第8話 Bパート
楽譜の読み方を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
オリジナル『ガクテン』では、楽典以外の物語部分に、R15の暗い箇所がありました。暗い箇所を、ほぼ単純削除して、ほのぼの会話を中心にします。
※ R15以外は、そのままですので、二重投稿に近いものです。
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▼ Bパート。 ▼── ──▼
Aパートの続き。
音楽室、放課後。
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子。『月の光』(ドビュッシー)の、レガートとフレーズの区別。
ヤッ子「付点と連符の話では、「跳ねる感じ」の、紛らわしいのがあるな」
ミッツ。ちょっと意地悪な気持ちで「ねえ、ショージ。さっき『ユーモレスク』を弾いたよね。もう一回、ステラちゃんにも聞かせてあげて。サンプルで、2小節だけ」
ショージ「よーっし。しっかり拝聴してくれよ」弾く。
ミッツ「さーっすがー。じゃあさ、次は、何かアドリブでブルースを」
ショージ「俺は、ピアノが弾けないのっ! アドリブなんて無理」
ハル「ヤッ子先生は、どうしてアドリブができるんですか?」
ヤッ子「早坂君には、音階スライドなどで、「よく使う鍵盤」の話をしたな」
ハル「はい。ペンタトニックなど」
ヤッ子「「よく使う」というのは、音階だけでなく、リズムやメロディも、ジャンルによって「よく使う」というのがある」
ハル「はい」
ヤッ子「様々な「よく使う」があって、それを覚えていることを「引き出しが多い」なんて言い方をする。「引き出しを増やす」は「音楽理論を学ぶ」ということだ」
ハル「ここで言う「音楽理論」は、書籍に載っていないものも含めて、「効果的な工夫」ですね」
ヤッ子「そうだ。演奏中に、今ここで相応しい手法を用いるのがアドリブだが、大切なのは、演奏のテンポを乱さず、手法を選択して演奏することだ」
ハル「「よく使う」という手法ですか……」
ヤッ子「もちろん、効果的なら、使用例が少ない手法も覚えておく。しかし、今みたいに、ちょっと弾いてみてという時なら、雰囲気を楽しみたいのだから、「よく使う」手法が適しているな」
ショージ「でも、ブルースをアドリブだなんて」
ヤッ子「蜜霧君は、何か企みがあるんだろう。芝居じみたやり取りに乗ってみないか。コードのC7を、「ジャン、ジャン、ジャン、……」と弾いてみてくれ。メロディには、ソ、ラ、シ♭をデタラメに「タントラント」と鳴らしてくれ」
ショージ「ううーんと、こんな感じかな?」弾く。
ミッツ「ステラちゃん、わかった?」
ステラ「え? 何がですか?」
ミッツ「ショージの演奏サンプルで、2曲弾いたでしょ。2種類の跳ねる感じには、ちょっとした違いがあるんだよ」
ステラ「えっ?」
ハル「えっ?」
ショージ「えっ?」
ミッツ「なんであんた(ショージをツンと指す)まで驚くのよ、弾いた本人なのに。……って、やっぱり、意識していなかったか」
ヤッ子「まあ、雰囲気が似ているし、実際、3連符の意味で付点の記譜をしているものもあるからな」情報過多に感じなければ、背景に「記譜」と、フリガナの「きふ」と、説明「楽譜の表記、書き方」を表示しても良い。
ハル「シャッフルの記号の話ですか?」
ミッツ。ハルはヤッ子に返答したが、話を横取りするように。「そう。楽譜の始まりに、シャッフルのこれが書いてある代わりに、こう書いているものもある」
ミッツ。黒板に、2種類のシャッフル記号の表現を書く。「8分音符が2つ=4分音符と8分音符のシャッフル」と、「付点8分音符と16分音符=4分音符と8分音符のシャッフル」
ステラ「イコールで繋げていますが、おかしいですよね」
ハル「これは、算数のイコールの意味ではなくって、「こう書いてあれば」「イコール」「このように演奏して」の意味なんだ」
ミッツ。黒板に書いた「付点8分音符と16分音符=4分音符と8分音符のシャッフル」を指しながら話す。
ミッツ「ショージは、これとこれの、区別をしないで演奏したけど、この記号が書いていなければ、普通の演奏、つまり、区別して演奏するのが正しい。別な楽譜だもんね」
ステラ「そうですよね、それって、違いますよね」
ミッツ。黒板に、4種類のセットを書く。
セット(1)、4分音符。その下に、4分音符の音価を表す横長の長方形。長方形の左右の両端から、下に点線を伸ばす。この点線は、4分音符の全体の音価を表し、この下に書く例と比較するため。
ミッツ「この下にも、別な音符を書くけど、どれも、これ、4分音符と同じ時間だからね。いつものように、この横幅が、鳴らし続ける時間の意味だよ」
セット(2)、棒が上向きの、付点8分音符と16分音符のセット。その下に、音価の長方形。長方形は音価を4等分する線を書くが、付点8分音符は点線で区切る。音価の長方形の下には、棒が下向きの、16分音符を4つ、符桁で繋げる。
セット(3)、棒が上向きの、4分音符と8分音符の3連符。その下に、音価の長方形。長方形は3等分する線を書くが、3等分した左側2つの区切りは点線。音価の長方形の下には、棒が下向きの、8分音符の3連符、符桁で繋げる。
ヤッ子。ミッツが黒板に書いている間に、ミッツから演奏を頼まれることを予測し、ピアノの椅子に座る。
ミッツ「(3)の下の音符は、有名な『禁じられた遊び』だね。『ロマンス』っていうタイトルもあるよ」
ヤッ子。ピアノで、5小節くらい弾く。後でシャッフルと比較するので、少しテンポが速い。
ミッツ「ありがとうございます」
ステラ「ありがとうございます」
ミッツ「本当は、クラシックギターのソロ曲だけど、ヤッ子先生なら、ピアノで弾けると思いましたので」
ヤッ子。微笑みで応える。
ヤッ子。(2)の演奏を4回(4拍分)、(3)の演奏を4回(4拍分)。両方を何度か交互に弾く。左手がアルペジオで、右手は拍の頭だけ。
ステラ「これを、跳ねる感じにすると、紛らわしい」
ヤッ子。さっきと似た、(2)の演奏を4回(4拍分)、(3)の演奏を4回(4拍分)。両方を何度か交互に弾く。さっきと異なるのは、右手は拍の頭だけでなく、(2)は「タンタ」、(3)は「タンンタ」を、跳ねる感じにする。
ミッツ「どう、ステラちゃん。わかった?」
ステラ「はい、違いがわかりました」
ハル「3等分と、4等分の違いだから……12等分か!」背景に「3×4=12等分」が、輝いて表示。
ミッツ「素晴らしい! ハル、エクセレント、ハクビシン!」
ヤッ子「3等分と4等分は、どっちも「跳ねる感じ」で似ているから、ごっちゃになっていることもある」
ミッツ「跳ねる感じじゃない曲で、こだわって区別していることもあるんだよね」
ハル「例えば?」
ミッツ「よくぞ、聞いてくれた」歯をむき出しにした笑顔。
ヤッ子。ミッツにピアノを譲る。
ミッツ「しっかり拝聴しなさい」『月光』(ベートーベン)を弾き始める。1小節目の次は、すぐに5小節目に繋げる。
ミッツ「わかった? さっきハルが、タイトルを間違えた曲で、『月光』だよ、『月の光』じゃないよ」
ステラ「うーん、もうちょっと」
ハル「具体的に、楽譜が見たい」
ヤッ子「先に、説明用の黒板を見るのが、良いだろう。右手のメロディは(2)で、左手の伴奏は(3)だ」
ハル「あっそうか」
ミッツ。『月光』の5小節目の、3拍目と4拍目を、何度も繰り返す。
ヤッ子。黒板に改めて音符を書く。付点8分音符と16分音符のセットを、棒を上向きに。その下に、音価を表す長方形を4等分する図を書く。付点8分音符の音価は、16分音符3つ分に、点線で区切る。
ヤッ子。その下に、3連符の音価を表す長方形。その下に、3連符を、棒を下向きで。
ハル「やっぱり、12等分ですね?」
ヤッ子「早坂君は、理屈の理解が素早いな。1拍の短い時間を、12等分するのが、数学的だな」
ステラ「そんなの、不可能です」
ヤッ子「安心しろ。こんな無茶苦茶なことを、一般人には求めないから。蜜霧君は、幼少の頃からクラシック音楽に縁がある、特殊な人だからな」
ミッツ「それ、褒め言葉ですよね」
ヤッ子「もちろんだ。蜜霧君は、『幻想即興曲』が弾けるだろう? きっと、「なぜか弾けた」という経験ではないか?」
ミッツ「その通りです。どうしてわかるんですか?」
ヤッ子「早坂君は、練習してきちんと弾けるようになるだろう。12等分を忠実に」
ハル「ピアノは、勘弁してください」
ヤッ子「あはは、まあ、生徒それぞれを、推測してみただけだ。そっと紹介はするが、無理強いはしない。所詮、他人の心なんて、正確に把握するなんて無理だとは、自覚している」
▽ 場面変更 ● ── ●
下校中の生徒2人。
偶然にも、同じ時間(音符での音価)を、異なった等分をする話をしている。
生徒A「手拍子で、左手が2等分、右手が3等分を、同時にできる?」
生徒B「どういうこと?」
生徒A「まず、両手で普通に叩くと、こうだよね」自分の腹か胸を、両手で同時に、ゆっくり(80BPM程度)叩く。
生徒B「うん」
生徒A「右手だけ3等分すると……」左手はさっきのまま。右手だけ3等分になる。「……こうでしょ」
生徒B「うん、わかる」
生徒A「じゃあ、今度は、左手を2等分にすると……」同じテンポで、右手は3等分しないで、左手だけ2等分する。「……こうでしょ」
生徒B「うん」
生徒A「これを、左右で同時にする」
生徒B「えー、無理だよ。ちょっと、やってみるね……」やってみるが、混乱している。「……やっぱり無理」
生徒A「実はこれって、「トントコトン」で簡単なんだよ」
生徒B「トントコトン?」
生徒A。両手で同時にやってみる。
生徒B「本当にトントコトンだ」生徒Aに合わせてやってみる。ちょっと混乱するが、できる。
生徒A「できたじゃない!」2人で喜ぶ。
生徒A「でもね、叩きながら、突然、片手だけにすると、混乱するよ」
生徒B「叩きながらっと……」両手でトントコトンをして、急に片手だけになると、できない。「……本当だ、なんでぇ?」
2人で笑い合う。
▽ 場面変更 ● ── ●
さっきの続き。
音楽室、放課後。
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子。『月光』(ベートーベン)の、12等分。
ヤッ子「ところで、音価の誤りと言えば、早坂君、この曲は、どう思う?」さっき出した楽譜集から、『春の歌』(メンデルスゾーン)のページを開く。「これだ」
このページにも、手書きメモが、たくさんある。主にコードネームが手書きされている。
ハル「えーっと、これは「2/4拍子」だから……」背景に手拍子の楽譜。拍子記号から「4分音符」「2つ」の差し棒。その下に、8分音符2つを符桁で繋いだものを、2セット。
ヤッ子。2小節目の上段を指して「ここ、8分音符が4つで正解だが、右手でAさんとBさんの、2人分があるからな」楽譜が、AさんとBさんを色分けされる。
ここでは、1小節目のAさんに16分音符があるので、2小節目から確認するように指示したが、1小節目からの確認でも良い。
ハル「はい……。Aさんは正しい」背景に、大きく2小節目。「これは下向きの棒があるけど、玉を共有しているから、足し算しないのかな。足し算すると、溢れるし」
ヤッ子「ふふーん。いいねえ、様々な可能性を思い付くのは、早坂君が謎解きをたくさん練習したからだろうな」
ヤッ子「そして、どの可能性が当たりなのか、答えは1つだろうが、確認するまでは、全部の可能性は未確認状態だと認識している」
ヤッ子「だったら、次の小節はどうだ?」
ハル「えーっと。やっぱり、これも溢れる。ヤッ子先生、やっぱりAさんはぴったりなのに、Bさんは溢れます。これも、市販の楽譜なのに、誤りですか?」
ヤッ子「これは正しい。玉が小さい音符があるだろう、それを無視したら、どうだ?」
ハル「えっと、もう一度計算します」
ヤッ子「まだ慣れていないから、ゆっくり計算したまえ」
楽譜の、装飾音符が赤く点滅し、ゆっくり消えて行く。または、薄い水色になる。
ハル。「小さい音符を無視したら、ぴったりです」
ここまで、画面の一部に、楽譜を表示したまま。ハルが迷っている間、視聴者も確認するため。ずっと楽譜だけの画面なら退屈なので、ハル達の顔も表示する。
とはいえ、画面に表示された楽譜で確認視聴者もいるので、楽譜の表示を邪魔しない程度に、ハル達の顔を表示する方法が良さそう。
ヤッ子「そうなんだ。その、小さな音符は、「装飾音符」だ。音符の玉が小さいから「小玉」とも呼ぶ」背景に「装飾音符」と、そのフリガナ。「装飾」の部分を、ぼんやり色分けし、「飾りの意味」と指し棒。
近くに「俗称は「小玉」」と、フリガナも表示する。
ショージ。ステラに小声で。「普通の音符は、肉食音符」
ヤッ子。ショージに注意。「学んでいる最中の者に、嘘は言わないの」ショージの背景の「肉食音符」に×を付ける。
ショージ「棒が短く、玉も小さいと、ものの数ではないってことですね」
ミッツ。ショージに向かって。「冗談は面白いけど、いつでも喜ばれるとは限らないよ。今は真面目に学びたい気持ちが強い時だから、冗談はダメ。特に、下ネタや、下ネタもどきは、喜ばれるどころか、邪魔なだけ」
ヤッ子。無反応な普通の口調で「つまり飾りの音符ってことだ。歌でいえば、コブシが回るようなもんだ」
ハル「民謡や演歌の?」
ヤッ子「そう。蜜霧君、ちょうど、ピアノの前に座っているから、いいように扱って悪いのだか、これを、最初の部分だけでいいから、装飾音符無しで弾けるかい?」
ミッツ「あ、やってみます。そんな弾き方やったことないんで……」弾いてみるが、うまく弾けない。「……ああーん、やっぱり駄目です」
ヤッ子「済まなかった。みんな、蜜霧君の名誉のために言っておくが、いきなり、いつもと違う演奏は難しいもんだ」
ヤッ子。ミッツに代わって、ピアノの椅子に座る。
ヤッ子「私も挑戦してみるが、私が失敗しても、温かい目で見てくれ」テンポの乱れなく、弾ける。
ヤッ子「これが、装飾音符を無視した場合だ。早坂君、次は装飾音符も含めて演奏するから、今のテンポで、手拍子しながら、各小節の音価が正しいか、確認してくれないか。要するに、拍子が乱れないかってことだ」
ハル「はい」手拍子しながら、ヤッ子の演奏を聞く。
ヤッ子「どうだ? ぴったりだろう」
ハル「はい。綺麗ですし、なんだか誤魔化されているようです」
ヤッ子「ははは。メンデルスゾーンは、喜ぶだろうな」
ヤッ子「装飾音符は、しっかり鳴らすが、音価の足し算には含めない。ということは、どこかの隙間に、そっと潜り込ませるのが、装飾音符だ」
ハル「そっと潜り込ませるって、雰囲気はわかるけど、釈然としない」
ヤッ子。ピアノをミッツに譲り、黒板に大譜表。右手の段は、16分音符2個を符桁で繋げた装飾音符で「ドレ」の次に、4分音符の「ミ」。左手の段は、4分音符の「ド」だけ。
ヤッ子「これを弾いてみるが、弾き方には2種類ある」
ヤッ子「これとこれが同時の場合と」両手の4分音符同士を点線で繋ぎ「a」を添える。
ヤッ子「これとこれが同時の場合だ」右手の装飾音符の先頭から、左手の4分音符を繋ぐ、曲がった点線に「b」を添える。
ヤッ子。「a」を指して「これの場合は、装飾音符は、本当の手拍子よりも、少し早いうちに鳴らす」
ヤッ子。「b」を指して「これの場合は、普通の音符は、本当の手拍子よりも、少し遅く鳴らす」
ヤッ子「左手は、装飾音符が無いから、正しく手拍子のタイミングだ」
ヤッ子「右手は、装飾音符があるから、4分音符を左手と同時にするか、装飾音符を左手と同時にするかだ」
ヤッ子「説明するより、実際に演奏した方が納得できるだろう」手拍子を始める。
ヤッ子。手拍子を続けながら「蜜霧君、捲土重来だ。aを何回か連続して演奏してくれないか」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子。手拍子を続けながら「素晴らしい。今度はbを頼む」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子「バッチリだ」
ミッツ。aとbを、2回ずつ交互に演奏。「a」演奏。「b」演奏。「a」演奏。「b」演奏。
どちらの演奏をしているのかわかるように、画面の楽譜の白い部分を、aとbを交互に、ぼんやりピンクにする。
または、以下の工夫をする。
工夫の案1:楽譜を移動する縦の赤い線。赤い線が左から出現し、右に移動する。
工夫の案2:打鍵した瞬間、音符が赤くなる。
工夫の案3:太鼓の達人のように、打鍵タイミングが上から鍵盤に向かって来る(振り降りる)。打鍵タイミングが向かって来る時、指し棒も一緒に動いて「同時」「少し早い」「少し遅い」の図示。
工夫の案4:ピアノロールの長方形を用いる。手拍子の時刻の線も添える。
工夫の案5:ピアノロールの長方形を表示するだけで、演奏に合わせて色が流れる変更はしない。「a」と「b」のピアノロールを上下に並べ、少し離して下に左手のピアノロールを表示。「a」と「b」のどちらを弾いているかだけ、色変わりで知らせる。
ミッツが、4回ずつ、交互に演奏する。ハルの顔が、どんどん晴れやかになる。
ハル「わかりました!」
ハル「本当なら、同時に鳴る音符は、縦を揃えるんですが、今は説明のために、「b」はずれた位置にしているんですね」
ヤッ子「ああ、そうか。そういった解釈もあるのか」
ハル「はい」
ヤッ子「早坂君は、「b」の楽譜は、こう書くのが正しいと考えているのだろう?」改めて、似た楽譜を書く。右手の装飾音符の「ド」と、左手の音符の、縦が揃っている。
ハル「そうです」
ヤッ子「確かに、このように書けば、「a」と「b」の、どちらの演奏をすべきか、明示できるな。しかし、小玉は楽譜上でも、そっと忍び込ませるんだ」
ショージ「つまり、棒が短く、玉が小さいのは、ものの数に入らないってことだ」
ヤッ子「こんな、ほんのちょっとの装飾音符でも、あるか無いかで、随分と雰囲気が違うもんだ。例えば、この曲はどうだ?」スマホを出して、曲を鳴らす。
鳴らす曲は、当アニメのBGM。装飾音符の多い曲。
ヤッ子「聞いたことがあるだろう?」
ショージ「どこで聞いたか覚えていませんが、凄く馴染みがあります」背景に「当アニメのBGMです」を表示する。
ヤッ子「これの装飾音符を無視したら、こうなる」スマホで鳴らす。背景に楽譜。差し棒で「この装飾音符を無視すると、こうなる」と示す。
ハル「聞き比べて、初めて気付きます。装飾音符が、いい感じですね」
ステラ「ファッションでも、小さなアクセサリーが、あるのと無いのとでは、随分と違います」
ヤッ子「ついでに言うと、装飾音符には、棒をカットするような線が、あったり無かったりする」
ヤッ子「カットするような線があると、短前打音で「とにかく素早く」の意味。線が無ければ、長前打音で、装飾音符なのに「この音符の音価を使え」の意味」背景に「短前打音」と「長前打音」と、そのフリガナ。
ハル「なんでー?」
ヤッ子「などとなっているが、どっちの書き方でも短前打音を意味することもある」
ハル「これも、曖昧なんですか」
ヤッ子「言葉と似ているかな。時の流れと共に、言葉の使われ方が変わって、それが通用するようになると、辞書にも新しい意味と、元々の意味の、両方が載るようになったり。同じ辞書でも、版によって内容が変わることは、珍しくない」
ステラ「それで、さっきは、カットするような線が無くても、短前打音にしたんですね」
ヤッ子「そうだ。しかし、元々の意味も一緒に教えたから、私がデタラメを教えたとは思うなよ」
ステラ「ところで、aとbの、どっちが正しいんですか?」
ハル「そう、教えてください。演奏の違いがわかって、嬉しいんですから」
ハルとステラが、揃って晴れやかな笑顔。
ヤッ子。同じく、晴れやかな笑顔で応える。「どっちでもいい」
ハル。晴れやかな笑顔が、残念そうに固まる。「どっちでもいいって、ちゃんと教えてください」
ヤッ子「だから、決まっていないんだ。『春の歌』ではaで弾く。ショパンの曲は研究結果としてbだという話があるが、プロの演奏を聞くと、ショパンの曲でも、aの演奏もある」
ヤッ子「要するに、決まっていない。芸術であるから「正しい」「誤り」ではなく、どっちが面白いかだ」
ハル「じゃあ、『月の光』の2連符も、誤りではないんですか?」背景に、『月の光』の2連符の部分。
ヤッ子「ああ、あれか。はっきりした答えを知りたいか?」
ハル「はい! 知りたいです」
ヤッ子「よし、はっきり言おう。「わからない」だ」
ハル「そりゃ、逃げっていうことでしょう」
ヤッ子「責任逃れと思うこともあろうが、私が連符を決めたのではない。誰かが決めたのだ。だから、いくつかの資料を比較することと、それを紹介する以上に、できることはない」
ヤッ子「そもそも、専門家でも意見が分かれているんだ。私が決着を付けられるわけがない」
▽ 場面変更 ● ── ●
別な日の音楽室。
場面として、音楽室が続くので、構成を変えるべきか。別な日であることを表現する目的で、校舎を含めた風景で、日没、夜、日の出、天気が変わるといった場面を挿入するか。学校の外観の風景を、ト音記号か何かが横切り、天気が変わっても良い。
音楽の先生に、吹奏楽部の部員が、音楽理論の相談。付き添いにもう1人の生徒もいた。
部員Aが相談者。部員Bが付き添い。
部員B「その音楽理論なんですが、音楽理論の強要が、虐めになるって聞いたんですけど」
音楽の先生「音楽理論以外でも、相手が納得していなければ、強要はよしておきたいですね」
部員A「せっかくの知識なのに、虐められるって、何だよ。誰に聞いたんだ?」
部員B「早坂だよ、1年の。あいつが、ヤッ子先生から聞いたんだって」背景に、ハルの顔を表示し、続けてヤッ子の顔も表示する。
部員A「早坂?」
部員B「ほら、2年の蜜霧と付き合ってる」背景の、ハルとヤッ子の顔に、更にミッツの顔も表示する。
部員A。はっきりしない。
音楽の先生「早坂君は、前回の吹奏楽部の見学に来ていましたね」
部員A「そうだったんですか?」
音楽の先生「それから、蜜霧さんとは、ご親戚です」
部員B「あ、そうだったんですか。趣味が悪いなと思っていたら、親戚だったんだ」背景に、ミッツから使い走りにされているような場面。
音楽の先生「ご自身の好みと違うからと、悪い趣味という表現は、人に対して用いる冗談ではありませんよ」
部員B。ちょっと悪いなと思った表情だが、言葉で「ごめんなさい」とは言わない。
音楽の先生「そこで、どのような話で、虐めになるのですか?」
部員B「音楽理論を強要されて、それに従うと、別な人からは、従ったことを責められるって。だったら、音楽理論なんて、最初から毛嫌いしておけば良かったって」
音楽の先生は、過去の失敗の話をする。
音楽の先生「僕の知っている音楽理論を用いて、その生徒の悪い個所を粗探ししたのは、僕なのです」
▽ 場面変更 ● ── ●
ミッツ、ショージ、ステラの3人が、一緒に下校。
ショージとステラは、吹奏楽の楽器を持っている。
ステラ。ミッツの肩の抜け毛をつまみ、捨てる。
ショージ「すごいね、ステラちゃん。よく気付くよ」
ステラ「え? たまたま見えたから」
ショージ。ミッツに向かって「この前も、吹奏楽部で、先輩の肩に糸くずを見つけて」
ミッツ「うん」
ショージ「つまんで取って、反対側の肩に載せ替えてあげた」
ステラ「ちゃんと捨てたよー」
ショージ「ところで、さっきの、なんだか怪獣みたいなのは、何?」
ここでは、『春の歌』(メンデルスゾーン)の装飾音符の話をした日の下校中ということになっているが、音楽の先生に吹奏楽部の部員が、音楽理論の相談をした話が間にあるので、構成を変えるべきか。
ステラ「怪獣?」
ミッツ「ジュゴンと、何だっけ」
ステラ「ああ、ジュゴンとマナティね。何て言えばいいかなあ、アザラシみたいな動物で、海に棲んでいて、人魚伝説の由来とも言われている」
ミッツ「人魚?」
ステラ「うん。赤ちゃんを抱っこして、おっぱい……」ショージがいることに気付いて、言い直す。「……授乳する姿が、人間に似ているからだって」
ショージ「でも、アザラシの仲間なんだろう?」
ステラ「動物は、ここからここまで……」腰、臍の横、胸、腋の順に指す。「……あって、牛などはこの辺りが残っていて、豚は全体が残っていて、マナティは腋が残っているから、人間っぽいって」
背景に「※ジュゴン、マナティ、アザラシ、人魚については、ご自身でお調べください」と表示。
ミッツ「ステラちゃんは、動物に詳しいね」
ステラ「動物もそうだけど、解剖学や医学も好き」
ミッツ「ハルもちょっと詳しいけど、格が違うなあ」
ショージ「違うから名前が別々だったり、違うのに名前が同じだったり、紛らわしいものって、あるよな。知っている人には、違いは明白なんだろうけど」
ショージ「例えば、大きさで名前が違う「インコ」と「オウム」とか、「森」と「林」、「ハイキング」と「ピクニック」……」
ショージの背景は、風景ではなく、白(または、上下のグラデーション)になり、いくつかの単語の文字が飛び交う。
チャック、ファスナー、ジッパー。
ディキシーランドジャズ、ニューオリンズ。
パスタ、スパゲティ。
山、丘、岡、岳。
池、沼、湖。
ミッツとステラ。ショージを置き去りにして歩く。ショージの後ろ姿の周囲には、さっきの単語の文字が飛び交っている。
ショージ。置き去りに気付き、走り寄る。ミッツとステラの間に入り、両手で、それぞれの肩に手を載せる。
ショージ「それにしても、人間って不思議だよなあ。音楽なんて、腹の足しにもならないのに、楽しんだり、金を出して買う人がいるんだから」
ミッツ。大袈裟に、ショージの手を振り払う。
ミッツ「シメジ婆さんは言ってたよ。楽しいってだけでは、生き続けられないけど、楽しいから生き続けていたいと思うって」
ショージ「確かに。動物は、自分が生き残ることと、子孫を残すことを、ひたすらに行っている。芸術は、生存生殖には役立たないけど、生存生殖したい気持ちにさせる」
ミッツ「人間って、解決するのが快感だから、そのためにわざわざ、クイズやパズルを作ったりする。音楽も、こんなに複雑なのは、人間だけだし」
背景に、達成感を享受する例をいくつか。クロスワードパズルに苦心する様子から、完成した喜び。ドミノ倒しを苦心して作り、倒した壮観さを喜ぶ。
ショージ「人間に近いくらいに進化している動物もいるよな。イルカとか」
ミッツ「手話をするゴリラやオランウータンがいるそうだけど、俳句を楽しむことはないよね。イルカがフライパンで料理をすることもないし」ここではミッツのセリフにしているが、ステラが言うべきかも。
ステラ「進化と文化の繋がりはわからないけど、文化が面白くて、三度の飯よりも楽しければ、個体の生物の危機だけでなく、生物種の危機」
ステラ「だから、グルメなど、生存生殖そのものを楽しむ文化も発達……」思い出して、急に大声で。「……そうそう!」
ミッツとショージが驚く。
ステラ「宮崎県の幸島(こうじま)では、ニホンザルが芋を海水で洗って食べるの。それを、原始的な料理と見做す人もいるの」
ショージ「チンパンジーが動物園で、蟻釣りをするのを、テレビで見た」
ステラ「そう。動物園では、蟻じゃなく、ジュースを使っているそうだけど」
ミッツ「どうしてジュース?」
ステラ「蟻は、食事としては足りないのに、好んで食べるというのは、味を楽しむのが目的だと考えられている。動物園で蟻を管理するのは大変だけど、ジュースなら簡単だからかな」
ミッツ「そうなんだ」
ステラ「あ、忘れないうちに言っておくけど、野生のチンパンジーの全部じゃないから」
ショージ「え? 蟻釣りって、チンパンジーの共通の習性じゃなくて?」
ステラ「どこか外国の、国立公園のチンパンジーだけなの。蟻塚の穴に木の枝を挿し入れ、シロアリを食べるって」
背景に、「タンザニアの、ゴンベ国立公園のチンパンジー」を表示する。
ミッツ「親戚の家で、うっかり生卵を落として割っちゃって、飼い犬の餌にしたんだって。そしたら、その後は、犬は執拗に卵を求めるようになったって」
ショージ「そうだよな。生殖の楽しみも、人間だけだし」スケベな顔で、ステラを見る。
ミッツ。ショージに対して、威嚇の表情。
ステラ「動物が威嚇するのは、戦いを避けるためですって」
ミッツ「え? そうなの?」
ステラ「わざと威嚇して、「俺は強いぞ、お前は負けて死ぬ。だから、戦わずに、お前は逃げろ」っていうこと。だって、戦うためにエネルギーを使うなら、その代わりに、生きることにエネルギーを使いたい」
ステラ「人間は、暇になったから、芸術を楽しむようになった。生存の本能のために、ゲームやスポーツで勝負を楽しんだり、あ、自分で勝負をしたり、誰かの勝負を楽しんだり。それだけでなく、無益に虐めを楽しんだり」
ミッツ。ショージに向かって、蔑んだ目を向ける。「フン!」
ショージ。心の声。「(ステラちゃんって、医学や生物学の話だと、大人の話し方っぽく、淡々とした口調なんだよな)」
ミッツ。ショージを遮るように、話題を変える。「ねえ、ステラちゃん。人間って、化学反応の連鎖で生きているって、本当?」
ステラ「本当です。体中を、電気が流れています」
ショージ「つまり、神経が電線だってことだよね。素晴らしい、エモーショナル、ヘモグロビン、ポロロッカ!」
ミッツ「今日のショージは、いつも以上におかしい」
ショージ「僕はいつでも、女の子を喜ばせるのさっ」
ステラ。素っ気なく。「神経は電線ではありません」
ショージ。ちょっと呆気。
適宜、注意事項「この話は、中学生のステラの知識です。正確なことは、専門家に確認しましょう」を表示する。
ステラ「電線を電気が流れるのは、電子が隣に引っ越すこと。これの連続が、「電気が流れる」で、電線は化学反応は起こっていない」
ステラ「生物は、化学反応、つまり、分子結合が変わったりで、電子の過不足が起こり、全体的に電気が流れている状態になるだけです」
ミッツ「よく、生物の基本は細胞で、物質の基本は原子だっていうけど、細胞と原子って、何が違うの?」
ステラ「細胞があるか無いかは、定義の問題で、例えば黴菌は細胞があるから生物、ウイルスは細胞が無いから生物じゃない。どっちにしても、化学反応の連鎖で活動している」
ミッツ「で、細胞と原子の違いは?」
ステラ「原子がいくつかくっ付いたのが、分子。分子のうち、たくさんの原子がくっ付いているのが、高分子。高分子のうち、体を作るのは、いくつかの種類があって、それが、アミノ酸」
ステラ「体の中で化学反応が起きて、アミノ酸が作られる。しかし、体の中で作れないアミノ酸があるので、食べる必要がある。それが、必須アミノ酸。アミノ酸が集まって、細胞ができている」
ショージ「細胞も小さくて、顕微鏡じゃないと見えないんだよね」
ステラ。素っ気なく。「違います」
ステラ「大きな細胞の代表が、ダチョウの卵です」
ミッツ「思い切り、見えるよね」
ショージ「じゃあ、細胞の大きさって、大きいのとか、小さいのとか、色々なんだ」
ステラ。ミッツに耳打ち。耳打ちだが、視聴者にはっきり聞こえるように。「人間の細胞で、最も大きなのは卵子、最も小さいのは精子」
ミッツ「えーっ! おもしろーい」
ショージ「え? 何?」
ミッツ「あんたには教えなーい」
ステラ「分子は、少しくらい、電子を多く持ったり、少なかったりできる。これが「イオン化」で、体中のあちこちで、プラスやマイナスのイオン化があるから、体中を電気が流れている」
ショージ「脳味噌の中って、神経だらけだって」
ステラ「確かに、神経細胞は多いが、半分くらいは、別な細胞。何細胞か、名前は忘れました」
グリア細胞など、中学生が、あまり詳しく名前を知っているのは不自然なため、所々、うろ覚えが良さそう。
ショージ「そうなの?」
ステラ「その細胞は、神経細胞をお世話する役割をしている。それも化学反応の連鎖をしていて、何かをこよなく愛する気持ちも、宇宙をも超越する思想も、化学反応の連鎖……」
ステラ。ショージの視線が気になって、言葉を止めた。
ミッツ。心の声。「(失敗かなあ。スケベな話題にならないように、細胞の話にしたんだけど)」
ミッツ。ショージとステラの間に割り込む。「連符のギュウ詰めっていえば、ギュウって読む、「牛」っていう漢字を3つ、こんな風に集めたら、「犇めく」っていう意味」背景に「犇」と表示。
ステラ。ミッツの背景の文字を見て。「ああ、そんな風に」
ミッツ「お気遣い、ありがとう。牛だったらギュウ詰めの意味だけど、鹿だったら反対。散らばっているって意味だって」背景に「鹿」を3つくっ付けた文字を表示。
ステラ「しか……」手書きで「鹿」を書こうとして、断念。
ミッツ「鹿の方が、ゴチャゴチャしているのに」
ショージ「鹿っていえば、奈良公園の鹿に、鹿せんべいを食わせる時、いたずらでヒュッっとしたら、鹿が怒って突進して来るんだって」鹿せんべいを渡す手を、ヒュッと高く上げる。鹿が怒る様子。
ステラ「当たり前です! 鹿には、冗談が通じないんだから」
ショージ「当たり前って。鹿にはユーモアの精神が無いのか?」
ステラ「ユーモアは英語のヒューマン、つまり、人間だけが冗談と理解できるってことです」
猫カフェの店内を表示する。注意事項の貼り紙に「ネコちゃんは、冗談がわかりません」などがある。実際の店舗で、そのような貼り紙があるのかは、未確認。
ミッツ「自分が面白いからって、相手も面白がるはずだってのは、自分勝手」
ショージ「鹿には面白さがわからなくても、人間相手ならジョークが通じるんだろう」
ミッツ「赤ちゃんや小さな子供って、犬よりも頭が悪いんだよ。って言ったら言い方が悪いから訂正しますっ! 赤ちゃんや小さな子供よりも、犬の方が、頭がいいんだよ」
ショージ「そうなのか?!」
ミッツ「小さな子供が、冗談が理解できるようになっても、からかって、馬鹿にするのはダメだって。たまに、からかっても、子供と一緒に「あー良かった。困ったことでなくて、良かったね」って、一緒に安心するのがいいとか」
ステラ「子供が小さなうちは、ジョークを学ぶより前に、正しいことを学ぶ時期なんだよ。からかってばかりいたら、何が正しいのかわからないまま、からかわれ癖がついて、からかいと称したいじめを受けやすくなることもある」
ショージ。地面にしゃがみこむ。「そうだったのか。おかしいと思ったんだ。俺のからかわれ癖が、基本的な性格なのは、従業員の大人達からからかわれていたから、こうなったのか」
ミッツ「でも、社長の息子なんだから、馬鹿にされたりは、無かったんじゃないの? からかわれて、馬鹿にされていたら、自己肯定ができないのが、性格の基礎になるから」
ミッツ「ことわざの「芋の煮えたも御存じない」は、可愛がられて、何も教わっていない人を揶揄する意味だよね。嘘情報ばかりの虐待ではなく、ショージは、何も教わっていないっていうタイプかな?」
ステラ。しゃがみこんでいるショージに近寄り、前屈み。そっと背中をさする。「元気出してね」
ショージ。少し目を上げると、ステラの胸が近くにある。
ミッツ。ショージがステラのブラジャーを見ようと試みたことに気付く。
ショージ。急に明るく、ステラの顔と胸元を、間近で正面に見て。「ねえ、これから一緒に練習しない?」ステラを誘う。
ステラ「えっ、でも……」
ショージ。飛び上がるように立ち上がって。「あの曲、かっこいいフレーズの場所、ぴったり合わせたいよね」
ステラ「うん」
ショージ「よし、決まり! 一緒に練習しよう」ステラの手を取る。
ミッツ。顎を引いて(少し上目遣いで)、二人の様子を見る。
ミッツ。極めて深刻な表情でステラに近寄り、耳打ち。ステラは頷く。
▽ 場面変更 ● ── ●
ハル自宅。
軽くギターを弾いてみる。まあ、それなりに、コード弾きできる。
500mlペットボトルで飲料。
ふと、蓋を閉める前に、ブローボトル、ブロウンボトル(blown bottle)、ボトルブロー(bottle blow)。
口の角度を変えると、「ぼおー」の音高が少し変わる。もっと角度を変えて、強く吹くと、「ピィー!」と鳴る。
ハル「ふむふむ、これが、フルートの倍音か」
今度は、ペットボトルの蓋を口に当てて、強く吹く。鳴る。
台所に行く。
コップに顎を入れるようにして吹く。最初は鳴らないが、そのうち鳴るようになる。
胡椒の瓶から中身をマグカップに移す。瓶を軽くすすぎ、鳴らす。
▼ Cパート。 ▼── ──▼
ステラの部屋。ショージと一緒に練習。
ショージ「ぴったり合うと、気持ちいいね」
ステラ「まだまだ、納得できていないの」
ショージ「それにしても、改めて見ると、本当にメルヘンが好きなんだね」楽譜から離れる。
ステラ「子供っぽいって思われないかな」少し後を追う。
ショージ「子供っぽいだなんて」
ショージ「あ、そうそう、楽譜のここんところ」楽譜の方に戻って座る。
ステラ「どこ?」楽譜に近づく。ショージが急に顔を向ける。寄って来たステラは、止まれない。ショージが唇を出し、キス。
▼ 次回予告。 ▼── ──▼
トイレのスリッパが温かくて、
ミッツは、女子トークで盛り上がり、
みんなが止まって、ギロリと睨み合う。
それより、ステラ、逃げろ!
▼ 1コマ漫画。 ▼── ──▼
ハル。大阪のおばちゃんの服の、猛獣の絵のような熊の絵が描かれたパンツを空想する。
「ミッツがおばちゃんになったら、こんなのを履くのだろうか?」
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