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転落
不意に間抜けの体から力が抜け、倒れる。
死んだことへの悲しみより先に自分の保身を考える。
まずい、踏ん張らなければ間抜けは花からも転げ落ちている。
このままではわたしも振り落とされてしまう。
そう考えても体は急に動かないものだ。
回転の速い頭に体が追いつかない。
何もできないまま間抜けと共にいい香りのする花から遠ざかっていくことだけは分かった。
気づくと間抜けは初めて会った時と同様、地に落ちていた。
もう動きもしないし話もしない。
意外なほど悲しい。
最初はあんなに離れたかったのに……少しの時間を共にしただけでこんな気持ちになるものなのか。
初めて会話をした相手という特別感もあるのかもしれない。
理由は自分でも特定できない。
悲しい、ただひたすらに悲しい。
自由意志のせいで悲しんだ。
無意識のうちに自分の気持ちを分析した。
そのせいで気付くのが遅れた。
そう、遅過ぎたのだ。
悲哀に暮れ周囲を気にする余裕がない中、その最悪なタイミングに狙いをつけたかのように絶望はやってきた。




