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地球の地下には4400年前から続く文明があり、人類は観測対象だった 〜登山中に消えた俺の真実〜   作者: ムーンキャット


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第6話 最初の光

最初に成功したのは、

ほんの小さな熱だった。

掘削孔の奥深く。

地層の裂け目から噴き出す蒸気が、

仮設タービンをわずかに回転させる。

「……動いてる」

誰かが呟く。

回転数は不安定。

出力も低い。

だが、計器の針は確かに振れていた。

「成功だ」

ジェレスの声は震えていなかった。

それでも、その場にいた全員が分かった。

これは偶然ではない。

地下で初めて、人類がエネルギーを得た瞬間だった。

その熱は、

空気循環装置を動かし、

簡易照明を灯し、

地下空洞の一角を淡く照らした。

光は弱く、

黄色く、

不格好だった。

だが――

闇ではなかった。

子どもが声を上げる。

「明るい……!」

その一言で、

何人かが笑い、

何人かが泣いた。

地下に、

初めて「昼」が生まれた。

次に取り組んだのは、

光を増やすことだった。

人工照明だけでは限界がある。

エネルギーは貴重で、

無駄には出来ない。

「光そのものを“生む”方法が必要だ」

ジェレスは言う。

目を付けたのは、

地下岩盤に元々存在していた

微弱に発光する菌類だった。

「この発光遺伝子を強化できれば……」

遺伝子操作は、

地上では禁忌に近かった技術だ。

だがここでは、

生きるための選択肢だった。

最初の培養は失敗した。

次は発光が強すぎて、

菌が自壊した。

それでも、

試行は続けられた。

そしてある日――

岩壁に広がる淡い光が、

誰の目にもはっきりと見える形で定着した。

「……成功だ」

光は熱をほとんど持たず、

酸素を生み、

同時に栄養源にもなる。

それは苔の形をしていた。

後に、

光ゴケと呼ばれる存在。

地下文明の象徴になるものだった。

だが、文明は優しくなかった。

地熱掘削は常に危険と隣り合わせだ。

高温、圧力、放射線。

人の体では耐えきれない。

「作業員が先に壊れる」

誰かが言う。

ジェレスは、

簡単に答えを出した。

「なら、守る」

防護服の設計が始まる。

最初は分厚く、

重く、

動きにくい。

だが目的は一つ。

作業者を、生かして帰すこと。

やがて、

原子分解フィールドを応用した

軽量化案が出る。

「壁を壊さず、

通過する」

その発想は、

後のアトムスーツへと繋がっていく。

この時点では、

まだ試作段階。

武器はない。

攻撃機能もない。

あるのは、

生きるための機能だけだ。

地下は、

少しずつ変わり始めていた。

光があり、

熱があり、

人が集まる場所が出来る。

同時に、

新たな問題も生まれる。

「資源は、

誰のものなのか」

ジェレスは断言する。

「全員のものだ」

所有はしない。

独占もしない。

必要な分だけ、管理する。

それは理想だった。

だが同時に、

厳しいルールでもあった。

自由と引き換えに、

争いの芽を摘む。

地下文明は、

この時点で方向性を決めた。

地上の過ちを、

繰り返さないために。

ジェレスは、

新たに灯った光を見上げる。

「これでいい……

これでいいんだ」

彼は知らない。

この文明が、

いつか“神”と誤解される存在になることを。

だが一つだけ、

確信していた。

人類は、まだ終わっていない。

観測は、

静かに続いていく。

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