第4話 邂逅
ファイマーを仲間にしてホウロアリを目指すミヘラ一行。キラキラ天気が彼らの旅路を祝福している様!素敵だね!
ミヘラが気が付くと辺りはすっかり暗くなっていた。ベッドから見える机でファイマーがロウソクの火を明かりに読書をしていた。彼女はゆっくりと体を起こすと彼もミヘラが起きた事に気が付いた。
「おはようございます、ミヘラ。よく眠れましたか?」
ディギンスから話は聞いているので現状は把握できているが、まだ微睡みを引きずる彼女の意識はまだ明瞭ではない。彼女の目下に映ったディギンスが微睡みに浸かった意識を引き上げた。
「ち、違うの!これは…」
「まあまあ、ご安心ください。私は他人の惚れた腫れたには興味がございません。あなた方が腹違いの姉弟であろうが、種族間を越えた恋愛関係にあろうが、プラトニックラブな関係であろうがそうでなかろうがどうでも良い事です」
「そ、そう…」
「それよりドラゴンを退治するとおっしゃっていましたね。お二方が休んでおられる間にささやかながら調べ物をして参りました。私は今後の旅についてお聞きしたいのです。差支えない範囲で構いませんが」
ファイマーの事はどこまで信用していいか分からない。仮に本当に悪魔を引き離す事が出来たとしても元の彼がまともだったとは限らない。ドラゴン、ファビスターの話だってその話が事実である事を裏付ける確証もない。しかし、彼が本当に狂人で殺すつもりで自身について来たのなら倒れた際にどうとでもできたはず。むしろ彼はミヘラを背負って町の宿まで運んでいる。
どこまで信用していいのかミヘラは少し悩んだがやがて素直に今後の旅の予定について話す事にした。
「トロエマニのディングルディル聖堂にあるという女神像の涙が必要なの。それをハ・トエにいるデュマリに渡せばいいって父さんが言ってた。」
「ハ・トエ…ああ、ロロエマロの。しかし石化してるフィオーラをどうやって泣かせるんです?」
ミヘラは小瓶を取り出しそれをファイマーに見せた。
「本当かわからないけど、この中に入ってる砂は女神様の母星の土らしいの。これを見せれば涙を流すって」
「それはまあ泣くでしょうね。しかし彼女の涙を使うと言う事は『落涙』をデュマリに作ってもらうつもりですか」
「落涙…?」
「熱したナイフでバターを切る様に容易くドラゴンの鱗を斬る神器です。かつてはフィオーラが人々に与えドラゴンと戦わせました。フィオーラは石像と化してからしばらくの間は度々涙をこぼす事があって、その涙から神器の再現・作成を試みる鍛冶師がそれなりにいたのですよ。本当にそんな技術が完成したのかは疑わしい所ですが」
母星を追放され、羽を休めるために降り立った星で羽を焼かれ、利害が一致した人々に武器を与えて戦い、来ない同族の迎えを待ってこぼした涙を勝手に持って行かれ、永い月日を経て枯れた涙をまた絞り出してもらおうとしている。ミヘラは女神への同情心で心が一杯になった。それでもドラゴン殺しは果たさなければならない想いに変わりはないが。
ファビスターに遭遇しない様に北の地を歩き、どうにかしてディングルディル聖堂の女神像から涙を採取し、ちゃんとした神器になるかも分からない落涙を打ってもらい、それで戦って殺さなければならない。改めて考えるとミヘラは眩暈がしそうになった。
「それも問題だけど、どうやってディングルディル聖堂の中に入って女神像から涙を採取するかよね。馬鹿正直に落涙作るから女神の涙をくださいなんて言えないし」
「ディングルディル聖堂はトロエマニの権威の象徴です。真っ当な方法で中に入れてもらうのは無理でしょう。多少は袖の下を掴ませる等は必要でしょうが、問題は我々にそれだけの価値のある物を提供できるかどうか…」
そんな金品を都合よく持ってるはずがない。お金稼ぎの方法に行ったトレジャーハントとやらがいよいよ現実じみて来た。
「山賊を潰して回れば多少の金にはなるかな」
「いえ、彼らが持ってる様な雑多な物ではダメです。もっと希少価値のある珍品が良いでしょう。そう言えば里長から放火魔を捕まえた礼に何かもらいませんでした?」
金品の様なものはもらってないはず…と思ったがそう言えば巾着袋を貰っていた。それを思い出したミヘラはそれを取り出してファイマーに手渡そうとした。
「中身は見ましたか?もしまだであれば先に確認してからにしてください。エルフの贈り物は受取人が必ず先に見るべきであって、第三者が先に見るのは大変卑しい行為とされています」
それを聞いてミヘラはひとまず巾着袋の中身を確認した。何か透明な玉と何かが書かれた小さな木の板が入っている。それからミヘラは巾着ごとファイマーにそれを渡した。彼は中身を確認する。
「おやおやまあまあ、これはこれは。エルフと言う種族への理解が深ければいい賄賂になるでしょう」
「それ何なの?お守り?」
「似た様なものです。間違ってもエルフに見せびらかしたり、エルフの商人には売ろうとしないでください、最悪の場合は殺そうと襲って来ます」
「え…怖いんだけど。正確には何なのこれ…呪いの物?」
「そんな禍々しい物ではありません。一言で言えば渡す事に意味がある願いや想いです。意味が分からないであろう他種族のあなたに渡すあたりが里長らしいですね。大切に持っていれば喜ぶでしょう。当人に返しに行けば泣いて喜ぶでしょう。失くしたり賄賂として渡したと聞けば悲しむでしょうが、わざわざ伝えたりしなければ知り様のない事です」
ファイマーは含みのある言い方はしても正確にそれが何なのか答えるつもりはなさそうだった。ミヘラは返してもらった巾着袋をしばらく眺めた後にしまった。とにかく大事な物には違いない。必要な時までは大事に取っておこう、彼女はそう考える事にした。
一先ず話題を変えてミヘラはこれからの行先について相談する。
「このまま北上してササンカを経由してホウロアリに行く」
「多少遠回りになりますがホウロアリに入国するならこのままビンスの国境沿いで向かった方がいいですよ」
「どうして?」
「ササンカは治安が悪くならず者の出入りの多い国です。伊達に古株ではありません、連中は極めて残忍で狡猾です。腕っぷしが強いだけの旅人を捻るぐらい彼らには訳ないでしょう」
「そう…あなたがそう言うのなら素直に従うわ」
ファイマーは悪魔に憑かれていいた時はエルフの里に火を点けて各地を回っている。この辺は彼の方が詳しいだろう。ミヘラは彼の忠告を素直に従った。彼は地図の本を指差しビンスのレパレロへ向かう事をお勧めする。旅路としての安全性はもちろんの事そこには海賊の隠し財産の噂もあるらしい。上手く行けば旅の資金も得られるかもしれない。例え眉唾物に縋ってでも金が欲しい。
一通り今後について2人が話を終えると夜も更けて来たので眠る事にした。ファイマーはロウソクの火を指でつまんで消した。ミヘラは静かに寝息を立てるディギンスを抱いて眠る。
ふわふわ、ふわふわ、あったかふわふわ。ぽかぽか風がそよそよと吹いている。顔を出した太陽がミヘラ達の旅の幸運をみてニッコリ笑っている。草の触れ合う音がまるで合唱のよう。跳び回る小動物がとっても愛らしい。魔物もぐっすり。こんな平和がいつまでも続けばいいな。ご機嫌な天気に思わず足取りだって軽くなる。
一羽の小鳥がミヘラの肩に止まった。その肩に、また小鳥が止まった。すぐに2羽とも飛んで行った。ミヘラは2羽の影が見えなくなるまで眺めていた。今日も何かいい事がありそう。
今日はレパレロへ向かう。どんな所なんだろう。
長い長い道を歩いていると遠くに困ってる旅人がいた。これから急いで家に帰らなきゃいけないのに、靴が壊れて困っているそう。ディギンスはとても手が器用だから、パパパッと修理もお手の物。旅人は大喜び。いい事をするって気持ちがいいな。
話を聞けば旅人はペガサス飼いの人のようだ。助けてくれたお礼にペガサスで目的地まで連れて行ってくれるらしい。これでホウロアリまでひとっ飛び!
「これで僕らの目的地まで一気に近付いたね♪」
「ディギンス、おっ手柄~!」
ミヘラとディギンスは手を繋ぎ合ってぴょんぴょんと跳んだ。微笑ましい光景に旅人もにっこり。
「失礼、旅人様。ホウロアリのデルダクルあたりまで飛びたいのです。可能ですか?」
「ああ、その辺りまでなら問題ない。靴の修理から護衛までありがとうねぇ」
「いえいえ。構いませんよ」
道中でゴブリンが襲って来た。とっても強くて凶暴な種族だ!でも、ミヘラの敵じゃない。棍棒をひらり、ひらりと避けて剣で相手の得物を野菜の様にシュパパパッと輪切りに!これじゃ敵わないと降参した!やったね!
話を聞くとゴブリン達はとってもお腹が空いていたそう。それじゃ仕方ないね。幸いにも旅人はいっぱいご飯を持っていたからおすそ分け。ゴブリン達は万歳して大喜び。彼らは持ってた金品を代わりにミヘラ達にくれた。彼らの種族にはあまり価値のないものなんだそう。ファイマーがそれを掴んでじーっと眺める。
「お小遣いぐらいにはなりそうですね。お任せいただければデルダクル辺りで売って来ますよ」
「うん、それじゃあファイマーに任せるね」
ファイマーは人生経験豊富だからか物を見る目がとっても確か。商人との交渉ならお任せ!ディギンスもうんうんと頷いている。彼は道具袋にしまった。それからは何事もなくレパレロに到着した。
レパレロは農業が盛んでとても長閑な所。色んな動物と一緒にお昼寝できたらとっても気持ち良かっただろうね。でも皆は急いでいるから、すぐにペガサスの所へ行った。平穏を享受するのは世の中を平和にしてからだもの。
皆ペガサスに跨った。ディギンスは身長が小さいからミヘラと一緒に乗る事になった。霜降りニンジンを与えたら、助走をつけてバサッバサッと空へ飛んだ。初めてで手綱を握る手にも力が入る。
「ううう…この高さを飛ぶのは初めてだ。怖いなぁ」
「私がついてるから大丈夫だよ」
「ミヘラが一緒なら安心だね」
風がちょっとだけ冷たい。でも空を飛ぶ高揚感はそれも忘れそうなほど。ファビスターはいつもこんな風景を眺めてるのかな。高揚感で争いなんて忘れてしまえばいいのに。なんて考えて考えてしまう程だった。
空の旅は瞬く間に終わってしまった。空への思いに後ろ髪惹かれながらも彼女らはペガサスから降りた。またいつか乗ろう。ミヘラはそう固く決意した。ディギンスもファイマーもきっと同じ思いだったはず。
ファイマーはゴブリンにもらった物を売りに出かけ、ミヘラ達は宿を探した。日没まではまだまだ時間があるけど、次の町ファウダーンまでの道中はとてもとても長いのでいつもよりしっかり準備をしていかなければ危ない。
それなのに、ミヘラ達は残念な事に全然宿を見つけられない。何でも今日は祭りがあるらしく遠くから来た人々が皆宿を利用してて満員なんだって!ヤバい!
ファイマーが戻って来るとミヘラ達は泊まれる宿がなかった事を報告した。
「それは残念です。幸いにもそれなりに金はあるので水や保存食を買って旅立ちましょう」
祭りの準備が進む中、しょんぼりとミヘラ達が買い物支度を済ませていると辺り一帯が急に暗くなった。何か大きなものの陰に入ったらしい。しかし、瞬く間に明るくなる。太陽が雲で隠れたのではない、明らかに何かが上空を通った。
皆が空を眺めている頃、すぐ近くで轟音が鳴り響き地震が起きた。影の主が地へ降り立ったのだ。皆の視線もまた空から陸に着地する。その視線の先にあったのは…鈍く光る深緑色の鱗、欄々と輝く紅の眼、鋭く巨大な爪。それは今、この大陸を脅かしているドラゴン、ファビスターだった。
雄々しい様な、悲鳴の様な鳴き声をあげると辺りの人々は逃げ惑う。
ミヘラは…動けなかった。逃げるべきなのは良く分かっている。戦うのは論外だ。しかし彼女は動けない。ファビスターは真っすぐ彼女に射抜くような視線を送っている。
「う…くっ……」
「ミヘラ、逃げなきゃ!」
ディギンスが真っ青な顔で彼女を揺さぶる。それでも動けない。ミヘラの脳裏には口から吐いた炎が辺り一帯を火の海にする光景が見えている。どう行動しても死ぬビジョンが付きまとって消えないのだ。
「祭りに参加しに来たんでしょうか」
「な訳ないでしょ」
ディギンスがツッコミを入れた。ミヘラの体は徐々に自由が戻って来る。ファビスターの意識が余所に向いた瞬間に逃げ出すつもりでいた。ファビスターの視線は隣のディギンスに移った。するとディギンスはまるで電流が流れた様に体を震わせ、青白い光を放った。
「ディギンス!??」
ディギンスは力なく項垂れたかと思うと、血の色の様に真っ赤な眼をこちらに向けた。
「同族はどこだ。どこにいる」
「は、はあ??同族って…」
様子のおかしなディギンスにおかしな質問をされて混乱するミヘラ。しかし、ファビスターが攻撃をして来ない事や目の色、質問の内容…それはまるでファビスターの意志がディギンスに移ってしまったようだった。
戸惑っているとディギンスは口を開けて犬歯を見せて苛立ちを露わにした。
「とぼけても無駄だ。貴様らの血族の匂いはこの血が識っている」
「私…ファビスターと話をしてる…?」
「同族はどこだ!!!!」
ファビスターは口を開くと僅かに火を噴く。回答によっては殺される。ミヘラは深呼吸をしてから答えた。
「滅んだわ。遠い昔に」
ディギンスは殺意に満ちた表情をやめて落ち着いた無表情になった。
「…やはりそうか。そんな気はしていた」
そう言うとディギンスはフラリと倒れる。ミヘラは彼の体が地面に着くより早くキャッチして抱き抱えた。ファビスターは翼を大きく広げると地面を打ち付けながら空高くへ一気に飛翔し、西の空に消え去って行った。
助かった。ミヘラは緊張から解放されて一息ついた。辺りを見渡すと人々がミヘラ達の方を向いていた。ドラゴンと会話する所を見られた。仲間とみなされ攻撃されるかと思いきや周囲から鼓膜が破れんばかりの拍手が送られる。どうやら舌先三寸でドラゴンを追い払った物と思われたらしい。
ファビスターが着地した建物、羽ばたく際に壊れた建物はあれども町民はそんな事を気にする様子もなく祭りの主役をミヘラ達にしようとした。気が付いたディギンスは身体のどこにも異常がないとは言っいたので旅立とうとしたが、泊まる場所を提供するからどうしても今晩だけでも泊って行って欲しいと言われては断れなかった。
それから3人は祭りを楽しんだ。飲んで食べてはしゃいで、それから聖堂で用意してもらったベッドで眠った。
ミヘラは祭りの熱気と楽しさを頭の中で何度も反芻する一方で、どこか寂しそうにしていたファビスターの事も頭から離れなかった。
ディギンスはぱちりと目を開けた。愛らしい寝息を立てて眠っているミヘラから抱きしめられている。お祭りで沢山飲み食いした彼は現在、今になって尿意を催して目が覚めたのだった。ミヘラを起こさない様に身体を捻って脱出する。彼女は穏やかな寝顔にディギンスも表情が和らいだ。
ベッドから離れた用事を思い出すとお手洗いを探して歩く。ひたひたと歩いていると床が冷たい事に気が付いた。かといって今更部屋に靴を取りに行くのも面倒で気にせず進む。やや道に迷いながらもトイレに行き着くと用を足した。
尿意がなくなると今度はまた眠気が襲って来るものでひたひたとまた寝床に戻る。途中でリザードマンの聖職者が目に入った。随分夜遅くだと言うのに女神像に祈りを捧げている。
そっとしておこうと立ち去ろうとするとうっかり近くにいた猫の尻尾を踏んでしまった。猫の猫の短い鳴き声に聖職者がこちらを振り向く。
「誰!?」
「あ…すみません、驚かせる気はなかったんです」
「ああ、旅のお方…」
さっきの驚き様といい、祈ってた所を見られて僅かに動揺している事といい何か様子が変だった。
「ドラゴンの事ですか?」
「…まあ、そんな所です」
「僕も祈って行ってもいいですか?」
「構いませんよ」
女神像。ファイマーの話によればフィオーラと言う名前だ。ディギンスはファビスターを前にした時、逃げる事で頭が一杯で戦意などどこにもなかった。そもそも奇襲を受けて戦う準備は万全でなかった上に実際に戦た所でどうやっても勝つ術はなかったので彼の考えは間違ってはいない。しかし彼はミヘラの言うドラゴン殺し…落涙の有無に関わらず殺すつもりでいたのだ。
だから、実際に本物を目の前にした時に如何ともしがたい恐怖に屈してしまった事は彼にとって何よりの屈辱だった。ディギンスはフィオーラにファビスターと戦うための勇気を分けてくれる様に祈った。
「何やら思い詰めている様ですね。私で良ければ話を聞きますよ」
ディギンスは少し迷ったが、素直に全てを話した。彼女はディギンスを椅子に座らせ隣で馬鹿にしたりせず真剣に耳を傾けていた。
「討つべき相手を前にして敵前逃亡しか頭にないだなんて、お笑いもいい所です」
「勇敢である事と無謀である事は違います。少なくともあなたは動けなくなった仲間を連れて逃げようとした。やろうと思えば1人でも逃げる事はできたのに。あなたは臆病だったのではありません。冷静だったんですよ」
「そうなんでしょうか…。何だか自信がありません」
「恥ずかしながら私は腰を抜かして動けなかったんです。逃がすべき人々が沢山いたと言うのに、ただただ目の前の恐怖に怯えている事しかできませんでした。あなたの様に他人の事を考える余裕などなかったのです」
それを聞いたディギンスは黙るしかなかった。これ以上自分が情けないと言えば彼を傷つける事になり、かといって自身は立派だったとふんぞり返る事もできない。返事に詰まったディギンスは話を変える事にした。
「あなたはどんな事を祈ってたんですか?」
底を聞かれるとまた戸惑う様子を見せる。しばらくは何か話そうと考えていた様子だったがすぐに諦めて落ち着いた。
「…こんな事を言ったら聖職者として非常にまずいと思うんですけど……。恥を忍んで本当の気持ちを私に打ち明けてくれたあなただからこそ私も包み隠さず言おうと思います」
彼は大きく息を吸ってはいた。
「実は私、あのドラゴンに心を奪われたみたいなんです。あの筋骨隆々しいからだつき。鈍く輝く美しい鱗、輝く紅の眼。鋭く尖った爪。気分1つで殺されてもいい。そう思いながらあの姿を目に焼き付けていました。大勢を殺したこの大陸の敵なのにです」
表情にこそ出さずともディギンスは大変困惑していた。その気持ちを推し量る事はできない。優しい言葉で共感をしめすべきか、素直に呆れたり困惑してる事を伝えるべきか、あるいは無言を通すべきか。
彼はトロン、とした目つきで両手を胸に当てる。
「はあ…どうしましょう、少しの間でも女神様に祈っていないとおかしくなってしまいそうなんです。体が内側からぽかぽかって温かくなって…。ああ…あの鋭い爪で引き裂かれてみたい。彼の吐く炎で焼かれてみたい。丸呑みにされたい。はあ…」
恍惚とした眼差しはあらぬ方向を向いていた。彼は息を荒くしながらディギンスの両肩を掴んだ。
「ああ、もうダメ。おかしくなってしまいそう。私はどうすればいいんでしょう。ああ、もっと理性で抑えないと。あなたの事を丸呑みにしてしまいたい…」
ディギンスは以前リザードマンやリザードウーマンは大きな物を丸呑みにする際に刺激的で食欲とはまた違った快楽で満たされると言うのを聞いた事があった。種族によっては噛まれた獲物は毒によってこの世の物とは思えない多幸感に包まれながら溶かされていくものもあるとか。
「大丈夫。飲み込んだりしないから。3分、3分間だけ私の喉の中に居て欲しい」
「おお、おおお落ち着いてください。今こそ信仰心が試される時です。自制心、自制心を強く持ってください…」
彼は目を瞑ると祈りのポーズを取る。しばらくすると落ちついた様子に戻った。
「すみません、取り乱してしまいました。ああ…恥ずかしくて死んでしまいそう…」
そう言って背中を向けると女神像の所で祈りを始める。
「私の事も、さっきの事も忘れてください。お願いします」
「分かりました。…おやすみなさい」
「おやすみなさい。良い夢を」
ディギンスは自室に戻り、眠るミヘラの隣で眠った。
物語を明るくする方法?簡単じゃ。まずこうして魔法の杖を取り出してな。
ルー〇ス・マキシマ…(フォォォォオオオン)
ルー〇ス・マキシマ…(フォォォォオオオン)
ルー〇ス・マキシマ…!(フォォォォオオオン!)
ルー〇ォス・マキシマァ…!!(フォォォォオオオン!!)




