第14話 地下都市の深部探索
マドラーの轟音が去った後も、地下都市の空気は微かに緊張を帯びていた。
海斗は息を整えながら、アインの後をついて歩く。
「……いやー、あんな人がいるんだな。地上にいても、あんな風に怒鳴り込んでくるのか」
「地上文明では、秩序と支配が最優先される者です。感情の発露が過激になることもあります」
アインの声は冷静だが、ほんの少し眉が上がった。
深部へ進むにつれ、通路の壁はより光ゴケの光に満たされ、柔らかな淡緑色の輝きが海斗の影を長く伸ばす。
「……こんな奥まであるのか。まるで地下全体が都市みたいだ」
「はい。この都市は複数のコロニーから構成され、生活区、研究区、観測区が階層的に配置されています」
海斗は壁に埋め込まれた透明スクリーンに目を奪われる。そこには地上の風景がリアルタイムで映し出されていた。
「お、おい……これ、全部監視してるのか?」
「はい、全域です。危険を未然に察知するための観測システムです。介入は最小限に留めます」
ふと、通路の先に薄暗いアーチが現れる。アインはそこで立ち止まった。
「ここが、研究区の最深部です。ジェレスの設計思想が最も色濃く残っている場所です」
海斗は息を飲んだ。
「ジェレス……文明の祖、だろ?」
「はい。彼が築いた地下文明の理念と技術の根幹がここにあります」
研究区の中央には、巨大な水槽や培養槽、光ゴケの実験フィールドが並ぶ。UMAの幼体が泳ぐ様子も見えた。
「うわ……地上の伝説みたいなUMAの子供もいる」
「全て、この都市で生まれ、管理されています。生態系のバランスを保つために設計されています」
海斗は思わず壁に手をつき、感触を確かめた。
「……全部、計算されて作られた世界なんだな。自由に見えるけど、制御されてる」
「正確には、自然のように見える形で合理性を保持しています」
海斗は顔を上げ、アインに笑いかけた。
「……なあ、敬語はやめようぜ。俺は俺だし、君も君だろ?」
アインは一瞬、驚いたように目を見開いた。
「……あなたは、打ち解けて話したいのですね?」
「そうそう。普通に話そう。俺は友達になりたいんだ」
アインは微かに笑みを浮かべ、翻訳機越しに頷いた。
「理解しました。それでは、私も敬語を省きましょう」
その瞬間、地下都市の光と技術に包まれた二人の距離がぐっと縮まった。
海斗の目には、未知の文明の全貌が広がり、心が高鳴る。
——ここには、地上の人間の想像を超える世界が確かに存在していた——
そして海斗は心の中で誓った。
「絶対、全部知りたい……どこまでだって、この世界を見届けたい」
アインも静かに頷き、地下都市の奥へと二人は歩みを進めた。




