[4] 840.
#07. Cracking 処分 [14]
#08. Reboot 脱出 [7]
#12. Complete 細胞の記憶 [8]
走りながら、これまでの記憶が激流に打たれるが如く砕け散る。
最悪な出来事も多かったが、そこには笑顔だってあった。
数える程度だが、それに縋ってここまで生きてこられた。
その筈だったのに。
信号など守っていられるか。
ただただレイシャは走った。
通りがかりに飛び込んだ警察署。
直に見えた、レアールの職場に向かう為のバス停。
通過した先に、彼女が掲載された雑誌を買う為に通い詰めた書店。
うざったい。
どれも、どれもが腹立たしい。
そこへ更に飛び込んだ、紹介されたカウンセリングセンター。
(何を……あんた達は……そして私は……
何を……何をしたの……)
彼女は死んでしまった。
自分の行いが、仕事を奪ったのか。
彼等は、彼等が言う順を追って、誹謗中傷の対応をした。
彼女に、自身が変わるようにと言いながら。
この業界は、そういうものだと言いながら。
溢れる涙の中、掘り起こされる記憶に恐怖の一驚を上げる。
しかし、足は止まらない。
走り続け、やっと静かな道に辿り着く。
街から少し外れ、田舎のような雰囲気を漂わせる、彼の家に繋がる道。
何も考えていなかったが、兎に角今は、顔を見たかった。
話したかった。
静かに、ただ静かにあの時のように聞いてもらいたかった。
だが
「!?」
足は突如、止まった。
彼の家の玄関前に、黒いワゴンが止まっている。
全身真っ黒な人物が、トランクに白い大きな物体を肩から下ろし、バックシートに積んだ。
それはあっさり、バックドアに閉ざされる。
「………ン……リ……?」
(それ…何………何…したの……)
フラフラとした足取りで、こちらに気づかないまま彼は運転席に向かっていくではないか。
レイシャは声を震わせ、再び混乱し始める。
「…って……ま…って……待って!」
止まっていた足は飛ぶように駆け、あっと言う間にヘンリーに飛びついていた。
それは彼が運転席のドアを開けた瞬間で、彼は勿論、レイシャまでもが激しい衝撃を受けた。
漸く、驚きに見開かれた目と合う。
「待ってよ!待って!行かないで!
どこ行くのよ!行かないで!」
「おま…!?」
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




