第7話 Aパート
【前書き】
楽譜の読み方を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
当作品は、オリジナル『ガクテン』からR15を削除したものです。R15以外は、そのままですので、二重投稿に近いものです。
人間ドラマなどを削除した楽典のみのものは『ガクテン♪要するに版』をご覧ください。
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■■■■ 第7話。
▼ サブタイトル。 ▼── ──▼
教えて、先生ちゃん。
▼ OP曲前。 ▼── ──▼
今回は特別回なので、OP曲前の定型ではない。
楽典の一問一答。テレビのスタジオ収録。
全員が2頭身。
スタジオでは、収録直前の慌ただしい雰囲気。
▽ 場面変更 ● ── ●
ベートーベンの控室。激情な後ろ姿、頭髪のアップ。
番組スタッフ「時間です、お願いします」
ベートーベン。引きの画面になり、振り返る「うむ」
背景に「ベートーベン」の文字がドドーンと。
▽ 場面変更 ● ── ●
バッハの控室。くしゃ顔で、目鼻口を、大きくしたり小さくしたりの、準備運動。背景に「準備運動」の文字。
目鼻の配置の窮屈さの具合が「キュキュ」の音と共に変わる。
番組スタッフ「時間です、お願いします」
バッハ「よしっ」顔芸。
背景に「バッハ」の文字がドドーンと。
▽ 場面変更 ● ── ●
ハル達の控室。ハル、ミッツ、ステラ、ショージ。ハルのトランプ手品で、盛り上がっている。
番組スタッフ「時間です、お願いします」
ハル達「はぁーい!」
背景に「ガクテン・ブラザーズ」「略してガクブラ」の文字がドドーンと。「ガクテン・カルテット(ガッカル)」「ガクテン・フレンズ(ガクフレ)」など。
▽ 場面変更 ● ── ●
サティの控室。ロートレックのポスターのコスプレをしている。
番組スタッフ「時間です、お願いします」
サティ「良かろう」立ち上がると、外側に着ていたコスプレ衣装が床に落ち、中にはタキシードを着ている。瞬時にヒゲが生え、眼鏡と帽子が飛んで来る。
背景に「サティ」の文字がドドーンと。
▽ 場面変更 ● ── ●
スタジオ。
大勢の出演者が、スタジオに入って来る。
司会者は音楽の先生。質問のメールを読み、時にはメール添付画像を見る。
回答者席の雛壇には、ヤッ子、ステラなどの登場人物だけでなく、歴史上の人物の先生ちゃん。ずらりと並んだ回答者は、錚々たる顔ぶれ。
適宜、注意書きを表示する「※この作品はフィクションです。実在した人物とは無関係です」
当アニメに、実際に寄せられた質問を採用しても良い。しかし、第7話なので、放送と、制作に必要な期間を考えると、無理かも。放送前の時期から、スタッフや縁故者から質問を募るのが良さそう。
コストや手間との兼ね合いだが、OP曲の画面に、今回登場する歴史上の人物を紛れ込ませるのも良い。特別回なので、2頭身の先生ちゃんが、不自然に紛れ込むのも面白そうで、手間も少なそう。
▼ Aパート。 ▼── ──▼
豪華なオープニングのファンファーレ。
司会(音楽の先生)「今日は、皆さんからいただいた、楽典の質問メールにお答えしましょう」
司会(音楽の先生)「司会はわたくし、音楽の先生です」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「最初のご質問です。「五線の、5本の線には、それぞれ名前があるって、本当ですか?」」
回答者席では、ハルが指名されるのを期待した顔をしている。
司会(音楽の先生)「これは、僕が答えましょう」
司会(音楽の先生)「あります。下から1から5です。その間の名前は、1から4です」背景に「第1線……」「第1間……」を指し棒で。「間」には、フリガナの「かん」を添える。
司会(音楽の先生)「これは、ト音記号でも、ヘ音記号でも同じです」大譜表。両方の5線に、それぞれ「第1線……」を指し棒で。
司会(音楽の先生)「5本の線では足りない場合、加線を用いることがあります」背景に、加線と間の名前を、指し棒で。「上第1線……」「上第1間……」と「下第1線……」「下第1間……」を指し棒で。
司会(音楽の先生)「加線が多くなると、数えるのが大変なので、代わりにオッターバを使うこともあります。書いてある音符の玉より、1オクターブ上を鳴らす指示です」背景に「8va」の有無、どちらも同じ。
司会(音楽の先生)「「オッターバ」は、「オクターブ移高」とも呼びます」
司会(音楽の先生)「「8va」ではなく、単に「8」の場合もあります」背景に、「8va」の例と「8」だけの例。
司会(音楽の先生)「「8」を、五線の上に書くと「高く」の意味で、五線の下に書くと「低く」の意味です」
楽譜。音符が斜めにずらりと並んでいる。上段にオッターバを使わない例。下段にオッターバを使う例。「どちらも同じ」と添える。
司会(音楽の先生)「加線は何本まで書けるかは、楽器によって異なるようです」
ショージ「そんな名前、何の役に立つんだ?」
司会(音楽の先生)「どこかから、声が聞こえましたが、何の役に立つのかと言えば、楽譜を用いないで、言葉だけで表現することができます」
司会(音楽の先生)「例えば、これは「社外秘」の文書ですので、一部だけ紹介します。当アニメの初期脚本で、文字だけのテキストファイルです」
司会(音楽の先生)「読み上げます。「楽譜。ト音記号の第2線のソからのソドミを」」これは、第11話の部分。
司会(音楽の先生)「これを楽譜の画像にすると、こうなります」背景に、脚本に従った楽譜を表示。
司会(音楽の先生)「当アニメの初期脚本は、補助の楽譜画像も、図形画像も無い、全部が文字だけのテキストファイルです。読む方は大変ですが、テキストファイルだけで表せる利点があります」
司会(音楽の先生)「これ以外にも、「第4線だから、レだよ」と、電話や立ち話など、何らかの都合で、言葉を用いる場合に役立ちます」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「では、次のご質問です。「拍子記号のところに、セント「¢」とあるのは何ですか?」」
司会(音楽の先生)。メールから目を離さず「このご質問も、僕が答えましょう」
回答者席では、残念がる雰囲気。
司会(音楽の先生)「「2分の2拍子」の意味です」
司会(音楽の先生)「昔は、「完全な拍子は、3拍子」という考えから、3拍子を「○(円)」で表現した時期がありました」
司会(音楽の先生)「4拍子は不完全なので、欠けた円の「C」を「4/4拍子」として書き、その半分として縦に線を入れて分割を表現した「¢」を「2/2拍子」の意味としました」背景の上段に、理由と説明。
そのため、「C」「¢」は、文字の「シー」「セント」ではなく、円形に由来した記号です。
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「次のメールです」
リスト。挙手する。
司会(音楽の先生)「どうしましたか?」
リスト「さっきから、司会者が回答しています……」ナルシストのように、身振りを交える。「……我々素晴らしき音楽家達が、このように会して(かいして)いるのですから、是非、我々の回答をご堪能いただきたーい」
司会(音楽の先生)「わかりました。では……、ああ、これはとても美しい……」
リスト。「美しい」に反応し、立ち上がり、ナルシストのポーズ。
司会(音楽の先生)「……美しい曲ですね。『月の光』を作曲した、ドビュッシーさん」
ドビュッシー。司会者を睨み、隣に座っているステラに。「君をイメージして作曲した」1枚の楽譜を渡す。
司会(音楽の先生)「ドビュッシーさん、聞いてますか? では、メールを読みます。「バンドの練習中に、メンバーが「ウンポコ」を連呼していました」……」
ミッツ。回答者席で、思わず笑いが噴き出す。「ぶゎっは!」司会が驚いて、司会とカメラがミッツに向くと、ミッツがティッシュで鼻水を拭いている。
司会(音楽の先生)「……「そういえば、『月の光』には、「ウンポコ・モッソ」と書いてあります。何が、もっそり、してるんですか?」というご質問です」
ドビュッシー「「モッソ(mosso)」は、「快活に」の意味です。「速い」「荒れる」の意味もありますが」
司会(音楽の先生)「ということは、「快活なウンポコ」ですか? 「速くウンポコ」「荒れてるウンポコ」ですか?」
ドビュッシー「いいえ、「ウンポコ、快活に」です」
司会(音楽の先生)「どのような演奏なのでしょう?」
ドビュッシー「少し、快活に演奏してください。「ウンポコ(un poco)」は、「少し」ですから」
モーツァルト。大笑いして。「ということは、少し快活に、[ピー]をするんだね、愉快愉快」
モーツァルトの顔は、平賀源内(エレキテルや、土用丑の日のウナギで有名)の肖像画のように、「悪気はないよ、ふざけるのが楽しいだけさ」という感じ。モーツァルトと平賀源内は、肖像画で似ているので。
モーツァルトに、炭酸ガスの白い噴射。
司会(音楽の先生)「「少し」の意味ですね。「ポコ」よりも、「ポーコ」と読むのが、一般的なようですが、まあ、外国語なので」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「次のメールです。「楽譜用のノートを買ったのですが、線が4本しかありません」ほほう。画像が添付されていますね」画像。ノートの表紙。大きくト音記号のデザイン。
バッハ。顔の輪郭は大きいが、目鼻口が小さく、くしゃっとした顔。顔を大きくしようと、両手で頬やこめかみを引っ張っている。
バッハ「ネウマ譜だね」
司会(音楽の先生)「バッハさん。ありがとうございます。続きをお願いできますか?」
バッハ「現代の楽譜が普及する前は、4本線のネウマ譜が使われていた。現代もネウマ譜用のノートが市販されているのか、この日本で。驚きだな」
司会(音楽の先生)「メールの続きを読みます。「4本の線のうち、1本が赤くなっています」」
バッハ「赤い線?」
司会(音楽の先生)「画像が添付されていますね」画像。4本の線のうち、上から3番目の線が赤い。「これは……、英語のノートですね」
バッハ「なんだとぉ!」驚いて、ムメンシャンツ(Mummenschanz)の粘土のお面のように、顔がびろーんと延びる。
司会(音楽の先生)「何をなさっていますか?」
バッハ「こうして、顔が大きいのが、魅力だろう」
ステラ。小声で「オランウータンみたい」背景に、オランウータンの顔。
バッハ。ステラの小声が聞こえた。ステラを睨んで、静かな口調で。「顔が広い方が、何かと活動がしやすいのだ」
司会(音楽の先生)「もう一度、表紙の画像を」大きくト音記号が描かれているが、文字の「English Note」が書かれている箇所を強調。
司会(音楽の先生)「やはり、英語のノートですね」
司会(音楽の先生)「表紙のト音記号は、単なるデザインだったようですね」
バッハ。顔の輪郭の大きさはそのままで、くしゃっとした顔が、もっとくしゃっとなる。
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「ギターの質問です。「ギターの楽譜ですが、これって、音符ですか?」」
司会(音楽の先生)「ギターですので、どなたにお願いしましょうか」
ハル。そっと挙手する。なぜか、和服(羽織)を着ている。
司会(音楽の先生)「はい、手が挙がりました。早坂君、お願いします」
ハル「最近、ギターを始めたばかりなので、自信はありませんが。あのー、楽譜を見せてください」
司会(音楽の先生)「おっと、遅くなって申し訳ありません。音符に似ていますが、玉が棒のように書かれています」楽譜。コードネーム付きで、ストローク。
ハル「これは、ストロークです。いわゆる、「コードのガチャガチャ弾き」というのです」
ハル「「コード」とは和音のことで、音符を使わず文字だけで和音を表現したのが「コードネーム」です」楽譜のコードネームを、色の点滅で強調。
ハル「コードネームが「Am」と書いてあれば「ラ、ド、ミ」を鳴らす、「G7」と書いてあれば「ソ、シ、レ、ファ」を鳴らすという意味です」
ハル「でも、「ラ、ド、ミ」なんて覚えなくてもいいんです。「Am」と書いてあったら、コード表の形を真似すれば、ちゃんと「ラ、ド、ミ」が鳴ります」
ハル「コードの意味は知らなくても、形を真似ればいいのです」
司会(音楽の先生)「ギターでもピアノでも、ドはたくさんありますが、どのドを使いますか?」
ハル「オクターブ違いで、どのドを使うかは、コードネームでは指定できません。どのドを使うかの指定は、楽譜ではできますが、コードネームは、頑張って文字だけで表現したので、勘弁してください」
ハル「それでも、音符の玉の代わりに、太い線で表現すれば、音を出すタイミングは、指定できます」
司会(音楽の先生)「次の小節で、コードが変わっても、音符の書き方は変わりませんね」
ハル「それが、このストロークの書き方の利点だと思います。「高いド」「低いド」の指定をせず、「要するに、ラ、ド、ミ」とか、「要するに、ド、ミ、ソ」とかは、コードネームに任せて、音符はタイミングを指定する役割です」
ハル「コードが、ギターで普及したのは、推測ですが、楽譜を読めなくても、演奏できるからだと思います。「コードの押さえる形」を、出逢った順に5個くらい、多くても10個くらい覚えたら、形の意味は知らなくても、たくさんの曲が演奏できます」
司会(音楽の先生)「他には、楽譜を使わないので、手書きのメモが簡単など、ありそうですね」
背景に、コードの押さえ方が、いくつか漂っている。
ハル「例えば、Amは「ラ、ド、ミ」が鳴ればいいので、こんな押え方でも、こんな押え方でもいいんです」3種類の押え方。
ハル「どれでもいいので、Amを1つ、G7を1つ、Cを1つというように、5個くらいを覚えれば、たくさんの曲が演奏できます」
ハル「では、コードを押さえて、ガチャガチャ鳴らしてみます」コード弾きする。
ハル「楽譜で、細かく「ラ、ド、ミ」などの音符を書かずに、ガチャガチャと弾くタイミングだけを指定するために、音高を指定しない玉として、こんな形の音符で表現したんです」
ハル「では、演奏してみましょう」メールの添付楽譜を演奏する。
司会(音楽の先生)「ありがとうございます。そのように演奏するのですね」
小人症(ミゼットプロレスなどで活躍)への考慮があれば、「2頭身」「上手に弾ける」「腕が届く」のセリフがあっても良い。単に、わざとらしく「ギターを始めたばかりで、いつの間に、上手になったのでしょう」でも良い。
ハル「この楽譜では、Amの押さえ方の指定はされていません。コード表にある形とは違うAmを使うなど、工夫すれば、こんな演奏にもなります」腕を袖に入れて、再び出す。なぜか、手の甲には、毛が多い。
再度の演奏は、楽譜の通りだが、ハイコードも用いて、かっこよくなった。ハルは、首で拍子をとりながら、うっとりするように、斜め上を向いて目を瞑っている。
司会(音楽の先生)「素晴らしいです。同じ楽譜でも、演奏の工夫で、こんなに違うんですか」
ハル「音符の玉による、詳しい音高の指定をしないから、このようにできます」羽織の中から、ハルの父親が、暑そうに出て来る。背景に「二人羽織」と、そのフリガナを大きく表示。
ハルの父親「ストロークの音符と、普通の音符が混在していることもあります」背景に楽譜。コードの変わり目で玉の音符、それ以外はストロークの音符。
ハルの父親「この場合は、最初の玉の音符を繰り返すのです」背景に楽譜。画面上部に、さっきの楽譜。画面下部に、全部が玉の楽譜。「どちらも同じ」の文字を添える。
コードが変わらないのに、違う高さの玉が記されている箇所もある。
コードの押さえ方が変わる箇所には、押さえ方の図を添える。
ハルの父親「楽譜は、乱暴な言い方をすると「要するに、読めればいい」のですから、そうやって新しい表記が考案され、便利で、ちゃんと意味が伝われば普及し、やがては書籍に載って「正しい楽譜」になるでしょう」
ハルの父親「音楽のジャンルや、楽器によっても、普及の程度が変わるので、初めて見た表記に驚いても、「読めるから、まあいっか」と思ったことが、何度もあります」
司会(音楽の先生)「少なくありませんね」
ハルの父親「若者達が、辞書に無い言い回しをして、意味は伝わることはありますね。普及して辞書に載ったり。僕は学者ではないので、初めて出逢った言い回しや楽譜なら、表現に違和感がありながらも、「読めるから、まあいっか」です」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「「ピアノの楽譜に、指番号がありますが、従わなければいけませんか?」というご質問です。ピアノといえば、蜜霧さん、お願いします」
ミッツ「はい」すごく緊張している。テレビカメラを見て良いのか、司会者を見れば良いのか、迷っている。
ミッツ「えーっと、指番号は、絶対ではありません。けれど、その指遣いを推奨するには、それなりの根拠があると思います。えーっと、ですから、書いてある指番号を、試してみましょう」
司会(音楽の先生)「指番号が、絶対ではないというのは?」
ミッツ「人それぞれの癖? があります。あ、モチロン、それが「悪い癖」かも知れません」
ハル。横から口を挟む。「テレビでみんなが見てるぞ」
ミッツ「うっるさいなあ」ハルをピコピコハンマーで叩くと、想像を絶する間抜けな効果音。
ミッツ「指遣いではなく、姿勢が、例えば手首の高さや、肘の広げ方にも、理由があると思います」
ミッツ「書いてある指番号で弾くと、最初は弾きにくいと感じても、やがては、やりやすくなることもあります」
司会(音楽の先生)「なるほど。楽譜に書かれている指遣いが、自分にとっては、やりにくいと思っても、姿勢を変えれば、やりやすくなることも、あり得るのですね」
ミッツ「そうです。椅子の高さなど、一般的な「正しい」という姿勢には、幅があってもいいんじゃないかなと思います」
ミッツ「多くの研究者の多数決で、指遣いの「正しさ」が決定するにしても、少数派を「誤った人」とするのは、言い過ぎだと思います。楽しく弾くのが大切ですし、指遣いの違いは、弾いている時の手を見られなければ、気付かれません」
司会(音楽の先生)「少数派ではないのに、独自の指遣いをするのは、悪いことではないのですね」
ミッツ「そうです。譬えれば、蕎麦は箸で食べるのが「正しい」としても、フォークを使っても、蕎麦を蔑ろにはしていません」
ミッツ「外国人や、指の動きが少数派の人だけが、フォークを使う資格があるっていうのとは、違うと思います、あ、いえ、それと同じです、あ、資格が無いってのは、違って、あ、いえ、……」
司会(音楽の先生)。ミッツの混乱を鎮めるように。「指に着目すると、薬指の長さが違うのですね」背景に、手の指の長さが違う例。
ミッツ「あ、そうです……」小声で「すみません」バツが悪そうに、頭を下げながら、顎を前に出す。
ミッツ「薬指が、薬指の長さが、人によって違うので、えっと、です」
司会(音楽の先生)「はい、ありがとうございます」
回答者の何人かは、自分の手を見る。
何人かの手のひらが、順番にアップ。ここでは、実写(本物の人間の手)が良さそう。ただし、指紋の公表が犯罪に使用される話もあるので、指紋や血管には注意する。
幾人かの手が表示され、なぜか猫の肉球。サン=サーンスが猫を抱いている。
司会(音楽の先生)「サン=サーンスさん、その猫は?」
サン=サーンス「誰にも知られていないが、私は猫が好きなんだ」肉球をプニプニする。頬を赤らめる。色っぽい吐息。
司会(音楽の先生)「サン=サーンスさんの有名な曲に、『動物の謝肉祭』がありますが、猫は登場しませんね。なぜ、お好きな猫を入れなかったのですか?」
サン=サーンス「猫が好きと言っても、猫の肉は食べない。だから『謝肉祭』には入れなかった」
司会(音楽の先生)「なるほど。ということは、『動物の謝肉祭』に登場する動物は、食べるんですね?」
サン=サーンス「食べるとは限らない。感謝するのだ」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「「楽典を習っているんですが、どっちの意味か、わかりません」というご質問です」
司会(音楽の先生)「具体例が書かれていますので、読ませていただきます。「説明の言葉で、ドレミと聞いた時、移動ドなのか、固定ドなのか、迷っているうちに、説明の言葉が続きます」ということです」
エッシャー「1つの絵の中に、2つの意味があることもある。まるで、だまし絵、隠し絵のようだな」
司会(音楽の先生)「エッシャーさん、お願いします」
エッシャーの著作権の関係で、作品の紹介ができなければ、同じ手法を例示する。『ルビンの壺』『妻と義母』など、著作権に問題が無いか確認して例示する。
エッシャー「例えばこんな風に、魚と鳥の2つの意味が、1枚の絵に存在することもある」
エッシャー「魚かと思えば、徐々に鳥に見え始めて、鳥にしか見えない手法もある」
エッシャー「最初は冷たい人かと思ったら、何度も会っているうち、優しい人だと思ったり」
エッシャー「そんな変遷を、何度も行うのも、面白いだろう」エッシャーの『メタモルフォーゼ』を例示。
エッシャー「実生活の中でも、現実こそが真実だと、納得できる解釈が見付かったら、それ以外に意味は無いと決定するのは、危険だ」
司会(音楽の先生)「どのような場合ですか?」
エッシャー「妊婦の乗車拒否をした、バスの運転手の例がある」
エッシャー「それを見た人が、バス会社にクレームを出した。バスに乗ろうとした妊婦を乗せなかったのは事実だからな。運転手は悪人だ」
司会(音楽の先生)「2つの意味があるのですか?」
エッシャー「そうだ。その停留場は、あちこちから複数の路線が集まり、次の停留所は終点で、大きな駅なんだ。だから、すぐ後ろにも、バスが続いている」
エッシャー「そのバスは満員だが、すぐ後ろのバスは空いて(すいて)いることは、運転手にはわかっていた。満員であれば、風邪だけでなく、何らかの感染症の危険が大きい」
エッシャー「だから、妊婦には「お急ぎでないなら、空いている後ろのバスに乗りますか?」と尋ね、妊婦も了承したのだ。妊婦自身も、感染症を回避すべきと知っていたのだろう」
エッシャー「事実の一部を無視すると、気遣いをした運転手を、悪人だと判断してしまう。「妊婦を乗車拒否した」という事実を根拠に、「運転手は悪人だ」と判断するのは危険だ」
司会(音楽の先生)「危険なのですか?」
エッシャー「危険だ。「そうとしか思えないから、それが真実だ」と、自分を過信していたら、「思いもよらぬ方法」で、詐欺に騙されるだろう」
背景に、詐欺の寸劇。詐欺師がスマホを手に「会社に電話するよ。ああ、社長ですか」。被害者は「会社に電話したから、この人は本物」と思う。
司会(音楽の先生)「ありがとうございました」
司会(音楽の先生)。心の声。「(そういう場合があるというだけで、ご質問の相談は、何も解決しませんでした)」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「「休符って、大切なんですか?」というご質問です」
司会(音楽の先生)「クラシック音楽の生徒は、「無駄な音符は、一つも無い」と教わることも多いですが、休符の重要性を教わることは少ないと、僕は個人的に思います」
メンデルスゾーン。挙手する。
司会(音楽の先生)「手が挙がりました。メンデルスゾーンさん、お願いします」
メンデルスゾーン「休符の有用性の説明には、「休憩も必要だ」「音が鳴り続けるとうるさい」がありますが、積極的に休符が用いられることもある」
司会(音楽の先生)「例をお願いします」
メンデルスゾーン「ロックだけでなく、「ブレイク」といって、意図的に無音の時間を設けることがあります」ブレイクの演奏例。または、シンバルを、叩いてつまんでを繰り返して、「鳴る」「止まる」の繰り返し。
メンデルスゾーン「『鳩』という歌は、「♪ぽっぽっぽっ」と、休符を含めて歌い始めますが、これを、休符を無くして「♪ぽーぽーぽー」にすると、鳩っぽくありません」
メンデルスゾーン「ブレイクという程ではありませんが、私の作曲した『結婚行進曲』も、重要な休符があります」
演奏例2つ。『結婚行進曲』のイントロ3小節。楽譜の五線内が、演奏に従って色が変わる。4分休符が明確な演奏と、不明確な演奏を、交互に何度か演奏。
司会(音楽の先生)「なるほど。雰囲気の違いがわかりますね」
メンデルスゾーン「素晴らしいピアノ曲で知られている、我が友人のショパンの例では、『英雄ポロネーズ』があります」楽譜。『英雄ポロネーズ』の、2回目のAメロの2小節目32分休符。
メンデルスゾーン「ここに、32分休符があります。こんな短い時間ですが、重要です」
メンデルスゾーン「前の小節から歌うと、休符が無ければ、なだらかな起伏のある地面の上を「♪タリラーラターラーラー」と滑ります」
メンデルスゾーン「休符があると、ウキウキした気持ちで宙に浮く「♪タリラッタターラーラー」で、地面から自由になります」
雰囲気を表すために、スケートボードが起伏を、飛ばずに進む、一瞬だけ飛ぶの2種類を表示。スケートボード以外にも、何かあれば良い。バレリーナが回転する、回転しながらちょっと飛ぶなど。
メンデルスゾーン「左手は音が鳴っているのに、右手は一瞬だけ休符です。または、左手はスタッカートですが、右手が休符なのは変わりません」演奏例。休符の有無を、交互に数回。
メンデルスゾーン「音楽では、「無駄な音符は、一つも無い」ばかりではなく、ショパン君の曲には、「無駄な休符は、一つも無い」と言えます」
司会(音楽の先生)「ありがとうございます」
司会(音楽の先生)「ところで蜜霧さん。本編では『結婚行進曲』をお弾きになる予定ですが、練習はできていますか?」
ミッツ「はい、できています。「久し振りだから失敗する」の練習もしています」
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「「友達との言い合いに、決着がつきません」というご質問です」
司会(音楽の先生)「「作曲したのですが、その楽譜を見た友達が、音楽理論に反しているから、認められないと言います。認められないというのは、おかしいと思うのですが、決着がつかず、困っています」という内容です」
織田信長。豪快に笑う。「異文化よね。生い立ちが違ったら、それまで教わった情報が違う。情報が違ったら、選択も違う。違うことは当たり前」
司会(音楽の先生)「織田信長さん、お願いします」
織田信長「ファッションと同じよ。対位法と和声楽って、ジャンルが違うでしょ。だから、対立することは少ないよね。ファッションでは、髪型と服飾のように、ジャンルが違う」
織田信長「音楽理論ってさ、クラシック音楽だけじゃないし、書籍になっていない音楽理論だって、たくさんあるのよ。基準が違えば、お互いの矛盾もあるのよ」
織田信長「髪型のファッション理論は、時代や国によって、変遷するよね。服飾だって変遷するよね。僕たちにとっての、髪型や服飾の指南に、今のみんなが従うことはないよね」
織田信長「僕が登場する時代劇を作るなら、現代日本のファッション指南に従ったら、おかしいよね。「認められない」って言われるか、ギャグ時代劇かって言われるよね。やっぱり、僕の時代の指南に従うでしょ」
織田信長「古代ローマの劇を作るなら、やっぱり、その国の、その時代のファッション指南に従うよね」
織田信長「クラシック音楽の指南に従うのは、その指南書が書かれた頃の曲を作る場合だよ」
織田信長「クラシック音楽の音楽理論だけ、時代も国も超越して有効だってことは、ないでショ」
織田信長「現代の日本で、音楽を作るのに、クラシック音楽の音楽理論を勉強してないってのは、現代日本の演劇を作るのに、僕の時代のファッションを勉強していないってのと、似てるよ」
織田信長「日本刀は「かたな」と呼ばれるように、片方にだけ刃があるよね。西洋には剣(つるぎ)があって、諸刃(両刃、もろは)だから両方に刃があるよね」
織田信長「ということは、武術を習うと、「こうすれば、より良く戦える」という方法は、刀と剣では違うよね」
織田信長「これまで、刀のための武術しか教わって来なかった人が、剣を持つと、これまで教わったこととは違った方法が、より良く戦えるってことになるよね」
織田信長「これまで教わった、正しい方法と誤りの方法が、逆になることもあるよね」
背景に、刀を使った斬り付ける方法と、剣を使った突く方法。刀では、刺身包丁のように擦って切る。剣では、出刃包丁のように、力で壊す。出刃包丁よりも、適した包丁があれば、それを例とする。
織田信長「場合によっては、正しい方法を疑うことを禁じたり、誤りの方法を憎むように教えたりするよ」
司会(音楽の先生)「思想的な話になりました」
織田信長「みんなだって、聞いたことがあるよね。1945年8月15日。刀と剣の譬えのように、多くの「正しさ」の基準が変わったよ」
織田信長「多くの日本人が迷ったね。子供が大変だったのは、例えば軍歌しか知らないから、それを歌ったら、平和な時代に軍歌は駄目だと叱られたね」
織田信長「相手が、意地悪で反論しているのでなければ、「これ以外は正しくない」とだけ、教わったのかも知れないよ」
司会(音楽の先生)「相手が何を思っているのか、推察しましょうということですね」
司会(音楽の先生)心の声。「(音楽の話なのかなあ?)」
織田信長「そうなのよ、そうなのよ。自分の思っていることは、全員も同じに思っているなんて、勘違い」
織田信長「終戦が近い頃の話を、戦争経験者が話すことがあるよね」
織田信長「ある人は「この戦争は正しい。日本は勝つ。これは、自分だけでなく、あの当時は日本中の全員が、そう思っていた」と話した」
織田信長「別な人は「この戦争は誤りだ。日本は負ける。これは、自分だけでなく、あの当時は日本中の全員が、そう思っていた」と話した」
織田信長「現在のネットでは、個人を相手にした「お前、みんなから嫌われている」や、政治を相手にした「民意に反したから、国民全体を敵に回した」といった攻撃がある。自分が考えていることだけが正しいと、勘違いするのよね」
織田信長「音楽理論だって、正しさは様々なのね。自分の知っていること以外にも、基準はあるのよ」
織田信長「これまでの手法には無かったけど、作品が面白ければいいよ。戦国時代だって、勝つためには、これまでに無かった手法で、いかに相手を驚かせるかが、勝利に繋がったんだもん」
宮本武蔵「その通り!」
司会(音楽の先生)「おや、宮本武蔵さん」
宮本武蔵「勝つためには、どんな方法でもいい、驚かせろ!」
バッハ。意味が分からないというように、首をかしげている。
▽ 場面変更 ● ── ●
司会(音楽の先生)「次のメールです。「楽譜に「bis」と書いてありました。どういう意味でしょうか?」です」
司会(音楽の先生)。にやりと笑う。「サティさん、お願いします」
サティ(エリック・サティ)「なぜ、楽典の回答者として、俺を呼んだんだ? 俺の楽譜は、デタラメだと言われているのに。嫌がらせか?」
ハル。隣に座っているダリ(画家)に、小声で聞く。「デタラメなんですか?」
ダリ。眉毛を、ヒョイと上げるだけ。
サティ「そうだ、デタラメだともーーー!」楽譜の紙を、どっさりと宙に撒く。スタジオ内を、紙が舞う。
何枚か、紙がカメラ前に来て、ゆっくりとなり、説明の文字や矢印などを表示。紙が去り、別な紙が来る。
カメラの前に来る、紙の例。『グノシエンヌ 第1番(Gnossienne)』小節線が無い。
カメラの前に来る、紙の例。『LES TROIS VALSES DISTINGUEES DU PRECIEUX DEGOUTE』小節線が無い。2段目以降、音部記号が無い。4分休符の書き忘れ?
ハル。少し跳ねて、紙を1枚、手に取る。
司会(音楽の先生)「キャスティングについては、申し訳ありません、存じ上げません。ご質問の「bis」の回答をおねがいします」
サティ「「2回演奏する」の意味だ」楽譜。画面上部は「bis」の表記。画面下部はリピート記号の表記。繰り返し部分は、3小節程度で表記。「これは、どちらも同じ意味だ」
ハル。楽譜の紙で、紙飛行機を折っている。第3話で、ハルが考案した、垂直尾翼があるもの。
司会(音楽の先生)「ではなぜ、「bis」の表記をするのでしょう?」
サティ「既にリピート記号を使っていたら、その中には使えないだろう。リピート記号の入れ子(ネスト)はできないんだ」楽譜。画面上部も下部も、もっと広い範囲のリピート記号。
サティ「画面下部の楽譜では、リピート記号が入れ子になっている、セットが崩れている。だから「bis」にする。嫌がらせか?」
司会(音楽の先生)「ありがとうございます」
紙飛行機が、司会者席に飛んで来る。さっき、ハルが折ったもの。
司会(音楽の先生)「おや、この独特な折り方の紙飛行機は……開いてみましょう」サティの作曲した『ヴェクサシオン』(Vexations)の楽譜。紙飛行機は、第3話で、ハルが考案したもの。
司会(音楽の先生)「1枚だけの短い曲のようです」
司会(音楽の先生)「サティさんの作品ですね。この曲を聴きかせいただけますか? 曲の終わりと共に、CMに入りたいと思いますので、演奏をお願いできますか?」
サティ「嫌がらせだ!」
司会(音楽の先生)「なるほど、この曲のタイトルが『ヴェクサシオン』、日本語では『嫌がらせ』と訳されています。おや? 繰り返しを840回と書いてあります。CMまでに、弾き終えていただければと思います」
サティ「嫌がらせだ!」
司会(音楽の先生)「では、当アニメとして初放送です。『ヴェクサシオン』を、作曲者本人による演奏の、抜粋ではない、ノーカット完全演奏で、お送りします」
サティ。演奏を始める。
実際にこの曲を演奏すると、数時間になるので、この曲を知っている視聴者は、司会(音楽の先生)の冗談に、にやりと笑う。
▽ 場面変更 ● ── ●
字幕「5分経過」または、「数時間経過」を表示。
司会(音楽の先生)「えー、演奏終了と共にCMに入ろうと思いましたが、まだ続いています。予定を変更して、サティさんの演奏をBGMとして、次のご質問です」
司会(音楽の先生)「「家具の音楽って、何ですか? 大型のオルゴールですか? それともポルターガイストですか?」ということで、家具の音楽を提唱した、サティさん」
サティ。ピアノを弾いている。
司会(音楽の先生)「サティさん、申し訳ありませんが、ご回答をお願いします」
サティ。手を止める。「せっかく弾いていたのに、嫌がらせかっ」
司会(音楽の先生)「申し訳ありません。家具の音楽のお話を」
サティ「家具の音楽は、オーディオが無かった頃の言い方だ。今の時代でBGMのことだ。家具のように、日常生活の中で、ただそこにあり、気に留められることも無い音楽だ」
ここで、すぎやまこういちの言葉である「ゲーム音楽は、聞き減りしないのが大切」を引用しても良い。
司会(音楽の先生)「大型のオルゴールとは違う話でしょうか?」
サティ「オルゴールとは、自動演奏装置だろう。家具の音楽は、音楽そのものだ」
司会(音楽の先生)「ありがとうございます。自動演奏装置については、また機会があればお話しすることになるでしょう」
ここで、字幕で「第10話でオルゴール館に行きます」などの予告をしても良い。
司会(音楽の先生)「では、サティさん、曲の続きの演奏をお願いします」
サティ「続きだと? 繰り返しの何回目だ? 覚えているわけないだろう!」
司会(音楽の先生)「840回のうち、838回目が終わったところです。あと2回、お願いします」司会者に指し棒で「ウソを言っています」の文字を表示する。
サティ。弾き始める。そっと「嫌がらせだな」と呟く。
演奏が終わる前に、CMになる。
▼ CM明け。 ▼── ──▼
無し。
CMが終わり、すぐにアイキャッチがあり、そのままBパートに。
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