[5] 750.
#07. Cracking 処分 [14]
#08. Reboot 脱出 [7]
#12. Complete 細胞の記憶 [8]
放さなかった。
放すものかと、必死にそのレザーの袖を握って泣きついた。
「どうしたの!?ねぇ…ねぇどうしたのよ!?
それ…それっ…」
(……積んだんでしょう…?……それ…誰…?)
何が貴方を、そうさせてしまったの。
その問いかけが、溢れる涙に流され声にならなかった。
やっと合ったその目は、ジワジワと恐ろしい鋭利な形に変化していく。
ヘンリーは彼女の肩を掴み、引き剥がそうとする。
しかしその両手は噛りつくようで、全く離れない。
泣きじゃくりながら、同じ事ばかりを放つ彼女にとうとう苛立った。
「放せっ!来るなって言ったろっ…消えろっ!」
(何で……だ……)
「嫌っ!」
「触るなレイシャっ!」
(触るな……止めろ……俺に…触るな……
触るなよ……)
この身も、心も、完全に汚れたのだ。
そんなものに触れるなと切に願うのだが、彼女は離れなかった。
「連れてって!連れてってお願い!お願いよ!」
「ばっ…」
馬鹿な発言だというのに、躊躇っている。
彼女を、引き離せない。左腕は早くも故障か。
力が利かない事に焦燥し、舌打ちする。
そこで、彼女の見開かれた目と合う。
ジャケットの裾に掴みかかる両手と髪に、自然と目が行った。
何かでベタつき、髪がそれにより部分的に凝固しているのが、妙でならなかった。
「も…もう……もう独りに……
独りになんか…しないから…
独りになんかなりたくない……
ねぇ…いなくなるなら……いなくなるならお願い…
お願いだから…連れてってよ…連れてってよ!」
「レイ
「どうすれば良かったのよ!?
私がっ…私がこんなだからなのっ!?
だからあの子は死んじゃった…
あの子は何も…私なんかと違って…
何もおかしな事なんて…なかったじゃないっ……」
ヘンリーは強くドアに押しつけられ、終いに彼女と共に地面に崩れ落ちる。
彼女はまだ、震える手で彼の裾を握ったまま、放さない。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




