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地球の地下には4400年前から続く文明があり、人類は観測対象だった 〜登山中に消えた俺の真実〜   作者: ムーンキャット


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第2話 捕獲

須藤海斗の目の前で、空気は元に戻った。

風が吹き、鳥が鳴き、山の匂いが鼻を打つ。

だが、胸の奥はざわめき続けた。

「……今の、なんだ……?」

足元を見つめ、深呼吸を試みる。

岩肌の中にあった潜水艦の形は、もうそこにない。

まるで幻だったかのように、完全に消えていた。

しかし違和感は消えない。

頭の奥に、意味のわからない“声”が残っている――

無機質で、感情のない、存在の視線の記録。

その時だった。

背後の空気が、突然重くなる。

無音のまま、世界の密度だけが変わった感覚。

そして、背筋に氷のような視線を感じた。

「……誰だ……?」

振り返ろうとするが、足が地面に固定されたように動かない。

視界の端で、かすかな揺らぎ。

それは風でも、霧でもない。

──まるで空気自体が曲がった。

海斗は理解した。

自分は見つかったのだ。

目の前に現れたのは、人の形をしていた。

だがその姿は、人間離れしていた。

色彩は自然に馴染み、光を反射しすぎず、影を落とさない。

動きは滑らかすぎて、筋肉や骨の運動を超えている。

その一挙手一投足が、観測であることを明示していた。

「……な、なに……?」

気づいた時には、海斗は浮いていた。

地面から足が離れ、空中で安定している。

まるで、見えない手に持ち上げられたかのように。

「危険はない。抵抗は不要。」

声もないのに、脳内に直接流れ込む。

言葉ではない、論理の塊のような冷たさ。

それでも海斗は理解する。

これは脅しではない。捕獲だと。

目の前の存在は、動かすことなく、海斗の体勢を制御している。

だが同時に、肌で感じる力の強さは無限に近い。

人間の腕力など、まるで存在しないように思えた。

「……や、やめ……」

言葉は途中で消えた。

声帯すら支配されるような感覚。

観測者の意思ひとつで、思考も動きも止められる――

その事実が、恐怖を通り越して、理解不能な感覚に変わった。

視界の端で、光の揺らぎ。

山肌の色は元の景色。

だが、揺らぎの奥に、透明な翼のような何かがあった。

海斗は知った。

これが、地上の人間が決して見ることのない存在の姿であることを。

「……っ、うそ……」

次の瞬間、空気の密度が変わり、海斗は静かに空中で固定される。

意識は明晰のまま、体だけが自由を奪われている。

まるで、観測者の手で世界そのものから切り取られたかのようだ。

──こうして、須藤海斗の運命は、

静かに、しかし確実に動き出した。

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