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[1]          1430.



#08. Reboot 脱出 [3]

#13. Data processing [2]






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 その小さな研究所では、時間と予定に今日も追われていた。

先程出社したと思えば、もう日が落ちてきている。

忙しない日々は、滞る事なく流れていた。






 「アルフ、次のスケジュールの詳細、渡しておくわ」




海上に新設が決定した人工島、海洋バイオテクノロジー研究所。

その建設書類を渡す為、側近が訪れる。




 年季の入ったダークブラウンのアンティークデスクには、窓から射し込む夕陽を受け、柔らかな艶を放っていた。

書物が多いそこは、入るなり香る古びた紙の匂いが漂う書斎。

薄いブラウンの髪に少々白髪が混ざる彼は、柔らかな革の椅子に凭れている。

老いた手で渡されたものを受け取ると、目を通しながら安堵した。




 開設は目の前。

その前に控えている最後の内見の日時を、彼は手帳に書き留めた。

もう直、大移動が待っている。

その流れを想像しながら、手渡された書類の必要箇所に文章を記入し、サインする。






 アルフレッド・クラッセン。

州で名のある、生命科学を探求し続ける科学者。

医薬品開発で、高いパフォーマンスを発揮し続けている。




 大の海好きであるが、だからと言って、陸から離れて自らの研究所を水上に建設する企画はやり過ぎだと、息子には反対されていた。

そんな彼は、楽しく、親しみやすい性格であり、誰からも信頼される存在。

部下達は迷いなく、彼について行く。




 一方、発明にも関心があった。

息子ノーラン・クラッセンが、その実績を誇る。

父であるアルフのバイオテクノロジー研究よりも、製品開発をする発明家であり、科学者。

製造工場の社長で、実績を作る為ならば常々熱く、勝気があり、勤勉な性格だ。




 そんな息子に少々影響を受け、遊び心で物作りも着手するアルフ。

親子揃って、未来に向けて何かを残そうとする性質があった。




「こっちからのボートも、向こうの分も追加で段取りできてるから、心配しないで」




 シャルロット・デイヴィス。

組織のトップであるアルフが高く評価する彼女は、彼の側近を務める。

仕事に対する意識が高く、勉学や研修への参加も前向きであり、内容の吸収も早い。

名の知れた科学者の親子に認められ、貢献できる事が嬉しい。

若くして、施設管理や部下の指導においても言う事が殆ど無い。




「仕事が早い。助かるよ」




アルフは言いながら書類を彼女に返すと、デスクに立っている孫の写真に目を向ける。




 色々な物に興味を示し、夢中になりすぎる長男と、その真逆な性格の次男。

2人は既に、母親と死別していた。

病によるもので、医療に携わりながら助けられなかった事を、今でも悔やんでいる。




 その事が落ち着いてからも直ぐ、仕事に出ずっぱりの日々だ。

孫2人の世話の殆どは、入れ替わり立ち代わりするシッターに任せきり。

顔を合わせる事もあまり無かった。

そこへ、感性が豊かになりつつある長男が、シッターに対する不満を言うようになった。




「シャル」




立ち去ろうとしていた彼女を、アルフは止める。

信頼も厚く、人当たりも良い。

そんな彼女に、いつからか親子で甘えてしまうようになっていた。




 呼び止めたのは、孫の面倒についての相談。

未だどこか迷いを含みながらも、遂に切り出してしまった様子だ。




 無理にとは言わないと伝えるものの、無茶な相談をし終える。

子どもとの接点が無い彼女はしかし、快諾した。

この親子には日々良くして貰っており、更に距離が縮まるのであれば、引き受ける。

そういったところもまた、見え易かった。









SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~


初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。


2024年 次回連載作発表予定。

活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。

気が向きましたら、是非。




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