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#08. Reboot 脱出 [7]
シャルは小さく咳払いし、眉を一時顰める。
口内に違和感を感じ、口元に手をやった。
一体何か。
暫くしてから、小さくだが口を数回開閉し、首を傾げた。
そのままふと、左右の手の動きを確かめる。
ヘンリーは肩越しに睨んでいた姿勢から、ゆっくりと正面を向いていく。
左手でシンクの縁に体重をかけ、真顔で首を傾げながら、彼女の様子を観察した。
彼女はふと、彼を振り返る。
その僅かな動きだけで、少々体が揺れた。
バランスを取ろうと、足が数歩前後する。
妙な異変に戸惑いの表情を浮かべ、足元を見た。
床が、視界が、揺れている。
また、大きく顔を上げて目を見開く。
彼は傾げていた首を徐々に前に倒し、殺意に満ちた黒い目を真っ直ぐ向ける。
彼女は何か言いたげだが、どうやら口が酷く痺れて話す事ができないらしい。
「どーーー…した……?」
言い終えると静かに、堂々と笑みを見せてやる。
それに彼女は酷く息を吸い込み、混乱し始めた。
後退り、彼から必死に距離を取ろうとする。
だが、一歩、また一歩と黒い足は接近する。
呼吸困難の症状が出始めたようだ。
彼女はまるで、陸に上がった魚の如く空気を求めている。
立っていられないか、そうか。
と、今度は微かに声に出して笑ってやるヘンリー。
それと同時に、彼女は床に崩れ落ちた。
逃げようと這うが、神経と筋肉の麻痺を起こし始めているのか。
そこに恐怖が合わさり、余計に震えている。
その形が、最高にウケて堪らない。
「たはっ!」
(何だ…!?…それ…!)
喋ってみればいいものを、シャルロット・デイヴィス。
しかし彼女は、床に寝そべり激しい呼吸困難を起こした。
何かを求め、手を伸ばしている。
その先を見て、ヘンリーは移動した。
お望み通り、ドアを少しばかり開けてやる。
帰るのか、そうか、なら帰れ。
帰ってみろと彼は引き笑いし始めた。
そうしている内に、彼女は嘔吐した。
(あーあ…)
だがこれは仕方ない事である。
本当に起きてしまったとは思ったが、溜め息をつき、舌打ちで済ませた。
彼女の前まで向かうと、鋭い目で見下ろしながら、目の前でしゃがむ。
見る見る青白くなる顔は、目もどこぞを向いて完全に変顔だ。
(おい……じょーーだん…だろう!?)
「くはっ!」
どんなコメディやバラエティよりも笑えるではないか。
こんな事は初めてだ。
彼は大笑いしかかるのを、腹を抑えて耐え続ける。
そうしてる間に、彼女の悶える手が落ち、床の上で完全停止した。
にしても、効果は遅くて3時間後と確認していた。
実に早い結果が出たのは、倍の致死量を混ぜたからなのか。
彼は、瞳孔が開いた目を真っ直ぐ、まじまじと床のそいつに向けている。
俯せになった彼女の背中はまだ、上下している。
彼は立ち上がると、深々と溜め息をつき、その背中を踏みつけた。
徐々に体重をかけ、彼女の息遣いは更に浅くなる。
(役に…立てよ…なぁ………
試してやるよ……試させろよ……)
数分後、彼女は動かなくなった。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




