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戦災の魔界姫と敵国騎士1★青薔薇の刻印編★  作者: 深窓の花婿
第1章★茨の塔と青薔薇の刻印★
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第2話☆白騎士団長☆

 庭掃除のあと、騎士塔に行き白騎士団長の掃除を担当することになった。



 重厚な扉を開くと、真っ白な美しい壁に金の模様が描かれた広い部屋が目に入る。


 寝室を見ると天蓋付きの豪華なベッドで、白と金に統一されていて美しかった。


 本棚には天界国に関する歴史の本などがあったので、菫は掃除を終えると【天界国と騎士団】という本を手に取った。


 騎士は戦闘を主とした『赤騎士団』、地域活動を主とする『緑騎士団』、広報活動を主とする『白騎士団』、医療を主とする『青騎士団』、占いを主とする『黒騎士団』、警護活動を主とする『銀騎士団』、研究を主とする『橙騎士団』の7つに分かれているようだ。



 騎士団は戦うときは全員が駆り出されるが、特に戦闘や魔物討伐がないときは自分たちの役割をこなしているらしい。


 騎士団長は7人いる。そして彼らを束ねるのが天界国軍師の天満納言(てんまんなごん)


 菫は白騎士団長のベッドに寝転がると、本を読み漁った。適当な時間になったら次の仕事に行けば大丈夫かな、と高を括る。


「ああ気持ちいい。中世国の技師たちが作ったベッドだわ……」


 菫は騎士団長の待遇の良さに驚くと、白騎士団長のフワフワの枕に頭をうずめた。

 温かい太陽の光と枕の柔らかな感触に包まれて、思わずウトウトしてしまう。



「……は? なんだお前。おれのベッドで寝るんじゃねえよ」



 ふと戸惑った声が上から降ってきた。

 やたら甘くて聞き心地の良い声に、菫はハッと身を起こした。



 白い鎧をまとった眉目秀麗な男性が、菫を見下ろしている。

 甘い声に甘く整った童顔、サラッとした赤味がかった髪と小麦色の肌をした魔人が、白騎士団長の特別な鎧をまとい、吸い込まれそうな大きな目をこちらに向けていた。



 菫は慌ててベッドから降りる。

 その際目眩がして足元がふらついた。すると倒れ込んだ先に白騎士がいて、支えるように菫を抱きとめる。



「……掃除の女中か? 気分でも悪いのか?」



 白騎士が表情を変えずに菫に問いかけた。ベッドを勝手に使ったことに対しては無視しているようだ。菫はホッとして白騎士を見た。



「いえ、すみません。掃除の続きをします。申し訳ございません」



 菫は白騎士から離れて頭を下げると、本を棚に戻そうとした。しかし、腕を掴まれて本を落としてしまう。



「待てよ。職務を放棄しておれの部屋でくつろいでいるなんて、見過ごせないんだけど」



 甘く秀麗な顔で片方の口角だけ上げて白騎士が菫に近付いてきた。

 菫は白騎士の整った顔をじっと見つめると、気まずくなってすぐに反らした。



「ふーん。無視するわけ。掃除サボってたの秘密にして欲しいなら、対価を体で払ってもらう手もあるけど。こんな風に」



 白騎士に強く腕を引かれ、反動で胸に飛び込んでしまう。

 白騎士は菫の体を力を込めて抱きしめた。

 思ったよりずっと優しい手つきで包み込むように抱きしめられる。

 サラッとした白騎士の赤髪が菫の頰に当たった。菫は持て余すように両手を下に下ろす。



「白騎士様、やめて下さい。わたし……仕事があるので……」



「はは、おれのベッドで寝そべっていたヤツに言われても説得力ねーな。それともお前、女中と見せかけて紫苑の塔の遊女なの? おれを慰めにきたわけ?」



 ニヤニヤ笑いながら白騎士は菫の耳元で甘く優しい声で囁く。

 背筋がゾクリとして菫は思わず白騎士に体を預けた。



 紫苑の塔の遊女。



 天界城で働く者たちのために作られた紫苑の塔。その中で暮らす遊女たちのことを指している。



 菫は遊女と間違えられ、白騎士を慰めにきたと思われたのだ。



「わたしは女中です。だいたい紫苑の塔の方たちは、夜に活動するんじゃないのですか? 昼間は眠りに就いているんじゃないですか?」


 言い返した菫に、白騎士は体を離すと全身上から下まで眺めた。


「確かにな。お前は紫苑の塔で必要とされない体型してそうだしな。ははは、悪かった。醸し出す色気もねーし、お子様体型だし。紫苑の塔の面接は落ちるか。ははは」


 軽い調子で言われた菫は、面食らって白騎士を見上げた。


「し、失礼な人ですね……わたしだって成長しているんですよ。脱いだらお子様体型なんて言わせません」



 頰を膨らませて反論した菫に興味を持ったのか、白騎士は「へえ?」と言うとニヤニヤしながら菫を見てきた。


「……誘ってんのか? 残念だがおれは誘惑に乗るような安い男じゃねーぜ。騎士団長全員が紫苑の塔で遊んでると思わないで欲しいものだな」



 白騎士はそう言うと、菫から離れ落ちた本をソッと拾って棚に戻す。

 菫は綺麗な所作で動く白騎士を思わずぼんやりと眺めていた。



「……掃除を終えたら早く部屋から出ろよ。ベッドにいたことは不問にしてやるから」



 菫の耳元で甘く囁くと、白騎士は視線を合わせてニヤリと笑い、忘れ物だろうか、書類を抱えて部屋を出て行った。



 菫は深くため息をつくと、ベッドメイクをしてから白騎士団長の部屋を出た。



 竜神女王は茨の塔に幽閉されていると噂がある。

 しかし、その姿は誰も見たことがないそうだ。騎士団長でさえ竜神女王の姿を見られないと報告が上がっている。



 天倭戦争前、菫は隠密部隊を総括していた。

 彼らは諜報として暗躍することもあり、菫に報告が上がってくる。

 そのときの情報を整理しながら、菫は竜神女王の居場所を探り、救い出す方法を探すつもりだった。

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