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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD5 2024 10月

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99 久しぶりのアタリだと思っていたのにガッカリだった。

 不穏な火種をそっと。

 久しぶりのアタリだと思っていたのにガッカリだった。

 あの悪の巣窟に関係者、それもかなりのVIPだと思っていたが、とんだ肩透かしだった。

 そんな不機嫌を隠せずに通りを歩き、仲間たちの待つ集会場へと足を運んだ。裏通りにある倉庫、仲間と資金を出し合って借りている彼女たちの拠点でもある場所だ。本当はもっとましな場所を借りたいが、病院贔屓の住人達のせいで、こんな場所しか借りられなかった。

 目先の利益に食いついた拝金主義達どもめ、いつか痛い目を見ればいい。

「おお、お帰り。」 

「どうだった?」

 折りたたみ椅子や木箱などを並べて好き勝手に座る仲間たちの期待した目に、首を振って返事をし、彼女はどかっと自分の椅子に腰かける。

「全く話にならない。同類だったわ。」

「そうか、残念だったな。お疲れ」

 労いの言葉が今も腹立たしいが、仲間に当たるののどうかと思い、ぐっと飲み込む。

「観測班からの報告だと、いつも以上に張り切っていたから、VIPだと思ったんだが。」

「あれはだめね、見た目の誤魔化しだけ知っているだけの一般人よ。まんまと騙されて、私の言葉を欠片も信じなかったもの。」

「そうか、残念だ。」

 彼女の不機嫌な様子をとがめるものはいない。むしろ、その不機嫌に同調している者が多い。

 ランバース精神病院は悪。

 彼女たちはそう妄信している、妄信しているからこそ、活動は根深いものだった。この街や病院の近くに拠点を作り、病院の動向を密かに監視し、来客があれば接触を図る。いずれは病院の闇を暴き、患者たちを救いだすこと、それが彼女たちの目的だ。

 仲間の中には、彼女に説得されて加わった者もいる。自分の身内の治療が絶望的であることを嘆く者や、正義感から自力でたどり着き、病院の在り方に物申したが、院長に軽くあしらわれた者。どこかに抱えていた鬱屈した思いを受け止めてくれた彼女たちに協力を決めた者たちだ。

 その数はけして多くない。だが、少しずつ増える仲間の存在は、彼らの身勝手な妄信の根拠となり、ラルフたちのように非協力的な相手や病院への敵意へと変換され、その活動は緩やかに過激になっていた。

 それでも病院や街の住人たちが、彼らを放置しているのは彼女たちが、NGOのような組織ではなく、一般人の集まりだからだ。監視や勧誘もギリギリ法律の範囲内で、大人しいものだったからだが

「もうすぐ一年になるけど、進展がないな。」

「今、このときも苦しめられている人がいるというのに。」

 だが、緩やかな進捗は、彼女たちに引き際を忘れさせ、思い通りにならない現実へのイライラを加熱させてもいた。

「やはり、もっと積極的に。」

「でも、大体的にデモをしても、注目されない。ネットにアップしてももみ消されるのがオチだ。」

 デモ活動をしたり、インターネットなどのメディアを通じて、自分たちの意思を伝えることもしている。でも、ほとんどが理由をつけて削除され、デモは近隣住民からの苦情ですぐに解散させられた。来客を捕まえて勧誘することや、周囲を観察することは見逃されているが、それ以上のことは許されていない。

「やっぱり、だめよ。本気で救おうと思うなら、対話だけじゃダメなのよ。」

「それは、そうかもしれないが・・・。」

 彼女は仲間の中で、最も過激な思想の持ち主だった。

 健康的に問題がないならば、家族は一緒に居るべき。それを無理やり切り離して閉じ込める。家族を見捨てて、預けることを了承した家族も悪であるが、それを実現できる環境を提供する老人ホームや病院を嫌悪していた。

 患者が日常生活を送れない。それは家族の愛が足りないからだ。経済的な支援が必要ならば、あんな病院でなく、一つ一つの家庭を援助すべきだ。そうしないのは、そこに利権や、実験台を確保したいという思惑があるからに違いない。

 患者たちが社会復帰できないように薬物や虐待で、その判断力を奪っている。もしかしたら、ロボトミー手術だって行われているかもしれない。

 ランバース精神病院の院長は、ウォルター・レイルマン。ある程度歴史を勉強すれば、この名前に込められた悪意に気づけるものだ。

「あそこは絶対に違法な治療を行っている。踏み込んでその証拠を掴めばいいのよ。」

「落ち着け、前も話し合ったろ、それは流石にまずい。表立って踏み込んでも捕まるのは俺たちだぞ。なにより、あの警備を突破するなんて無理だろ。」

「そこは、みんなで協力すれば。」

「ま、まってくれ。そこまでするなら、俺は降りる。家族だっているんだ、危険は冒せない。」

 彼女は本気で主張している。だが、仲間たちは保身を考えてその一歩を踏み出せない。何なら最近は勧誘活動にも消極的だ。交代で病院を監視することだけは参加しているが、それもいつまでも続くだろうか。

 遅々として進展しない活動が勢いを失うのは時間の問題だ。同時に、ここまで来て何の成果もあげられずには終われない。


 何かもっと、世間から評価されるような成果をあげないと終われない。


 自分たちがそういう状態であることこそ、異常であるとは自覚できず。今日の夜も益体のない議論が繰り広げられ、次の日も同じように集まる。

 そのまま細々と終われば、彼らはただの過激派で終われただろう。 

 しかし、世間というものは時に、誰にとっても不運でしかない偶然を引き起こす。

 それを運命と呼ぶか、不運と呼ぶかは、当人たちの視点によるだろう。


 ただ、そこに、ラルフ・アルフレッドやウッディ・リドル、ホーリー・ヒジリが関わることはない。それだけは先に伝えておこう。

 なんとも不穏な空気ですが、これからどうなる?

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