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1☆王女の飼い犬☆

リョウマ「菫様、ホテルの最上階を取りました。今夜はここでおやすみください」


菫「ありがとうございます、リョウマ様。コウキ様にもここに泊まるって伝えなくちゃ」


リョウマ「は? バカなのかお前は?」


菫「え、なんで……?」


リョウマ「コウキにみすみす居場所を教えて、襲われたいのか?」


菫「違いますよ。家に泊めて下さると善意で言ってくれたコウキ様の誠意を、黙って違う場所に泊まるのは無碍にするようでイヤなんです。だからここに泊まると誠意を持って伝えたいの」


リョウマ「ふー……バカなんだな、倭国王女は」


菫「なによなによ……」


リョウマ「そんなもの、無視していればいい。コウキが勝手にお前に対して抱いている好意を、お前が同じように返す義理もない」


菫「……でも、コウキ様が親切にしてくださったのに」


リョウマ「お前は親切にされたら、誰にでも体を許すのか?」


菫「いいえ……」


リョウマ「そうだろう? 金を積まれたって、好きでもない男に抱かれるのはイヤだろう」


菫「…………」


リョウマ「なんだ、生意気な目をして?」


菫「あの、それ夜伽を強要してたリョウマ様だけには言われたくないんですけど……」


リョウマ「ぐっ……」


菫「あと、わたし好きな方じゃなくても、必要とあらば寝るのは厭わないです。青薔薇の刻印を探すため、リョウマ様に夜伽を頼まれたとき、ちょっと喜んじゃったもん」


リョウマ「は!? あなたは……本当にバカなんだな……」


菫「憐憫の目で見ないで下さいよ……」


リョウマ「まあ男慣れしているのは、態度を見ればわかるがな。小悪魔が過ぎる」


菫「そう? これでも一応処女なんだけどな」


リョウマ「ゴホゴホゴホッ!」


菫「……大丈夫?」


リョウマ「嘘をつくな!」


菫「うふふ、まあそうなるよね。信じられませんよね」


リョウマ「俺をからかうのはやめろ、小悪魔め!」


菫「悪霊退散みたいな調子で言わないで……」


リョウマ「……菫様。俺をからかって遊んでいませんか?」


菫「遊んでいるつもりはなかったですけど、リョウマ様可愛いんだもん」


リョウマ「ゴホッ……」


菫「ふふ、可愛い。いい子いい子」


リョウマ「……その、頭をなでるのは癖なのか? 俺は犬か?」


菫「何かリョウマ様見ていたら、撫でたくなっちゃって。嫌でした?」


リョウマ「嫌ではない……」


菫「イヤじゃないの?」


リョウマ「ああ。もっと撫でろ」


菫「あら……さっきから忠犬みたいになっちゃって。見えない尻尾が見える……」


リョウマ「あなたの魅力に取り憑かれているだけです」


菫「さっきからわたしを怨霊のように言いますね……」


リョウマ「怨霊ではなく、菫様は俺の女神です」


菫「そんなこと言わないで。奥様……アコヤ様に失礼ですよ」


リョウマ「元々政略結婚だ。愛はない。アコヤも俺に全く興味はない」


菫(不倫されてるって言ってたもんね……)


リョウマ「ふっ、そんな顔をするな。同情はされたくない」


菫「すみません……何も知らないのにご夫婦のことに口出しして」


リョウマ「構いませんよ。それより青薔薇の刻印を探すために騎士団長と寝るおつもりだったんですか?」


菫「はい」


リョウマ「だから俺が夜伽をすると言っても、ノコノコ付いてきたわけか」


菫「はい」


リョウマ(母親を救うことを第一に考え、自分の身は犠牲にするのは厭わない、という考えか)


リョウマ「竜神女王のためですか、倭国民のためですか」


菫「国のためです」


リョウマ(合理主義か……)


菫「あの、紫苑の塔に通っている騎士団長は誰でしょう? そちらから探れないかと思いまして……」


リョウマ「ワタルはカボシ姫が娼館に通うことを禁止している。奴は通っていないはずだ」


菫「そうですか……」


リョウマ(ん? 安堵した?)


リョウマ「それにワタルは竜神女王ひとす……いえ」


菫「ふふ、気を遣って下さっているのですか? 白騎士様が竜神女王にご執心だということは、コウキ様から聞いております」


リョウマ「年がかなり離れているがな……」


菫「白騎士様は年上好きなのね。母性を求めていそうな顔していますものね」


リョウマ「ワタルがか? くくっ」


菫「コウキ様も通っていますよね」


リョウマ「あれは変態だからな……通ってはいても共に寝てはいないかもしれない。女としゃべりたいだけじゃないか」


菫(また変態か……余程の性癖なのかな)


菫「知りたいな、コウキ様の変態なところ」


リョウマ「! 知らない方がいい。あれはちょっと理解できない変態だ。上手くフェードアウトしろ」


菫「あんなに爽やかで優しいのに?」


リョウマ「ふん、女はみんなコウキに騙される」


菫「背も高くてスタイル良いし、気さくで柔和な態度ですし、人懐っこい。女性が好感を持つ要素が満載でしょ」


リョウマ「ほう? 菫様はそういう男が好みですか?」


菫「え? なに? 急に髪の毛触って……ふふ、くすぐったい」


リョウマ「俺みたいな男は論外ですか」


菫「それはそうよ。リョウマ様既婚者でしょ」


リョウマ「ぐっ……コウキなどやめておけ!」


菫「コウキ様に嫉妬してます? 可愛い、リョウマ様」


リョウマ「……その、男をバカにしないで頂きたい」


菫「そんなつもりなかったんですけど……」


リョウマ「あなたは何もしなくても男が寄ってくるでしょう。だから少し小馬鹿にする傾向がある」


菫「えっ、そうかな……」


リョウマ「はい。自分の美貌で寄って来る男を、見た目だけで判断する軽薄な男だと無意識に決めつけ、バカにしているところがあります」


菫(わっ、そう見えるのか……気を付けよう)


リョウマ「逆に言えばあなたの内面に惹かれる男に弱いでしょう。俺はどうですか? 今や菫様の内面に惚れ込んでいますが」


菫「えっ、待って。リョウマ様」


リョウマ「くくっ。迫られることには弱いのか。これは新発見」


菫「なに笑ってるんですか……」


リョウマ「その、左頬。何度も叩いて申し訳ありませんでした。触りますよ」


菫「んっ……」


リョウマ「痛いですか?」


菫「大丈夫……」


菫(痛いというか、リョウマ様の触り方……なんかゾクゾクする……女性慣れしてるわね……)


リョウマ「菫様?」


菫「なんかふわふわしてきた……」


リョウマ「フッ、気持ち良いですか?」


菫「……からかわないで下さいよ。アコヤ様に報告しますよ」


リョウマ「構いません。むしろそうして下さい。そうすれば堂々とあなたを口説きにいける」


菫「ちょっと……調子が……狂います、リョウマ様」


リョウマ「ククッ。まあ、既婚者なので、今は本気出しませんがね。叩いてしまった左頬に懺悔の口づけくらいはお許し下さい」


菫「えっ……えっ……」


リョウマ「ふっ、赤くなった。今回は俺の勝ちですね」


菫「りょ、リョウマ~!」


☆終わり☆

軽口を叩くのが楽しくなってきた2人です。

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