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地球の地下には4400年前から続く文明があり、人類は観測対象だった 〜登山中に消えた俺の真実〜   作者: ムーンキャット


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第22話 「観測の向こう側」

地下都市・監視統制区画。

半透明の立体スクリーンに、地表の地殻断層モデルが投影されている。

赤い点滅。

アインが眉を寄せる。

「……妙だ」

隣でオペレーターの少女が声を上げる。

「地上からの透過波を確認。人工信号です」

「周波数は?」

「軍事規格。高精度地中探査型」

静まり返る空間。

アインは低く息を吐く。

「……やはり来たか」

その背後で腕を組んでいる影。

マドラーだ。

「言ったはずだ。地上は放置すれば必ず掘る」

「まだ掘削はしていない」

「時間の問題だ」

アインはスクリーンを拡大する。

山岳地帯。

海斗がファントムを目撃した地点。

そこを中心に、幾何学的な走査線が何度も交差している。

「執拗だな……」

マドラーが低く笑う。

「“偶然”ではないということだ」

沈黙。

海斗が少し離れた場所から画面を見ている。

「……俺のせいか?」

誰もすぐには答えない。

アインが振り返る。

「違う」

即答だった。

「君が見たことと、地上の探査は直接結びついていない。だがタイミングが悪い」

マドラーが鼻を鳴らす。

「偶然が重なれば、それは必然だ」

海斗は拳を握る。

「どうするんだ?」

アインは画面を操作する。

突然、地上のドローン映像が表示される。

黒い機体。

静かに山を滑空している。

「これが相手の目だ」

海斗が息を呑む。

「……思ったより本気だな」

マドラーが言う。

「撃ち落とすか?」

即答だった。

だがアインは首を振る。

「それは戦争の合図になる」

「では見せてやるのか? 地下を?」

「いや」

アインの瞳が鋭く光る。

「“誤差”を与える」

オペレーターが理解し、操作を開始する。

地熱制御網が微調整される。

地殻振動が意図的に乱される。

エネルギー波形が自然現象に近いパターンへと変換される。

モニターの赤点滅が黄色へ変わる。

「信号撹乱成功。地上側の解析は混乱するはずです」

マドラーが舌打ちする。

「甘いな。奴らは諦めない」

アインも否定しない。

「分かっている」

一拍。

「だからこそ、今は“姿を見せない”」

海斗が呟く。

「観測者同士ってわけか……」

アインがちらりと見る。

「面白い表現だな」

「向こうも俺たちを見てる。こっちも向こうを見てる」

海斗は苦笑する。

「まるで神様の立場が逆転したみたいだ」

その言葉に、マドラーが反応する。

「神などいない」

アインは静かに言う。

「いるとすれば、“選択”だ」

沈黙。

その時。

警告音。

「新規動き確認!」

スクリーンに別ルートの探査線。

「……二機目?」

「いえ、衛星リンクです。広域解析が始まりました」

マドラーが低く唸る。

「包囲網だ」

アインの目がわずかに細くなる。

「本格的だな」

海斗が息を飲む。

「そこまで地下が欲しいのかよ……」

アインは静かに答える。

「未知は恐怖だからな」

そして小さく付け加える。

「そして、恐怖は人を掘らせる」

モニターの向こう。

地上の観測室では、同じ瞬間に地下の波形が乱れたことを確認している。

見えない攻防。

銃も爆発もない。

だが確実に始まった。

観測戦。

マドラーが低く言う。

「いずれ接触は避けられない」

アインは頷く。

「だがまだ早い」

海斗を見る。

「君はどう思う?」

海斗はしばらく考え、そして言う。

「……俺は戦いたくない。でも」

一拍。

「もし向こうが無理やり来るなら、その時は俺が前に出る」

マドラーが薄く笑う。

「地上の人間が、か?」

海斗は肩をすくめる。

「俺はもう半分こっち側だろ?」

アインが小さく笑う。

「……そうかもしれないな」

地上。

地下。

互いに知らないまま、互いを探る。

黒いモニターの向こうで。

赤い点が、再び静かに灯った。

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