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戦災の魔界姫と敵国騎士1★青薔薇の刻印編★  作者: 深窓の花婿
第2章★権力至上主義の男★
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第7話☆オークションの魔物☆

 暗がりを増した大部屋にシャンデリアの明かりが仄かに色付いている。

 オークション会場は全体的に暗く、足元に気を付けて歩かなければならなかった。



 男性はほとんど仮面をかぶっていたが、女性で仮面をしているのは少人数だった。きらびやかなドレスに包まれ、女性は隣に立派に着飾った男性と歩いて、オークションの会場に足を運んでいた。




 菫とリョウマもドレスに着替え、会場に入る。薔薇の仮面を付けた菫はリョウマの腕に手を置いた。

 リョウマはそれに応えるように脇を締め、菫の腕を反対側の手でそっと触った。



 リョウマが懇意にしている仕立て屋で急遽ドレスを注文したが、菫はスラリとしており、どんなドレスも着こなした。

 リョウマは腕を組みながらドレスを次々と試着する菫を品定めするように眺め、自分好みの深紅のマーメイドドレスをまとわせた。



 会場でリョウマは菫の姿を見てため息をつく。

 女神の化身のような美しい菫を見てリョウマはつい見とれてしまったが、それを悟られないように咳払いをした。

 そして菫ではなく、ドレスを褒めた。



「美しいドレスだ。やはり深紅を選んで良かった。お前の肌に良く映える」



「ありがとうございます。下女なのに2回も素敵なドレスを着て申し訳ないです」



 にこやかに応じる菫に、リョウマは苦笑をする。



「でも、おかげで貴族のリョウマ様の隣に立ってもおかしくない格好になれました。あなたが素敵なドレスをプレゼントして下さったおかげです、ありがとう」



 菫はリョウマの耳元で囁くと、感謝を込めてリョウマの頬にキスをした。

 リョウマはキスを受けて目を見開く。そして菫の華奢な腰を自分にグイとくっつけると、お返しに菫の左頬に軽くキスを返した。



「ん……っ」



 ビクッと体を硬直させると菫が仰け反る。化粧で隠していたが、左頬はリョウマに叩かれすぎて腫れがひどく、触られただけで痛かった。

 リョウマはそのことに気付いて、バツが悪そうな表情をすると、菫の左頬をゴツゴツした手でソッと優しく包みこんだ。



「……悪かった」



「……えっ!?」



「叩いて悪かった」



 まさかリョウマから謝罪の言葉が出るとは予想していなかった菫は、心底驚いてリョウマを見返した。



「えっ、わたし貴族じゃありませんよ。ただの士官ですよ? 人権なんかないんじゃ……」



「……うるさい生意気な女め。黙れ」



 リョウマはそう言うと、菫の頬から手を離して、今度は痛くないよう左のこめかみにチュッ、と音を立ててキスをした。

 菫は感謝のキスに対して、まさかまたキスで返されるとは思わず、驚きの目でリョウマを見た。

 また生意気な女だと叩かれるかもと思っていたため、リョウマの対応に戸惑ってしまう。



「ルージュは旧友と遊びに行ったが、コウキはどうしているかわからん。ただオークション嫌いだから会場にいないとは思う」



 リョウマがポツリと呟いた。コウキやルージュには見られたくないという菫の意図を読んでくれたのかもしれない。

 豪快な外見をしているが、細やかな心配りが出来る人なのだなと菫は感じた。



「リョウマ様……教えて下さってありがとう!」



「やめろ何度も。下女のくせに俺に飛びつくな」



 菫は感謝を込めてリョウマの首に飛びついた。

 振り払ったリョウマが、そのあとエスコートするように菫の肩を抱いたときにオークションが始まった。



 会場が真っ暗になり、司会者にスポットライトが当たる。

 リョウマは菫を丁重に椅子に座らせると、自分も後から隣に座った。



「さあ紳士淑女のみなさん、今夜も目玉商品が多数ございます。良い品を落札されるよう、願っております! では記念すべき最初の目玉商品です」



 司会者の声に歓声が湧き起こる。オークション自体は初めてだが、倭国王女の立場でこういう集まりの場に慣れている菫は、特に動じずに前方を見据えていた。



「このカラムの町の貧民街に住む若い健康体の少女です! 富裕層の皆さんは彼女を召使いのように働かせるも良し、体を愛でて鑑賞するも良し! まだ13歳の生娘です! さあ紳士の皆さん、いかがですか?」



「1億」

「1億2千万」



 男たちが牽制し合うように声を出す。菫は小さな声でポツリと呟いた。



「13歳……?」



「この町では珍しいことではない。ああいった健康そうな若い女は変態の金持ちに買われ、愛玩用として使役される」



 リョウマの声に菫は顔を曇らせる。そして突然怯える少女を見ながら立ち上がった。



「12億」



 菫に向かって大歓声が起きる。リョウマは菫の手を握って武者震いをした。

 12億など、奴隷に対して聞いたこともない値段だったからだ。



「薔薇の仮面の女性が落札です!」



 貧民街の少女は歓声が湧き起こる中、怯えた様子で菫のもとに来た。菫は穏やかに微笑んで少女を安心させる。



「もう大丈夫です。外にいるわたしの仲間があなたを安全な場所に運びます」



 少女は菫を見てハッと目を見開く。



「その声は……先程パンをくださった……」



「今夜、貧民街の皆さんを1人残らず救います。待っていて下さい」



「女神様……」



 少女を引き取りにきたスーツの男が、菫に向かって深くお辞儀をして、静かに声を出した。



「菫様、金銭の準備は出来ております。それから隠密部隊を数名連れて来ましたので、指示を下さい。あとはこちらの書類をどうぞ」



「ありがとうございます、オークション中に確認します」



 静かにしゃべる男の声だった。リョウマは男の顔を覗き込んだが、男は顔を隠すようにして目だけリョウマを見た。

 切れ長の目の、若そうな男だった。



 隠密部隊という言葉が聞こえてきたが、リョウマにはピンとこなかった。

 菫が創設し、さらに忍者の集団だったため隠れることが得意とあって、隠密部隊の存在を知る者は他国にはいなかった。



 奴隷の少女は静かに佇むスーツの男によって連れられて出ていく。そして菫を見る会場の皆の視線が興味深いものに変わっていった。



「次は絵画です! 希少価値の高い人魚族の血で描かれた、持つ者の魂を悪に染める呪われた絵『人魚族の呪い』です! 」



「2億!」

「5億!」



 しばらく少しずつ値上げが続いていたが、菫が番号札を上げる。



「50億」



 菫の声が会場に響き渡る。

 リョウマは金銭の大きさに驚き、思わず菫を見た。

 長い睫毛に綺麗な横顔が、何を考えているのかわからなかった。

 菫の破天荒な振る舞いがリョウマの琴線にどんどん突き刺さっていく。



「次は、天倭戦争で倒した陰陽師、憎き八雲が神獣を召喚するときに使用していた、六芒星のペンダントです! 倭国城に落ちていた本物ですよ!」



「えっ……八雲様のペンダント……?」



 菫は思わず声を上げていた。

 八雲は式神や神獣を召喚するとき、六芒星のペンダントで神力を増幅していた。



 美しく銀色に光る六芒星のペンダントが、きらりとライトで反射した。

 八雲の形見なら、息子である太一に渡したい。菫は気合を入れて前方を見た。



「あの陰陽師の形見か。欲しい……8億!」


「八雲のやつ、神獣まで召喚して俺の家を倒壊させたんだ。10億!」


「六芒星のペンダント……確か神力が宿ると云われて、神の加護があるのよね。15億払うわ!」



 司会者がふと菫を見て指名してきた。



「薔薇仮面のお嬢様。落札に参加しませんか?」



「そうですね……最後に競り勝った方の10倍で買います。150億かな?」



 クスッと笑いながら言うと、会場から割れんばかりの拍手が起こった。



「……すごいな……菫」



 リョウマが小さな声で呟く。菫は拍手の音に消されぬよう、リョウマの耳元に近付いて囁くように、彼にしか聞こえないような声で言う。



「権力やお金に惑わされて、本質を見誤らないで下さい。金銭の有無で付き合う相手を選ぶなんて愚の骨頂。あなたの言う品格は、わたしには何の価値もない」



「……ああ、だろうな……」



 リョウマはおとなしく呟く。



「楽しそうに貧民を救うような女だからな……」



「救うなんて、わたしなんかがおこがましいです。ただ、貧富の差を是とし、立場に胡座をかいて、苦しんでいる西側を見てみぬふりをする東の富裕層及びこの町の為政者が、わたしには理解できないんです。この町を乗っ取ってやるから、覚悟してね、貴族様」



 キュートにウインクする菫に、思わずゾクリと背筋を凍らせたリョウマが、グッと菫の腰を自分に引き寄せ、耳元で囁いた。



「俺を真っ向から否定するとは、面白い。やってみろ」



 リョウマの言葉に、菫はリョウマと視線を合わせると、クスッと微笑んだ。



 菫とリョウマはふとスポットライトを浴びる。他に落札者がおらず、八雲の六芒星ペンダントを落札した。



「八雲様……」



 ペンダントにソッと手を合わせると、菫は戻ってきたスーツの男に指示する。



「八雲様のペンダントは、わたしが直接彼に渡します。セージ様は次の準備に取りかかって下さい」



「御意」



 菫にセージと呼ばれたスーツの男は、八雲のペンダントを菫に預けると、他に落札した品物を持って足音を立てずにオークション会場から姿を消した。



 あの菫の仲間が隠密部隊なのだろうか。セージと呼ばれていた。菫とは親しいのだろうか。

 リョウマはスーツの男のことをグルグルと考えてしまっていた。

 菫との関係が気になった。



 その後全ての品物を落札した後、菫は隠密部隊から報告を受ける。

 スーツの男がソッと菫の耳元で何かを報告した。



「さすが、早かったですね。ありがとうございます、セージ様」



「菫様のためなら。貧民街の有権者は全て菫様を支持しております。署名の仕方も教えました」



「わかりました。リコールの手続きを取って下さい」



「はっ」



 菫はリョウマに会釈をして、ひとりで舞台に足を運ぶ。

 リョウマは立ち上がって菫の元に歩いて行った。



 菫は笑顔で司会者からマイクを借りる。リョウマは菫に続いて壇上に上がり、菫の腰を抱いてエスコートをした。会場はザワザワと菫とリョウマを見る。



「あの……?」



 司会者が戸惑っていたが、リョウマが手で制したので司会者は黙った。

 菫はリョウマに感謝の意味を込めてリョウマの腕に手を乗せた。



「皆様、お楽しみのところ失礼致します。今、町民の3分の1以上の署名が集まり、双頭院をリコールする手続きが整いました。ここに双頭院リコールを宣言し、町長失脚を求めます。そして次回町長選に、わたくしの代理人を推薦致します」



 会場は一瞬静まり返り、リョウマのヒュッと息を飲む音が菫にまで聞こえてきた。



☆続く☆

隠密部隊

空組隊隊長→セージ

陸組隊隊長→キナセ

花組隊隊長→クラリ

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