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門出

この蝶は目的地に向かいながら延々と無駄話をしている。

蝶としては短い人生だけど青虫の頃から覚えてるんだとか、一度ドロドロに溶けてこんな綺麗になるんだぜと言った後に自分の今の状況を思い出して羽を見て今は見る影もないけどと勝手に落ち込んでいる。


バカの相手は疲れるものだ。

だが、大人しく聞いてやる。

新しい環境に連れて行ってくれるこいつに、最低限の感謝の態度を示してやるのだ。

我ながら小さな体には収まらないほどの大きな器だと感心する。


そうこうしている内に花の麓にたどり着いた。

どうやらここが目的地のようだ。

時々蜜を吸いにくるのに使っている花だ。

上りやすくて蜜が多い。


わたしたちの腹には非常食の蜜が入っている。

そんなことは今はどうでも良かった。

分かってはいるが質問する。


「ここに仲間たちがいるのか?」


「そうだよー、確実じゃないけど、ここは吸いやすいし蜜が多いから、みんな大好きな場所さ〜。さ、登ろう!」


そういうと少し頼りない様子ではあるが登っていく。


ここまで連れてきた感謝もないとは、なんと呆れた蝶だ。

間抜けと呼ぼう。

思っていても口には出さない。

わたしはそこまで短絡的ではないから。


にしても本当に間抜けな光景だ。

これまで地を這ってきたのもそうだが、空を飛ばずによじ登っている蝶の姿というのは見ていて笑える。

この馬鹿げた光景を何かに残したくなるような感情になるのは、自分というものを確かに存在した個体だと証明したい欲望からだろうか。

それを目標の一つにしても良いかもしれない。

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