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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD5 2024 10月

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98 自分の勘をもっと信じるべきだった、そう後悔したときには遅かった。

新たな火種が投入されました。

 自分の勘をもっと信じるべきだった、そう後悔したときには遅かった。

 夕日に染まったランバース精神病院の最寄りの街。あらかじめ予約しておいた宿の食堂で、一仕事終えた労いでビールを嗜んでいた時だった。

「ねえ、アナタたち、ランバース精神病院の関係者?」

 僕たちのテーブルに現れたその女は、ずけずけと近づいてきながらそう言って、断りもなく席に座った。この時点ですぐに追い払うべきだった・・・。

「ええっと、どちら様?」

「質問に答えて。」

 なんとも感じの悪い女性だった。酒も入っていたのもあり、僕たちが感じた印象はとても悪く、それが最後まで変わることはない。

「別に答えるのは構わないんだが、あんた、ずいぶんと怪しいぞ?」

「答えるなら、先に応えなさい。」

 いらっとする態度だ。だが相手が自分たち以上にイライラしているので不思議と落ち着いてくる。

「で、どうなの。」

 イライラとトントンとテーブルと叩きながら問い詰める女に、サッサと答えしまうことにした。

「関係者ではないよ。知り合いがあの病院に入院しているから、面会に行っただけだ。」

 別に隠すことでも、後ろめたい事でもないので、正直に答えた。絡んでき時点で、僕たちが病院方面から車を走らせてきたことを女が見ていたのは予想できたので、余計な質問もしなかった。

「嘘ね。」

 だが、その正直さを女は否定した。

「あんたたちが、病院で出入りしたのは仲間と一緒に見ていた、職員たちがわざわざお見送りまでしていたじゃない。それなのに、面会しただけ?そんなわけあるわけないじゃない?」

「おいおい、見てたってどこから?」

 女の言葉にレイモンドは驚いて質問をしてしまい、その直後にしまったという顔になる。

「ふふふ、見られてまずかったのかしら?」

 その様子を見て勝ち誇った顔になる女だが、勘違いだ。まともに案内せずにスルーすればよかった。

 何を勘違いしたのか女は聞いてもいないことをベラベラと話だした。

「あの病院は、違法な人体実験をしている。その証拠を私達はつかんでいるわ。入院患者の名簿や治療法について公開してないのはそのためなんでしょう?悪い事をしているから、私の質問にウソをついた。あなたたちも同類ね。」

 なんだそのでたらめな理論は?

「図星みたいね。やっぱりなにかあるんだわ。」

 こういう手合いはたまにいる。自分が正しいと思ったことしか見ない、耳に入らない。酒ではなく自分に酔っている。そんなやつ。

「精神病院だと言いながら、郊外にあれだけの設備を作り、施設の情報は外に公開していない。その時点で怪しい。調べてみれば収監されているのは犯罪者や重度の患者ばかり。あんた達だって、誰かを売ったに違いないわ。」

 まあ、確かに、表立って調べることはできないけど、犯罪者のその後について調べていれば、僕たちのようにランバート精神病院にたどり着くことはできるだろう。ただそれって個人情報だから公開されてないんではないだけでは?あと、正式な手続きを踏めば施設は見学できたし、院長たちはオープンな感じだった。

「私達がなんども、施設の監査や患者の待遇改善を訴えても、何の変化もない。最近では返事をもらえないどころか、近づくだけで警戒されるわ。それって、何か悪いことをしているってことでしょ?」

 なるほど、厄介な集団ということだろう。親切であるが、割り切ることはばっさり割り切るタイプみたいだったもんな、院長。

 その後も、女は、人権がとか、正しい利治療をーとか、家族だって泣いてるなど、ホント好きかってにまくし立てた。そのあまりの独善っぷりに僕たちはもう少し警戒すべきだと後悔した。僕たちはただの知り合いだからスルーすればいい。でも万が一にも患者の家族などが彼女に絡まれたら、どれほど気分を悪くするだろうか?

 警官をしていた時間はわずかだが、いろんな人間を見た。家族にだって色々ある。毎日のように愛を注がれながら生きる子もいれば、親、兄弟から暴力にさらされる子もいる。年老いた親を見捨てる子どもがいれば、子に迷惑をかけられないと、施設に入る親だっている。

「家族はやはり、最後まで一緒にいるべきなのよ。」

 だから、女のあまりに身勝手なセリフにはイラっと来た。親と離れることで幸せになる子だっているだろうに、こいつらは何もわかっていない。

 表面的な精神病院のイメージだけを見て、自分たちの思い込みに酔っている。

 院長や病院の職員が女や女の仲間を相手にしないのは、理解し合えないと諦めたからなんだろう。

 今の僕たちのように・・・。


 ひとしきりまくし立てた女は、そのまま不機嫌そうに足音を踏み鳴らしながら去っていた。最初から最後まで理解の及ぶ相手ではなかったが、一体なんだったんだろうか?。

「すまないね、お客さん。」

 どうしたものかと思っていたら、食堂の店主がそっとビールの追加をもってやってきた。

「あれは、最近ここいらに住み着いた連中でね。病院に関わっていると思った人間に、ああして絡んでるんだよ。注意はしているんだけど、そうするともっとうるさくなってな、手が付けられないんだ。」

「それは、またアンタも大変だな。」

 詫びとして差し出されたビールを受け取りながらレイモンがそう答えると、店主は肩をすくめた。

「病院、それも精神病院ができるって話がきたときは、俺たちも不安に思ったよ。けど、あそこの院長さんが丁寧に説明してくれてな。街には迷惑をかけないって言ってくれて俺たちは納得してるんだよ。あれができて、もう何十年となるけど、問題という問題は起きてない。それなのに、あいつらは勝手に集まって、解放するんだとか、闇を暴くとか盛り上がってるんだよ。」

 そんな話をただの旅行客である自分たちに話していいのかとも思うが、店主の様子からすると、日常茶飯事のことなのだろう。

「まあ、そのうち飽きて余所に行くと思うから俺たちはスルーしているけど。お客さん達は災難だったな。」

「いえいえ、ビールありがとうございます。ついでに追加注文いいですか?」

 街の人たちからすると、何度もあったことなんだろう。だからこそ僕たちが流していることに気づいて仲裁はせずにこうして後から詫びを入れてきた。

 店主が悪いわけでもないし、僕たちもただ話しかけられただけだ、警官だって助けを求められなければ止められないだろう。

「呑みなおそう。そんで今日は早じまいして、明日一番に出発しよう。」

「そうだね。」

 その後、女の子とや病院にことは話題にあがらず、取るに足らない世間話をしながら酒を飲み。次の日は、朝一で出発し、この旅は終わった。

 女とは、それっきり会わなかった。


 だが、ふとした時に僕は、女のことを思い出す。

 精神病院に何か後ろ暗い事があること、それを信じていたのは、出発前の僕もそうだった。だが、レイモンドのおかげで冷静に見学することができ、院長たちの誠意からその誤解は解けた。

 一歩間違えれば、自分も女のようになっていたかもしれない。

 そう思うと、少しだけ背筋が寒くなるのだった。

 偏見と正義感って怖いなって話。

 実際、精神病院の一部はインパクトがすごいです。アルツハイマー型認知症の身内がいて、それが一番重症の時にお見舞いに行ったことがあるのですが、鍵付きの部屋にマットレスとお丸があるだけという監獄のような場所でした。そんなところにと思いますが、そんなところじゃないとお互いの安全が保てないくらい対話が出来なかったのは悲しかったです。

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