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2 それが夢でないと、頭痛が教えてくれた。

転生ものとかによくある記憶を取り戻して混乱するフェイズです。

 それが夢でないと、頭痛が教えてくれた。

 頭を打った痛みが来たかのと思うけど、この痛みは糞つまらない映画を見た後のような感じに似ていた。情報量が多くて頭が沸騰しそうになる。

「ホーリー、すぐに病院へ行け。残りの配達はこっちでしておくから。」

「す、すみません、残りはマーサおばさんのところから10件です。」

「そんなのはいい。」

「店長、俺の方で病院へ連れていきましょう。」

「アルフレッドさん、すまない、恩に着るよ。ホーリー、家にはこっちで連絡しておくからこのまま。」

「・・・はい。」

 ただならぬ様子の僕を心配した店長とラルフさんの厚意に甘えて、俺は呆然とした様子で再びラルフさんの車に乗せられ、病院へ連れていかれた。

「レントゲンで確認した限り、骨には異常はないようです。ですが、数日は安静にして様子を見てください、何か異常があればすぐに。」

 氷嚢で頭を冷やしながら、ばたばたと診断をうけ、連絡を聞いて飛んできた両親とともに医者の話を聞く。時間にして1時間も経っていないが、そのころには随分と落ち着いた。

 病院につくと、調子が落ち着くのってなんでだろうね?大事になってしまい、恥ずかしいし申し訳ない。

「ラルフさん、この度はご迷惑をおかけしました。」

「いえいえ、大事なっていなくてよかった。」

「本当にありがとうございます。このお礼は。」

「いえいえ、ご近所さんですし、ホーリー君の新聞はいつも楽しみにしてますから。気にしないでください。自分はこれで。」

「ごめんなさい、俺・・・。」

「気にするな、むしろこの程度すんで運がよかったな。」

 ペコペコと頭を下げる両親をやんわりといなして去っていくラルフさん。

 そんな様子を見ながら、僕は、それぞれに何度も頭を下げた。口数が少ないのは、転んだショックだと思われたのか、深くは追求されず、その日はそのまま休むことになった。

 残り少ない春休みの一日がつぶれてしまったが、色々と考えをまとめたかった自分にはちょうどよかった。

「今日は2023年、9月3日」

 部屋に入るなり、使っていないノートを取り出して日付を書く。

「リドル? 事件、主人公・・・。」

 思いつくままにメモをとり、僕は記憶をたぐった。

 結論はすぐにでた。

「ここはRCDの世界だ。間違いない。」

 

「すべてのホラーをここに」をテーマに作られた人気ゲーム「リドル・クロス・デスティニー」通称RCD。とあるゲームメーカーの看板商品であるこのゲームはいくつものシリーズがリリースされ、映画化やドラマ化までされ、誰もが名前は知っているという人気ゲームだ。

 名前だけ、というのはこのゲームがゲーム史に残る理不尽、高難度ゲームで、シリーズを通してクリアーした人が極端に少ないから。

 初見殺しの罠にランダム生成されるマップと敵配置、シリーズごとに極端に変わるゲーム性。攻略情報のネット公開や攻略本の販売はなし。プロゲーマ―や実況者が単独でのクリアを諦めて攻略チームを結成して本気で取り組んでやっとクリアできるというレベル。

 そんなゲームを、俺はめっちゃやりこんでいた。学生時代は学友と、社会人になってからはネットの仲間とチームを組んで攻略情報を共有しあい、20年近くやりこんだ。最新作をクリア―したときは、ゲーム会社からシリーズクリアーの賞状をもらった。

「俺に何が起こった?」

 その記憶はしっかりある。コントローラーをいくつもダメにしたことや、エナドリを呑んで徹夜でプレイしたこと。

 そして、斬新で残酷なストーリー。それははっきりと覚えている。

 だからこそ、今まで暮らしてきた街がゲームの舞台であったと自覚できる。

 ラルフ・アルフレッドがゲームの主人公であったこともすぐに気づけた。

「俺、いや僕は誰だ?」

 しかし、その記憶が誰のものか分からない。「僕」の中に「俺」という存在がゲーム画面を見ている記憶がある。なのに「俺」の存在や家族といったパーソナルな情報が出てこない。

「うん、これは頭の病気なんだろうか?」

 頭を打って存在しない記憶が生まれた?いや、「俺」の存在が生まれたのは、ラルフさんが、ラルフ・アルフレッドと知ったからだ。

「うーん。俺?僕?いややっぱり僕だ。」

 こうやって意図して記憶を整理しないと「俺」の記憶はでてこない。イメージするならば頭の中に、ゲームをプレイしている「俺」の物語が書かれた本があるようなものだろうか?あるいは、検索エンジンだ。ラルフ・アルフレッドで検索したら異常な量の検索結果がでてきて、PCがフリーズしたようなイメージ。今も、次々に映像や情報が浮かんでいる。

 ラルフさんと出会ったときの頭痛の原因はきっとこれだ。

「とりあえず、原因を考えるのはやめよう。きっとこれはそういうものだ。」

 ある種の確信。それほどに記憶はリアルであった。「俺」がRCDにつぎ込んだ時間と情熱のもつ質量は本物だ。この感覚を誰かに相談するのは無理があるけど。

「・・・まずい。」

 この状況に根拠はある。でも今はそれを整理する前に、この不味い状況をどうにかしないといけない。2年後、いやすでに僕の運命の歯車は廻り始めている。

 

 2年後の2025年 9月3日 RCD3 エスケープマウンテン。ホーリー・ヒジリは、そのゲームの冒頭で、無残に殺される時報キャラなのだから。

 舞台はア〇リカの田舎の街というイメージです。架空の街、架空の設定なので、実在の街や制度とは異なる場合があります。海外ドラマとかで、新聞を配って走る少年ってよく見るけど、今は存在するのか?

 もう一本、設定の話が続きます。

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