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オブザーバー 〜下の世界から〜  作者: ムーンキャット


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第17話 「地上へ」

中央統制区画の光が、静かに明滅している。

三日。

それが、猶予。

アインは無言でデータを整理していた。

地上の掘削拠点、責任者、軍事ライン、通信経路。

海斗は腕を組んだまま、じっとスクリーンを見ている。

「……行く」

静かな声だった。

アインは視線を上げる。

「予想はしていた」

「止めるって言ったしな」

「方法は?」

海斗は苦笑する。

「それを今から考える」

アインは一歩近づく。

「地上は合理で動く。理想では止まらない」

「だから顔出すんだよ」

「顔?」

「俺が見た。俺が知った。

なら俺が言うしかない」

アインは少しだけ目を細める。

「記憶は守る」

「当たり前だろ」

「だが――」

アインは言葉を選ぶ。

「もし状況が制御不能になった場合、強制回収する」

海斗が笑う。

「了解。保険付きか」

「命令ではない」

「分かってる」

少し間があく。

アインが静かに言う。

「怖くないのか?」

海斗は数秒黙る。

「怖いよ」

正直だった。

「でもさ」

スクリーンに映る掘削現場を指差す。

「止めないと、どっちも後悔する」

アインの表情がわずかに変わる。

「……君は本当に地上人らしくない」

「褒めてる?」

「半分は」

空間が歪む。

転送準備。

アトムスーツが海斗の身体を包む。

簡易型。防御と通信のみ。

「翻訳機は不要だな」

「日本だしな」

「感情解析はオンにする」

「監視か?」

「安全確認だ」

海斗は肩をすくめる。

「好きにしろ」

転送座標――山間部、掘削基地外縁。

光が収束する。

消える直前、アインが言う。

「海斗」

「ん?」

「三日だ」

「分かってる」

「信じている」

その一言に、海斗は一瞬だけ目を見開く。

そして、消えた。

――

冷たい夜気。

山の匂い。

遠くで重機の音。

海斗は林の陰に立っていた。

巨大な照明塔が夜を切り裂く。

仮設フェンス。

軍用車両。

「本気だな……」

通信が耳に響く。

〈映像リンク確認。こちらで支援する〉

「ありがとよ」

海斗はフェンスへ向かって歩き出す。

警備員が叫ぶ。

「止まれ!立入禁止だ!」

海斗は止まらない。

「責任者に会わせろ」

銃口が向く。

緊張。

〈心拍上昇。慎重に〉

アインの声。

海斗は両手を上げる。

「撃つな。話をしに来ただけだ」

ざわめき。

無線が飛び交う。

数分後、テント内。

責任者らしき男が睨む。

「誰だお前は」

海斗は真っ直ぐ見る。

「この下を掘るな」

沈黙。

「理由は?」

「取り返しがつかなくなる」

男が笑う。

「宗教か?」

「違う」

海斗は言葉を選ばない。

「この下には、お前らが想像してる“資源”じゃないものがある」

空気が変わる。

男の目が鋭くなる。

「具体的に言え」

海斗は息を吸う。

言うか。

言わないか。

地下都市。

アイン。

マドラー。

禁忌。

〈慎重に〉

アインの声。

海斗は覚悟を決める。

「……未知の文明だ」

テント内が凍る。

男の顔色が変わる。

「証拠は?」

「俺が見た」

「妄想だ」

「なら試せ。掘れば分かる」

男が立ち上がる。

「だから掘っている」

海斗は一歩踏み込む。

「やめろ。今ならまだ間に合う」

外で重機のエンジンが唸る。

地面が震える。

〈振動増大。臨界深度まで残り十二時間〉

アインの声が冷静に告げる。

男は海斗を見つめる。

「お前は何者だ」

海斗は迷わない。

「止めに来た人間だ」

その瞬間――

地面が、わずかに鳴った。

重機ではない。

もっと深い振動。

〈異常波形検知〉

アインの声が変わる。

〈……マドラー側のエネルギー反応〉

海斗の背筋が凍る。

「まさか……」

三日。

まだ一日目。

地下で、何かが動き始めていた。」

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