曰く付きな箱歌
テスト前ですが、短編を載せます。ただでさえ駄文なのに、後半が手抜き気味になってしまいましたが……どうぞ。
あるところに骨董屋をしている男が居ました。
彼には3人の子どもがいました。
ある日、男が仕事を休み遠くへ出かけた時のことでした。
子どもたちは留守番をしています。
まるで童歌のようなものを歌っていました。
――さあさあ一つ目、その手をとりませう
――お次に二つ目、あなたと舞いませう
――最後に三つ目、お辞儀をしませう
帰りは道化に気を付けて――
これは昔から親から子に伝えられてきた歌でした。
他にも歌はありましたが、3人とも歌うのをやめました。
正直、3人にとってとてもつまらなかったからです。
「ねえ、倉庫に行ってみようよ」
その中の少年が言いました。
倉庫には、売らなくなった品物や、後々売り出す予定の品物、家で使う物など…様々な物が置いてありました。
「やめようよ。勝手に入って怒られたらどうするの?」
今度は女の子が言いました。
「大丈夫だって。それとも怖いの?」
「べ、別に怖くなんかないもん!」
「なら行こうよ?」
そんなこんなで3人はとても純粋な探求心で倉庫へ向かいました。
倉庫はとても夜が来たかのように真っ暗です。
誰かが明かりを点けました。すると今まで見たこともないような物が沢山あるではありませんか。
「これは一体なんだろー?」
「駄目だよ! 下手にに触って変なことになったら……」
「考えすぎだよ。おかしなことになるようなことをしなければいいんだから」
末っ子らしき彼はその言葉に賛同したのか、仕方ないと自分に言い聞かせるようにして倉庫内の物を見始めました。
「『びーどろ』? なんだか面白そう!」
「見て見て! 『けんだま』があるよ!」
「これは『手鞠』だって!!」
3人は口々に言いました。
そしてその中で、まるでオルゴールのような箱を見つけました。その箱には赤黒い文字でこう書かれていました。
――『道化ノ箱』と。
「何コレ。血みたいな色だよ。何だか気味悪い」
「でも何だろう、『道化ノ箱』って」
「開けてみようよ。だって気になるもの」
子供たちの好奇心はその箱に集中し、とうとう開けてしまいました。
ところが、中身は空っぽでした。何も入っていないその箱の内装は文字と同じ色でした。
「なーんだ。何もないじゃん。つまんないの」
1人がその箱をポイッとゴミのように放りました。
「他に面白いのないかなー」
……ココニアルゾ……
とても低いような、それでいて高い音とも言えるような、不思議な響きが少年の耳に届きました。
「今、何か言った?」
「え、私は何も言ってないよ?」
「僕も言ってないし、何も聞こえなかったよ? 気のせいじゃない?」
「確かに聞こえたんだけどなぁ……」
……オ前ノ望ム面白イモノハココニアルゾ……
「そろそろ戻ろう。父さんが帰ってくる前に」
「うん、そうだね……ってあの子がいない!」
二人は気づきました。何かが聞こえたと言ったあの末っ子の少年が居なくなっていたと言うことに。
「おい、早く来いよ」
「ねぇ……あれ……」
少女が例の『道化ノ箱』を震えながら指さしました。
その箱はさっきよりも大きさが異なっていました。
オルゴールとも言えた箱は子供1人入れる大きさになっていたのです。
「何……で……?」
……マダ足リナイ……
今度は2人にも聞こえました。あの声です。
「いやッ! だ、誰か居るんでしょ? だからこんな悪戯を……」
「そ、そうだ! こんな悪趣味はやめろ!」
サアサア一ツ目、ソノ手ヲトリマセウ
オ次ニ二ツ目、アナタト舞イマセウ
最後ニ三ツ目、オ辞儀ヲシマセウ
帰リハ道化ニ気ヲ付ケテ
声ニ答エリャ其ノ道閉ザス
孤独ナ道化ニ気ヲ付ケテ
「この歌……?!」
「ホントに何なんだよッ!!」
サアサア一人目、オ手ヲ拝借
オ次ノ二人目、サアドチラ?
最後ノ三人目、残リノ子供――
「一人目って……」
「たぶんあいつのことだろうな…」
「じゃあ……私たちは二人目と三人目のどちらかってこと…?」
早ク、早ク、コチラヘオイデ――
声は一向に止みません。
2人はじりじりと後ずさりをして、壁へぶつかりました。
「どうしよう……このままだと私たち……」
箱から突然、末っ子である彼が出てきました。目はとても虚ろで抜け殻のようでした。
「早ク、兄サンタチモオイデヨ」
そんな彼は歪んだ笑みを見せて2人に近付きます。
2人は恐怖で何も言えず、動けもしませんでした。
「何ヲソンナニ震エテ居ルノ? コチラハ安全ダヨ」
彼らの手を掴んだ時でした。
孤独な道化は静かに歪み
幼子捕らえて傀儡にす
それでも道化の孤独は消えぬ
ここにいる誰でもない響きが聞こえました。
「コノ歌ハ……?!」「お……父さん?」
道化は新たに傀儡増やす
それでも道化の孤独は消えぬ
「ソレ以上歌ワナイデッッ!!!」
いつしか道化はさらに歪み
人々から恐れられ
本当に孤独となりました
人々の刃に道化は倒れ
最期まで孤独に散りました
「ヤメテヤメテヤメテヤメテヤメ……」
少年は糸が切れたように床に崩れ落ちました。
箱の大きさも元のオルゴールくらいに戻っています。
あの不思議な声も聞こえません。
「ったく、お前たち何をして――」
「お父さんお父さん!!!」
「まぁ、今回ばかりは……仕方ない、か」
近くに駆け寄り泣きじゃくっている子供二人を見て、少し困った感じで彼は言いました。
――はてさて。とある骨董屋での不思議な物語はこれまで。
一体どういうことなのか分からない方がほとんどでしょう。
ここでこの骨董屋の主と道化の関係を一つ。
それは骨董屋の先祖にあたる、『詩使い』という者たちが存在しました時代。
先ほどの『歌』のようなことが実際にありました。
詩使いは歌に不思議な力が宿ると言う一族。その歌で、時には人の病を治し、時には悪しきモノを封じていました。
あの道化師は封じられたモノの一つ。
封じたモノは正式に浄化するまで詩使いの元に置いてあります。何しろ、封じたモノがあまりにも多いので浄化できずに何年も置いてある品もあります。
そんなこんなで。
時が過ぎ、詩使いが骨董屋となった今でも封じたモノはかの倉庫に残っています。
現在は昔以上に浄化に時間がかかっているようで、全てが無くなる頃には、相当時が経っていることでしょう。
先の話で道化師の箱を開いてしまった子供たちも、いつしか主から歌の力を引き継いで、骨董屋という姿の裏で、詩使いの仕事をすることでしょう。まぁ、何も骨董屋を継いでいるなど、確定ではありませんが。
彼らが詩使いとなることは確かです。
さて、私は一体誰に語っているのでしょうね。私は一体誰なのでしょうね。
『私』を悪しきモノと思っても、詩使いの誰かだと思っても、それは貴方の自由です。
――ところで、今貴方の近くにある『モノ』……“曰く付き”だったりしますか?
“曰く付き”ならばまたお会いするかも知れません。
出来ることならば、『仕事』で会うなんてことは嫌なのですが……
話はこれくらいにして、そろそろ行きましょうか。
それでは。貴方に幸多からんことを。
意味不ですね……
後半手抜き過ぎたので、以下、話の補足。
『詩使い』…骨董屋を営む家系の先祖。歌に特別な力が宿り、傷を癒したり、悪しきモノを封じることができる。
『道化師』…孤独な魂が歪み、孤独を癒す為に子供をさらい、人形のように操っていた。だが、いつしかさらに歪み、人を殺めるようになる。そこで詩使いに封印された。
『浄化』…悪しきモノは一回詩使いによる歌で封じないと浄化できない。浄化とは、長い時間をかけて詩使いによる特別な音を出すことで、悪しきモノを消滅させること。尚、周りが静かであることが大前提。骨董屋の近くに小屋があり、いつもはそこで浄化している。
『語り部』…あらすじと物語後半に出てくる“曰く付き”が口癖の誰か。善人なのか悪人なのかも不明。当初、連載予定だった時は『岩槻 琥珀』と言う名前だった。実質、『箱、曰く付き』の文字を並び替えただけ。
……ざっとこんな感じです。それでも説明不足な所は脳内補完でお願いします。