[8] 1100.
#10. Tracking 再回収 [2][10]
#11. Almost done 実行 [7]
レアールはマネージャーに呼び出され、事務所で話していた。
相手は体調を気遣いながらも、話す内容はシビアなものだった。
「お友達に、言っておいてもらえるかしら。
流石に困るわ、あんな感情的に。
警察にも通報されて、昨日ここへ来たのよ。
誹謗中傷の事実は伝えたわ。
ただ、こちらもやれる事はしてる。
ウェブ上でも、記事が出る際には一部でも、そういった発言や書き込みは止めてもらうように呼びかけてる」
レアールはまた、窶れた。
マネージャーはコーヒーを口にしてから、少々間を置いて続ける。
「そういう事だから、貴方にももう少し気をしっかりもってもらいたいのよ。
言われる度に真に受けるようではねぇ……
残念だけど、こういった事って無くならないでしょう?
対処しないって訳ではない。その都度向き合うわ。
だけど、対処しきれない。切りが無い事なのよ。
だから、表に立つ貴方達も、変わらなきゃいけない。
じゃないと……仕事にならない」
最後は、彼女の体に目を這わせてから言った。
まだ、落ち着いて聞き入れられる状態ではなかった。
レイシャが、自分を思って行動した事であるのは分かっている。
実際、事務所が取る対応は大した効果を出せていないのは、事実だ。
警察の耳に入ったのであれば、何かが変わるといい。
今は自分を変える事よりも、そう願う事の方が楽だった。
「体調が優れないようだけど、病院は?
そうも落ち込んでるなら一度、カウンセリングに通う事も考えていいかもしれない。
紹介できる所があるわ」
そう言って突き出された名刺に、レアールは渋々触れる。
早く帰りたい気持ちに駆られていて、受け取る気になれないのを堪えていた。
「1日も早く元気になれるように…
考えてみて……
分かり切った事だけど、この世界は、目に見えない人からの反応が多く寄せられる。
だから、ずっとそういう精神状態ではいられない。
続けたいのなら、這い上がって見せてやればいいの。
まずは、そういう気持ちを持つ事からね」
エントランスを出てから、立ち眩みに少々体が揺れる。
日差しが眩しい。
照らして欲しくなく、彼女はまた、目深に帽子を被って己を隠した。
大きなレンズをしたサングラスの下からは、涙の2本線が素早く頬に引かれる。
酷く、痛かった。
呼び出される事も、内容も、今こうして立っている事も、何もかもだ。
「…強く…して……力も…体も…心も……
ねぇ…レイシャ…」
今は一体、誰の為になっているというのか。
彼女は途方に暮れていた。
この業界に来るまでにも、沢山の壁を越えてきた。
その時の力は、どこへ消えてしまったのか。
越え方が分からない中、心で呟いてしまう。
(…私はせめて…
貴方や…彼の役に…立ちたい……立ちたいよ…)
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




