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[2]          1030.



#06. Please wait [20]

#07. Cracking 処分 [14]






 パッとしないまま、一日が終わる。

また、新たな日を迎えているが、新しさを感じない。

朝、携帯電話を見るとテキストが入っていた。




― 回復しなくて、休んだ。あまり眠れなくて。

だから今日は、よく寝る! ―




精神状態が安定せず、仕事を休む事がまた続いていたレアール。

仕事後に、食事を持って会いに行こうと決め、レイシャは出社する。






 ここ最近、少し早く仕事に行く事にしていた。

というのも、やはり捨てきれない夢がある。

防腐薬品の開発を叶えるならば、何の成分が必要か。




そんな考えを独りで巡らせる事が、唯一の発散方法だった。

エンバーマーや解剖医が集まる施設。

必要な薬品や、設備が整った場所を、じっくり見るのが落ち着く。

しかしそうしていられるのは、ほんの僅かな間だけだ。

短い時間を使って、頭の中で研究をする。

その積み重ねを、ずっとしていた。






 この日は忙しくなった。

一人立ちに向けて処置を試験的に任される他、期日が迫る書類を片付ける作業に追われた。

また、技術面においてフィードバックも続き、退勤時間が遅くなった。




 酷く疲れ、少しの間、職場の休憩室で腰を下ろす。

仄暗い照明に灯る、EXITの緑ランプ。

誰かが使った後のコーヒーメーカーから立つ残り香に、何とか癒しを貰っている。

目の前には、バインダーに挟まる大量にメモ書きした用紙。

人の体を扱うのだから、細部に渡る指摘は当然だった。

解剖医学を学ぶ際にも似た経験をしたにも関わらず、辛い。






 上手く気持ちをコントロールできないでいる。

友達が心配でならない。

解消されない事が、ストレスになっている。

今日も碌にテキストの返信ができていない。

傍にあまりいてあげられていない。

友達が、と言うのだが、本当は自分が寂しくてならなかった。




 自分を馬鹿にしてきた人間を、いつか見返してやりたい。

何もできないと思われている家族から、理解を得たい。

友達の傍にもっといて、痛い事から守りたい。

何より、笑いたい。






 つい、溜め息が漏れた。

そしてやっと、頭が少し落ち着いたところで携帯電話を開く。




― また会おう ―




「……………?」




寒気がした。

今日は朝から冷えるが、そんなものではない。

レイシャは眉を顰め、咄嗟に電話をかけた。

レアールが、応答しない。






 大きく立ち上がるなり、主任が顔を出した。

まだ居るなら施錠を任せると声を掛けられたが、すぐに出る事を告げ、足早にその場を後にする。






“でも、私は弱い。ねぇレイシャ…

貴方は私を、綺麗に強くしてくれるかしら…

心も…体も……”






気付けば、全力で駆けていた。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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