3「ヒジリ」というファミリーネームは悪い意味で有名だ。
割と理不尽なホーリー君の未来
「ヒジリ」というファミリーネームは悪い意味で有名だ。
初RCDで過去の被害者として、各地に攻略のヒントやストーリーを補完するメモを残した、顔の無いモブ。ツカサ・ヒジリ。彼を筆頭に、RCDには「ヒジリ」という名前のモブキャラが各地にメモを残している。「ヒジリメモ」と言われたそれらは、それだけを特集したまとめサイトがあったり、顔の無い「ヒジリ」へのファンアートもあるほどだった。
公式設定では、それぞれの「ヒジリ」につながりは認められていない。だからこそ「ヒジリ」一族には様々な考察が語られているが。RCD3では、ホーリー・ヒジリという少年がこの役を担っており、彼のメモからプレイヤーたちは、平和だったころの街の様子を知ることになる。
そして、ホーリーは「ヒジリ」一族の中で、唯一顔出ししている。
ゲーム冒頭、過去の事件から立ち直り、田舎の街でのどかに暮らす初代の主人公ラルフ・アルフレッド。彼の家に毎日新聞を届けへ行く少年ホーリーは、彼の目の前で謎の怪物に惨殺される。そして始まる、戦闘のチュートリアルと、街が崩壊していくストーリー。「ホーリータイマー」とか「ホーリーシグナル」と呼ばれるこのイベントの時点では、顔見知り程度の関係なんだけど。のちになって見つかるメモから、ホーリーが「ホーリー・ヒジリ」ということが発覚し。「また、ヒジリか」とラルフがつぶやくファンサービスがある。
「なんて、くそゲーだ。」
ファンの間では、人気のあるホーリー君。だが、そんな理不尽なキャラになりたい人はいないと思う。ムービーシーンをモニター越しで見ていた「俺」の記憶だけでも「僕」は震えが止まらない。
この情報のリアルは、けして楽観はできない。
夢とか妄想、そういったものだと断じてしまうには「俺」の記憶は危険すぎる。
逃げる?
僕は今年からジュニアハイスクールに通うただの子供だ。両親、祖父母もこの街に住んでいるので、逃げる先はない。街の外で頼れる人といえば、新聞記者として各地を飛び回ってるレイモンド叔父さんだけだし、、定住先はないって言ってた、そもそも2年後のゲームの世界では、ラルフさん以外の住人がほぼ全滅するというハードなものだったはず。自分や家族だけ逃げても罪悪感がひどいことになりそうだ。
「そもそも信じてもらえないよ。」
「俺」の記憶がある僕だって、まだ半信半疑なところがある。両親や街の人にいくら言っても信じてもらえないだろう。ゲームでもラルフさんが警察へ駈け込んだときは、変人扱いされてまともな対応をされなかった。
備える?何を?
ホラーゲームらしく、RCDの事件を引き起こす化物はとんでもないばかりだ。理性を失ってゾンビのように人を襲う元人間に、巨大な異形になった小動物。ルールに従ってゲームをクリアしないと容赦なくこちらの命を奪う意味不明の上位存在や不死身の化物。古今東西のホラーのモンスターがこれでもかと詰め込まれているのがRCDの魅力だったけど、今の僕にはやりすぎとしか思えない。
「落ち着こう、一度調べてみよう。」
再びノートを開いて、とりあえずRCDのシリーズとあらましを書いてみる。「俺」の記憶が喜々して教えてくれた。
「RCD 惨劇の旅館」 王道の罠ばかりのホラーハウス 2020
超常の力を求めた老害が旅館に招待した客人を恐怖で追い込んでから殺していく悪夢の旅館。館の謎を解き明かし、旅館から脱出せよ。
主人公ラルフ・アルフレッド 新米警官 23歳
「RCD2 血みどろの放課後」 大学を舞台としたゾンビパニック 2024 年末
悪夢は終わっていなかった。研究者の狂気によって引き起るキャンパスパンデミック。異界とかした学園から逃げ出せ。
主人公 マニエス・グロック 通称マック 新人警官 22歳
「RCD3 エスケープマウンテン」 とある地方都市で発生した謎のテロ事件 2025 新年
悪夢からは逃げられない。壊れた日常、地獄とかした街から逃げ出し、謎を暴いて世界を救え。
主人公 ラルフ・アルフレッド
「RCD4 シャウトワールド 」 世界各国で同時多発的に発生するリドルテロ 2028
R2の悲劇から8年、対策組織「VR」に所属していたR2の主人公が追っていた事件、それは悪夢の始まりでしかなかった。世界各地を回り、リドルテロを防げ。
シリーズ初の主人公のクロスオーバー
「RCD5 ホープインナイトメア」 崩壊した世界でのサバイバル 2033年
世界中に広がったリドルによって国家機能は麻痺、世界は荒廃していた。残った文明の残滓を守りつつ、ついに明かされるリドルの正体を暴き、その脅威を世界から取り除け。
ラルフ・アルフレッド 最後の事件
「RCD6 フォー ザ・フィア」 再建した世界で新たな悪夢が。 2045年
リドルの脅威が世界から去り平和を取り戻した世界。しかし悪夢は終わっていなかった。死んだはずの狂人と博士の暗躍を暴き、世界の平穏を取り戻し過去を贖罪せよ。
主人公 ラルフ・アルフレッド
「・・・ラルフさんを働かせすぎじゃない?」
最新作では48歳、アラフィフである。最初の事件で隠居していたのをRCD3で引っ張り出され、人気ということでシリーズの主人公を任される。2の主人公であるマックをはじめとして、シリーズでお馴染みのキャラクターはいるけど、RCD3で巻き込まれてからは、休む間もなく働きづめとなる。
「思えば、隠居する街を間違えた。」
後半のシリーズで、隠居生活を振り返ってそう漏らす。彼にとっては、これからの2年間は穏やかなものなんだろう。
「そうか、そうだよ。ラルフさんがいるじゃないか。」
そこまで整理して僕は、一つの結論に達した。
20年以上も化物たちと戦い生き残った悪運と強さ。3年前の事件のトラウマでこの街に隠居していたけれど、RCD2の事件についてはきっちり調査していたりと下準備もばっちり。そんな彼が今から対策すれうば、RCD3とそこから始まる世界半壊の事件は防げるのではないか?
少なくとも、今朝出会ったラルフ・アルファベットの姿はゲームと変わっていなかった。
「こうしてはいられない。」
僕は、調子が回復したと両親に話し、引き留める間もなく家を飛び出したのだった。
「俺」の記憶はあくまでゲームに関するもの。メインは「僕」であるホーリー君。彼がどんな性格で、どうやってフラグを折っていくかは、この先をお楽しみに。
次回以降は12時更新を予定しています。
もしよろしければお付き合いいただけると嬉しいです。