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地球の地下には4400年前から続く文明があり、人類は観測対象だった 〜登山中に消えた俺の真実〜   作者: ムーンキャット


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第3話 決裂

雨は、まだ降っていなかった。

だが空は明らかに異常だった。

雲は渦を巻き、昼でも夜のように暗い。

雷鳴が遠くで鳴り続け、

大地は理由もなく微かに揺れている。

人々は祈り始めた。

神に。

空に。

あるいは、ただの不安から。

地下研究施設では、

最後の警告音が静かに鳴っていた。

「地殻応力、限界値を超過」

「海水位、予測モデルを上方修正」

ジェレスは端末を見つめ、

確信に変わった“予感”を受け止めていた。

「……来る」

背後で、重い足音。

カイザーだった。

彼の表情は、迷いを捨てた人間のそれだった。

「準備は整った」

ジェレスは振り返らない。

「使うつもりか」

「使う」

即答だった。

「もう止められない。

いや、止めるべきじゃない」

カイザーは制御室の中央に立つ。

そこには、核反応を制御する巨大な柱状装置があった。

「見ろ、ジェレス。

空が荒れているのは事実だ。

だが原因は神じゃない」

ジェレスはゆっくりと振り向く。

「……お前だ」

一瞬、沈黙。

だがカイザーは否定しなかった。

「そうだ。

人類がこの力に触れた結果だ」

ジェレスは叫ぶ。

「なら止めろ!

引き返せる!」

「引き返す?」

カイザーの声に、初めて苛立ちが混じる。

「今さら?

ここまで来て?

人類はもう知ってしまった。

力を、恐怖を、支配を」

彼は装置に手を置く。

「なら俺が背負う。

神の役割を」

その言葉に、

ジェレスの中で何かが決定的に崩れた。

「……それが、お前の答えか」

「これが“平和”だ」

ジェレスは一歩下がる。

「違う。

それは世界を壊す」

カイザーは静かに言った。

「壊さなければ、作り直せない」

二人の視線が、最後に交わる。

かつて、

同じ未来を語り合った目ではなかった。

ジェレスは背を向ける。

「俺は、地下に行く」

カイザーの眉がわずかに動く。

「逃げるのか」

「離れるだけだ」

ジェレスは振り返らずに言う。

「人類を信じる。

選択する自由を」

カイザーは答えない。

だが、その沈黙が

決別の証だった。

その日、

ジェレスは賛同者たちを集めた。

科学者、技術者、家族。

武器を拒み、

力の独占を拒んだ者たち。

彼らは地下深くへと潜る。

完成した原子潜水船――

後に「ファントム」と呼ばれる船に乗って。

そして――

地上では、カイザーが装置を起動した。

空が、裂けた。

雲が落ち、

海が持ち上がり、

世界が水に沈み始める。

人々は叫び、

逃げ惑い、

やがて巨大な舟に縋った。

後にそれは、

ノアの方舟と呼ばれる。

だが歴史は、

すべてを語らない。

語られたのは、

「神の怒り」だけだった。

地下に消えた人類と、

裁かれた天才の名は、

神話の外へと追いやられた。

カイザーは、

荒れ狂う空を見上げながら呟く。

「これでいい……

これで、人類は一つになる……」

次の瞬間、

白い光が世界を包んだ。

――彼の姿は、

二度と確認されることはなかった。

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