヤッ子「駅の建築に譬えれば、今でこそ言葉が知られるようになったバリアフリーで、駅にエスカレーターを設置した。これで良いのか、改善すべきかを、利用者に問う」


ヤッ子「すると、利用者は「せっかく作ったものに、苦情は言えないが、エレベーターが無いと、使い物にならないんだよな」と、心で思うだけ。返答が来ないので、改善もできない」


音楽の先生「良い駅を建築するという、共通の目的から、どちらかが目的を変えると、もう話し合いはできません。本人達は当初の目的を保持している気持ちなので、相手が邪魔をしていると判断します」


音楽の先生。会話が落ち着いたので、話を戻す。


音楽の先生「さて、先程の話に戻りますね。僕は化学は専門外ですが、大人である僕にとっての「化学は難しい」と、学習途中のあなた達にとっての「化学はわからない」は、違うと思います。これは、化学だけでなく、音楽でもそうですね」


生徒「基礎的な知識ですか?」


ヤッ子「そうだな。ただし、知識が理解の妨げとなることもあるが」


生徒「その話は、時々聞きますが、本当ですか?」


ヤッ子。ちょっと得意気に「塩基性と酸性の「酸性」という名前の由来は、酸素が含まれていると酸性だという誤解からだ」


ヤッ子「大人になるまでの時間のうちの、どこかで、「酸素」と「酸性」は、化学的に繋がりがあると勘違いしてしまう」


ヤッ子「しかし、そのような誤解を思い付く前に、君達には酸性の意味を教える」


生徒「あ、酸素と酸性。思い付きませんでした」


音楽の先生「地球は洋ナシ形だと言われますが、真ん丸と比べて、どれだけ歪んでいるか。太陽を周る地球の軌道は楕円形と言われますが、真円と比べてどれだけずれているか」


音楽の先生「ノートを開いて、その見開きの全体に、コンパスで円を書き、地球がその大きさなら、どれだけ歪んでいるか、計算してみてください」


生徒「はい」


ヤッ子「人類で最初に飛んだのは、どんな方法で、誰だったか?」


生徒「もちろん、ライト兄弟が飛行機で飛びました」


ヤッ子「では、どうやったら空を飛べるか、小さな子供に「一番、簡単な、空を飛ぶ方法は?」と聞いたら、何と答えると思う?」


生徒「何だろう?」


生徒「うーん、風船?」


生徒「あ、そうか、風船だ」


ヤッ子「そう。初めて飛んだのは、熱気球で、モンゴルフィエ兄弟達だ」


ヤッ子「熱気球は空気より軽いものだな。では、空気より重いものでは?」


生徒「今度こそ、ライト兄弟」


生徒「きっと違うよ。だって、ヤッ子先生だもん」


ヤッ子「バレたか。次はグライダーで、それを発明したケーリーは自分では飛ばず、御者が飛んだ」


生徒「じゃあ、ライト兄弟は、何がすごいんですか?」


ヤッ子「グライダーは自分で動力を持たなかったが、ライト兄弟の飛行機は動力があった、つまり、自力で飛ぶのがすごかったんだ。しかも、小さなおもちゃではなく、人間が乗れる大きさで」


ヤッ子「まあ、話は逸れたが、最初に空を飛んだのはライト兄弟だと思って話を聞くのと、何も知らないで話を聞くのとでは、理解の仕方が違うということだ」


この、最初に空を飛ぶ話は、いらないかも。音楽の先生の、地球の形などで、目的は果たせている。


生徒達「ありがとうございます」


生徒達がバドミントンを再開する。


音楽の先生。生徒達とヤッ子を見て、満足気な表情。


音楽の先生「鍵宮先生」


ヤッ子「はい」


音楽の先生「迷っている時、行き先の看板はたくさんあるのに、ここはどこかを知らせる看板が少ない」


ヤッ子「はい」


音楽の先生「僕達は、あの子達より年上です」


ヤッ子「そうですね」


音楽の先生「僕達は、あの子達を俯瞰して、あの子達が今、人生のどこにいるかを、把握できます」


音楽の先生「でも、あの子達は、自分がどこにいるのか、自分を俯瞰できません」


音楽の先生「僕も、自分が今、人生のどこにいるか、自分では、わかっているつもりでも、実は迷っているのかも知れませんね」


ヤッ子「星山君達も、きっと、迷っているでしょう」中庭に来る前の、廊下から音楽室を見た、泣いているステラを思い出す。画像が、ゆるやかに歪んだり揺れても良い。


音楽の先生「必要であれば、力になりたいと思います。この年齢になった僕も、きっと、迷っているのですから。この年齢になった僕も、きっと、自分を俯瞰できていないのですから。況してや、未熟な子供なら」


ヤッ子。突然、姉の死を思い出す。


ヤッ子「先生……」


音楽の先生「子供達がSOSを出しやすいように、子供達のSOSに気付けるように、そして、子供達が、安心してSOSを言えるように。そんな人に僕はなりたいですし、子供達が、そんな人と出逢えますように」


バドミントンを再開した生徒達は、笑顔。雨上がりで、風景の色は鮮やか。


▽ 場面変更 ● ── ●


理科準備室。


この場面は、用いるべきか未定。そもそも、この場面が、ステラにとって心のケアになるのか、ヤッ子自身もわからないため、ヤッ子は迂闊な行動は慎むだろう。心のケアは、このような「奇跡的にうまくいった」は、推奨されない。


どのタイミングにするか、吹奏楽部の練習の前か、後か、ヤッ子がステラを待ち伏せするか。


ヤッ子。理科準備室で、新しい白衣に着替える。白衣は、不足しない枚数が、いつも用意されている。


ロッカーの新しい白衣は、クリーニングがら戻って来たシートが掛かっているか、自宅で洗濯したか。脱いだものは、簡易的な畳み方で、ロッカーの下部の手提げ袋に入れる、毎週、洗濯に持ち帰る。


ヤッ子。香水、または、消毒用アルコールを、膝の裏側に、控え目に付ける。ステラが安心感を持てるように配慮する目的。


ヤッ子。事務椅子( )机の前の椅子)の高さを調整し、いつもより低くする。


ヤッ子。ステラを、廊下から理科準備室に連れて来る。これが、どのタイミングで、どのような方法で行うのか、未定。


ヤッ子。入室する時に、ドアの前に札を提げる。「入室禁止」または「現在、入室禁止」など。


ヤッ子。入室して、引き戸に施錠。「邪魔が入らないようにな」ただし、施錠は、ステラを不安にさせる懸念もある。


ヤッ子。理科準備室をステラと共に、事務椅子に歩き進みながら。「私は、君に何があったのか知らない。しかし」


ヤッ子。事務椅子に座り、ステラの手を取り、膝の上に横向きに座らせる。ヤッ子の左手は、ステラの背中側。


ヤッ子「君が辛い気持ちなら、わずかでも、痛みがやわらげば良いのだが」


ヤッ子。横座りのステラを、転ばないように支える。軽く抱く形になる。


ステラ。無言で、ヤッ子の顔を見ようとするが、見上げることができない。


ステラ。ヤッ子の香水( )またはアルコール)の匂いが、ほんのり感じられ、「ヤッ子の腕の中は、安心できる別な空間、校内であり、昨日の自室と同じ空で繋がっているが、庇護されている」と思う。


ステラ。目を閉じて、頬をそっとヤッ子に付ける。そして、体重をヤッ子に預ける。


ヤッ子「居心地が良ければ、座っていなさい。眠ってもいいぞ」


ステラ。目を閉じたまま。「あたし、キス……」


ステラ。自分の口から出た「キス」に反応し、口角がどうしようもなく下がる。ステラの目は、画面の外にある。涙が流れ落ちる。


ステラ「……していません。キスしていません」


ヤッ子。ステラの言葉に、いくつかの可能性が考えられるので、迂闊な返答はしない。「キスをしたと疑われている」「ベタなハプニングで唇がぶつかった」


ヤッ子。ステラの意に反しない言葉を選ぶ。「キスは、大切だな」


ステラ「そうです。大切なんです。初めてのキスなんです」


ヤッ子「キスは……。好きな人と、お互いに近付いてするのが、キスだな」


ここでは、ヤッ子は饒舌でない方が良い。「お互いが味方同士であることを、態度で示す」など、いつもの楽典で言うような解説は、ここでは省く。


ヤッ子。ステラの背中越しに、腕をさする。


ヤッ子「好きな人が、いるんだな」


ヤッ子。机上のティッシュを持ち、ステラに差し出す。床のゴミ箱を、足で引き寄せる。


ステラ。ティッシュを受け取り、鼻をかむ。


ヤッ子「私は、何かを解決する力を持っていない。ここは、誠実な君が、泣ける場所だ」


▽ 場面変更 ● ── ●


体育館。放課後で、部活動が始まっている。


女子生徒が2人、ステージに腰掛けて話している。ガールズトーク。


1人は、ステラと一緒に、ストローオーボエで遊んだムギ( )大吠麦穂、おおぼえ・むぎほ)。


もう1人は吹奏楽部の部員。マスクをして、時々、鼻水をすする。


ムギは、ステラがトロンボーン先輩に片想いしていることを知りません。


ムギ「あーあ、人生、中々うまくいかないなー」


部員「彼氏とのこと? あるよねー。過去の自分を俯瞰したら、ああすれば良かったなんて」


ムギ「「あるよねー」って、あんた彼氏いないでしょ」


部員「今は彼氏より、クラリネットかな? 自分で頑張れば楽しめるから」


ムギ「吹奏楽部だもんね。あれ? でも、今日の練習は?」


部員「風邪。吹奏楽では、呼吸器の病気には、敏感なの」


ムギ「そうなんだ。まあ、あたしにもうつさないように、気を付けてよぉ」


部員「わかってるって。でさあ、クラリネットの個人練習では、誰も練習の邪魔をしないから、こういう音を鳴らしたいって思った通りにできるのが嬉しい。楽器の調子が悪いのも、自分の責任だし」


ムギ「でもステラは、思い通りにならないって、悩んでいたよ」


部員「きっと、練習方法だよ」


ムギ「練習時間を、どれだけ増やせばいいのかって」


部員「あの子って、本当は地道なこともできるのに、音楽になると違うよね」


ムギ「違うって?」


部員「メルヘンの小物だけじゃなく、衣装も自分で作ってるでしょ。そっちの方は、少しずつ形ができている途中でも、完成がわかるよね」


ムギ「うん」


部員「でも、トロンボーンをゆっくり演奏したら、完成を思い描けていないのかな、ゆっくり練習しないの。もしかすると、音楽は時間の芸術だからって、テンポを崩さないようにって、気遣いしているのかな?」


ムギ「どういうこと?」


部員「部活の初日に、あんたの彼氏が教えたんだけど、「初めてだから、音の高さは気にしないでいい。みんなの演奏を聞きながら、体を、こう、テンポに合わせて動かしながら、タイミングを合わせて、音を出せばいい」って」


ムギ「プンプン、ちょっと嫉妬」


部員「それは、初めて楽器を使って、どんな特徴のある楽器なのかを知る段階のこと。息を出すタイミングとか、唇の感触とか、トロンボーンの特徴を知る段階のこと」


部員「「慣れるため」と「みんなへの気遣い」を両立させるために、タイミングを合わせるってこと。もう今は、その段階ではないんだよなぁ」


ムギ「気遣いかぁ」


部員「楽器の練習を知らない人は、「ゆっくりだったら、誰でもできる」って言って、ゆっくり練習を否定する人がいるよ」


ムギ「そりゃそうでしょ。ゆっくりだったら、あたしだってできるのに」


部員「それが、実際に練習して、初めて勘違いだったって気付くもの。できなかったら、できるまで何回も練習するっていうけど、うまくいかないまま何回も吹いても、意味がないのに」


ムギ「できるまでって、当たり前でしょ」


部員「4回の失敗の後、5回目で成功して、できたから、曲の続きに行く。そしたら、成功率が20パーセントだけ。そんな難しい箇所が、1曲の中で10箇所あれば、全部が成功するのは無理」


部員「失敗しないように、そこだけ急にゆっくりにしたり、失敗して止まったら、「そんな演奏」の体験が増える」


ムギ「なるほど。「そこで止まる練習をする」ってことに、なっちゃうんだ」


部員「そうなのよ! 大切なのは「スムースにできる」の練習だよ」


部員「コンクール向けの話では、「練習でできないことは、本番でもできない」って言うけど、自宅でスムースにできないなら、合同練習でもスムースにできない」


部員「合同練習が難しいのは、合奏だから、自分の都合で「ここだけ、ゆっくり」とか、「ここだけ、やり直し」ができないこと」


ムギ「そうか。合同練習では、それぞれの人の都合の「ここだけ、ゆっくり」ができないから、一定のテンポで……、あ! だったら、メトロノームを使ったら?」


部員「それも役立つよ。っていうのは、「メトロノームと合奏する」の練習になるから」


ムギ「へえ。メトロノームと合奏かぁ」


部員「演奏の表現方法として、「テンポの揺らぎ」があって、指揮者に合わせるってのはあるけど、今は、そっちの話じゃない。メトロノームを使うのが苦手ってのは、合奏も苦手なんだよ」


ムギ「じゃあ、「できるまで何回も」ってのは、運動会の障害物競走のようなものなんだ。ゴールに行くのが目的で、難しい箇所を上手に演奏できないままなんだ」


部員「速いスピードで練習していたら、一回も成功しないうちに、失敗の経験ばかり増えて、時間が過ぎて行く。それより、ゆっくりで成功したら、成功体験の回数が増える」


ムギ「でも、ゆっくりなら、成功とは言わないでしょ?」


部員「それも勘違いなのよ。ゆっくりでもできなかったら、速くでもできないのは当たり前。自転車じゃないんだから」


ムギ「あたしは、自転車は止まった状態でバランスをとって練習したよ。お父さんに教わった」


部員「あっ、そうなんだ。止まっていてもバランスがとれるから、走っても大丈夫なんだ」


ムギ「ステラは、ゆっくり練習しないの?」


部員「気持ちが焦っているせいか、ゆっくりしない。大切なのは、テンポじゃなくて、拍なのに」


ムギ「拍って?」


部員。手拍子で「タラララタラララ」の「タ」で手を叩く。速いテンポ。「この演奏があったとして、失敗しながらなら、こうなる」


部員。手拍子しながらだが、「タラララ……タラ……ララタ……ララ……ラ」となる。


ムギ「ああ、拍って、手拍子の間隔ってことか」


部員「そう。できないなら、全体をゆっくりする」ゆっくりのテンポで手拍子しながら「タラララタラララタラララ」。


部員「できるところは速く、できないところはゆっくりなら、拍が崩れる。それよりも、できるところも、できないところも、同じテンポで練習。失敗しないテンポで成功する。成功がしっかり定着したら、ほんの少し速く」


ムギ「焦っちゃ、駄目なんだ」


部員「焦ったら、きちんと、できていないのに、次に進んでしまう」


ムギ「できていないのにかぁ」


部員「てきたからって、すぐに次に進むのも、良くない」


ムギ「できたら、いいんじゃない?」


部員「9回目までできなくて、10回目でできても、次に進んだら、成功確率は10%だよね」


ムギ「なるほど。確率が低いのか」


部員「プロじゃないんだから、できないことを責めないのは当然だけど、いつでも100%の確率で成功するのは、目指してほしい」


ムギ「高い確率で成功するように、ゆっくりで成功体験を増やすのか」


部員「そう。成功体験を増やして、成功確率を上げる」


ムギ「夏目漱石の、何ていう小説かは知らないけど、読書をすると、知らないことを調べないで、次々と読み進む、悪い癖が付くんだって。それに似ているのかな?」


部員「夏目漱石なんて、読んでるの?」


ムギ「違う違う。お父さんが、読書が好きで、教えてくれた」


背景に、「『門』夏目漱石」「若い僧「書物を読むのは極悪う御座います」」を表示する。


部員「ステラは、「ゆっくりと、確実な成功を定着させる」って方法をしないから、2種類の失敗をする」


ムギ「2種類って?」


部員「うーん……、本当は「ド」なのに、「レ」だと勘違いして、「レ」を吹くこと。それから、「ド」だって知っていたけど、なぜか「レ」を吹くこと。ギターだったら、隣の弦を弾いちゃうような?」


指を1本、2本と出しながら、背景に、失敗した時の状況のステラを、2種類表示。


ムギ「聞いている方は、単に「間違えたな」って思うだけ」


部員「ステラは、みんなと同じテンポになることを練習しているの。息遣いとか、スライドの位置の正確性とか、身に付くような練習じゃないの」トロンボーンのスライドを、素早く動かす仕草。


ムギ「そうだよね。ちゃんとゆっくり練習しないと」トロンボーンのスライドを、ゆっくり動かす。


部員「あ、違うよ。ゆっくりって、スローモーションじゃないの。スライドは素早く。順番で言うと、「1.音を出している、ブー」「2.音を止める、ピタッ」「3.スライドを適した位置に合わせる、シュイン」「4.音を出す、ブー」なの」


ムギ「だから、ゆっくりでしょ?」


部員「次の音を出すのは、スライドがちゃんと移動してからっていう順番。速かったら、その順番が狂ったり、位置の確認がきちんとしていなかったり。大切なのは、「慌てないで順番に」なの」


ムギ「でも、そんなに、たくさんの手順があるなら、ゲシュタルト崩壊が起きそう」


部員「なに? それ」


ムギ「同じことを、何度も何度もやっていたら、簡単な漢字、例えば「近い」っていう字も、わけがわからなくなるって、夏目漱石が書いていた」


部員「まあ、単純なことが組み合わさって、複雑になったことを、何度も何度もやっていたら、混乱するよね」


ムギ「混乱するのに、慌てないでって、難しそう。それなのに、演奏の表現を工夫するって、無理でしょ」


部員「慌てないで、できなければ、表現のためのバリエーションも無理。もちろん、表現を意識しながら、「慌てないで、できる」ってのを練習するのも、いいと思うよ」


部員「だって、感性を磨いて、感情を込めた演奏をしたくても、まずは、ちゃんと演奏できないと無理。「素晴らしい演奏」って、「ちゃんとした演奏」を拡張したものだから」


部員「もちろん、「行く行くは拡張する」を、意識するのは良いこと。それを踏まえた上で、「ちゃんとした演奏」の練習をする」


ムギ「でも、スライドを合わせるのと、息を吹くのは、同時でしょ?」


部員「ギターは、わかる? コードを、一瞬でぱっと変えるの」


ムギ「あれも超能力だよね」


部員「左手の、4本の指の全部を、適した位置に合わせるのは難しいから、最初に出す音だけ、指を合わせる。その他の指は、一瞬だけ遅れてもいいってこと」


ムギ「あっ、そうなんだ」


部員「いくつものことが「同時に」というより「素早く順番に」は、頭で理屈はわかっていても、実際にするのは難しいもん」


ムギ「そうそう、そうだよね」


部員「そうやって、成功が定着するまで何度も練習して、定着したら、ほんの少しだけスピードアップ。失敗したら、元のゆっくりに戻して、失敗の経験が増えないようにする。成功の経験が多いようにする」


ムギ「まあ、理屈はそうだけど、理屈通りにいかないこともあるよね」


部員「まずは、理屈通りにしてほしい」


ムギ「もしかすると、ステラは「プレイヤー」ではなく「コンポーザー」のタイプかも」


部員「「プレイヤー」と「コンポーザー」って?」


ムギ「楽器演奏とか、スポーツとか、演劇とか、動きをするのが「プレイヤー」」


ムギ「メルヘンの小物や衣装を作ったり、作曲したり、建築とかもそうかもしれない。じっくりと作ったものを渡すのが「コンポーザー」」


第6話で、ヤッ子の姉、鍵宮美音( )かぎみや・みね)が、「あたし、人前で演奏なんてできません。あたしがしたいのは、絵を描くことです」と言う場面を表示する。


部員「そうかなあ。とんでもない曲芸のような楽器でもないから、普及しているんでしょ。丁寧に練習したら、誰にでもできると思うけど」


ムギ「工場で働いていて、機械ばかりを相手にしていた人が、いきなり営業職をするのは、難しいよね。もちろん、その逆も」


部員「あ、聞いたことがある」


ムギ「俗に「文系と理系」って分け方があるよね。「どちらかが完全にできて、どちらかが完全にできない」って、明確には分かれていないし、先天性か後天性かも決められないかもしれないけど」


部員「努力して、どっちも、それなりにできるようになることや、それなりにできるようになる人がいるよね」


ムギ「トランプの対戦でも、駆け引きのあるもの、パズル的なもの、速さが重要なもの。得手不得手があるよね。戦略の説明を、されても、理解できないとか」


部員「うちの、お母さんは、料理をしながら、洗濯機が終わったら対応して、テレビ番組を見て笑って、電話にも対応して。それを見たお父さんが、超能力だって言ってる」


ムギ「でも、どうしても苦手なことがあるから。まあ、ステラは自分で「演奏したい」って思っているから、いいけど」


部員「先生も、「普通は、これくらい、練習すれば、できるはずだ」っていうようなことは、言わないようにって、指導しているよ」


ムギ「物理的に自分の限界が決まるのでもないし、本人だって限界はわからない。限界がわかっているなら、仕方ないけど、限界を勝手に決めるのは、勿体無い」


部員「ステラは、メルヘンの小物や衣装を、丁寧に作るよね。たまたま、トロンボーンの練習が、丁寧じゃないからって、「この子は、きちんとしていない」って、人格否定も勿体無い」


ムギ「両方ができる人もいるけど、だからって、全員が両方をできるとは限らないし。もちろん、「下手の横好き」で、好きだからするってのは、いいと思うよ。学校の部活だし、下手だから辞めろって、誰も言わないよ」


ここで、第6話のいくつかの場面を表示する。


▽ 場面変更 ● ── ●


吹奏楽部の練習中。


吹奏楽の先生。黒板に書きながら。「「下行進行」を、「下降進行」と、書き誤ることが見受けられます」黒板に、「こちらが正しい」を示す。先生の字はきれい。


生徒「先生って、達筆ですね」


吹奏楽の先生「お褒め下さり、ありがとうございます。本音を言いますと、達筆ですとか、美しい字を書くのは、自信がありません。そのため、丁寧に書くことは心掛けています」


生徒「謙遜ですね」


吹奏楽の先生「謙遜と思われたのですか。ポスターや看板では、文字をレタリングというデザインをして書くことはあります。今、黒板に書いたのは、読み誤りをしないこと、読んで気分が悪くならないように留意しました」


吹奏楽の先生「文字の正誤は、線の数や、点の数に気を付けます。きれいな文字は、バランスに気を付けます」


吹奏楽の先生「例えばこれ、「あ」の文字をきれいに書く手引きは、小学生の頃に教わったと思います」


吹奏楽の先生。黒板に、1文字分のマス目( )正方形)を書き、縦横「2×2」に分割する点線を書く。そこに、大きく「あ」と書き、小学校で習う補助線( )点線の赤マルなど)を、赤色で加える。


吹奏楽の先生「このように、教材にはバランスを示していますが、何となく、「当たり前のことが示されている」と思いながら、きれいな字が書けないでいます」


空中の壁の、80cm四方のマス目に、「あ」と書く仕草。直立した姿勢で、腕だけ大きく動かして書く。


吹奏楽の先生「いざ、書く時は、「丁寧に」というアドバイスを勘違いして、ペン先に集中してしまいます」


再度、空中の壁に「あ」と書く仕草を、途中まで。手の動きに合わせて、顔が追随する。これにより、ペン先を凝視することを表現する。


吹奏楽の先生「こうすると、線の長さや、円み( )まるみ)の大きさの、バランスを良くできません」黒板の「あ」の補助線を指す。


吹奏楽の先生「バランスの取得には、いくつかの案があると思います。僕は、こんな方法をしています」


黒板の、「あ」を書いたマス目の、縦横「2×2」を更に分割し、「4×4」にする。


「あ」は3画なので、3本の線の、始点と終点に、赤で「●」を付ける。


「あ」には、大きな円みがあるので、円の上端と下端に水平線、円の左端と右端に鉛直線を書く。


吹奏楽の先生「1文字分は、「4×4」に分けました。この線は、どこから始まって、どこに行くのか、どの分割の箇所なのかを、確認してから、書き始めます」


吹奏楽の先生「この、大きな円みは、どのくらいの大きさなのか、どの分割の範囲なのかを、確認してから、書き始めます」


吹奏楽の先生「僕は、さっき、ペン先に集中すると、バランスが悪いと言いました」再度、空中の壁に書く仕草で、手に顔が追随する動きをする。


吹奏楽の先生「このように、「どこから、どこまで」「どの範囲の大きさ」を意識すると、バランスが良くなります」再度、空中の壁に書く仕草で、直立の姿勢で、腕だけ動かす。


書き始めの位置で、まだ腕は動かさない。直立の姿勢のまま、首だけキョロキョロし、行き先を確認する。にっこりして、腕を動かす。


吹奏楽の先生「この方法で、バランスが良くなります」


吹奏楽の先生「次に、細かなところに気を付けます」


黒板の「あ」の隣に、「下行進行」の「行」を書く。


吹奏楽の先生「この、左上の2本の線は、「少しだけ曲がる」と教わったと思います。その「少しだけ」が、どの程度なのか。お手本をよく見て真似します」


吹奏楽の先生「それでも、うまくいかなければ、自分の書いたものと、お手本を、重ねて透かして、見てみましょう」


吹奏楽の先生「僕は、このように練習しましたが、今も、文字を書く前に、「この範囲に、文字を書こう」を空想します」


黒板に、4文字が書ける横長の長方形を書く。それを、4文字分に分割すると、正方形が横に4つ並んだようになる。


吹奏楽の先生「文字を書く前に、このようにマス目を空想します」


4つのマス目のうち、1番目、2番目、4番目を、「2×2」の点線で分割する。3番目を、「4×4」の点線で分割する。4つのマス目に「下行進行」と書く。1文字ずつ、書く前にちょっと考える。


吹奏楽の先生「今は、少し大袈裟に、時間を設けて書きましたが、こんな感じに、丁寧に書きます」


吹奏楽の先生「字を書くのが得意ではないので、音楽のようにテンポを保ったまま、素早く字を書くと、実は下手だというのが露見してしまいます」


生徒「テンポ良く、書いてみて!」


吹奏楽の先生。微笑みながら。「無理ですって」


吹奏楽の先生。気分を変えるように。「さあ、雑談は終わりにして、続きをしましょう」


▽ 場面変更 ● ── ●


さっきの、体育館での話の続き。


1人は、ステラと一緒に、ストローオーボエで遊んだムギ( )大吠麦穂、おおぼえ・むぎほ)。


もう1人は吹奏楽部の部員。


女子生徒が2人、ステージに腰掛けて話している。ガールズトーク。


ムギ「自分だけだったら、スピードも自分次第。恋愛もそうだったらいいのになぁ。理屈はわかっているのに」


部員「男って気分次第で、全然動かなかったり、焦ったりするよね」


部員「恋愛は、わからないけど、楽器の練習って、譬えれば、家の建築。見た目では、柱がドーンと立ち、棟上げが、派手で喜ばれる。しかし、その前に、土台などの地味な作業が必要。土台が疎かなら、いつまでも「うだつが上がらない」になる」


ムギ「近所で、家を建てるのを見たことがあるけど、土台が鉄筋コンクリートで、コンクリートの中の鉄筋を、チマチマと組み立てていた」


部員「鉄筋って、組み立てるの? コンクリートの中にあれば、いいんじゃないの?」


ムギ「何が正しいのかは知らないけど、あたしが見たのは、1cmくらいの太さで、長い鉄筋があって、それを、碁盤の目のように、タテヨコに並べるの」


ムギ「並べて終わりじゃなく、それぞれの交差する場所を、細い針金で、全部を結ぶの」背景に、鉄筋をタテヨコに並べて、交差の箇所を、番線( )鈍し鉄線、細くて柔らかい針金)で縛って固定する様子。


ムギ「それを見て、あたし、「見えないところで、こんな地道な努力が」って思ったの」


部員「音楽は時間の芸術だからと、演奏用のテンポで練習したい。しかし、その前に、正しい順番ができるように、地道な練習が必要」


ムギ「うまくいくまで、ゆっくり、何度でもって、できないかなあ。でも、恋愛って、消しゴムで消えないもんね」


男子生徒。ケースに入れたエレキギターを背負っている。ステージに座っている2人の後ろから、2人の間に、ライブハウスのチケットを差し出す。


部員。振り返って、男子生徒の顔を見て、少し怪訝な表情。「これ、どういう意味?」


男子生徒「俺のバンドが、ライブハウスに出るから、来てほしいんだ。タダ券だよ、あげる」


ムギ「タダ券? でもこれ、本当は、売り物のチケットじゃないの?」


男子生徒「いいのいいの、ノルマ券だから」


ムギ「ん? ノルマ券?」


部員「「俺のバンド」って言うけど、「俺のいるバンド」でしょ」


男子生徒「いや、俺のバンドだ。俺の練習量は、半端じゃないからな。夜は眠いのにギターを弾いていて、弾きながらいつの間にか眠って、朝、目覚めたらギターを抱えていたから、続きを練習する」背景に、その場面を描く。


部員「自分の練習は自慢するけど、他人がどんな練習をしているかは、知ることもないし、褒めないんだ」


男子生徒「でも、俺の親も、俺のことを褒めないんだ。練習しないで上手になったらすごいけど、練習して上手になるのは普通のことだって。だから、仕方なく自分で褒める。ナルシストは、こうして出来上がった」


ムギ。話を変えるように、男子生徒の手元のチケットを見る。「へえ、ライブって、コンサートのこと?」


男子生徒「そう。中学生で、この店のオーディションに合格するってのは、珍しいんだぜ」ギターをケースから出さずに、演奏する真似。「俺はギターだから、一番かっこいい」


ムギ「オーディションって?」


男子生徒「ああーんと……。まあ、簡単に言えば、演奏ステージのある喫茶店だと思ってくれ」


ムギ「喫茶店?」


男子生徒「そう。夜は酒も出すけど、昼間は酒の無い軽食喫茶。そこで演奏するんだ」


ムギ「で、オーディションがあるの?」


男子生徒「そう。同じように、ライブハウスは、あちこちにあるけど、この店なら良い演奏が聞ける、あの店なら、下手なバンドばかり。だったら、良い演奏を聞きたいよなってなる。だから、バンドの腕前が、店の繁盛に直結する」


ムギ。まだ、よくわかっていない。


男子生徒「だから、上手いバンドだけを出演させるために、オーディションをするんだ」


ムギ「ということは、演奏が上手いっていう証明ってことだ」


男子生徒。ちょっと得意な顔。


背景に、ライブハウスの店内の様子。カウンター席、ボックス席。2つの店を比較し、演奏の音を、オノマトペで「キラーン」「ボロボロ」で表現。客の表情も違う。


部員。ムギに向かって。「この店って、結構ハードルが高い、老舗だよ」


ムギ「そうなんだ、すっごーい」


部員「で、そうしてあたし達にくれるの? そんなに親しくないでしょ」


男子生徒「女子限定! 俺だって、女にもてたいんだ。そのために、こうしてチケットを配っているんだ。ねえねえ、女友達を呼んでくれるなら、2枚ずつあげようか?」


部員「純粋に音楽が好きなのか、もてたいから音楽をしているのか」


ムギ「そんな言い方……も、あるかな。目的の手段として、音楽を使うのも、あっていいと思うよ」


男子生徒「そうだよ。しかも俺は、純粋に音楽が好きで、練習したんだ。ついでに、女も手に入れたい」


部員「まあ、出逢いってのは、恋愛の始まりとして重要だから、そのきっかけを作るのも大切だよね。確かに、この店で演奏できるのはすごいから、物見遊山で人は寄って来るだろうね」


部員。男子生徒を見ながら、チケットを、団扇のようにヒラヒラさせる。


男子生徒「そうだろう」喜んで、ちょっと自慢げに、ギターを弾く真似。


部員「でも、性格が悪かったら、落差が大きい分だけ、嫌われる」


この話は、第12話の、キャンプ場で、トロール将軍の魅力の話に通じる。


男子生徒「俺の性格が悪いっていうのか!」


部員「ギター以外にも、人を評価する基準は多いよ」


ムギ「確かに」


ムギ「食べ物なら、味、見た目、栄養、お腹が空いたから。目的や、評価の基準はいくつかあるよね。でも、それは、恋と同じだとするのは、違うと思う」


部員「真剣に音楽をやっていて、副産物で恋愛ができるのは、幸せだとは思うよ。でも、恋って、何かのついでにするもんじゃないでしょ」


男子生徒「俺は、恋愛も真剣だ!」


部員「自分がその人を好きになって、恋愛が始まるのではなく、群がって来た中から選ぼうとしているんだよね。代わりはいくらでもいるって考えているんだから、相手を大切にするとは思えないな」


ムギ「そういう考えもあるけど、何かを一所懸命やった人って、自分に厳しいから、他人には優しくできるんじゃない?」


男子生徒「その通り」鼻から強い息を出す。


部員「ひとつの目標を達成できたのはすごいけど、喜びのお裾分けじゃなくって、さっきの言い方だったら、自慢でしょ。相手を喜ばせるよりも、自分がいい気分になりたいだけ」


ムギ「それもそうか……」顎に手をあて、思案する。


男子生徒。少し怒ったように、すねたように。「俺は、他人にも優しいのっ!」


部員「じゃあ、他人に優しいんなら、あと2枚、タダ券くれる?」


男子生徒。少し考えてから。「まさか……、二人とも、彼氏と?」


部員「彼氏じゃないよ。安心していいよ、女の人だから」


男子生徒。安心した顔。


部員「年の離れた従姉だよ。スタジオミュージシャンだから、感想を聞けると思うよ。歯に衣着せぬ感想が。嬉しいでショ」


▼ CM明け。   ▼──   ──▼


CM明けの定型。他の登場人物は知らない、自宅などの場面。


ハル。自宅。外は、夜の雨。


楽譜を見ながら、ギターを弾いている。クラシックギター曲の楽譜集。


ハル「この「ミ♯」って? ♯はピアノなら黒鍵なのに、ミの半音上のファは白鍵だし、じゃあ半音低い?」


第2話で、ミッツから「変位記号」「本位記号」の楽語を教わり、ハルは「♯や♭は、必ず黒鍵」と誤解している。


ハル。弾いていて「やっぱり、半音高いのかなあ」また、弾いてみる。


ハル「この「×」マークは何だ? 弾いちゃいけないのか? ここにも、形は違うが「×」がある」


楽譜には、音符の玉が「×」の不定音高と、ダブルシャープがある。


ハル「フェルマータだ。これは、音価が2倍になるんだ」楽譜を表示する。


クラシックギターでは、1段の五線に、2声以上が書かれることがある。Aさんは、4分音符にフェルマータ、続く4分休符には無い。Bさんは、2分休符にフェルマータ。


ハル「あれ? 4分音符の2倍と、2分休符の2倍なら、比率が違うな。あー、わけがわからん」



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