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#11. Almost done 実行 [6]
レアールはその後、レイシャに職場から言われた事を素直に伝えた。
酷い言葉の羅列を見た晩、何とか正気を取り戻すまで、レイシャは彼女を慰めた。
独りにしてはおけず、夜は共に過ごした。
数日経過しても、彼女の体調も精神状態も、そう直ぐに回復する事はなかった。
レイシャもまた心配で、集中が途切れ、仕事でミスを連続的に犯してしまい、指摘量に追われていた。
解決されない。
自分の事はどうでもよかった。
何だかんだ、こうして働きに出られているのだから。
しかし、彼女や彼の事は、どうしても心配でならない。
レアールがマネージャーから受けた話を思い出すだけでも、苛立ちは込み上げる。
対応は、相変わらずなのだ。
変わる必要があるのならば、それはお互いではないのか。
紹介されたと言われたカウンセリング。
それにもまた、腑に落ちなかった。
必要無い訳ではないにせよ、何だかどこか横流しに思えた。
(そこで何とかしてもらえっての……?)
休憩中、飲んでいた缶コーヒーが空になると、怒りに握り潰す。
こうもずっと苛立つのには、もう1つ理由があった。
警察から連絡があり、再び訪れた時の事。
そう長い時間ではなかったが、急に怒鳴り込まれたとモデル事務所側から訴えがあり、事情聴取をされた。
今回に限っての事ではないからだろう。
レアールはこれまで、あまりにも自分にばかり矛先を向けてきている。
欠点があると言うならば、彼女ばかりにあるのではない。
そんな事を、誹謗中傷が始まった頃から転倒があった日、そして今回の件と複数に渡って、直接訴えてきたのだ。
それを振り返ると、自分がその様な事をするから、彼女に余計に仕事が来ないのではないかと思ってしまう。
それに職場へ乗り込んでいく行いは、自分が両親にされてきた事と同じではないか。
(…………じゃあ……どうすんの……)
“……そんなの構うなって…言ってやりゃいいさ……
君だってそう……お互い…傍にいれば……
ずっと傍にいて…話していれば……
手を繋げば……寂しくないだろう…”
ヘンリーの言葉を、ふと思い出す。
レイシャはずっと、彼が現れるのを待っている。
何も知らなさ過ぎて、彼をどう探していいか分からない。
時に、彼の家に行けない日もあった。
そんな時に限って在宅していたらと、後悔してしまう。
お互い、傍にいればと言うならば
(…貴方の傍にだって…いたいわよ……)
何があったのか、聞きたかった。
手の事も、失業の事も、父親との事も全て。
レアールにするように、また、されるように、彼にも寄り添いたかった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




