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[3]          1200.



#13. Data processing 再び [2]

#- Shut down






 アパートの階段を駆け上がる。

こんなに走ったというのに、寒気が治まらない。

微かに立つ、白い息。

それは激しく、真っ暗な鉄階段の螺旋に消える。




 鍵を開けようと挿し込むが、空回る。

また開いている。

レイシャはそっと開き、彼女を呼んだ。






 暗過ぎるそこは、ずっと照明が点けられていなかった様子を思わせる。

テキストが届いていた時間は夕方前。

時と場合によっては、返す事ができた時間だ。

しかし、今日は無理だった。

それに後悔しながら、慌てて家の中に入る。




 「レアール?いるんでしょ?」




玄関の照明を点け、奥へ進む。




「また会おうって何なのよ。いつも会って…」






リビングに、彼女の姿がなかった。

妙だった。

靴も、いつも被ってる帽子もある。

スカーフもコートもかかっていた。




 不安が込み上げ、隅々まで部屋を見渡した。

どこかで倒れているのかと、キッチンもベランダも、ベッドもテーブルの下も、みっちり探した。




「レアール!?」



(嫌だ……嫌だ……)




変な予測が立つのを、激しく振り払おうとする。

残るはバスルームしかない。

そこを見たくない衝動に駆られてならない。

そこは、照明が落ちている。

いる訳がないだろう。




(いないでしょ……いない……でしょ…?)




確かめるまでもないだろう。

レイシャは携帯電話を握り、玄関まで静かに戻る。

それまでの間に、バスルームがある。

戸は開け放たれていた。




電話をかけると、そこから着信音が鳴る。

明らかにそこから鳴っている。

手は震え、携帯電話を落とした。






「はっ……」






酷く感情的になり、声を上げやすい彼女すら、喉を掻っ切られたように何も放てなかった。

冷たいフロアに崩れ落ち、浴槽の縁に上体が凭れかかり、手だけが中に入ったまま、動かない友人。




「ね……ねぇ……」




足は勝手に、彼女に近づいていく。

灯を点けるとそこには、酷い出血で冷たくなっているレアールがいた。

一体、どのくらいこうしているのだろうか。




“また会おう”。

その時点で、ここにいたというのか。






 切られた手首に触れる。

レイシャは、彼女の死を確信した。

自分は、それを分かってしまう人間だ。

口は一気に乾き、呼吸が荒くなると、瞼を失ったまましゃがむ。

縁に頬をつけた状態が長く続き、型がついていた。




(…起きてよ……行かないで……

一緒に……一緒にいたいよ……)




しかし、彼女は石のように動かない。




(助け…助けて…ねぇ……ねぇ……)




「っ!?」




手に付着した血液を見て、やっとそこで叫び声が短く上がった。

鼓動に視界が激しく揺れる。

頭が振られている。

脳は激しく何かで叩かれているようだ。

血液が付着した手が、頭を抑えようとする。

唇が痙攣し、思うように声が出ない。

涙が止まらず、静かに慌てふためく。






 不意に立ち上がると、その場でフラフラと動きながら、混乱に溺れる。




(ねぇ…ねぇ…たす…助け…て…………

ヘン…リ……)




頭の中でふと、いつか見た穏やかな彼が、こちらを振り返る。

レイシャは、赤く染まった手を握ると、一目散に外へ飛び出した。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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