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悪役令嬢  作者: きいろマン2号


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2/6

1話 婚前の夜

短くしようと思ってましたが、若干長くなりました

こんなもんでいいのだろうか?

時は数刻前に遡る。

エルセリア王国、国境付近、ヴァルクレイン家では煌びやかなパーティーが開かれていた。

「アナスタシア様、ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう」

「ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう」

ご令嬢アナスタシアに、この領地に住まう貴族たちが祝いの言葉を述べ、アナスタシアはにっこりとその言葉を受け取った。

もうすぐ、彼女は結婚式を迎えるのである。

これは、彼女のための婚前パーティーであった。


ガシャン


唐突に物音が響いた。誰もがその音がした方向を見る。

メイドが運んでいた料理をうっかり落としてしまったのだ。

「も 申し訳ございません!」

このようなことは些細なこと、よくあることの一つであった。

アナスタシアはツカツカとメイドに歩み寄る。

彼女は手を伸ばし…


水の入った容器をメイドの上にぶちまけた。


「あなた、わかっていて?これは、私のパーティーなのよ?」

「あなた、台無しにするつもり?!」

「も 申し訳ございません…すぐ片付けますので…」

「さっさとしてちょうだい!」


アナスタシアはこう言った面があった。通常の令嬢であれば、齢16歳ほどで結婚相手が見つかるものである。

しかし、彼女は18歳になってもまだ誰とも結婚できずにいた。

それはこの突発的な性質が災いしていたのである。

そのせいか、彼女は地位の高い貴族でありながら、大勢の貴族からはひっそりと嫌われていた。



「アナスタシア」

「お父様!」


アナスタシアは父親に呼ばれ駆け寄る。

カシウス・ヴァルクレイン、国境付近の領地を支配する辺境伯の貴族である。

彼は、鋭い鷹のような目でメイドを一瞥すると、またアナスタシアに向き直った。

「パーティーはどうだ?」

「もちろん楽しんでおります」

先ほどの出来事などすっかり忘れたかのように、アナスタシアはにっこりとカシウスに答える。


「お前もついに結婚とはな、私も鼻が高い。しかも、相手はかのルクレシア公。申し分のない相手だ。」

「パーティーにもいらしてくださればよかったのに…」

「仕方あるまい、あれも忙しい身だからな」

「早くお会いしたいものだわ…」

アナスタシアはルクレシア公に思いを馳せた。

リアム・ルクレシア、彼はエルセリア王国に近い地域の領地を収めている貴族で、アナスタシアと同じ18歳の立派な青年である。

父を早くに亡くし、一人で領地を治め、武芸や学問に富んだまさに完璧超人とも言える人物であった。

もちろん、彼のような完璧超人は引くてあまたで、多くのご令嬢に求婚されていた。

アナスタシアもその一人で、今回の結婚は幸運としか言いようがない。


「何、焦らずとももうすぐ会えるではないか…む」

「?」

会話の途中で、何やら物々しい足音が会場に響く。

衛兵が慌ただしく駆け込んできたのだ。

よほど急いでいたのか、息も絶え絶えであった。

「どうした?」

「ろ 狼藉者です!」


そう衛兵が言い終わると、ホールに黒ずくめの集団がなだれ込んできた。

貴族たちは悲鳴をあげ、逃げるもの、どうすればいいかわからず立ち尽くすもので別れ始めている。

しかし、黒ずくめの集団はそんな貴族たちには気にも止めず、ただカシウスとアナスタシアの方を見つめている。彼らの目的は明白であった。

狙いはこの二人なのである。


「私をカシウス・ヴァルクレインと知っての狼藉か?」

とカシウスは集団に向かって声をかけた。しかし、彼らは不気味に沈黙し、ただ見つめている。

何かを待っているかのようである。


「無論」

黒づくめの集団から一言、声が上がった。

男とも女ともつかない、そんな声であった。

さーっと黒ずくめの集団が左右に分かれていく。


彼らの中央には、騎士がいた。

仮面を被り、マントを羽織っているその騎士は、剣を抜きカシウスへと向ける。

「お命ちょうだい仕る、よもや逃げ出すわけではあるまい?」

仮面の騎士はそう言い放つ、ただの挑発ではない。必ず勝てる、そういう自信がその言葉にはあった。


「よほど自信があると見える よかろう受けてたつ」

カシウスは自らの愛剣を抜いた。キラリとよく鍛え上げられた剣身が光る。オーソドックスなロングソードだが、彼は先の戦争でも愛用し大勢の敵を切り伏せてきたものであった。

「お お父様…」

アナスタシアはどうしていいかわからず震えていた。

「アナスタシア、お前は下がってなさい 衛兵!」

衛兵はアナスタシアを連れ、万が一の時のため近くの扉まで下がる。

しかし、誰しもが万が一など起こらないと、確信していた。

カシウスは歴戦の英雄の一人である。彼に勝てるのはよほどの英傑でもない限り、ありえないことであった。


「では、参る!」

仮面の騎士はカシウスに斬りかかる。

剣同士がぶつかり合う音がホールに響き、空気が震えた。

戦いの最中、カシウスは違和感を覚えていた。

自分の動き、その一手一手が相手に読まれている…そう感じた。


戦いの世界というのは、基本的には一期一会なものである。お互いが死ぬまで斬り合うしかないからだ。

熟練者ならば相手の動きを経験から予想する。これは可能であろう。

しかし、相手の動きはそういうものではなかった。初めからこう動くことを知っている。

そんな不気味な動きであった。


「貴様…一体」

「あなたは覚えていないでしょう」

「あなたはそういう人ですから」


カシウスはその時、何かに気づいた。

しかし、それは隙を作るのには十分であった。

数秒動くのが遅くなりすぎたのだ。

剣はそのまま、カシウスの首に食い込んだ。鮮血が弧を描いて飛ぶ。

騎士はそのままもう一度、首に剣を叩き込んだ。

2回、3回目でやっとカシウスの首は千切れた。

カシウスの首はアナスタシアの前まで転がり落ちた。


「え…?」

アナスタシアを含め、その場にいた全員が何が起こったのか理解するのに時間がかかった。


カシウスの体が崩れ落ちたところで、誰かが悲鳴をあげた。

それを皮切りにホールは阿鼻叫喚、貴族は我先にと逃げ出し、衛兵は残ったもので最後の攻撃に出ようとしている。


「アナスタシア様!何をしてるんです!」

衛兵に言われてもまだアナスタシアは現実を受け止められずにいた。

「な 何がどうなって…」

「気をしっかり!とにかく外で馬車にお乗りください!」

アナスタシアは衛兵に言われるがまま、外に連れ出され、馬車に乗り込みあれよあれよという間に、自分の住み慣れた城を離れていった。

混乱、困惑、恐怖。

いろんな感情がアナスタシアの中を巡っていた。

そんな感情と共鳴するかのように、空には雨雲がかかり雨が降り出していた。それが余計、アナスタシアの心に食い込む。


リアム様に合えば大丈夫、きっと…きっと…

それだけが、彼女の精神を安定させていた。それがなければきっと発狂していたかもしれない。


表の道は待ち伏せされている可能性があったため、アナスタシアは城の裏の道から馬車を走らせていた。

整備されているとは言えず、普通の馬であればすぐ駆け抜けたであろう道に悪戦苦闘していた。



その時である、急に馬車が止まった。


外で護衛していた衛兵が馬車の扉を開ける。

「待ち伏せです!急いでお逃げください!」

周りにはすでに黒ずくめの集団が10人ほど、馬車を取り囲んでいた。

衛兵は二人のみ、それでも抑えられるのは4人が限界であろう。残りの6人でアナスタシアは簡単に捕まってしまうというであろう。


「あ…あ…」

しかし、アナスタシアは訓練された兵隊ではなく、ただの箱入りの娘であった。

ただの娘がこのような状況で冷静に判断できるはずもなく、彼女はわけもわからず走り出した。


山の中の獣道に、アナスタシアは飛び込んでいった。

雨のせいでぐちゃぐちゃになった道を何度も転び、靴は脱げいつの間にか彼女は裸足だ。

それを気にする暇もなく、黒ずくめの集団もそのあとを追う。

さながらそれはウサギを狩る狼の集団であった。


そして、時は冒頭へ戻る…




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