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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD4 2024 3月

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54 監視対象の周囲に変化あり、今後も監視を続ける必要あり。

パート26に出てきたエージェントさんの近況報告です。

 監視対象の周囲に変化あり。軽微なれど監視を続ける必要あり。

 いつもの報告書にこの一文が加わるようになったのは半年ほど前からだ。

 そして、退屈で単調な任務が刺激的なホームコメディになったのも、ここからだ。

「ケーニッヒ、あいかわらず保管庫のヌシなんだな。」

「ああ、今日だけで10年分のデーターを取り込むつもりだよ。もっとも、あってないようなものだけど。平和な街でよかったよ。」

「ははは、違いない。」

 政府の特務機関であるVR所属のエージェントであるKの表の顔は、警察署で働く唯一のシステムエンジニア、ケーニッヒ・クロムだ。

 署内に保管されてきた過去の事件や捜査資料を電子化し、署内の端末で共有できるようにする。なおかつ、セキュリティーを維持して外部からの違法なアクセスを防ぐのが彼の仕事。

 そんな仕事の性質上、資料保管庫に設置されたサーバーの近くにいることが多く、署内では保管庫のヌシと言われている。赴任当時はからかいの気持ちであったが、彼がもたらした業務管理システムや資料検索システムは非常に好評で、今では敬意を込めたモノになっている。

 そのため、彼がパソコンで作業したり、テーブルに資料を広げていたりしても誰も疑問に持たない。結果が有益ならばその過程や仕事内容などどうでもいい。仕事熱心だが気さくで無害そうな男。ケーニッヒ・クロムが周囲から向けられる評価はそんなものだ

 表の顔ですら、情報特務捜査官という肩書をもち、連邦機関であるFBIやDEA以上で、有事の際は州警察や地方警察に対して、権力を行使することが許可されていることを同僚たちは知らない。

 ケーニッヒ・クロムとして、過去の資料を整理しつつ、その大半をエージェントとしての任務に充てていることも。


 エージェントとしてのKの仕事は、黎明館事件の唯一の生き残りであり貴重な勝者であるラルフ・アルフレッドの監視だ。

 リドルという存在は古くから存在する。そしてリドルに関わり生き残った者の人生には必ずと言っていいほどリドルの影が追いすがる。と組織は認識している。

 リドルに関わったトラウマから精神を病む者。リドルの力に魅入られて新たなリドル事件を引き起こす者。関わった者の多くは悲惨な人生を送ることになるが、中にはラルフ・アルフレッドのように、リドルの誘惑を断ち、リドルに対して運命ともいえる強運を発揮し、リドル事件に関わり解決する者が現れる。組織はそんな彼らを「勝者」と呼び、彼らを支援することで、リドルに対抗してきた。

 

 数年間の退屈な日々に訪れた変化は、突然だったが、そこにはラルフ・アルフレッドの影響があったのかもしれない。というのがKの考察だ。


 はじまりは、ウッディ・リドルという男の違法な研究の発見。

 父子家庭であった、もと研究者が違法薬物の所持と警官への暴行の現行犯で逮捕された。娘であるリーフ・リドルが児童相談所に保護されたことをきっかけに発覚した違法薬物の所持と使用の疑惑。表向きは薬物中毒の虐待親ということで決着がついたが、裏には複雑な背景があった。

 彼は「リドル」を所持し、自身と娘に投与していたのだ。

 保護という名目で定期連絡していたラルフから、発見の連絡を受けた時は耳を疑った。しかし、その言葉を根拠にウッディ・リドルを来歴を追ってみれば、彼が以前所属していた研究室から、研究用に保管されていた「リドル」の一部が紛失したという記録が見つかった。存在が不安定なため、自然消滅という判断となり詳しい捜査はされなかったが、ウッディ・リドルが持ち出し、培養していたなら合点がいく。

 本部や担当の杜撰さに頭が痛くなったが、リドルの特異性とそれに関わる人間の執念を考えればこのような抜け道も不思議ではない。

 リドルはDEAの捜査官を通して組織が回収、焼却処分となった。しかし、ウッディ・リドルには複数の組織ともつながりがあると目され、回収できたものがすべてだったとは断定できない。

 娘のリーフ・リドルにはリドルが投与された可能性がある。兆候が見られないため消極的な監視任務がKの業務に加わった。彼の監視対象であるラルフ・アルフレッドが養父として彼女を引き取った理由も、彼女に何らかの危険性を見出した可能性も考えらえる。


 Kを含め組織はリーフ・リドルについてはこれ以上の追求はしていない。追求によってリドルを刺激する可能性があるからだ。

 

 そしてその3か月後、年末に起こったミューランド大学での不祥事。

 本来ならば違法な動物実験で片付けられる問題だが、ラルフ・アルフレッドとその周辺を監視していたことで、Kは事件の影に存在した「リドル」の存在までたどり着くことができた。

 生物を縫い物のように組み合わせたり、遺伝子をいじった人工生物という倫理観の欠如した研究は、悪趣味なオブジェ作りと当初は判断された。しかし、目撃証言ではそれらは生きて活動していたという。その尋常ならざる事態に対して、組織が以前から送り込んでいてエージェントたちを通じて捜査を強化させたところ、主犯格の教授が隠し持っていたリドルの回収、処分に成功した。

 ミューランド大学の教授の中には、リドルに関わる見識を持っている者も数名いて、彼らは組織の正体は知らぬまま協力者として活動してた、いわば味方だった。けれども、保管、製造もともに違法となっているリドルを持っていた時点で、彼らに未来はない。

 かくして、大きな事件に発展する前に二つのリドル案件を解決できたことに組織は喜んでいたが、Kは、一連の流れに因縁を感じていた。


 ラルフ・アルフレッドが静養先にこの街を選んだのは全くの偶然だ。

 ウッディ・リドルの虐待と狂気の研究の証拠が見つかったのは、地元の少年が彼女を保護したことがきっかけだが、ウッディ・リドルを捕縛したときにラルフ・アルフレッドは居合わせており、地下室の奥にある研究室に保管されたリドルを発見しKに知らせたのもラルフ・アルフレッドだ。

 ミューランド大学の不祥事は、いずれ発覚される杜撰なものであった。しかし、それを暴いた新聞記者、レイモンド・ヒジリは、以前にラルフと黎明館事件について真相に近づいた要注意人物の一人だ。しかもミューランド大学を訪れる前は、ラルフ・アルフレッドやリーフ・リドルと共に行動していた。

 2人の間に特別なやり取りは確認されていないが、迅速すぎる事態の推移と、放浪癖のあるレイモンドが街に戻って活動拠点を構えたことなど、妙な活動をしている。

 まあ、実際のところは、ミューランド大学からの口止め要請とルームメイトのネット炎上のほとぼりが冷めるまでの休暇のようなもので、因果関係はないものと判断できた。

 それぞれの事件につながりは考えられない。積み重ね、巡り合わせが悪かったとしか言えない。いや、人的被害が少ないうちに解決したのなら、よかったと言えるだろう。

「都合が良すぎる気もする。」

 ウッディ・リドルの実験は、本格的なものになる直前だった。

 ミューランド大学の違法な研究は、人体実験へと移行する直前だった。

 資料からの推測にすぎないが、分析班から届けられた結果にほっとしたのも記憶に新しい。

 

 リドルは万能の狂気である。過去の記録を読めば、それだけで病みそうになるほど血塗られており、えげつない。リドルに関わる人間は例外もれず狂人で天才だ。巧妙に準備し、残虐に実行する。だからこそ組織はリドルの有用性を理解しながらもその存在を否定し、抹消しようとしている。世界規模で活動する組織の監視を掻い潜り、いざとなったら軍隊すら退ける。それほどにまでにリドルとそれを求める人間は恐ろしい存在だ。

 だというのに、2つの事件はあっさりと終息し、暴露された。これはありえないことである。

 まるで、未来を知っている人間が先回りして、誘導したようなご都合主義。

 それらはすべて、ラルフ・アルフレッドの周辺で起こり、解決されている。

「考え過ぎと思いたい。」

 事実は小説より奇なり。今回はたまたま、運が良かった。それだけのことだ。と結論して、Kはその考察を上には報告していない。K自身はリドルを危険な存在と認識していても、「勝者」という存在は組織上層部の妄想だと思っていたからだ。

「ケーニッヒ。頼んでいた資料なんだけど。」

「はい、そこにまとめておきましたよ。」

 今日も粛々と表の仕事を片付けつつ、監視対象の平和でにぎやかな日々を監視する。少々危うかった事態を乗り越えた今、このくらいの平穏がちょうどいい。

 エージェントだって、人間だ。休みは必要なのだ。

 

 

 アメリカの警察組織は

 FBI[ 連邦捜査局)やDEA(麻薬取締局)ATE(アルコール・タバコ・火器取締局)などの連邦機関から、州警察、地方警察とピラミッドが広がっていきます。

 正直、本作の街レベルだと、警察署はなく、保安官事務所がある程度なのかもしれないのですが、そこら辺はストーリーの都合上、脚色しています。


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