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コミュニケーション

もっと色々と考えて行動したいのに、いまだにうるさく叫んでいる蝶に邪魔されたことに苛立ちを覚え、思わず怒鳴ってしまう。


「やかましいぞ!ちょっと肉を持っていかれただけだろうが!」


ふと叫び声が止む。

驚きのあまり言葉を失っているようだ。


それもそのはず、アリなんて無言で襲ってくるだけの不気味な生き物だ。

なのにこんなに賢い個体がいて会話ができるのだから当然だろう。

ようやく黙った蝶に言ってやる。


「落ち着いたか。わたしは君を食べないし解体もしない。わたしは特別なんだ、自由のもと生きている数少ないアリだ。」


喋り出すとどんどん言葉が出てくる。

やはりわたしは特別なのだ。

自由意志を持ち、異種族と話せるのだ。


蝶は痛みには落ち着いたが、アリが喋ったことにはまだ立ち直れないらしい。

ようやく絞り出した言葉が、


「襲わないのかい?」


だ。

蝶というのはやはり阿呆なのだろうか。

あまりにも会話の速度が遅すぎる。


「その件に関してはもう話したはずだが、同じことを二度も言わせるつもりか?」


とわたしが凄むと、少しひるみながらも安心したのかヘラヘラし出した。


「よかった、今日は踏んだり蹴ったりで……とうとう死ぬのかって色々思い出して悲しくなっていたんだよ。襲ってきたのが君ともう一匹で良かった!まあ、少し食べられちゃったわけだけど……」


話を終わる前に煩わしくて切り出す。


「そうか、それは災難だったな。だが、お前の身の上話など、どうでもいい。わたしは自由意志を持つものとしてようやく名実共に自由になったのだ。お前に構っている暇などない。」


そう言い放ち、その場を離れようと周りを確認する。

冷たいかもしれないが、足手纏いにしかならない蝶と行動するのは危険だ。

こいつはもう色々なやつにとって狙われたら逃げようのない格好の獲物だ。

そんな奴と一緒にいるリスクは背負えない。


背を向けると泣き始めやがった。

本当に情けない奴だ。

そして喚き出した。


「待ってくれよ。僕だけだと死んじゃうよ?君がせっかく助けてくれた命なのに君の行動は無駄になるんだよ?ね?ね?助けてくれよ。せめて仲間たちがいる近くまででもいいからさ、お願いだよ」


わたしは心底こいつを好きになれないと思いつつも、話の後半に興味を持った。

自由になったものの目標がまだない。

であれば蝶たちと交流して知見を広げることで、また次何をするか思いつくのではないだろうか。

もっと他の生き物とも出会えるかもしれない。


少なくともなにもすることのない虚しさを晴らせるだろう。

何よりも今はもっとコミュニケーションをとってみたい。

こいつ以外であればなおいいのだが。


「よし、わかった。」


そう答えると蝶は顔を明るくした。

こんな何も考えていなさそうな奴でも自由意志さえあればわたしの役に立つのだから、自由意志さまさまだ。


「そうと決まれば案内するから一緒に来てくれよ!こんな強いボディガードがいるなら……うん、まあ小さいけどある程度安心だろ!」


うむ、やはり選択を間違えたかもしれない。

一言多くて気に障る。

こんな奴と一緒にいるのは危険よりも嫌だという気持ちが勝つ。


だが仕方ない。

一度言ったことを引っ込めるほど腐っていない。

なんせわたしは優秀で賢いから。

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